Nゲージ蒸気機関車蒸機の工作>8620(3Dプリンター)

8620(3Dプリンター その1)

3Dプリンターで出力した8620

2016.5.8/2018.8.22

KATOの新C50(50周年記念)の下廻りに、3Dプリンターによる上廻りを載せた、にせ8620です。

[1] 2 3 4 5 6


データ作成

ボディーのデータは色んな図面や写真を参考に、あらかじめ作っておきました。細切れの時間を利用して、作ったり休んだりで約1ヶ月ぐらいです。
8620には色々な形があって、図面がそのまま使えるとは限りません。基本的な外形寸法も図面によって違いがありますし、すでに模型的に手が加えられていることもありますので、適当に織り交ぜつつ好みに合わせました。
(一番困ったのが車幅をどうするかです。16.5mmゲージの模型でも、狭い車体に広いゲージという条件は同じですから、色々なんですよ)

しっかりした図面がある箇所でも、その通りに作るとどうも自分の印象と違う…という箇所は、印象のほうを優先しましたが、その自信がありません。

ボディーの作図の時点ではC50は発売されていなかったため、事前に発表されていた写真と、C56の動力をもとに内側の形状を作っておきました。
あとでボイラーを太くしたり、車体長を変えたりしなくてはならない可能性もあったので、関連しそうな箇所はパーツをマージせずにおきました。動輪の軸距離のように、まず今のKATOは正確に作ってくるだろうと思ったところは、形状を確定しておきました。

ボイラー内

待望のC50が発売されたので、記念品のほかに犠牲にする品を買ってきました。
作成済みのボディーとデータ上で恐る恐るあわせてみました。心配があったのは、モーター押さえの位置と大きさ(ボイラー内に入るようだとアウツ)、キャブ内のダイキャスト割り、そして動輪のフランジ高でした。8620は第一動輪のスプラッシャーがランボード上に露出しており、動輪外形が少し大きくなるだけで、露出部のサイズが急に大きくなるからです(アクリルの肉厚もありますので余計に)。

しかしボイラー内は大丈夫でした。ボイラー中心よりも少し低い位置にモーター軸が来ます。もともと、導光用のプリズムが入る空間が上部にありました。

モーター押さえの一番大きい部分はボイラー内ではなく、キャブ内にあるため、そちらも大丈夫のようです。

動輪の位置、左右のアソビ、フランジ高も偶然ぴったりで、修正はいりませんでした。

ダイキャストブロック

キャブ内のダイキャスト(椅子)の後部は、どうしても後部妻板に干渉してしまいました。またキャブの左右側板とも一部が干渉するため、ダイキャストのほうを削ることにしました。

図の黒い部分が削った部分です。前方はプラ部分、後方はダイキャスト部分です。

ダイキャストを削らずに済ますには、後ろは壁をなくして椅子をはみ出させ、側面はキャブ側板をぎりぎりまで薄くすれば何とかなりそうです。

組み合わせデータ

図面の上では、一部の切削によってダイキャスト自体は収まりそうです。ただ、採寸がいいかげんなので、やってみないとわかりません。そういうのは採寸したと言わないのでしょうけど(笑)。

検討が面倒で現物合わせに頼ったのはラジアスロッド〜加減リンクです。ちょうどランボードに干渉する場所でして、過去のずぼら工作でもこっぴどくやられています。

車体幅はC50よりも少し狭いです。が、いったんそのまま出力しました。車幅を変えると、屋根のRの再検討にまで及んで大変なので…。たぶん本来、シリンダーブロックの作り変えや、ラジアスロッドまわりの処理とセットで寸法を考えたほうがよいのでしょう。

出力

出力するデータ

ボイラー・ランボード・キャブは一体化し、その他パーツは保護用のランナーにまとめました。この、ランナーにまとめる作業が割と時間もかかり、面倒に感じる部分です。
キャブ側板の積層痕が目立たないようにするため、キャブ側板は本体から分離して、デフなどと一緒に平らに並べました。

ランナー側にはシリンダーブロックの上部をカットするためのガイド定規と、真鍮線を曲げるためのガイド穴も一緒に用意しておきました。

出力した部品

今回はお金を節約して、すべてProjet 3500HDMaxで出力しました(種車が結構いいお値段ですし…)。
出力費用はボイラー側が約3,300円、ランナー側が約3,700円で、ランナーのほうが高いです。

今回はちょっと上面に付く縞模様が強めに出ていました。毎回少しずつ異なります。

ボイラー内側(データ)

ランボードは動輪タイヤが入り組むのと、後部のダイキャストが入り込む関係であまり強固にできません。
出力サービス会社でのサポート除去作業などで歪むのを抑えようと、何箇所かに左右をつなぐ補強のブリッジを入れておきました。

ボイラー内側(出力後)

幸い、特に問題なく出力されてきました。
仮ブリッジは超音波カッターで取り除きました。

(サポート材を溶解除去する)インクジェット方式の場合はこのような補強も意味がありますが、造形物と同じ材質のサポート材が付く光造形方式の場合はまたちょっと違います。 良かれと思って付けた補強ブリッジやランナー自体を造形するためにもサポート材が必要ですから、余計な手間がかかってしまうことがあります。サポート材を付加する出力サービス会社にも、それを取り除く自分にも…です。

動力部にかぶせたところ

下廻りを大雑把に加工し、出力されたボイラーを恐る恐るかぶせてみたところ。
ボイラー内部の干渉は大丈夫でした。ラジアスロッド周辺の処理がいいかげんなので前側が規定の高さになっていませんが、これはあとで調整しよう…。

コンポーネント

前回のD50・D60では、たとえばボイラー上のパーツはすべてボイラーにマージしながら一体で作っていったため、あとで修正が入ると影響範囲が大きくて大変苦労する場面がありました。

今回は動力部が手元にないときから作り始めたため、あとで色々と調整が入ることを考え、なるべく一体化せずに別々のコンポーネントのまま作業するようにしました。 全部出来上がってから部品を順々にマージし、Netfabb Basicでポリゴンのチェックを行いつつ、出力用の塊にしていきました。

前回苦労させられた、後半の編集速度の大幅な低下も、なかったように思います。

データと出力後の対比です。

フロント

フロントは下からズボッと動力が入るので、開口部が多く、強度的にも少々不安でした。ただ、デフ付きの場合はデフで強度を持たせることもできるので、そんなに心配はないかと思います。

端梁のリベットは、磨り減ったりして全然見えない機体もありますが、今回は付けてみました(前々作のD50はリベットを付けていましたが、前作のD60は取っていました。違う形態にしたかったので)。

8620の先輪は通常のものより大きいので、タイヤもろとも3D出力することにしました。スポークは1本だけ作り、パターン機能でぐるっとコピーするだけで簡単にできます。

フロント出力後

(向こう側に転がっているのはデフです)
煙突の根元など、サポート材の範囲外のリベットはきれいに見えますが、端梁は上部にフチを付けたため全体がサポート材に埋まり、リベットも不明瞭です。実物同様になった?

動輪の左右のアソビ分+フランジ高+肉厚などが関係し、第一動輪スプラッシャーが外側や前後に大きくなります。周辺の機器の配置や形状をどうするかは一工夫いります。

動輪と先輪の色が合っていないので、いずれどちらかを塗って揃えたいです。何か、スポークが抜けていて同じぐらいの金属車輪があれば一番よいのですけども。

キャブ周辺

キャブ妻板や屋根は、ボイラーと一体の造形にしたため、屋根にかかる発電機の排気管は簡単に付けられました。D60のときはキャブが別パーツだったため、排気管の途中に継ぎ目が必要で、そこが開いて見えないようにするため余計な工夫がいりました。

キャブ下のステップや配管・ドロダメなどは一体の別パーツで、横からダイキャストブロックの角穴に差し込んであります。

キャブ周辺出力後

キャブ天窓の上にあるヒンジなどの浮き出しは厚さ0.05mmですが、一応視認は可能です。この厚さは例外的なところのみに使っています。

キャブ妻板には最上部にひさしなどの出っ張りがあるため、下端まで全部サポート材に埋まることになり、表面はかなり不明瞭になっています。

積層の模様を消すような後加工は何も行っていません。ディテールが入り組んでいるので、私がやってもうまくいかないでしょう。将来もっとプリンターが進歩すれば、黙っていても解決すると期待します(そこには超えがたい技術的な壁があるのかもしれませんが)。今は紙用のプリンターでたとえれば、まだ1980年代の、16ドットとか24ドット漢字プリンターみたいなものかもしれません。

にせ8620(その1) 完成

色々不具合もあり、データも修正したいのですが、とりあえず第一版として完成しました。
均しローラーの模様と積層の模様のため、エンジン側には謎の手造り感が出ます(したくなくても)。

8620完成

(拡大写真)
デフは前後に狭いものにしました。キャブは裾上げされたものです。

C50

こちらは元になったC50(本物)です。

8620完成
テンダーはC50のままなので、そこだけ豪華です。
8620完成
デフを付ける前
ちなみにこれはデフを付ける前、組み合わせ調整中の撮影です。ハチロクはデフなしも好きなんですけどね…。

機会があればデフなしや、裾の位置が低い原形キャブなどもほしいのですが、いくつも作るならラジアスロッド周りの構造をきちんと解決しておきたいです。
でもやはり、そんなことをしなくても、メーカー製の新しい8620は手の届くところまで来ているのではないかと期待しています。

その後…光造形式プリンターとして個人でも購入されている、Formlabs Form2で出力してみました。


[次ページへ→]

[1] 2 3 4 5 6

「Nゲージ蒸気機関車」トップページに戻る