ブルカニロ博士が印象的だにゃぁ、『銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕』。
っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその73』だよん。(^
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「ああマジェランの星雲だ。さあもうきっと僕は僕のために、僕のお母さんのために、カムパネ
ルラのためにみんなのためにほんとうのほんとうの幸福をさがすぞ。」ジョバンニは唇を噛んで
そのマジェランの星雲をのぞんで立ちました。そのいちばん幸福なそのひとのために!
「さあ、切符をしっかり持っておいで。お前はもう夢の鉄道の中でなしに本当の世界の火やは
げしい波の中を大股にまっすぐに歩いて行かなければいけない。天の川のなかでたった一つ
のほんとうのその切符を決しておまえはなくしてはいけない。」
あのセロのような声がしたと思
うとジョバンニはあの天の川がもうまるで遠く遠くなって風が吹き自分はまっすぐに草の丘に立
っているのを見また遠くからあのブルカニロ博士の足おとのしずかに近づいて来るのをききま
した。
「ありがとう。私は大へんいい実験をした。私はこんなしずかな場所で遠くから私の考(かんがえ)
を人に伝える実験をしたいとさっき考えていた。お前の云った語(ことば)はみんな私の手帳にとっ
てある。さあ帰っておやすみ。お前は夢の中で決心したとおりまっすぐに進んで行くがいい。そ
してこれから何でもいつでも私のとこへ相談においでなさい。」
「僕きっとまっすぐに進みます。きっとほんとうの幸福を求めます。」
ジョバンニは力強く云い
ました。
(丸写しオシマイ)
『賢治童話を丸写しシリーズその73』でした。
『銀河鉄道の夜〔初期形〕ブルカニロ博士篇』の漫画の紹介
@ますむらひろし:ますむら版宮沢賢治童話集(朝日ソノラマ)
◆リラックスが足りないにゃぁ。(^
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ますむらひろしの漫画版『銀河鉄道の夜〔初期形〕ブルカニロ博士篇』は、リラックスしてないのら。
ますむらひろしは、例によって、猫クンたちが登場人物を演ずるマニアックな漫画。
ますむらひろしは、もちろん『銀河鉄道の夜〔最終稿〕』も、漫画化してます。マニアックだなや。
両方比べて見ると、このブルカニロ博士篇の方が後から描いてるだなや、たぶん。
ブルカニロ博士篇では、むだなオノマトペをはぶいたり、脇役陣のキャラも変更したり、カット
割りも構図もビミョーに変えたり、頑張ってるんだなや。
ますむらひろしのマニアック、エライ!
で、面白いのか?って、はっきし云って、つまんね、だなや。(^
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しいてほめれば、家庭教師クンの表情がちょこっといいのら。
くどいようだが、ボクは、ますむらひろしの『アタゴオル』の大大大ファンなのら。
なかでも『アタゴオル玉手箱』のファンタジー&リラックス&解放感がたまらなく好きなのら。
ますむらひろしクン、宮沢賢治クンにキンチョーしちゃってるだなや、たぶん。
っつーことで、『銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕』の漫画版、ますむらひろし、マニアックだなや。(^
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「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」
ギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−:【「それから彗星(ほうきぼし)がギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−て云って
来たねえ。」】
ギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−、っつーのじぇったい使わんけど、風変わりでいんでねけ?
***** 『銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕』のオノマトペ *****
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@だんだん:【(そら、ぼくの影法師は、だんだんみじかくなって、ぼくへ追いついて来る。じきにす
っかりちぢまってしまうぞ。)】
Aすっかり:【(じきにすっかりちぢまってしまうぞ。)】
Bどんどん:【ほんとうにジョバンニが、どんどん電燈の方へ下りて行きますと、いままでばけもの
のように、長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影ぼうしは、だんだん濃く黒
くはっきりなって、足をあげたり手を振ったり、ジョバンニの横の方へまわって来るので
した。】
Cぼんやり:【いままでばけもののように、長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影ぼうし
は、だんだん濃く黒くはっきりなって、足をあげたり手を振ったり、ジョバンニの横の方へ
まわって来るのでした。】
Dはっきり:【長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影ぼうしは、だんだん濃く黒くはっきり
なって、足をあげたり手を振ったり、ジョバンニの横の方へまわって来るのでした。】
Eしゅっしゅっ:【(ぼくはまるで軽便鉄道の機関車だ。ここは勾配だからこんなに速い。ぼくはいま
その電燈を通り越す。しゅっしゅっ。)】
Fくるっ:【(そら、こんどはぼくの影法師はコムパスだ。あんなにくるっとまわって、前の方へ来
た。)】
Gひらっ:【とジョバンニが思いながら、大股にその街燈の下を通り過ぎたとき、いきなり一人の顔
の赤い、新らしいえりの尖ったシャツを着た小さな子が、電燈の向う側の暗い小路(こうじ)
から出て来て、ひらっとジョバンニとすれちがいました。】
Hばっ:【ジョバンニは、ばっと胸がつめたくなり、そこら中きぃんと鳴るように思いました。】
Iきぃん:【そこら中きぃんと鳴るように思いました。】
Jぼろぼろ:【ですから今夜だって、みんなが町の広場にあつまって、一緒に星めぐりの歌をうたっ
たり、川へ青い烏瓜のあかしを流したりする、たのしいケンタウル祭なのに、ジョバンニは
ぼろぼろのふだん着のままで、病気のおっかさんの牛乳の配られて来ないのをとりに、
下の町はずれまで行くのでした。】
Kにこにこ:【去年の夏、帰って来たときだって、ちょっと見たときはびっくりしたけれども、ほんとうは
にこにこわらって、それにあの荷物を解いたときならどうだ、鮭の皮でこさえた大きな靴だ
の、となかいの角だの、どんなにぼくは、よろこんではねあがって叫んだかしれない。】
Lくるっくるっ:【時計屋の店には明るくネオン燈がついて、一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤い
眼が、くるっくるっとうごいたり、眩(まばゆ)いプラチナや黄金(きん)の鎖だの、いろいろな宝
石のはいった指環(ゆびわ)だのが、海のような色をした厚い硝子(ガラス)の盤に載ってゆっ
くり循(めぐ)ったり、また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりするのでし
た。】
Mゆっくり:【また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりするのでした。】
Nしぃん:【その牛乳屋の黒い門を入り、牛の匂(におい)のするうすくらい台所の前に立って、ジョバン
ニは帽子をぬいで「今晩は、」と云いましたら、家の中はしぃんとして誰も居たようではあり
ませんでした。】
Oしげしげ:【下女は着物のふちで赤い眼の下のとこを擦(こす)りながら、しげしげジョバンニを見て云
いました。】
Pどきっ:【ジョバンニは思わずどきっとして戻ろうとしましたが、思い直して、一そう勢よくそっちへ歩
いて行きました。】
Qわああ:【すると耳に手をあてて、わああと云いながら片足でぴょんぴょん跳(と)んでいた小さな子供
らは、ジョバンニが面白くてかけるのだと思ってわあいと叫びました。】
Rぴょんぴょん:【片足でぴょんぴょん跳(と)んでいた小さな子供らは、ジョバンニが面白くてかけるの
だと思ってわあいと叫びました。】
Sわあい:【ジョバンニが面白くてかけるのだと思ってわあいと叫びました。】
21ぼうっ:【そこには、河原のぼうっと白く見える、小さな川があって、細い鉄の欄干のついた橋がかか
っていました。】
22ぴかぴか:【草の中には、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、ある葉は青くすかし出され、ジョ
バンニは、さっきみんなの持って行った烏瓜のあかしのようだとも思いました。】
23がらん:【そのまっ黒な、松や楢の林を越えると、俄かにがらんと空がひらけて、天の川がしらしらと
南から北へ亘(わた)っているのが見え、また頂の、天気輪の柱も見わけられたのでした。】
24しらしら:【天の川がしらしらと南から北へ亘(わた)っているのが見え、また頂の、天気輪の柱も見わけ
られたのでした。】
25どかどか:【ジョバンニは、頂の天気輪の柱の下に来て、どかどかするからだを、つめたい草に投げ
ました。】
26きれぎれ:【町の灯は、暗の中をまるで海の底のお宮のけしきのようにともり、子供らの歌う声や口
笛、きれぎれの叫び声もかすかに聞えて来るのでした。】
27じっ:【ジョバンニはじっと天の川を見ながら考えました。】
28ちらちら:【あの青い琴の星さえ蕈(きのこ)のように脚(あし)が長くなって、三つにも四つにもわかれ、ち
らちら忙(せわ)しく瞬(またた)いたのでした。】
29がらん:【ところがいくら見ていても、そこは博士の云ったような、がらんとした冷たいとこだとは思わ
れませんでした。】
30ぺかぺか:【ジョバンニが、こう呟(つぶや)くか呟かないうちに、愕(おどろ)いたことは、いままでぼんやり
蕈(きのこ)のかたちをしていた、その青じろいひかりが、にわかにはっきりした三角標の形に
なって、しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしていましたが、とうとうりんとうご
かないようになって、濃い鋼青のそらの野原にたちました。】
31とうとう:【とうとうりんとうごかないようになって、濃い鋼青のそらの野原にたちました。】
32りん:【とうとうりんとうごかないようになって、濃い鋼青のそらの野原にたちました。】
33すきっ:【いま新らしく灼いたばかりの青い鋼の板のような、そらの野原に、まっすぐにすきっと立った
のです。】
34ごうごう:【するとちょうど、それに返事をするように、どこか遠くの遠くのもやの中から、セロのような
ごうごうした声がきこえて来ました。】
35ちゃん:【そしていよいよおかしいことは、その語(ことば)が、少しもショバンニの知らない語なのに、そ
の意味はちゃんとわかるのでした。】
36やっぱり:【(そうだ。やっぱりあれは、ほんとうの三角標だ。)】
37ひらひら:【(頂上には、白鳥の形を描いた測量旗だってひらひらしている。)】
38ぱっ:【いきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊(ほたるいか)の火を一ぺんに化石
させて、そら中に沈めたという工合、またダイアモンド会社で、ねだんがやすくならないため
に、わざと穫(と)れないふりをして、かくして置いた金剛石を、誰かがいきなりひっくりかえし
て、ばら撒いたという風に、眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも
眼を擦(こす)ってしまいました。】
39さあっ:【眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも眼を擦(こす)ってしまいました。】
40しらしら:【実にその光は、広い一本の帯になって、ところどころ枝を出したり、二つに岐(わか)れたりし
ながら、空の野原を北から南へ、しらしらと流れるのでした。】
41ずうっと:【すると、どこかずうっと遠くで、なにかが大へんよろこんで、手を拍(う)ったというような気が
しました。】
42ちらちら:【見ると、いまはもう、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、ときどき眼
の加減か、ちらちら紫いろのこまかな波をたてたり、虹のようにぎらっと光ったりしながら、声
もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立っ
ていたのです。】
43ぎらっ:【虹のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっ
ちにも、燐光の三角標が、うつくしく立っていたのです。】
44どきどき:【ジョバンニは、まるでどきどきして、頭をやけに振りました。】
45ごとごとごとごと:【ところが、ふと気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、ジョバンニの乗っ
ている小さな列車が走りつづけていたのでした。】
46ぐるぐる:【そして、カムパネルラは、円い板のようになった地図を、しきりにぐるぐるまわして見ていま
した。】
47さらさらさらさら:【そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるでいち
めん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。】
48こつこつ:【ジョバンニは云いながら、まるではね上りたいくらい愉快になって、足をこつこつ鳴らし、窓
から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛を吹きました。】
49ぼうっ:【見ると、もうじつに、金剛石や草の露やあらゆる立派さをあつめたような、きらびやかな銀河
の河床の上を水は声もなくかたちもなく流れ、その流れのまん中に、ぼうっと青白く後光の射
した一つの島が見えるのでした。】
50すきっ:【その島の平らないただきに、立派な眼もさめるような、白い十字架がたって、それはもう凍っ
た北極の雲で鋳(い)たといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに
永久に立っているのでした。】
51さっ:【時々、やっぱりすすきが風にひるがえるらしく、さっとその銀いろがけむって、息でもかけたよう
に見え、また、たくさんのりんどうの花が、草をかくれたり出たりするのは、やさしい狐火のよう
に思われました。】
52ざわざわ:【それもほんのちょっとの間、川と汽車との間は、すすきの列でさえぎられ、白鳥の島は、
二度ばかり、うしろの方に見えましたが、じきもうずうっと遠く小さく、絵のようになってしまい、
またすすきがざわざわ鳴って、とうとうすっかり見えなくなってしまいました。】
53じっ:【ジョバンニのうしろには、いつから乗っていたのか、せいの高い、黒いかつぎをしたカトリック風
の尼さんが、まん円な緑の瞳を、じっとまっすぐに落して、まだ何かことばか声かが、そっちか
ら伝わって来るのを、虔(つつし)んで聞いているというように見えました。】
54きしきし:【カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌にひろげ、指できしきしさせながら、夢の
ように云っているのでした。】
55くしゃくしゃ:【河原の礫(こいし)は、みんなすきとおって、たしかに水晶や黄玉や、またくしゃくしゃの皺曲
(しゅうきょく)をあらわしたのや、また稜(かど)から霧のような青白い光を出す鋼玉やらでした。】
56もっ:【けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのです。】
57ちらちら:【それでもたしかに流れていたことは、二人の手首の、水にひたったとこが、少し水銀いろ
に浮いたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、うつくしい燐光をあげて、ちらち
らと燃えるように見えたのでもわかりました。】
58ピカッ:【そこに小さな五六人の人かげが、何か堀り出すか埋めるかしているらしく、立ったり屈(かが)
んだり、時々なにかの道具が、ピカッと光ったりしました。】
59つるつる:【〔プリオシン海岸〕という、瀬戸物のつるつるした標札が立って、向うの渚には、ところどこ
ろ、細い鉄の欄干も植えられ、木製のきれいなベンチも置いてありました。】
60きっ:【「早くあすこへ行って見よう。きっと何か掘ってるから。」】
61ぎざぎざ:【二人は、ぎざぎざの黒いくるみの実を持ちながら、またさっきの方へ近よって行きました。】
62きらっ:【「君たちは参観かね。」その大学士らしい人が、眼鏡をきらっとさせて、こっちを見て話しか
けました。】
63ざっ:【「くるみが沢山あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。」】
64そっくり:【「いま川の流れているとこに、そっくり塩水が寄せたり引いたりもしていたのだ。」】
65がさがさ:【がさがさした、けれども親切そうな、大人の声が、二人のうしろで聞えました。】
66ぼろぼろ:【それは、茶いろの少しぼろぼろの外套(がいとう)を着て、白い巾でつつんだ荷物を、二つに
分けて肩に掛けた、赤髯(ひげ)のせなかのかがんだ人でした。】
67ずうっ:【ジョバンニは、なにか大へんさびしいようなかなしいような気がして、だまって正面の時計を
見ていましたら、ずうっと前の方で、硝子の笛のようなものが鳴りました。】
68おずおず:【赤ひげの人が、少しおずおずしながら、二人に訊きました。】
69ちらっ:【すると、向うの席に居た、尖った帽子をかぶり、大きな鍵を腰に下げた人も、ちらっとこっち
を見てわらいましたので、カムパネルラも、つい顔を赤くして笑いだしてしまいました。】
70ぴくぴく:【ところがその人は別に怒ったでもなく、頬をぴくぴくしながら返事しました。】
71ごとごと:【ごとごと鳴る汽車のひびきと、すすきの風との間から、ころんころんと水の湧くような音が
聞えて来るのでした。】
72ころんころん:【すすきの風との間から、ころんころんと水の湧くような音が聞えて来るのでした。】
73ぼおっ:【「そいつはな、雑作ない。さぎというものは、みんな天の川の砂が凝って、ぼおっとできるも
んですからね、そして始終川へ帰りますからね、川原で待っていて、鷺がみんな、脚をこうい
う風にして下りてくるとこを、そいつが地べたへつくかつかないうちに、ぴたっと押えちまうん
です。】
74ぴたっ:【「鷺がみんな、脚をこういう風にして下りてくるとこを、そいつが地べたへつくかつかないうち
に、ぴたっと押えちまうんです。】
75くるくる:【その男は立って、網棚から包みをおろして、手ばやくくるくると解きました。】
76そっ:【カムパネルラは、指でそっと、鷺の三日月がたの白い瞑(つぶ)った眼にさわりました。】
77ずっ:【「雁の方がずっと柄がいいし、第一手数がありませんからな。」】
78すっ:【するとそれは、チョコレートででもできているように、すっときれいにはなれました。】
79ぽくぽく:【とおもいながら、やっぱりぽくぽくそれをたべていました。】
80ばさばさ:【「わたしぁ、べらぼうめ、そんな苦情は、おれのとこへ持って来たって仕方がねえや、ばさ
ばさのマントを着て脚と口との途方もなく細い大将へやれって、斯(こ)う云ってやりましたが
ね、はっは。」】
81ぱっ:【すすきがなくなったために、向うの野原から、ぱっとあかりが射(さ)して来ました。】
82にやにや:【二人は顔を見合せましたら、燈台守は、にやにや笑って、少し伸びあがるようにしながら、
二人の横の窓の外をのぞきました。】
83がらん:【「汽車が走って行かないうちに、早く鳥がおりるといいな。」と云った途端、がらんとした桔梗
いろの空から、さっき見たような鷺(さぎ)が、まるで雪の降るように、ぎゃあぎゃあ叫びながら、
いっぱいに舞いおりて来ました。】
84ぎゃあぎゃあ:【さっき見たような鷺が、まるで雪の降るように、ぎゃあぎゃあ叫びながら、いっぱいに
舞いおりて来ました。】
85ほくほく:【するとあの鳥捕りは、すっかり注文通りだというようにほくほくして、両足をかっきり六十度
に開いて立って、鷺のちぢめて降りて来る黒い脚を両手で片っ端から押えて、布の袋の中に
入れるのでした。】
86かっきり:【両足をかっきり六十度に開いて立って、鷺のちぢめて降りて来る黒い脚を両手で片っ端か
ら押えて、布の袋の中に入れるのでした。】
87ぺかぺか:【すると鷺は、蛍のように、袋の中でしばらく、青くぺかぺか光ったり消えたりしていました
が、おしまいとうとう、みんなぼんやり白くなって、眼をつぶるのでした。】
88ぼんやり:【おしまいとうとう、みんなぼんやり白くなって、眼をつぶるのでした。】
89せいせい:【「ああせいせいした。どうもからだに恰度合うほど稼いでいるくらい、いいことはありませ
んな。」というききおぼえのある声が、ジョバンニの隣りにしました。】
90きちん:【見ると鳥捕りは、もうそこでとって来た鷺を、きちんとそろえて、一つずつ重ね直しているの
でした。】
91もじもじ:【「さあ、」ジョバンニは困って、もじもじしていましたら、カムパネルラは、わけもないという風
で、小さな鼠いろの切符を出しました。】
92くつくつ:【もう大丈夫だと安心しながらジョバンニはそっちを見あげてくつくつ笑いました。】
93ちらちら:【そしてきまりが悪いのでカムパネルラと二人、また窓の外をながめていましたが、その鳥
捕りの時々大したもんだというようにちらちらこっちを見ているのがぼんやりわかりました。】
94つやつや:【そしたら俄かにそこに、つやつやした黒い髪の六つばかりの男の子が赤いジャケツのぼ
たんもかけずひどくびっくりしたような顔をしてがたがたふるえてはだしで立っていました。】
95がたがた:【男の子が赤いジャケツのぼたんもかけずひどくびっくりしたような顔をしてがたがたふる
えてはだしで立っていました。】
96しくしく:【女の子は、いきなり両手を顔にあててしくしく泣いてしまいました。】
97ぐるぐる:【「わたしの大事なタダシはいまどんな歌をうたっているだろう、雪の降る朝にみんなと手を
つないでぐるぐるにわとこのやぶをまわってあそんでいるだろうかと考えたりほんとうに待っ
て心配していらっしゃるんですから、早く行っておっかさんにお目にかかりましょうね。」】
98やっ:【「あなた方はどちらからいらっしゃったのですか。どうなすったのですか。」さっきの燈台看守が
やっと少しわかったように青年にたずねました。】
99ずんずん:【「そのうち船はもうずんずん沈みますから、私はもうすっかり覚悟してこの人たち二人を抱
いて、浮べるだけは浮ぼうとかたまって船の沈むのを待っていました。」】
100ぼうっ:【「そのとき俄かに大きな音がして私たちは水に落ちもう渦に入ったと思いながらしっかりこの
人たちをだいてそれからぼうっとしたと思ったらもうここへ来ていたのです。」】
101ぐったり:【そしてあの姉弟はもうつかれてめいめいぐったり席によりかかって睡(ねむ)っていました。】
102ごとごとごとごと:【ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光の川の岸を進みました。】
103ぼおっ:【百も千もの大小さまざまの三角標、その大きなものの上には赤い点点をうった測量旗も
見え、野原のはてはそれらがいちめん、たくさんたくさん集ってぼおっと青白い霧のよう、そ
こからかまたはもっと向うからかときどきさまざまの形のぼんやりした狼煙(のろし)のようなも
のが、かわるがわるきれいな桔梗いろのそらにうちあげられるのでした。】
104ぱっちり:【にわかに男の子がぱっちり眼をあいて云いました。】
105にこにこにこにこ:【「お母さんがね立派な戸棚や本のあるとこに居てね、ぼくの方を見て手をだして
にこにこにこにこわらったよ。」】
106ぞくっ:【青年はぞくっとしてからだをふるうようにしました。】
107ぴん:【「かささぎですねえ、頭のうしろのとこに毛がぴんと延びてますから。」青年はとりなすように云
いました。】
108さっ:【青年はさっと顔いろが青ざめ、たって一ぺんそっちへ行きそうにしましたが思いかえしてまた
座りました。】
109さめざめ:【そして青い橄欖(かんらん)の森が見えない天の川の向うにさめざめと光りながらだんだん
うしろの方へ行ってしまいそこから流れて来るあやしい楽器の音ももう汽車のひびきや風の
音にすり耗(へ)らされてずうっとかすかになりました。】
110ずうっ:【そこから流れて来るあやしい楽器の音ももう汽車のひびきや風の音にすり耗(へ)らされて
ずうっとかすかになりました。】
111さっさっ:【ジョバンニはその小さく小さくなっていまはもう一つの緑いろの貝ぼたんのように見える森
の上にさっさっと青じろく時々光ってその孔雀がはねをひろげたりとじたりする光の反射を見
ました。】
112ざあっ:【すると空中にざあっと雨のような音がして何かまっくらなものがいくかたまりもいくかたまり
も鉄砲丸(てっぽうだま)のように川の向うの方へ飛んで行くのでした。】
113ぴたっ:【するとぴたっと鳥の群は通らなくなりそれと同時にぴしゃぁんという潰れたような音が川下
の方で起ってそれからしばらくしいんとしました。】
114ぴしゃぁん:【それと同時にぴしゃぁんという潰れたような音が川下の方で起ってそれからしばらくしい
んとしました。】
115しいん:【それからしばらくしいんとしました。】
116ほっ:【女の子は小さくほっと息をしてだまって席へ戻りました。】
117しぃん:【そして車の中はしぃんとなりました。】
118ぐるぐる:【その葉はぐるぐるに縮れ葉の下にはもう美しい緑いろの大きな苞が赤い毛を吐いて真
珠のような実もちらっと見えたのでした。】
119さやさや:【それはだんだん数を増して来てもういまは列のように崖と線路との間にならび思わずジ
ョバンニが窓から顔を引っ込めて向う側の窓を見ましたときは美しいそらの野原の地平線の
はてまでその大きなとうもろこしの木がほとんどいちめんに植えられてさやさや風にゆらぎそ
の立派なちぢれた葉のさきからはまるでひるの間にいっぱい日光を吸った金剛石のように
露がいっぱいについて赤や緑やきらきら燃えて光っているのでした。】
120きらきら:【その立派なちぢれた葉のさきからはまるでひるの間にいっぱい日光を吸った金剛石のよ
うに露がいっぱいについて赤や緑やきらきら燃えて光っているのでした。】
121カチッカチッ:【その正面の青じろい時計はかっきり第二時を示しその振子は風もなくなり汽車もうご
かずしずかなしずかな野原のなかにカチッカチッと正しく時を刻んで行くのでした。】
122はきはき:【うしろの方で誰かとしよりらしい人のいま眼がさめたという風ではきはき談(はな)している
声がしました。】
123くっきり:【にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ倒れるようになりインデアンはぴたっと立ちどま
ってすばやく弓を空にひきました。】
124ぴたっ:【インデアンはぴたっと立ちどまってすばやく弓を空にひきました。】
125ふらふら:【そこから一羽の鶴がふらふらと落ちて来てまた走り出したインデアンの大きくひろげた両
手に落ちこみました。】
126きらっきらっ:【そしてその鶴をもってこっちを見ている影ももうどんどん小さく遠くなり電しんばしらの
碍子(がいし)がきらっきらっと続いて二つばかり光ってまたとうもろこしの林になってしまいまし
た。】
127どんどんどんどん:【どんどんどんどん汽車は降りて行きました。】
128しょんぼり:【汽車が小さな小屋の前を通ってその前にしょんぼりひとりの子供が立ってこっちを見て
いるときなどは思わずほうと叫びました。】
129ほう:【しょんぼりひとりの子供が立ってこっちを見ているときなどは思わずほうと叫びました。】
130ちらちら:【もうそして天の川は汽車のすぐ横手をいままでよほど激しく流れて来たらしくときどきちら
ちら光ってながれているのでした。】
131どぉ:【その時向う岸ちかくの少し下流の方で見えない天の川の水がぎらっと光って柱のように高く
はねあがりどぉと烈しい音がしました。】
132きらっきらっ:【その柱のようになった水は見えなくなり大きな鮭や鱒がきらっきらっと白く腹を光らせ
て空中に抛り出されて円い輪を描いてまた水に落ちました。】
133ギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−:【「それから彗星(ほうきぼし)がギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−て云って来た
ねえ。」】
134ざわざわ:【その火がだんだんうしろの方になるにつれてみんなは何とも云えずにぎやかなさまざま
の楽の音や草花の匂のようなもの口笛や人々のざわざわ云う声やらを聞きました。】
135そわそわ:【カムパネルラのとなりの女の子はそわそわ立って支度をはじめましたけれどもやっぱり
ジョバンニたちとわかれたくないようなようすでした。】
136きちっ:【青年はきちっと口を結んで男の子を見おろしながら云いました。】
137すうっ:【けれどもそのときはもう硝子(ガラス)の呼子は鳴らされ汽車はうごき出しと思ううちに銀いろ
の霧が川下の方からすうっと流れて来てもうそっちは何も見えなくなりました。】
138さんさん:【ただたくさんのくるみの木が葉をさんさんと光らしてその霧の中に立ち黄金の円光をも
った電気栗鼠(りす)が可愛い顔をその中からちらちらのぞいているだけでした。】
139ちらちら:【その霧の中に立ち黄金の円光をもった電気栗鼠(りす)が可愛い顔をその中からちらち
らのぞいているだけでした。】
140すうっ:【そのときすうっと霧がはれかかりました。】
141ぽかっ:【そして二人がそのあかしの前を通って行くときはその小さな豆いろの火はちょうど挨拶で
もするようにぽかっと消え二人が過ぎて行くときまた点くのでした。】
142ふう:【ジョバンニが胸いっぱい新らしい力が湧くようにふうと息をしながら云いました。】
143ぎくっ:【ジョバンニはそっちを見てまるでぎくっとしてしまいました。】
144どほん:【天の川の一とこに大きなまっくらな孔(あな)がどほんとあいているのです。】
145しんしん:【その底がどれほど深いかその奥に何があるかいくら眼をこすってのぞいてもなんにも見
えずただ眼がしんしんと痛むのでした。】
146はっ:【ジョバンニははっと思って涙をはらってそっちをふり向きました。】
147ぽかっ:【するといきなりジョバンニは自分というものがじぶんの考というものが、汽車やその学者や
天の川やみんないっしょにぽかっと光ってしぃんとなくなってぽかっとともってまたなくなって
そしてその一つがぽかっとともるとあらゆる広い世界ががらんとひらけあらゆる歴史がそなわ
りすっと消えるともうがらんとしたただもうそれっきりになってしまうのを見ました。】
148しぃん:【汽車やその学者や天の川やみんないっしょにぽかっと光ってしぃんとなくなってぽかっとと
もってまたなくなってそしてその一つがぽかっとともるとあらゆる広い世界ががらんとひらけ
あらゆる歴史がそなわりすっと消えるともうがらんとしたただもうそれっきりになってしまうの
を見ました。】
149がらん:【あらゆる広い世界ががらんとひらけあらゆる歴史がそなわりすっと消えるともうがらんとし
たただもうそれっきりになってしまうのを見ました。】
150すっ:【あらゆる歴史がそなわりすっと消えるともうがらんとしたただもうそれっきりになってしまうの
を見ました。】
151カチカチ:【そしてポケットが大へん重くカチカチ鳴るのに気がつきました。】
『銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕』のオノマトペ、
まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝(^
^;
2006.5.30.
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