単なる生活習慣によるものと甘く見てはいけない便秘の害
人間が快適に生活を送るために大切なポイントとして「生活のリズム」があります。毎朝、朝食後に便意が起こりやすいのも、体の持っている1つのリズムです。便秘になるのも、そのリズムを乱してしまうせいなのです。旅行や入院などが原因で便秘になってしまうのは、いつのリズムから外れた生活になるからです。
時間がないから、といって朝食を抜く人が少なくありません。作るのがめんどうだから、美容のために、などの理由で食べない人も多いようです。しかし、物を食べなくては、「胃・大腸反射」が起こらず、大腸は蠕動運動を行うことができません。
また、朝食をとり、朝食後に便意が起こっても、トイレラッシュがつづき、ついついがまんしてしまうこともあります。そのいちばんの犠牲者は家庭の主婦です。
通勤通学の準備で忙しい家族のために、自分の番がどんどん後回しになってしまうからです。すると、どうなるでしょう。便意を感じると、その信号が結腸にも送られ、嬬勤運動がいっそう高まる仕組み(直腸・結腸反射) になっているのですが、せっかくの便意をがまんしているうちに、直腸・結腸反射が消えてしまい、便意までもがなくなってしまうのです。
何度もこれを繰り返していると、神経の働きが鈍って便意を感じなくなり、ひいては直腸・結腸反射も、胃・大腸反射も起こりにくくなります。
こんなことのないよう、毎朝必ず朝食後に便意を起こさせ、便意を感じたらすぐトイレに行くようにしましょう。もし、運悪くトイレがふさがっていたら、そのときはがまんし、そのあとでたとえ便意が消えてしまっていても、トイレに入り、排便するように努力することです。毎日これを習慣として継続すれば、多少のタイミングのずれはあっても、便意が起こるようになり、毎朝、排便をするということが習慣づけられるはずです。朝食を食べた後に便意を催す習慣が日常的になるでしょう。
便秘が原因の症状
- 腹痛・おなら
- 頭痛・肩こり
- 蕁麻疹・ぜんそく
- 胆石症
- にきび、肌荒れ、しみ、そばかす
便秘そのもの(痙攣性便秘は除く)では、あまり腹痛を伴うことはありません。便秘がつづいて腹痛を起こすのは、ほとんどが腸内にたまったガスが原因しているます。ガスが生じるルートには、次の2つがあります。1つは、食事やおしゃべりのときに飲み込む空気と、飲食物に含まれる空気など、口から入ってくるもの。もう1つは、腸内細菌の作用で生じるインドール、アンモニア、アミンなどのガスです。いずれの場合も、便秘をして便で出口がふさがれていると、ガスがたまって行きどころがなくなり、腹痛を起こします。
また便秘をしていると、ウエルシユ菌などの悪玉の腸内細菌がふえ、腐敗発酵を起こしてガスの発生が多くなります。この種のガスは、悪臭も強くなります。
便秘をしている場合、頭痛、肩こりを訴える人が多く見られます。また、食欲不振、舌がザラザラする、口臭、めまい、不眠、疲れやすい、イライラなどの不快な症状もよくあらわれます。
便秘とこれらの症状との因果関係ははっきりわかっていませんが、悪玉菌によって生じるアミン類には自律神経に対する毒性があり、そのために自律神経の働きが乱れて、こうした自律神経失調症の症状が発生するのではないかと考えられます。
便秘をしていると、蕁麻疹やぜんそくなどのアレルギー性の病気が起こりやすくなります。アレルギー性の病気は自律神経の働きと深い関係があり、これも腸内に生じるアミン類が悪さをしているものと考えられています。最近、流行しているアレルギー性鼻炎も便秘との因果関係が研究されており、ヨーグルトなどで重度の鼻炎が改善する例は、便秘の解消によるものではないかと考えられています。アレルギーを起こす下手人であるヒスタミンという物質もアミンの一種であり、何かしらの関係がうかがわれます。
胆石症の発作は、便秘をしていると起こりやすいと言われます。確かに胆石症の患者さんには便秘の人が多く、関係があるものと思われますが、その理由については明らかになってはいません。
自律神経の働きが低下するために、皮膚の血行が悪くなり、にきびや肌荒れの生じることもあります。また、便秘をすると腸内細菌が小腸にまで上昇することがあり、その結果、小腸の栄養をとり込む働きが低下し、肌の健康を妨げているようです。便秘した際に肌荒れを自覚する人は多く女性には気になる症状でももあります。
便秘が原因の病気
- 大腸がん・大腸ポリープ
- 乳がん
- 大腸憩室
- 痔
- 高血圧
便の中には、もともと食べ物に含まれていたものだけでなく、消化管の中で新たに生じた有害物質が便と一緒にまざっています。中にはガンを誘発する物質もあり、便が長くとどまっていれば、その作用も長時間に及んで、ガンを生じさせることもあります。便の通過時間の短いアフリカ僚住民には大腸ガンがごくまれで、便の通過時間の長い欧米人に多いことからも、その関係が裏づけられています。
最近の日本人の腸の傾向とさまざまな症状
| 腸ストレスの影響と解消方法では、食の欧米化などの原因により日本人の腸が様変わりしていている事実が紹介されています。
アメリカの大学で、1481人の婦人を対象に乳ガンの検査をしたところ、乳ガーンに移行しやすい異常細胞を持っている人が、1日に1回便通のある人たちの場合には20人に1人だったのに対し、週2回以下の人たちでは4人に1 人にものぼるという結果が出ました。なぜ便秘症の人は乳ガンになりやすいのかその理由についてはわかっていません。ガン発症のメカニズムと腸の働きに大きな因果関係があることが少しずつ明らかになっています。
大腸の壁がくぼんで、小さな袋状のものができる病気です。中に便などがたまって、炎症を起こしたりします。便秘のせいで、便やガスの圧力が腸壁に加わるのが主な原因ではないかと考えられています。
非常にポピュラーな痔の病気である痔核(イボ痔) は、肛門近くの静脈が鬱血することによって起こります。便秘のために強くいきむと、肛門周辺の鬱血が強まり、痔核を起こさせたり、症状を悪化させます。また便秘をしていて、かたい太い便を無理に排出しようとすると、肛門のへりを切って裂肛(切れ痔) の原因にもなります。裂肛を起こすと、痛みのために排便をがまんするようになり、その結果、ますます便秘がちになるといった、悪循環に陥りがちです。痔の薬は一般的にドラッグストアーなどでも購入できるので症状があらわれたらすぐに幹部に薬を塗って治療を開始したほうが早く改善します。内側の痔、便が硬い場合の痔の薬 | 通販、薬局、ドラッグストアーで購入できる薬痔の治療を開始すると同時に便秘の改善にも力を入れます。
便秘は高血圧の原因になり、便秘を治しただけで血圧が下がったという詰も耳にします。便秘のために悪玉菌が腐敗発酵をしてアミン類を作りだし、それが自律神経の働きを乱しているのではないかと考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。
長寿村のお年寄りの便を調べると、ビフィズス菌などの善玉の腸内細菌が多く、悪玉菌が少ないといいます。動脈硬化を予防し、脳卒中や心筋梗塞を未然に防いで長寿を保つには、善玉菌をふやすことがたいせつなようです。そのためにも便秘を治し、日ごろから便通をととのえておくことは重要です。便秘気味で肩こり、腹痛などを合併している際には、漢方薬の大柴胡湯(だいさいことう)がおすすめです。