赤髯(ひげ)で背中のかがんだ、鳥を捕る人、名脇役だにゃぁ、『銀河鉄道の夜』。
っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその77』だよん。(^
^;
「わっしはすぐそこで降ります。わっしは、鳥をつかまえる商売でね。」
「何鳥ですか。」
「鶴や雁(かり)です。さぎも白鳥もです。」
「鶴はたくさんいますか。」
「居ますとも、さっきから鳴いてまさあ。聞かなかったのですか。」
「いいえ。」
「いまでも聞えるじゃありませんか。そら、耳をすまして聴いてごらんなさい。」
二人は眼を挙げ、耳をすましました。ごとごと鳴る汽車のひびきと、すすきの風との間から、
ころんころんと水の湧くような音が聞えて来るのでした。
「鶴、どうしてとるんですか。」
「鶴ですか、それとも鷺(さぎ)ですか。」
「鷺です。」ジョバンニは、どっちでもいいと思いながら答えました。
「そいつはな、雑作ない。さぎというものは、みんな天の川の砂が凝(こご)って、ぼおっとでき
るもんですからね、そして始終川へ帰りますからね、川原で待っていて、鷺がみんな、脚をこ
ういう風にして下りてくるとこを、そいつが地べたへつくかつかないうちに、ぴたっと押えちまう
んです。するともう鷺は、かたまって安心して死んじまいます。あとはもう、わかり切ってまさあ。
押し葉にするだけです。」
「鷺を押し葉にするんですか。標本ですか。」
「標本じゃありません。みんなたべるじゃありませんか。」
「おかしいねえ。」カムパネルラが首をかしげました。
(丸写しオシマイ)
『賢治童話を丸写しシリーズその77』でした。
ps.鳥を捕る人が一番、ファンタジーだなや。
『銀河鉄道の夜 』の漫画の紹介
①片山愁:銀河鉄道の夜(角川書店)
②ますむらひろし:ますむら版宮沢賢治童話集(朝日ソノラマ)
③永島慎二:銀河鉄道の夜(NHK出版)
④松田一輝:文芸まんがシリーズ15銀河鉄道の夜(ぎょうせい)
◆一等賞は、松田一輝、だにゃぁ。(^
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松田一輝の漫画版『銀河鉄道の夜』は、鳥を捕る人、いんだにゃあ。
①片山愁は、淋しい。ずうっと、ひたすら淋しい。
カムパネルラのキャラはとてもいい。家庭教師と女の子のかほると弟のタダシもいい。
鷺の舞い降りるシーンはなかなかいい。
ジョバンニのキャラ、いくにゃい。
鳥を捕る人、せっかくの名脇役が淋し過ぎる。
『赤ひげの人は、なにかなつかしそうにわらいながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを
見ていました。』っつー宮沢賢治クンの文章を無視しちゃってるんだもん。
人物に動きが感じられにゃい。セリフの内容がじぇんじぇん漫画してにゃいので絵の中に入
って行けにゃい。淋しくにゃいシーンが輝いてにゃいので、単調。
②ますむらひろしは、例によって、猫クンたちが登場人物を演ずるマニアックな漫画。
えー、ずるい云い方だども、片山愁のあとに読むと、いんだなや。
絵になるものはなんでも、精一杯、ファンタジーさせてる。う~ん、エライ!おかげで絵の中
にスーっと入って行ける、こういうのが漫画なんだよなぁ。
片山愁ちゃんのおかげで、ますむらひろしクンを、ちょっとほめ過ぎちゃったにゃぁ。
片山愁ちゃんありがと。(^ ^; そして、片山愁ちゃん、ごみんね。(^
^;
③永島慎二は、192ページ書き下ろしオールカラーだもんね、気合い入っちょるけんね。
でも、さすが永島慎二、気合い入っちょっても、キャラも背景もユルユル。このユルユルが、
いんだにゃぁ。ヘタウマ・タッチ、いんだにゃぁ。
あとがきに苦労話があっても、絵にはちっとも苦労出てにゃい。
192ページオールカラーでも、読んでて、くどくにゃい、疲れにゃい。
ジョバンニのキャラ、いんだにゃぁ。カムパネルラ、いんだにゃぁ。女の子のかほるの別れの
シーン、いんだにゃぁ。
でも、鳥を捕る人、キャラが濃過ぎる、いくにゃい。燈台守のキャラも凡庸だにゃぁ。
あとがきの最後に、参考文献として、ますむらひろし『銀河鉄道の夜』とアニメ『銀河鉄道の
夜』が載っていた。年下の漫画家に敬意を表する永島慎二、エライ!
ps.ますむらひろしの猫キャラ版アニメ『銀河鉄道の夜』は、単調で、ずうっと淋しいアニメな
のら。がっかりしちゃったにゃぁ。
④松田一輝は、『セロ弾きのゴーシュ』に続いて二度目の登場。
なんつっても、鳥を捕る人、サイコー!
ファンタジー・ゾーンへ、軽やか・まろやか・あざやかテイストにワープしてくれちゃってるのら。
ジョバンニの嫉妬がいい!少年時によくある親友カムパネルラに対するホモ・セクシュアルな
あこがれ・独占欲・嫉妬がわかりやすいのら。でもジョバンニくん、涙のシーン多過ぎるにゃぁ。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』は、むずかしくってゆぐわがらない、っつーアホな読者(ボクのこ
とです)は、松田一輝の『銀河鉄道の夜』を読んで見ろてばよぉ。(^
^;
っつーことで、『銀河鉄道の夜』の漫画版、松田一輝の、鳥を捕る人、が良かたい。(^
^;
ps2.松本零士『銀河鉄道999』は、当然、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』にインスパイアされて
創られた傑作漫画。のちにアニメ化されてゴダイゴの主題歌とともに大ヒットしたにゃぁ。
漫画やアニメ『銀河鉄道999』に感動して、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読んだら、むず
かしくってがっかりしちゃった人(ボクのことです)もいると思うけど、『銀河鉄道999』は、
「死」と「永遠の命」をテーマにした傑作SFファンタジー漫画なんだずら。
『銀河鉄道の夜』では、カムパネルラにホモ・セクシュアルなあこがれを抱くジョバンニを、
『銀河鉄道999』では、謎の美女メーテルにあこがれる鉄郎に置き換えてあるので、アホ
な読者(ボクのことです)にもわかりやすいのら。
っつーことで、松本零士『銀河鉄道999』が、多くの若者に宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を
知らしめた功績は誠に多大であるにゃぁ。(^
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「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」
さめざめ:【そして青い橄欖(かんらん)の森が見えない天の川の向うにさめざめと光りなが
らだんだんうしろの方へ行ってしまいそこから流れて来るあやしい楽器の音もも
う汽車のひびきや風の音にすり耗らされてずうっとかすかになりました。】
さめざめ、っつーの、「さめざめと泣く」って云う風にしか使わないよね、フツー。(^
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***** 『銀河鉄道の夜』のオノマトペ ***** .
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①ぼんやり:【「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われ
たりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」】
②はっきり:【ジョバンニは勢いよく立ちあがりましたが、立って見るともうはっきりとそれを答え
ることができないのでした。】
③くすっ:【ザネリが前の席からふりかえって、ジョバンニを見てくすっとわらいました。】
④どぎまぎ:【ジョバンニはもうどぎまぎしてまっ赤になってしまいました。】
⑤やっぱり:【やっぱり星だとジョバンニは思いましたがこんどもすぐに答えることができません
でした。】
⑥もじもじ:【するとあんなに元気に手をあげたカムパネルラが、もじもじ立ち上ったままやはり
答えができませんでした。】
⑦やはり:【するとあんなに元気に手をあげたカムパネルラが、もじもじ立ち上ったままやはり
答えができませんでした。】
⑧じっ:【先生は意外なようにしばらくじっとカムパネルラを見ていましたが、急いで「では。よ
し。」と云いながら、自分で星図を指しました。】
⑨はきはき:【それをカムパネルラが忘れる筈もなかったのに、すぐに返事をしなかったのは、
このごろぼくが、朝にも午后にも仕事がつらく、学校に出てももうみんなともはきはき
遊ばず、カムパネルラともあんまり物を云わないようになったので、カムパネルラが
それを知って気の毒がってわざと返事をしなかったのだ、そう考えるとたまらないほ
ど、じぶんもカムパネルラもあわれなような気がするのでした。】
⑩ぼうっ:【「こっちやこっちの方はガラスが厚いので、光る粒即ち星がたくさん見えその遠いの
はぼうっと白く見えるというこれがつまり今日の銀河の説なのです。」】
⑪きちん:【そして教室中はしばらく机の蓋をあけたりしめたり本を重ねたりする音がいっぱいで
したがまもなくみんなはきちんと立って礼をすると教室を出ました。】
⑫どしどし:【けれどもジョバンニは手を大きく振ってどしどし学校の門を出て来ました。】
⑬ばたりばたり:【中にはまだ昼なのに電燈がついてたくさんの輪転器がばたりばたりとまわり、
きれで頭をしばったりランプシェ-ドをかけたりした人たちが、何か歌うように読んだ
り数えたりしながらたくさん働いて居りました。】
⑭だんだん:【ジョバンニは何べんも眼を拭いながら活字をだんだんひろいました。】
⑮ずうっ:【「わたしはずうっと工合がいいよ。」】
⑯ゆっくり:【「ああ、あたしはゆっくりでいいんだからお前さきにおあがり。姉さんがね、トマトで
何かこしらえてそこへ置いて行ったよ。」】
⑰むしゃむしゃ:【ジョバンニは窓のところからトマトの皿をとってパンといっしょにしばらくむしゃ
むしゃたべました。】
⑱きっ:【「ねえお母さん。ぼくお父さんはきっと間もなく帰ってくると思うよ。」】
⑲しいん:【「いまも毎朝新聞をまわしに行くよ。けれどもいつでも家中まだしいんとしているから
な。」】
⑳もっ:【「ザウエルという犬がいるよ。しっぽがまるで箒のようだ。ぼくが行くと鼻を鳴らしてつい
てくるよ。ずうっと町の角までついてくる。もっとついてくることもあるよ。」】
21どんどん:【ジョバンニが、どんどん電燈の方へ下りて行きますと、いままでばけもののように、
長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影ぼうしは、だんだん濃く黒くはっきり
なって、足をあげたり手を振ったり、ジョバンニの横の方へまわって来るのでした。】
22くるっ:【(そうら、こんどはぼくの影法師はコンパスだ。あんなにくるっとまわって、前の方へ来
た。)】
23ひらっ:【とジョバンニが思いながら、大股にその街燈の下を通り過ぎたとき、いきなりひるま
のザネリが、新らしいえりの尖ったシャツを着て電燈の向う側の暗い小路から出て来
て、ひらっとジョバンニとすれちがいました。】
24ばっ:【ジョバンニは、ばっと胸がつめたくなり、そこら中きぃんと鳴るように思いました。】
25きぃん:【そこら中きぃんと鳴るように思いました。】
26すっかり:【ジョバンニは、せわしくいろいろのことを考えながら、さまざまの灯や木の枝で、す
っかりきれいに飾られた街を通って行きました。】
27くるっくるっ:【時計屋の店には明るくネオン燈がついて、一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤
い眼が、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石が海のような色をした厚い硝子の
盤に載って星のようにゆっくりめぐったり、また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっち
へまわって来たりするのでした。】
28ぼう:【それはひる学校で見たあの図よりはずうっと小さかったのですがその日と時間に合せ
て盤をまわすと、そのとき出ているそらがそのまま楕円形のなかにめぐってあらわれ
るようになって居りやはりそのまん中には上から下へかけて銀河がぼうとけむったよ
うな帯になってその下の方ではかすかに爆発して湯気でもあげているように見えるの
でした。】
29ぎっしり:【ほんとうにこんなような蝎(さそり)だの勇士だのそらにぎっしりいるだろうか、ああぼ
くはその中をどこまでも歩いて見たいと思ってたりしてしばらくぼんやり立っていまし
た。】
30そろそろ:【するとしばらくたってから、年老った女の人が、どこか工合が悪いようにそろそろ
と出て来て何か用かと口の中で云いました。】
31どきっ:【ジョバンニは思わずどきっとして戻ろうとしましたが、思い直して、一そう勢よくそっち
へ歩いて行きました。】
32わああ:【すると耳に手をあてて、わああと云いながら片足でぴょんぴょん跳んでいた小さな子
供らは、ジョバンニが面白くてかけるのだと思ってわあいと叫びました。】
33ぴょんぴょん:【片足でぴょんぴょん跳んでいた小さな子供らは、ジョバンニが面白くてかける
のだと思ってわあいと叫びました。】
34わあい:【ジョバンニが面白くてかけるのだと思ってわあいと叫びました。】
35きれぎれ:【ジョバンニは橋の上でとまって、ちょっとの間、せわしい息できれぎれに口笛を吹
きながら泣きだしたいのをごまかして立っていましたが、にわかにまたちからいっぱい
走りだして、黒い丘の方へいそぎました。】
36ぴかぴか:【草の中には、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、ある葉は青くすかし出さ
れ、ジョバンニは、さっきみんなの持って行った烏瓜(からすうり)のあかりのようだとも思
いました。】
37がらん:【そのまっ黒な、松や楢の林を越えると、俄かにがらんと空がひらけて、天の川がしら
じらと南から北へわたっているのが見え、また頂の、天気輪の柱も見わけられたので
した。】
38しらじら:【天の川がしらじらと南から北へわたっているのが見え、また頂の、天気輪の柱も見
わけられたのでした。】
39どかどか:【ジョバンニは、頂の天気輪の柱の下に来て、どかどかするからだを、つめたい草
に投げました。】
40ちらちら:【そしてジョバンニは青い琴の星が、三つにも四つにもなって、ちらちら瞬(またた)き、
脚が何べんも出たり引っ込んだりして、とうとう蕈(きのこ)のように長く延びるのを見まし
た。】
41ぺかぺか:【そしてジョバンニはすぐうしろの天気輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形に
なって、しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしているのを見ました。】
42とうとう:【それはだんだんはっきりして、とうとうりんとうごかないようになり、濃い鋼青のそらの
野原にたちました。】
43りん:【それはだんだんはっきりして、とうとうりんとうごかないようになり、濃い鋼青のそらの野
原にたちました。】
44すきっ:【いま新らしく灼いたばかりの青い鋼の板のような、そらの野原に、まっすぐにすきっと
立ったのです。】
45ぱっ:【するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステ-ション、銀河ステ-ションと云う声がしたと思
うといきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊(ほたるいか)の火を一ぺ
んに化石させて、そら中に沈めたという工合、またダイアモンド会社で、ねだんがやすく
ならないために、わざと穫(と)れないふりをして、かくして置いた金剛石を、誰かがいき
なりひっくりかえして、ばら撒いたという風に、眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニ
は、思わず何べんも眼を擦(こす)ってしまいました。】
46さあっ:【またダイアモンド会社で、ねだんがやすくならないために、わざと穫(と)れないふりをし
て、かくして置いた金剛石を、誰かがいきなりひっくりかえして、ばら撒いたという風に、
眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも眼を擦(こす)ってしまい
ました。】
47ごとごとごとごと:【気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、ジョバンニの乗っている小
さな列車が走りつづけていたのでした。】
48ぐるぐる:【そして、カムパネルラは、円い板のようになった地図を、しきりにぐるぐるまわして見
ていました。】
49さらさらさらさら:【そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまる
でいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。】
50こつこつ:【ジョバンニは云いながら、まるではね上りたいくらい愉快になって、足をこつこつ鳴
らし、窓から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛を吹きながら一生けん命延びあがっ
て、その天の川の水を、見きわめようとしましたが、はじめはどうしてもそれが、はっき
りしませんでした。】
51ぎらっ:【虹のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちに
もこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立っていたのです。】
52どきどき:【ジョバンニは、まるでどきどきして、頭をやけに振りました。】
53ごうごう:【するとちょうど、それに返事をするように、どこか遠くの遠くのもやの中から、セロの
ようなごうごうした声がきこえて来ました。】
54ごとごと:【「ここの汽車は、スティームや電気でうごいていない。ただうごくようにきまっているか
らうごいているのだ。ごとごと音をたてていると、そうおまえたちは思っているけれども、
それはいままで音をたてる汽車にばかりなれているためなのだ。」】
55さっ:【向う岸も、青じろくぽうっと光ってけむり、時々、やっぱりすすきが風にひるがえるらしく、
さっとその銀いろがけむって、息でもかけたように見え、また、たくさんのりんどうの花
が、草をかくれたり出たりするのは、やさしい狐火のように思われました。】
56ざわざわ:【それもほんのちょっとの間、川と汽車との間は、すすきの列でさえぎられ、白鳥の島
は、二度ばかり、うしろの方に見えましたが、じきもうずうっと遠く小さく、絵のようになっ
てしまい、またすすきがざわざわ鳴って、とうとうすっかり見えなくなってしまいました。】
57かっきり:【「ああ、十一時かっきりには着くんだよ。」】
58ちらっ:【早くも、シグナルの緑の燈と、ぼんやり白い柱とが、ちらっと窓のそとを過ぎ、それから
硫黄のほのおのようなくらいぼんやりした転てつ機の前のあかりが窓の下を通り、汽車
はだんだんゆるやかになって、間もなくプラットホ-ムの一列の電燈が、うつくしく規則
正しくあらわれ、それがだんだん大きくなってひろがって、二人は丁度白鳥停車場の、
大きな時計の前に来てとまりました。】
59くっきり:【さわやかな秋の時計の盤面には、青く灼かれたはがねの二本の針が、くっきり十一
時を指しました。】
60きしきし:【カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、手のひらにひろげ、指できしきしさせ
ながら、夢のように云っているのでした。】
61くしゃくしゃ:【河原の小石は、みんなすきとおって、たしかに水晶や黄玉や、またくしゃくしゃの
皺曲(しゅうきょく)
をあらわしたのや、また稜から霧のような青白い光を出す鋼玉やらでし
た。】
62ピカッ:【そこに小さな五六人の人かげが、何か堀り出すか埋めるかしているらしく、立ったりか
がんだり、時々なにかの道具が、ピカッと光ったりしました。】
63つるつる:【その白い岩になった所の入口に、〔プリオシン海岸〕という、瀬戸物のつるつるした
標札が立って、向うの渚には、ところどころ、細い鉄の欄干も植えられ、木製のきれい
なベンチも置いてありました。】
64ぎざぎざ:【二人は、ぎざぎざの黒いくるみの実を持ちながら、またさっきの方へ近よって行きま
した。】
65きらっ:【「君たちは参観かね。」その大学士らしい人が、眼鏡をきらっとさせて、こっちを見て話
しかけました。】
66がさがさ:【がさがさした、けれども親切そうな、大人の声が、二人のうしろで聞えました。】
67ぼろぼろ:【それは、茶いろの少しぼろぼろの外套を着て、白い巾でつつんだ荷物を、二つに分
けて肩に掛けた、赤髯のせなかのかがんだ人でした。】
68おずおず:【赤ひげの人が、少しおずおずしながら、二人に訊きました。】
69ぴくぴく:【ところがその人は別に怒ったでもなく、頬をぴくぴくしながら返事しました。】
70ころんころん:【ころんころんと水の湧くような音が聞えて来るのでした。】
71ぼおっ:【「さぎというものは、みんな天の川の砂が凝(こご)って、ぼおっとできるもんですからね、
そして始終川へ帰りますからね、川原で待っていて、鷺がみんな、脚をこういう風にして
下りてくるとこを、そいつが地べたへつくかつかないうちに、ぴたっと押えちまうんです。」】
72ぴたっ:【「鷺がみんな、脚をこういう風にして下りてくるとこを、そいつが地べたへつくかつかな
いうちに、ぴたっと押えちまうんです。」】
73くるくる:【その男は立って、網棚から包みをおろして、手ばやくくるくると解きました。】
74そっ:【カムパネルラは、指でそっと、鷺の三日月がたの白いつぶった眼にさわりました。】
75ちゃん:【頭の上の槍のような白い毛もちゃんとついていました。】
76ずっ:【「雁の方がずっと柄がいいし、第一手数がありませんからな。」】
77ぽくぽく:【(なんだ、やっぱりこいつはお菓子だ。チョコレ-トよりも、もっとおいしいけれども、こ
んな雁が飛んでいるもんか。この男は、どこかそこらの野原の菓子屋だ。けれどもぼく
は、このひとをばかにしながら、この人のお菓子をたべているのは、大へん気の毒だ。)
とおもいながら、やっぱりぽくぽくそれをたべていました。】
78ばさばさ:【「わたしぁ、べらぼうめ、そんな苦情は、おれのとこへ持って来たって仕方がねえや、
ばさばさのマントを着て脚と口との途方もなく細い大将へやれって、こう云ってやりまし
たがね、はっは。」】
79にやにや:【二人は顔を見合せましたら、燈台守は、にやにや笑って、少し伸びあがるようにし
ながら、二人の横の窓の外をのぞきました。】
80ぎゃあぎゃあ:【「汽車が走って行かないうちに、早く鳥がおりるといいな。」と云ったとたん、がら
んとした桔梗いろの空から、さっき見たような鷺が、まるで雪の降るように、ぎゃあぎゃ
あ叫びながら、いっぱいに舞いおりて来ました。】
81ほくほく:【するとあの鳥捕りは、すっかり注文通りだというようにほくほくして、両足をかっきり六
十度に開いて立って、鷺のちぢめて降りて来る黒い脚を両手で片っ端から押えて、布の
袋の中に入れるのでした。】
82せいせい:【「ああせいせいした。どうもからだに恰度合うほど稼いでいるくらい、いいことはあり
ませんな。」】
83すっ:【それがまただんだん横へ外れて、前のレンズの形を逆に繰り返し、とうとうすっとはなれ
て、サファイアは向うへめぐり、黄いろのはこっちへ進み、また丁度さっきのような風に
なりました。銀河の、かたちもなく音もない水にかこまれて、ほんとうにその黒い測候所
が、睡っているように、しずかによこたわったのです。】
84くっくっ:【「何だかわかりません。」もう大丈夫だと安心しながらジョバンニはそっちを見あげてく
っくっ笑いました。】
85つやつや:【そしたら俄かにそこに、つやつやした黒い髪の六つばかりの男の子が赤いジャケ
ツのぼたんもかけずひどくびっくりしたような顔をしてがたがたふるえてはだしで立って
いました。】
86がたがた:【赤いジャケツのぼたんもかけずひどくびっくりしたような顔をしてがたがたふるえて
はだしで立っていました。】
87しっかり:【隣りには黒い洋服をきちんと着たせいの高い青年が一ぱいに風に吹かれているけ
やきの木のような姿勢で、男の子の手をしっかりひいて立っていました。】
88しくしく:【女の子は、いきなり両手を顔にあててしくしく泣いてしまいました。】
89ずんずん:【そのうち船はもうずんずん沈みますから、私はもうすっかり覚悟してこの人たち二
人を抱いて、浮べるだけは浮ぼうとかたまって船の沈むのを待っていました。】
90ぐったり:【そしてあの姉弟はもうつかれてめいめいぐったり席によりかかって睡っていました。】
91つくづく:【「どうもありがとう。どこでできるのですか。こんな立派な苹果(りんご)は。」青年はつく
づく見ながら云いました。】
92ぱっちり:【にわかに男の子がぱっちり眼をあいて云いました。】
93にこにこにこにこ:【「ああぼくいまお母さんの夢をみていたよ。お母さんがね立派な戸棚や本の
あるとこに居てね、ぼくの方を見て手をだしてにこにこにこにこわらったよ。」】
94すうっ:【また折角剥いたそのきれいな皮も、くるくるコルク抜きのような形になって床へ落ちるま
での間にはすうっと、灰いろに光って蒸発してしまうのでした。】
95ぞくっ:【青年はぞくっとしてからだをふるうようにしました。】
96ぴん:【「かささぎですねえ、頭のうしろのとこに毛がぴんと延びてますから。」青年はとりなすよう
に云いました。】
97さめざめ:【そして青い橄欖(かんらん)の森が見えない天の川の向うにさめざめと光りながらだん
だんうしろの方へ行ってしまいそこから流れて来るあやしい楽器の音ももう汽車のひび
きや風の音にすり耗らされてずうっとかすかになりました。】
98さっさっ:【ジョバンニはその小さく小さくなっていまはもう一つの緑いろの貝ぼたんのように見え
る森の上にさっさっと青じろく時々光ってその孔雀がはねをひろげたりとじたりする光の
反射を見ました。】
99ゆらゆら:【見えない天の川の水もそのときはゆらゆらと青い炎のように波をあげるのでした。】
100いらいら:【ジョバンニはまるでたまらないほどいらいらしながらそれでも堅く唇を噛んで、こらえ
て窓の外を見ていました。】
101ざあっ:【すると空中にざあっと雨のような音がして何かまっくらなものがいくかたまりもいくかた
まりも鉄砲丸のように川の向うの方へ飛んで行くのでした。】
102ぴしゃぁん:【それと同時にぴしゃぁんという潰れたような音が川下の方で起ってそれからしば
らくしいんとしました。】
103ほっ:【女の子は小さくほっと息をしてだまって席へ戻りました。】
104さやさや:【それはだんだん数を増して来て、もういまは列のように崖と線路との間にならび、
思わずジョバンニが窓から顔を引っ込めて向う側の窓を見ましたときは、美しいそらの
野原の地平線のはてまで、その大きなとうもろこしの木が、ほとんどいちめんに植えら
れて、さやさや風にゆらぎ、その立派なちぢれた葉のさきからは、まるでひるの間にい
っぱい日光を吸った金剛石のように、露がいっぱいについて、赤や緑やきらきら燃え
て光っているのでした。】
105きらきら:【その立派なちぢれた葉のさきからは、まるでひるの間にいっぱい日光を吸った金剛
石のように、露がいっぱいについて、赤や緑やきらきら燃えて光っているのでした。】
106カチッカチッ:【その振子は、風もなくなり汽車もうごかず、しずかなしずかな野原のなかに、カ
チッカチッと正しく時を刻んで行くのでした。】
107うっとり:【姉は弟を自分の胸によりかからせて眠らせながら、黒い瞳をうっとりと遠くへ投げ
て、何を見るでもなしに考え込んでいるのでしたし、カムパネルラはまださびしそうにひ
とり口笛を吹き、男の子はまるで絹で包んだ苹果(りんご)のような顔いろをしてねむっ
て居りました。】
108ふらふら:【そこから一羽の鶴がふらふらと落ちて来て、また走り出したインデアンの大きくひ
ろげた両手に落ちこみました。】
109きらっきらっ:【そしてその鶴をもってこっちを見ている影も、もうどんどん小さく遠くなり、電し
んばしらの碍子(がいし)がきらっきらっと続いて二つばかり光って、またとうもろこしの林
になってしまいました。】
110どんどんどんどん:【どんどんどんどん汽車は降りて行きました。】
111しょんぼり:【汽車が小さな小屋の前を通って、その前にしょんぼりひとりの子供が立ってこっ
ちを見ているときなどは、思わず、ほう、と叫びました。】
112ほう:【その前にしょんぼりひとりの子供が立ってこっちを見ているときなどは、思わず、ほう、
と叫びました。】
113どぉ:【その時向う岸ちかくの、少し下流の方で見えない天の川の水がぎらっと光って、柱の
ように高くはねあがり、どぉと烈しい音がしました。】
114ギーギーフーギーギーフー:【「それから彗星(ほうきぼし)が、ギーギーフーギーギーフーて云っ
て来たねえ。」】
115そわそわ:【カムパネルラのとなりの女の子はそわそわ立って支度をはじめました。】
116きちっ:【「ここでおりなけぁいけないのです。」青年はきちっと口を結んで男の子を見おろし
ながら云いました。】
117さんさん:【ただたくさんのくるみの木が葉をさんさんと光らしてその霧の中に立ち、黄金(きん)
の円光をもった電気栗鼠(でんきりす)が、可愛い顔をその中からちらちらのぞかしてい
るだけでした。】
118ぽかっ:【そして二人がそのあかしの前を通って行くときは、その小さな豆いろの火はちょうど
挨拶でもするようにぽかっと消え、二人が過ぎて行くときまた点くのでした。】
119ふう:【「僕たちしっかりやろうねえ。」ジョバンニが胸いっぱい新らしい力が湧くように、ふうと
息をしながら云いました。】
120ぎくっ:【ジョバンニはそっちを見て、まるでぎくっとしてしまいました。】
121どほん:【天の川の一とこに大きなまっくらな穴が、どほんとあいているのです。】
122しんしん:【その底がどれほど深いか、その奥に何があるか、いくら眼をこすってのぞいてもな
んにも見えず、ただ目がしんしんと痛むのでした。】
123はっ:【ジョバンニは、はっと思って涙をはらってそっちをふり向きました。】
124ぞくぞく:【「さがすと証拠もぞくぞく出ている。」】
125いっさん:【ジョバンニはいっさんに丘を走っておりました。】
126うっかり:【「ほんとうに、済みませんでした。今日はひるすぎうっかりしてこうしの柵をあけて置
いたもんですから大将早速親牛のところへ行って半分ばかり呑んでしまいましてね…
…」その人はわらいました。】
127ひそひそ:【ところがその十字になった町かどや店の前に、女たちが七八人ぐらいずつ集まっ
て、橋の方を見ながら何かひそひそ話しているのです。】
128わくわくわくわく:【ジョバンニはわくわくわくわく足がふるえました。】
129きっぱり:【けれども俄かにカムパネルラのお父さんがきっぱり云いました。】
130しげしげ:【すると博士はジョバンニが挨拶に来たとでも思ったものですか、しばらくしげしげジ
ョバンニを見ていましたが、「あなたはジョバンニさんでしたね。どうも今晩はありがと
う。」とていねいに云いました。】
『銀河鉄道の夜』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝
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2006.6.24.
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