Nゲージ蒸気機関車>蒸機の紹介>C11

C11 その3−KATO

1 2 [3] 4 5


KATO 新系列

2021 C11 2017年 KATO C11 2021
C11

2017年(拡大写真)
コアレスモーターを搭載した新型機です。
旧製品と同じく3次形で、ナンバーを特定しない平均的な姿です。
トミックスのC11 325の2週間後に発売されました。

KATOでは一番のロングセラーだったC11が、完全新規作成でリニューアルされたものです。
縮尺が約1/150に変更されたために旧製品より1cm近くも短くなり、他社と長さが揃いました。やや間延びしていたシリンダーと第一動輪の間も実物通りに詰められました。
上廻りは別パーツも多用された精密なディテールとなり、薄型のデフや塗り分けられた空気作用管が目を引きます。通常のKATOの蒸機と同じく窓が開いており、ちらりと見える内部の運転機器のシルエットが印象的です。

こちらで詳しくご紹介しました。→KATO C11リニューアル


KATO 旧系列

2002 C11 1971年(写真は2011年ロット) KATO C11 2002
C11

1971年(拡大写真) ※写真は2011年ロット
KATOの蒸気機関車では一番のロングセラーです。

1971年発売の旧製品は、発売以来約半世紀にわたって小型レイアウトを中心に愛用されてきました。今ほどの小型モーターはなかった時代のものですから、動力化には相当な苦心があったものと思います。

登場時の「鉄道模型趣味」誌(1971年7月号)では、Nゲージ製品の少なかった当時においても、「スケールの点で大いに問題が残る」「しまらない」「もっとバランスのとれた外観設計が不可能とは思えない」など手厳しく指摘されていました。今なら考えられないほど辛らつですね(笑)。広告主であってもベタ褒め記事にしないあたりは同誌のよさでもあったかと思います。

最終仕様の下廻りはC50の下廻りに従台車を取り付けたような構造で、多くの共通点があります。ただし、エキセントリックロッドの長さなどが違うので、C50のバルブギヤをそのまま流用することはできません。
昔の成型の都合なのか、キャブの前面を水平に横切る段差がついていて、前面窓のひさしや屋根の縁取りがありません。ここは改造でなんとかしたいところです。

大きさの弱点はありますが、いかにも実際に働いている蒸機を十分観察して作ったという感じで、モールドの様子からそれが大変よく伝わってきます。ここは表現してほしいなと思う部分はたいてい表現されています。現役の蒸機が周りにたくさん残っていて、それを肌で感じていた人が設計していたのかもしれません(あくまで印象ですので真偽のほどはわかりません)。
単品最後の発売となった2013年でも、本体価格が5,500円という低価格であり、これが入門用として大変な強みになっていました。

KATOのC11(旧系列)にはバリエーション展開はありませんが、模型問屋の三ツ星商店から派生品が発売されていたことがあります。
ケース外観はKATOの青銀時代のもので、品番はオリジナルと同じ2002です。
227号機のナンバーはもともと通常品に含まれていますが、それを青色にしたものが付いています。

2002 C11227 大井川鉄道タイプ 1985年 三ツ星商店 C11227大井川鉄道タイプ 2002
C11227 大井川鉄道タイプ

1985年(拡大写真)
車体は強めのつや消し黒で、ランボードに白が入っています。
三ツ星商店は2003年に倒産してしまいました。

なお、2012年には「大井川鐵道SL『かわね路』号」セットが発売されました。同梱のC11は単品とまったく同じものです。
ナンバーも未取り付けなので、付属の単品と同じナンバー(227ほか4種入り)の中から好きなものを使います。
大井川鐵道SL「かわね路」号

KATOのC11の変遷

KATOのC11は、長年にわたって繰り返し再生産されており、そのたびに変化を遂げています。皆様お持ちのものはどのタイプですか。

初代 初代

初代
1971年の生まれです。やや光沢のある仕上げで、ロッド類はプラ、先輪に輪心パーツはありません。
上下はスチームドームを上から貫通するネジで留められています。モーターはやや大きなミゼットモーターで、走行音はうるさくはありませんが、今よりも太い音がします。

ナンバープレートは文字のみのシール式で枠の印刷はなく、車体にモールドされた枠の中に貼り付ける方式でした。

動力改良 動力改良

動力改良
1976年に動力が一新されました。当時のD51と同じ角形のSM-5モーターにウォームが直付けされ、第3動輪がゴムタイヤ付きとなり、従台車に左右の集電板が付きました。
ドームを貫通していたネジは廃止され、側面ナンバー部に上下を留めるツメが設けられました(ナンバーシールを貼ると見えなくなります)。

モーターは初代に比べて小さくなったため、窓枠から少し離れており、ドア窓の部分は向こう側が見通せるようになりました。

金属ロッド改良 金属ロッド改良 金属ロッド改良
1978年、ロッドがステンレスに変更され、ライトに銀が入りました。車体からナンバーの縁取りのモールドがなくなって、シール側に金枠が印刷されるようになりました。SM-5モーターは丸形に変更され、以後旧系列品の最後まで使われました。
重連用カプラーも付属し、当初はケースの中敷の発砲スチロールにテープで留められていました。後に発泡スチロールに収納用の角穴が開きました。
ハイフランジ先輪・ライト点灯 ハイフランジ先輪 ハイフランジ先輪・ライト点灯
1980年代〜1990年代にかけ生産された仕様です。車体がつや消しとなり、先輪は7本スポークのあるハイフランジ仕様に変わりました。ナンバーはプラの選択式で、ライトも点灯式になりました。最終の1997年の品は、ライトが電球からLEDに変更されました。
スポーク改良 スポーク改良 スポーク改良
動輪スポークがついに向こう側まで抜けました。先輪スポークは8本となりました。銀色車輪で動輪スポークの抜けたこの仕様は、2003年の1度しか生産されませんでした。
新型先輪・黒色車輪 新型先輪 新型先輪・黒色車輪
2007年以降の最新仕様です。先輪フランジの高さが20年ぶりに低いものに戻りました。塗装は一時期微妙にツヤが増しましたが、2010年以降の製品では若干戻っています。
これで一応仕様は確定したようで、単品は2013年まで同じ仕様で何度か生産されていました。セット品はその後も2015年まで生産されました。

その他の違い

新旧製品のドーム

外観は登場時からあまり大きく変化していませんが、初期の製品はモーターが今よりも後ろに積まれており、ボディーはスチームドームの真上から貫通したネジで固定されていました。 現行製品(注:初回執筆時。旧製品の最終製品)のドームもよく見ると、かつてここにネジがあったかのような痕跡を感じます。

新旧動力部

ボディーを外すとまるで別物です。初期はモーターが大きく、後部タンク一杯に入り込んでいました。その後、後部タンク内にはライト基板が入っています。

新旧製品の裏側

初期製品は第一動輪までギヤ連動だったため、裏側にギヤが4つも露出しています。先台車・従台車の構造や集電機構も違います。

ライトの違い

ライト点灯になった製品には、初期の電球のもの(写真左)と、後期のLEDのもの(写真右)があります。 電球タイプには、何となく80年代のSFっぽいデザインの遮光板がついています。一方、LEDタイプは電球より照射角が狭いためか、遮光板はついていないようです。

旧系列のC11が入った「かわね路」号セットの最終品は、新系列のC11が発売された2017年にも店頭にあり、それぞれの模型が開発された時代の変化を感じることができました。


[←前ページへ] [次ページへ→]

1 2 [3] 4 5

「Nゲージ蒸気機関車」トップページに戻る