『イーハトーヴ・オノマトペ症候群』やってます。(^ ^;
      (そら、ぼくの影法師は、だんだんみじかくなって、            ぼくへ追いついて来る。)          (じきにすっかりちぢまってしまうぞ。)                ジョバンニは、                                                         口笛を吹いているようなさびしい口付きで、                       うしろをふりかえって、こんなことを考えながら、                     檜(ひのき)のまっ黒にならんだ町の坂を                           下りて来たのでした。

 
         ブルカニロ博士が印象的だにゃぁ、『銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕


  『イーハトーヴオノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語) .
      坂の下に大きな一つの街燈が、                                    青白く立派に光って立っていました。             ほんとうにジョバンニが、                                              どんどん電燈の方へ下りて行きますと、              いままでばけもののように、長くぼんやり、                           うしろへ引いていたジョバンニの影ぼうしは、
宮沢賢治童話の私設ファンコーナー16です。

               ★宮沢賢治童話を是非ぜひゼヒ読んでネ★
んで、16回目の今回は、


       ****** ポラーノの広場 ******
    新潮文庫 590円 405p 表紙:冬澤未都彦 注解・収録作品について:天沢退二郎 .
                                      贈与する人:中沢新一 .
                              だんだん濃く黒くはっきりなって、                                     足をあげたり手を振ったり、                                          ジョバンニの横の方へまわって来るのでした。
               いちょうの実
 ──────────── 5p
               まなづるとダァリヤ──
──────── 7p
               鳥箱先生とフウねずみ
───────── 7p
               林の底
──────────────10p ここまで14ページです。
               十力
(じゅうりき)の金剛石(こんごうせき) ─── 18p
               とっこべとら子
 ───────── 28p
               若い木霊
(こだま) ───────────  7p
               風野又三郎
───────────── 54p
               ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記
── 52p
               ガドルフの百合
─────────── 10p
               種山ヶ原 ──────────── 18p
               タネリはたしかに
                 いちにち噛んでいたようだった
 ──11p ここまで15ページです。
               氷河鼠の毛皮
 ───────── 12p
                税務署長の冒険
 ───────── 32p
                銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕 ──── 62p
                ポラーノの広場────────
──── 81p
                竜と詩人──────────
───── 5p の17短編です。

              注:
は『風の又三郎』ご覧ください。

                は『風の又三郎2』ご覧ください。

                は『セロ弾きのゴーシュ』ご覧ください。

                は『セロ弾きのゴーシュ2』ご覧ください。

                は『イーハトーボ農学校の春2』ご覧ください。

                   


 
 


『ポラーノの広場』の第十五話です。
      (ぼくはまるで軽便鉄道の機関車だ。)            (ここは勾配だからこんなに速い。)            (ぼくはいまその電燈を通り越す。)         (しゅっしゅっ。)         (そら、こんどはぼくの影法師はコムパスだ。)   
   (あんなにくるっとまわって、前の方へ来た。)   
***** 『銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕 62p *****
 

 ブルカニロ博士が印象的だにゃぁ、  「ああごらん、あすこにプレシオスが見える。                           おまえはあのプレシオスの鎖を解かなければならない。」『銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕』。

 っつーことで、『
賢治童話を丸写しシリーズその73』だよん。(^ ^;

 「ああマジェランの星雲だ。さあもうきっと僕は僕のために、僕のお母さんのために、カムパネ
ルラのためにみんなのためにほんとうのほんとうの幸福をさがすぞ。」ジョバンニは唇を噛んで
そのマジェランの星雲をのぞんで立ちました。そのいちばん幸福なそのひとのために!
 「さあ、切符をしっかり持っておいで。お前はもう夢の鉄道の中でなしに本当の世界の火やは
げしい波の中を大股にまっすぐに歩いて行かなければいけない。天の川のなかでたった一つ
のほんとうのその切符を決しておまえはなくしてはいけない。」 あのセロのような声がしたと思
うとジョバンニはあの天の川がもうまるで遠く遠くなって風が吹き自分はまっすぐに草の丘に立
っているのを見また遠くからあのブルカニロ博士の足おとのしずかに近づいて来るのをききま
した。
 「ありがとう。私は大へんいい実験をした。私はこんなしずかな場所で遠くから私の考(かんがえ)
を人に伝える実験をしたいとさっき考えていた。お前の云った語
(ことば)はみんな私の手帳にとっ
てある。さあ帰っておやすみ。お前は夢の中で決心したとおりまっすぐに進んで行くがいい。そ
してこれから何でもいつでも私のとこへ相談においでなさい。」
 「僕きっとまっすぐに進みます。きっとほんとうの幸福を求めます。」 ジョバンニは力強く云い
ました。
     
(丸写しオシマイ)
 『
賢治童話を丸写しシリーズその73』でした。


 銀河鉄道の夜〔初期形〕ブルカニロ博士篇』の漫画紹介

 @ますむらひろし:ますむら版宮沢賢治童話集(朝日ソノラマ)


                  リラックスが足りないにゃぁ。(^ ^;

 

 ますむらひろしの漫画版『銀河鉄道の夜〔初期形〕ブルカニロ博士篇』は、リラックスしてないのら。

  ますむらひろしは、例によって、猫クンたちが登場人物を演ずるマニアックな漫画。
  ますむらひろしは、もちろん『銀河鉄道の夜〔最終稿〕』も、漫画化してます。マニアックだなや。
  両方比べて見ると、このブルカニロ博士篇の方が後から描いてるだなや、たぶん。
  ブルカニロ博士篇では、むだなオノマトペをはぶいたり、脇役陣のキャラも変更したり、カット
割りも構図もビミョーに変えたり、頑張ってるんだなや。
  ますむらひろしのマニアック、エライ!
  で、面白いのか?って、はっきし云って、つまんね、だなや。(^ ^;
  しいてほめれば、家庭教師クンの表情がちょこっといいのら。
  くどいようだが、ボクは、ますむらひろしの『アタゴオル』の大大大ファンなのら。
  なかでも『アタゴオル玉手箱』のファンタジー&リラックス&解放感がたまらなく好きなのら。
  ますむらひろしクン、宮沢賢治クンにキンチョーしちゃってるだなや、たぶん。

 っつーことで、『銀河鉄道の夜
〔初期形第三次稿〕』の漫画版、ますむらひろし、マニアックだなや。(^ ^;


  銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕 お気に入りオノマトペ
              「ザネリ、どこへ行ったの。」                                           ジョバンニがまだそう云ってしまわないうちに、      「ジョバンニ、お父さんから、らっこの上着が来るよ。」                その子が投げつけるようにうしろから叫びました。      ジョバンニは、ばっと胸がつめたくなり、                              そこら中きぃんと鳴るように思いました。      なぜならジョバンニのお父さんは、                                   そんならっこや海豹(あざらし)をとる、                               それも密漁船に乗っていて、                                        それになにかひとを怪我させたために、                              遠くのさびしい海峡の町の                                           監獄に入っているというのでした。      ですから今夜だって、みんなが町の広場にあつまって、            一緒に星めぐりの歌をうたったり、                                   川へ青い烏瓜のあかしを流したりする、                            たのしいケンタウル祭なのに、                                        ジョバンニはぼろぼろのふだん着のままで、                          病気のおっかさんの牛乳の配られて来ないのをとりに、           下の町はずれまで行くのでした。
 季節: 秋                                
   (ザネリは、どうしてぼくがなんにもしないのに、                        あんなことを云うのだろう。                                            ぼくのお父さんは、                                                    わるくて監獄にはいっているのではない。)
◆オラが好きなオノマトペ(初読)=
5つが最高。)
30
ぺかぺか:【ジョバンニが、こう呟(つぶや)くか呟かないうちに、愕(おどろ)いたことは、いままでぼん
      やり蕈
(きのこ)のかたちをしていた、その青じろいひかりが、にわかにはっきりした三角標
      の形になって、しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしていましたが、とうとう
      りんとうごかないようになって、濃い鋼青のそらの野原にたちました。】
79
ぽくぽく:【とおもいながら、やっぱりぽくぽくそれをたべていました。】
133
ギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−:【「それから彗星(ほうきぼし)がギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−て云って
      来たねえ。」】
144
どほん:【天の川の一とこに大きなまっくらな孔(あな)がどほんとあいているのです。】

▼ボクの好きなオノマトペ(再読)=5つが最高。)
40
しらしら:【実にその光は、広い一本の帯になって、ところどころ枝を出したり、二つに岐(わか)
      たりしながら、空の野原を北から南へ、しらしらと流れるのでした。】
109
さめざめ:【そして青い橄欖(かんらん)の森が見えない天の川の向うにさめざめと光りながらだん
      だんうしろの方へ行ってしまいそこから流れて来るあやしい楽器の音ももう汽車のひび
      きや風の音にすり耗
(へ)らされてずうっとかすかになりました。】
145
しんしん:【その底がどれほど深いかその奥に何があるかいくら眼をこすってのぞいてもなん
      にも見えずただ眼がしんしんと痛むのでした。】
 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」


 ギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−:【「それから彗星(ほうきぼし)がギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−て云って
      来たねえ。」】

 ギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−、っつーのじぇったい使わんけど、風変わりでいんでねけ?


   「ああ、どうしてなんですか。                                           ぼくはカムパネルラといっしょに                                       まっすぐに行こうと云ったんです。」

        「ああ、そうだ。みんながそう考える。                                  けれどもいっしょに行けない。」         「そしてみんながカムパネルラだ。」            「おまえがあうどんなひとでもみんな                                   何べんもおまえといっしょに                                           苹果(りんご)をたべたり汽車に乗ったりしたのだ。」         「だからやっぱりおまえはさっき考えたように                            あらゆるひとのいちばんの幸福をさがし                             みんなと一しょに早くそこに行くがいい、」         「そこでばかりおまえはほんとうにカムパネルラと                       いつまでもいっしょに行けるのだ。」  

***** 銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕オノマトペ *****
 

@だんだん:【(そら、ぼくの影法師は、だんだんみじかくなって、ぼくへ追いついて来る。じきにす
      っかりちぢまってしまうぞ。)】
Aすっかり:【(じきにすっかりちぢまってしまうぞ。)】
Bどんどん:【ほんとうにジョバンニが、どんどん電燈の方へ下りて行きますと、いままでばけもの
      のように、長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影ぼうしは、だんだん濃く黒
      くはっきりなって、足をあげたり手を振ったり、ジョバンニの横の方へまわって来るので
      した。】
Cぼんやり:【いままでばけもののように、長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影ぼうし
      は、だんだん濃く黒くはっきりなって、足をあげたり手を振ったり、ジョバンニの横の方へ
      まわって来るのでした。】
Dはっきり:【長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影ぼうしは、だんだん濃く黒くはっきり
      なって、足をあげたり手を振ったり、ジョバンニの横の方へまわって来るのでした。】
Eしゅっしゅっ:【(ぼくはまるで軽便鉄道の機関車だ。ここは勾配だからこんなに速い。ぼくはいま
      その電燈を通り越す。しゅっしゅっ。)】
Fくるっ:【(そら、こんどはぼくの影法師はコムパスだ。あんなにくるっとまわって、前の方へ来
      た。)】
Gひらっ:【とジョバンニが思いながら、大股にその街燈の下を通り過ぎたとき、いきなり一人の顔
      の赤い、新らしいえりの尖ったシャツを着た小さな子が、電燈の向う側の暗い小路
(こうじ)
      から出て来て、ひらっとジョバンニとすれちがいました。】
Hばっ:【ジョバンニは、ばっと胸がつめたくなり、そこら中きぃんと鳴るように思いました。】
Iきぃん:【そこら中きぃんと鳴るように思いました。】
Jぼろぼろ:【ですから今夜だって、みんなが町の広場にあつまって、一緒に星めぐりの歌をうたっ
      たり、川へ青い烏瓜のあかしを流したりする、たのしいケンタウル祭なのに、ジョバンニは
      ぼろぼろのふだん着のままで、病気のおっかさんの牛乳の配られて来ないのをとりに、
      下の町はずれまで行くのでした。】
Kにこにこ:【去年の夏、帰って来たときだって、ちょっと見たときはびっくりしたけれども、ほんとうは
      にこにこわらって、それにあの荷物を解いたときならどうだ、鮭の皮でこさえた大きな靴だ
      の、となかいの角だの、どんなにぼくは、よろこんではねあがって叫んだかしれない。】
Lくるっくるっ:【時計屋の店には明るくネオン燈がついて、一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤い
      眼が、くるっくるっとうごいたり、眩
(まばゆ)いプラチナや黄金(きん)の鎖だの、いろいろな宝
      石のはいった指環
(ゆびわ)だのが、海のような色をした厚い硝子(ガラス)の盤に載ってゆっ
      くり循
(めぐ)ったり、また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりするのでし
      た。】
Mゆっくり:【また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりするのでした。】
Nしぃん:【その牛乳屋の黒い門を入り、牛の匂
(におい)のするうすくらい台所の前に立って、ジョバン
      ニは帽子をぬいで「今晩は、」と云いましたら、家の中はしぃんとして誰も居たようではあり
      ませんでした。】
Oしげしげ:【下女は着物のふちで赤い眼の下のとこを擦
(こす)りながら、しげしげジョバンニを見て云
      いました。】
Pどきっ:【ジョバンニは思わずどきっとして戻ろうとしましたが、思い直して、一そう勢よくそっちへ歩
      いて行きました。】
Qわああ:【すると耳に手をあてて、わああと云いながら片足でぴょんぴょん跳
(と)んでいた小さな子供
      らは、ジョバンニが面白くてかけるのだと思ってわあいと叫びました。】
Rぴょんぴょん:【片足でぴょんぴょん跳
(と)んでいた小さな子供らは、ジョバンニが面白くてかけるの
      だと思ってわあいと叫びました。】
Sわあい:【ジョバンニが面白くてかけるのだと思ってわあいと叫びました。】
21ぼうっ:【そこには、河原のぼうっと白く見える、小さな川があって、細い鉄の欄干のついた橋がかか
      っていました。】
22ぴかぴか:【草の中には、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、ある葉は青くすかし出され、ジョ
      バンニは、さっきみんなの持って行った烏瓜のあかしのようだとも思いました。】
23がらん:【そのまっ黒な、松や楢の林を越えると、俄かにがらんと空がひらけて、天の川がしらしらと
      南から北へ亘
(わた)っているのが見え、また頂の、天気輪の柱も見わけられたのでした。】
24しらしら:【天の川がしらしらと南から北へ亘
(わた)っているのが見え、また頂の、天気輪の柱も見わけ
      られたのでした。】
25どかどか:【ジョバンニは、頂の天気輪の柱の下に来て、どかどかするからだを、つめたい草に投げ
      ました。】
26きれぎれ:【町の灯は、暗の中をまるで海の底のお宮のけしきのようにともり、子供らの歌う声や口
      笛、きれぎれの叫び声もかすかに聞えて来るのでした。】
27じっ:【ジョバンニはじっと天の川を見ながら考えました。】
28ちらちら:【あの青い琴の星さえ蕈
(きのこ)のように脚(あし)が長くなって、三つにも四つにもわかれ、ち
      らちら忙
(せわ)しく瞬(またた)いたのでした。】
29がらん:【ところがいくら見ていても、そこは博士の云ったような、がらんとした冷たいとこだとは思わ
      れませんでした。】
30ぺかぺか:【ジョバンニが、こう呟
(つぶや)くか呟かないうちに、愕(おどろ)いたことは、いままでぼんやり
      蕈
(きのこ)のかたちをしていた、その青じろいひかりが、にわかにはっきりした三角標の形に
      なって、しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしていましたが、とうとうりんとうご
      かないようになって、濃い鋼青のそらの野原にたちました。】
31とうとう:【とうとうりんとうごかないようになって、濃い鋼青のそらの野原にたちました。】
32りん:【とうとうりんとうごかないようになって、濃い鋼青のそらの野原にたちました。】
33すきっ:【いま新らしく灼いたばかりの青い鋼の板のような、そらの野原に、まっすぐにすきっと立った
      のです。】
34ごうごう:【するとちょうど、それに返事をするように、どこか遠くの遠くのもやの中から、セロのような
      ごうごうした声がきこえて来ました。】
35ちゃん:【そしていよいよおかしいことは、その語
(ことば)が、少しもショバンニの知らない語なのに、そ
      の意味はちゃんとわかるのでした。】
36やっぱり:【(そうだ。やっぱりあれは、ほんとうの三角標だ。)】
37ひらひら:【(頂上には、白鳥の形を描いた測量旗だってひらひらしている。)】
38ぱっ:【いきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊
(ほたるいか)の火を一ぺんに化石
      させて、そら中に沈めたという工合、またダイアモンド会社で、ねだんがやすくならないため
      に、わざと穫
(と)れないふりをして、かくして置いた金剛石を、誰かがいきなりひっくりかえし
      て、ばら撒いたという風に、眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも
      眼を擦
(こす)ってしまいました。】
39さあっ:【眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも眼を擦
(こす)ってしまいました。】
40しらしら:【実にその光は、広い一本の帯になって、ところどころ枝を出したり、二つに岐
(わか)れたりし
      ながら、空の野原を北から南へ、しらしらと流れるのでした。】
41ずうっと:【すると、どこかずうっと遠くで、なにかが大へんよろこんで、手を拍
(う)ったというような気が
      しました。】
42ちらちら:【見ると、いまはもう、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、ときどき眼
      の加減か、ちらちら紫いろのこまかな波をたてたり、虹のようにぎらっと光ったりしながら、声
      もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立っ
      ていたのです。】
43ぎらっ:【虹のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっ
      ちにも、燐光の三角標が、うつくしく立っていたのです。】
44どきどき:【ジョバンニは、まるでどきどきして、頭をやけに振りました。】
45ごとごとごとごと:【ところが、ふと気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、ジョバンニの乗っ
      ている小さな列車が走りつづけていたのでした。】
46ぐるぐる:【そして、カムパネルラは、円い板のようになった地図を、しきりにぐるぐるまわして見ていま
      した。】
47さらさらさらさら:【そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるでいち
      めん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。】
48こつこつ:【ジョバンニは云いながら、まるではね上りたいくらい愉快になって、足をこつこつ鳴らし、窓
      から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛を吹きました。】
49ぼうっ:【見ると、もうじつに、金剛石や草の露やあらゆる立派さをあつめたような、きらびやかな銀河
      の河床の上を水は声もなくかたちもなく流れ、その流れのまん中に、ぼうっと青白く後光の射
      した一つの島が見えるのでした。】
50すきっ:【その島の平らないただきに、立派な眼もさめるような、白い十字架がたって、それはもう凍っ
      た北極の雲で鋳
(い)たといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに
      永久に立っているのでした。】
51さっ:【時々、やっぱりすすきが風にひるがえるらしく、さっとその銀いろがけむって、息でもかけたよう
      に見え、また、たくさんのりんどうの花が、草をかくれたり出たりするのは、やさしい狐火のよう
      に思われました。】
52ざわざわ:【それもほんのちょっとの間、川と汽車との間は、すすきの列でさえぎられ、白鳥の島は、
      二度ばかり、うしろの方に見えましたが、じきもうずうっと遠く小さく、絵のようになってしまい、
      またすすきがざわざわ鳴って、とうとうすっかり見えなくなってしまいました。】
53じっ:【ジョバンニのうしろには、いつから乗っていたのか、せいの高い、黒いかつぎをしたカトリック風
      の尼さんが、まん円な緑の瞳を、じっとまっすぐに落して、まだ何かことばか声かが、そっちか
      ら伝わって来るのを、虔
(つつし)んで聞いているというように見えました。】
54きしきし:【カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌にひろげ、指できしきしさせながら、夢の
      ように云っているのでした。】
55くしゃくしゃ:【河原の礫
(こいし)は、みんなすきとおって、たしかに水晶や黄玉や、またくしゃくしゃの皺曲
      
(しゅうきょく)をあらわしたのや、また稜(かど)から霧のような青白い光を出す鋼玉やらでした。】
56もっ:【けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのです。】
57ちらちら:【それでもたしかに流れていたことは、二人の手首の、水にひたったとこが、少し水銀いろ
      に浮いたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、うつくしい燐光をあげて、ちらち
      らと燃えるように見えたのでもわかりました。】
58ピカッ:【そこに小さな五六人の人かげが、何か堀り出すか埋めるかしているらしく、立ったり屈
(かが)
      んだり、時々なにかの道具が、ピカッと光ったりしました。】
59つるつる:【〔プリオシン海岸〕という、瀬戸物のつるつるした標札が立って、向うの渚には、ところどこ
      ろ、細い鉄の欄干も植えられ、木製のきれいなベンチも置いてありました。】
60きっ:【「早くあすこへ行って見よう。きっと何か掘ってるから。」】
61ぎざぎざ:【二人は、ぎざぎざの黒いくるみの実を持ちながら、またさっきの方へ近よって行きました。】
62きらっ:【「君たちは参観かね。」その大学士らしい人が、眼鏡をきらっとさせて、こっちを見て話しか
      けました。】
63ざっ:【「くるみが沢山あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。」】
64そっくり:【「いま川の流れているとこに、そっくり塩水が寄せたり引いたりもしていたのだ。」】
65がさがさ:【がさがさした、けれども親切そうな、大人の声が、二人のうしろで聞えました。】
66ぼろぼろ:【それは、茶いろの少しぼろぼろの外套
(がいとう)を着て、白い巾でつつんだ荷物を、二つに
      分けて肩に掛けた、赤髯
(ひげ)のせなかのかがんだ人でした。】
67ずうっ:【ジョバンニは、なにか大へんさびしいようなかなしいような気がして、だまって正面の時計を
      見ていましたら、ずうっと前の方で、硝子の笛のようなものが鳴りました。】
68おずおず:【赤ひげの人が、少しおずおずしながら、二人に訊きました。】
69ちらっ:【すると、向うの席に居た、尖った帽子をかぶり、大きな鍵を腰に下げた人も、ちらっとこっち
      を見てわらいましたので、カムパネルラも、つい顔を赤くして笑いだしてしまいました。】
70ぴくぴく:【ところがその人は別に怒ったでもなく、頬をぴくぴくしながら返事しました。】
71ごとごと:【ごとごと鳴る汽車のひびきと、すすきの風との間から、ころんころんと水の湧くような音が
      聞えて来るのでした。】
72ころんころん:【すすきの風との間から、ころんころんと水の湧くような音が聞えて来るのでした。】
73ぼおっ:【「そいつはな、雑作ない。さぎというものは、みんな天の川の砂が凝って、ぼおっとできるも
      んですからね、そして始終川へ帰りますからね、川原で待っていて、鷺がみんな、脚をこうい
      う風にして下りてくるとこを、そいつが地べたへつくかつかないうちに、ぴたっと押えちまうん
      です。】
74ぴたっ:【「鷺がみんな、脚をこういう風にして下りてくるとこを、そいつが地べたへつくかつかないうち
      に、ぴたっと押えちまうんです。】
75くるくる:【その男は立って、網棚から包みをおろして、手ばやくくるくると解きました。】
76そっ:【カムパネルラは、指でそっと、鷺の三日月がたの白い瞑
(つぶ)った眼にさわりました。】
77ずっ:【「雁の方がずっと柄がいいし、第一手数がありませんからな。」】
78すっ:【するとそれは、チョコレートででもできているように、すっときれいにはなれました。】
79ぽくぽく:【とおもいながら、やっぱりぽくぽくそれをたべていました。】
80ばさばさ:【「わたしぁ、べらぼうめ、そんな苦情は、おれのとこへ持って来たって仕方がねえや、ばさ
      ばさのマントを着て脚と口との途方もなく細い大将へやれって、斯
(こ)う云ってやりましたが
      ね、はっは。」】
81ぱっ:【すすきがなくなったために、向うの野原から、ぱっとあかりが射
(さ)して来ました。】
82にやにや:【二人は顔を見合せましたら、燈台守は、にやにや笑って、少し伸びあがるようにしながら、
      二人の横の窓の外をのぞきました。】
83がらん:【「汽車が走って行かないうちに、早く鳥がおりるといいな。」と云った途端、がらんとした桔梗
      いろの空から、さっき見たような鷺
(さぎ)が、まるで雪の降るように、ぎゃあぎゃあ叫びながら、
      いっぱいに舞いおりて来ました。】
84ぎゃあぎゃあ:【さっき見たような鷺が、まるで雪の降るように、ぎゃあぎゃあ叫びながら、いっぱいに
      舞いおりて来ました。】
85ほくほく:【するとあの鳥捕りは、すっかり注文通りだというようにほくほくして、両足をかっきり六十度
      に開いて立って、鷺のちぢめて降りて来る黒い脚を両手で片っ端から押えて、布の袋の中に
      入れるのでした。】
86かっきり:【両足をかっきり六十度に開いて立って、鷺のちぢめて降りて来る黒い脚を両手で片っ端か
      ら押えて、布の袋の中に入れるのでした。】
87ぺかぺか:【すると鷺は、蛍のように、袋の中でしばらく、青くぺかぺか光ったり消えたりしていました
      が、おしまいとうとう、みんなぼんやり白くなって、眼をつぶるのでした。】
88ぼんやり:【おしまいとうとう、みんなぼんやり白くなって、眼をつぶるのでした。】
89せいせい:【「ああせいせいした。どうもからだに恰度合うほど稼いでいるくらい、いいことはありませ
      んな。」というききおぼえのある声が、ジョバンニの隣りにしました。】
90きちん:【見ると鳥捕りは、もうそこでとって来た鷺を、きちんとそろえて、一つずつ重ね直しているの
      でした。】
91もじもじ:【「さあ、」ジョバンニは困って、もじもじしていましたら、カムパネルラは、わけもないという風
      で、小さな鼠いろの切符を出しました。】
92くつくつ:【もう大丈夫だと安心しながらジョバンニはそっちを見あげてくつくつ笑いました。】
93ちらちら:【そしてきまりが悪いのでカムパネルラと二人、また窓の外をながめていましたが、その鳥
      捕りの時々大したもんだというようにちらちらこっちを見ているのがぼんやりわかりました。】
94つやつや:【そしたら俄かにそこに、つやつやした黒い髪の六つばかりの男の子が赤いジャケツのぼ
      たんもかけずひどくびっくりしたような顔をしてがたがたふるえてはだしで立っていました。】
95がたがた:【男の子が赤いジャケツのぼたんもかけずひどくびっくりしたような顔をしてがたがたふる
      えてはだしで立っていました。】
96しくしく:【女の子は、いきなり両手を顔にあててしくしく泣いてしまいました。】
97ぐるぐる:【「わたしの大事なタダシはいまどんな歌をうたっているだろう、雪の降る朝にみんなと手を
      つないでぐるぐるにわとこのやぶをまわってあそんでいるだろうかと考えたりほんとうに待っ
      て心配していらっしゃるんですから、早く行っておっかさんにお目にかかりましょうね。」】
98やっ:【「あなた方はどちらからいらっしゃったのですか。どうなすったのですか。」さっきの燈台看守が
      やっと少しわかったように青年にたずねました。】
99ずんずん:【「そのうち船はもうずんずん沈みますから、私はもうすっかり覚悟してこの人たち二人を抱
      いて、浮べるだけは浮ぼうとかたまって船の沈むのを待っていました。」】
100ぼうっ:【「そのとき俄かに大きな音がして私たちは水に落ちもう渦に入ったと思いながらしっかりこの
      人たちをだいてそれからぼうっとしたと思ったらもうここへ来ていたのです。」】
101ぐったり:【そしてあの姉弟はもうつかれてめいめいぐったり席によりかかって睡
(ねむ)っていました。】
102ごとごとごとごと:【ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光の川の岸を進みました。】
103ぼおっ:【百も千もの大小さまざまの三角標、その大きなものの上には赤い点点をうった測量旗も
      見え、野原のはてはそれらがいちめん、たくさんたくさん集ってぼおっと青白い霧のよう、そ
      こからかまたはもっと向うからかときどきさまざまの形のぼんやりした狼煙
(のろし)のようなも
      のが、かわるがわるきれいな桔梗いろのそらにうちあげられるのでした。】
104ぱっちり:【にわかに男の子がぱっちり眼をあいて云いました。】
105にこにこにこにこ:【「お母さんがね立派な戸棚や本のあるとこに居てね、ぼくの方を見て手をだして
      にこにこにこにこわらったよ。」】
106ぞくっ:【青年はぞくっとしてからだをふるうようにしました。】
107ぴん:【「かささぎですねえ、頭のうしろのとこに毛がぴんと延びてますから。」青年はとりなすように云
      いました。】
108さっ:【青年はさっと顔いろが青ざめ、たって一ぺんそっちへ行きそうにしましたが思いかえしてまた
      座りました。】
109さめざめ:【そして青い橄欖
(かんらん)の森が見えない天の川の向うにさめざめと光りながらだんだん
      うしろの方へ行ってしまいそこから流れて来るあやしい楽器の音ももう汽車のひびきや風の
      音にすり耗
(へ)らされてずうっとかすかになりました。】
110ずうっ:【そこから流れて来るあやしい楽器の音ももう汽車のひびきや風の音にすり耗
(へ)らされて
      ずうっとかすかになりました。】
111さっさっ:【ジョバンニはその小さく小さくなっていまはもう一つの緑いろの貝ぼたんのように見える森
      の上にさっさっと青じろく時々光ってその孔雀がはねをひろげたりとじたりする光の反射を見
      ました。】
112ざあっ:【すると空中にざあっと雨のような音がして何かまっくらなものがいくかたまりもいくかたまり
      も鉄砲丸
(てっぽうだま)のように川の向うの方へ飛んで行くのでした。】
113ぴたっ:【するとぴたっと鳥の群は通らなくなりそれと同時にぴしゃぁんという潰れたような音が川下
      の方で起ってそれからしばらくしいんとしました。】
114ぴしゃぁん:【それと同時にぴしゃぁんという潰れたような音が川下の方で起ってそれからしばらくしい
      んとしました。】
115しいん:【それからしばらくしいんとしました。】
116ほっ:【女の子は小さくほっと息をしてだまって席へ戻りました。】
117しぃん:【そして車の中はしぃんとなりました。】
118ぐるぐる:【その葉はぐるぐるに縮れ葉の下にはもう美しい緑いろの大きな苞が赤い毛を吐いて真
      珠のような実もちらっと見えたのでした。】
119さやさや:【それはだんだん数を増して来てもういまは列のように崖と線路との間にならび思わずジ
      ョバンニが窓から顔を引っ込めて向う側の窓を見ましたときは美しいそらの野原の地平線の
      はてまでその大きなとうもろこしの木がほとんどいちめんに植えられてさやさや風にゆらぎそ
      の立派なちぢれた葉のさきからはまるでひるの間にいっぱい日光を吸った金剛石のように
      露がいっぱいについて赤や緑やきらきら燃えて光っているのでした。】
120きらきら:【その立派なちぢれた葉のさきからはまるでひるの間にいっぱい日光を吸った金剛石のよ
      うに露がいっぱいについて赤や緑やきらきら燃えて光っているのでした。】
121カチッカチッ:【その正面の青じろい時計はかっきり第二時を示しその振子は風もなくなり汽車もうご
      かずしずかなしずかな野原のなかにカチッカチッと正しく時を刻んで行くのでした。】
122はきはき:【うしろの方で誰かとしよりらしい人のいま眼がさめたという風ではきはき談
(はな)している
      声がしました。】
123くっきり:【にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ倒れるようになりインデアンはぴたっと立ちどま
      ってすばやく弓を空にひきました。】
124ぴたっ:【インデアンはぴたっと立ちどまってすばやく弓を空にひきました。】
125ふらふら:【そこから一羽の鶴がふらふらと落ちて来てまた走り出したインデアンの大きくひろげた両
      手に落ちこみました。】
126きらっきらっ:【そしてその鶴をもってこっちを見ている影ももうどんどん小さく遠くなり電しんばしらの
      碍子
(がいし)がきらっきらっと続いて二つばかり光ってまたとうもろこしの林になってしまいまし
      た。】
127どんどんどんどん:【どんどんどんどん汽車は降りて行きました。】
128しょんぼり:【汽車が小さな小屋の前を通ってその前にしょんぼりひとりの子供が立ってこっちを見て
      いるときなどは思わずほうと叫びました。】
129ほう:【しょんぼりひとりの子供が立ってこっちを見ているときなどは思わずほうと叫びました。】
130ちらちら:【もうそして天の川は汽車のすぐ横手をいままでよほど激しく流れて来たらしくときどきちら
      ちら光ってながれているのでした。】
131どぉ:【その時向う岸ちかくの少し下流の方で見えない天の川の水がぎらっと光って柱のように高く
      はねあがりどぉと烈しい音がしました。】
132きらっきらっ:【その柱のようになった水は見えなくなり大きな鮭や鱒がきらっきらっと白く腹を光らせ
      て空中に抛り出されて円い輪を描いてまた水に落ちました。】
133ギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−:【「それから彗星
(ほうきぼし)がギ−ギ−フ−ギ−ギ−フ−て云って来た
      ねえ。」】
134ざわざわ:【その火がだんだんうしろの方になるにつれてみんなは何とも云えずにぎやかなさまざま
      の楽の音や草花の匂のようなもの口笛や人々のざわざわ云う声やらを聞きました。】
135そわそわ:【カムパネルラのとなりの女の子はそわそわ立って支度をはじめましたけれどもやっぱり
      ジョバンニたちとわかれたくないようなようすでした。】
136きちっ:【青年はきちっと口を結んで男の子を見おろしながら云いました。】
137すうっ:【けれどもそのときはもう硝子
(ガラス)の呼子は鳴らされ汽車はうごき出しと思ううちに銀いろ
      の霧が川下の方からすうっと流れて来てもうそっちは何も見えなくなりました。】
138さんさん:【ただたくさんのくるみの木が葉をさんさんと光らしてその霧の中に立ち黄金の円光をも
      った電気栗鼠
(りす)が可愛い顔をその中からちらちらのぞいているだけでした。】
139ちらちら:【その霧の中に立ち黄金の円光をもった電気栗鼠
(りす)が可愛い顔をその中からちらち
      らのぞいているだけでした。】
140すうっ:【そのときすうっと霧がはれかかりました。】
141ぽかっ:【そして二人がそのあかしの前を通って行くときはその小さな豆いろの火はちょうど挨拶で
      もするようにぽかっと消え二人が過ぎて行くときまた点くのでした。】
142ふう:【ジョバンニが胸いっぱい新らしい力が湧くようにふうと息をしながら云いました。】
143ぎくっ:【ジョバンニはそっちを見てまるでぎくっとしてしまいました。】
144どほん:【天の川の一とこに大きなまっくらな孔
(あな)がどほんとあいているのです。】
145しんしん:【その底がどれほど深いかその奥に何があるかいくら眼をこすってのぞいてもなんにも見
      えずただ眼がしんしんと痛むのでした。】
146はっ:【ジョバンニははっと思って涙をはらってそっちをふり向きました。】
147ぽかっ:【するといきなりジョバンニは自分というものがじぶんの考というものが、汽車やその学者や
      天の川やみんないっしょにぽかっと光ってしぃんとなくなってぽかっとともってまたなくなって
      そしてその一つがぽかっとともるとあらゆる広い世界ががらんとひらけあらゆる歴史がそなわ
      りすっと消えるともうがらんとしたただもうそれっきりになってしまうのを見ました。】
148しぃん:【汽車やその学者や天の川やみんないっしょにぽかっと光ってしぃんとなくなってぽかっとと
      もってまたなくなってそしてその一つがぽかっとともるとあらゆる広い世界ががらんとひらけ
      あらゆる歴史がそなわりすっと消えるともうがらんとしたただもうそれっきりになってしまうの
      を見ました。】
149がらん:【あらゆる広い世界ががらんとひらけあらゆる歴史がそなわりすっと消えるともうがらんとし
      たただもうそれっきりになってしまうのを見ました。】
150すっ:【あらゆる歴史がそなわりすっと消えるともうがらんとしたただもうそれっきりになってしまうの
      を見ました。】
151カチカチ:【そしてポケットが大へん重くカチカチ鳴るのに気がつきました。】

 『銀河鉄道の夜
〔初期形第三次稿〕』のオノマトペ
                       まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝(^ ^;
                                                       2006.5.30.

 
 


『ポラーノの広場』の第十六話です。
        前十七等官 レオ−ノキュ−スト 誌                                                    宮沢賢治 訳述      そのころわたくしは                                                     モリ−オ市の博物局に勤めて居りました。       十八等官でしたから                                                 役所のなかでもずうっと下の方でしたし                            俸給もほんのわずかでしたが、      受持ちが標本の採集や整理で、                                  生れ付き、好きなことでしたから、                                  わたくしは毎日ずいぶん愉快にはたらきました。      殊(こと)にそのころ、モリ−オ市では                                競馬場を植物園に拵(こしらえ)え直すというので、               その景色のいいまわりに                                              アカシヤを植え込んだ広い地面が、      切符売場や信号所の建物のついたまま                           わたくしどもの役所の方へまわって来たものですから、

     わたくしはすぐ宿直という名前で                                    月賊で買った小さな蓄音器と                                      二十枚ばかりのレコ−ドをもって                                    その番小屋にひとり住むことになりました。
****** 『ポラーノの広場』 81p ******
 

 少年たちは、つめくさの花の番号を数えて、探していたのら、『ポラーノの広場』。

 っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその74』だよん。(^ ^;

 「だめだ、磁石じゃ探せないから。」とぼんやり云いました。
 「磁石で探せないって?」私はびっくりしてたずねました。
 「ああ。」子どもは何か心もちのなかにかくしていたことを見られたというように少しあわてま
した。
 「何を探すっていうの?」
 子どもはしばらくちゅうちょしていましたがとうとう思い切ったらしく云いました。
 「ポラーノの広場。」
 「ポラーノの広場? はてな、聞いたことがあるようだなあ。何だったろうねえ、ポラーノの広
場。」
 「昔ばなしなんだけれどもこのごろまたあるんだ。」
 「ああそうだ。わたしも小さいとき何べんも聞いた。野はらのまんなかの祭のあるとこだろう。
あのつめくさの花の番号を数えて行くというのだろう。」
                                 
(丸写しオシマイ)
 『賢治童話を丸写しシリーズその74』でした。


 ポラーノの広場漫画の紹介はできましぇん。

            さびしかぁぁぁぁ。

 

 漫画版『ポラーノの広場』は、おそらく多分ありましぇん。
 漫画版『竜と詩人』も、おそらく多分ありましぇん。

 っつーことで漫画の紹介は、ずうっとしばらくシバラク暫く、お待ちくなさい。(^ ^;


  ポラーノの広場 お気に入りオノマトペ
           「おや、つめくさのあかりがついたよ。」                                ファゼーロが叫びました。                                             なるほど向うの黒い草むらのなかに                                 小さな円いぼんぼりのような白いつめくさの花が                    あっちにもこっちにもならび                                            そこらはむっとした蜂蜜のかおりでいっぱいでした。     「あのあかりはねえ、そばでよく見ると                                  まるで小さな蛾の形の青じろいあかりの集りだよ。」             「そうかねえ、わたしはたった一つのあかしだと思っていた。」       「そら、ね、ごらん、そうだろう、                                         それに番号がついてるんだよ。」      わたしたちはしゃがんで花を見ました。                              なるほど一つ一つの花には                                           そう思えばそうというような                                            小さな茶いろの算用数字みたいなものが                          書いてありました。     「ミーロ、いくらだい。」                                                「一千二百五十六かな、いや一万七千五十八かなあ。」      「ぼくのは三千四百二十……六だよ。」      「そんなにはっきり書いてあるかねえ。」                               わたくしにはどうしてもそんなにはっきりは                            読むことができませんでした。      けれども花のあかりは                                                あっちにもこっちにももうそこらいっぱいでした。
 季節: 五月下旬〜十月                   「三千八百六十六、                                                 五千まで数えればいいんだから                                     ポラーノの広場はもうじきそこらな筈なんだけれども。」

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=5つが最高。)
35
くびっ:【じいさんはのどをくびっと鳴らしました。】

▼ボクの好きなオノマトペ(再読)=5つが最高。)
81
がじゃっ:【すると間もなくさっきの扉ががじゃっとあいて馬車別当がまっ青になってよろよろ
      しながら出てきました。】
98
チャキチャキ:【これなら、今夜よく寝(やす)んで、あしたは大学のあの地下になった標本室で
      向うの助手といちにち暮しても大丈夫だと思って、気もちよく青い植木鉢や、ア−ティ
      ストの白い指の動くのや、チャキチャキ鳴る鋏
(はさみ)の影をながめて居りました。】
 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

 くびっ:【じいさんはのどをくびっと鳴らしました。】
 がじゃっ:【すると間もなくさっきの扉ががじゃっとあいて馬車別当がまっ青になってよろよろ
      しながら出てきました。】
 チャキチャキ:【これなら、今夜よく寝(やす)んで、あしたは大学のあの地下になった標本室で
      向うの助手といちにち暮しても大丈夫だと思って、気もちよく青い植木鉢や、ア−ティ
      ストの白い指の動くのや、チャキチャキ鳴る鋏
(はさみ)の影をながめて居りました。】

 くびっ、がじゃっ、チャキチャキ、っつーの、どれもビミョーに変だにゃぁ。
 フツー、
ぐびっ、がちゃっ、チョキチョキ、だよね。(^ ^;


        「ファゼーロかい。」                                                      いきなり向うから声がしました。         「ああ、来たよ。やっているかい。」              「やってるよ。とてもにぎやかなんだ。                                  山猫博士も来ているようだぜ。」         「山猫博士?」                                                         ファゼーロはぎくっとしたようすでした。         「けれどもいっしょに行こう。                                            ポラーノの広場は誰だって                                           見附けた人は行っていいんだから。」         「よし行こう。」                                                          ファゼーロははっきり云いました。  

        わたくしどもはそのあかりをめあてに                                  あるいて行きました。
****** ポラーノの広場オノマトペ ******
 

@ずうっ:【十八等官でしたから役所のなかでもずうっと下の方でしたし俸給もほんのわずかでし
      たが、受持ちが標本の採集や整理で、生れ付き、好きなことでしたから、わたくしは毎
      日ずいぶん愉快にはたらきました。】
Aぎらぎら:【あのイ−ハト−ヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい
      森で飾られたモリ−オ市、郊外のぎらぎらひかる草の波、】
Bきらきら:【もう日はよほど登って、まわりはみんなきらきらしていました。】
Cしん:【すると小屋のなかはしんとして藁が凹
(へこ)んでいるだけであのみじかい角も白い髪も見
      えませんでした。】
Dぐるっ:【わたくしは半分わらうように半分つぶやくようにしながら、向うの信号所から、いつも放
      して遊ばせる輪道の内側の野原、ポプラの中から顔を出している市はずれの白い教
      会の塔までぐるっと見まわしました。】
Eやっぱり:【うまやを一まわりしてみましたがやっぱりどこにも居ませんでした。】
Fさっぱり:【もう戻ろう、けれどもいま戻るとあの女の人たちを通り越して行かなければならない、
      まあ散歩のつもりでもすこし行こう、けれどもさっぱりたよりのない散歩だなあ、わたく
      しはひとりでにがわらいしました。】
Gきっ:【「山羊だよ。ああきっとあれだ。ファゼ−ロがいまごろ山羊なんぞ連れてあるく筈ないん
      だから。」】
Hぎらぎら:【子どもは山羊の首から帯皮をとりながら畑の向うでかげろうにぎらぎらゆれている
      やっと青みがかったアカシヤの列を見ました。】
Iやっ:【やっと青みがかったアカシヤの列を見ました。】
Jぱっ:【すると子どもは顔をぱっと熱
(ほて)らせましたがまたあたりまえになって 「だめだ、磁石
      じゃ探せないから。」とぼんやり云いました。】
Kぼんやり:【「だめだ、磁石じゃ探せないから。」とぼんやり云いました。】
Lとうとう:【子どもはしばらくちゅうちょしていましたがとうとう思い切ったらしく云いました。】
Mぐずぐず:【「おい、ここら何をぐずぐずしてるんだ。」】
Nパチッ:【百姓は顔をまっ赤にして手をあげて革むちをパチッと鳴らしました。】
Oパチッパチッ:【百姓はわたくしの顔の前でパチッパチッとはげしく鞭
(むち)を鳴らしました。】
Pさぁっ:【わたくしはさぁっと血が頭にのぼるのを感じました。】
Qごちゃごちゃ:【山羊に追いついてから、ふりかえって見ますと畑いちめん紺いろの地平線ま
      でにぎらぎらのかげろうで百姓の赤い頭巾もみんなごちゃごちゃにゆれていました。】
Rピカッ:【その向うの一そう烈しいかげろうの中でピカッと白くひかる農具と黒い影法師のよう
      にあるいている馬とファゼ−ロかそれともほかのこどもかしきりに手をふって馬をうご
      かしているのをわたくしは見ました。】
Sちゃん:【「ああ、先頃はありがとう。地図はちゃんと仕度しておいたよ。」】
21やっぱし:【「テ−モ、やっぱし何だか聞いたような名だなあ。」】
22ぼろぼろ:【すると山羊小屋の中からファゼ−ロよりも三つばかり年上のちゃんときゃはんを
      はいてぼろぼろになった青い皮の上着を着た顔いろのいいわか者が出てきてわたく
      しにおじぎしました。】
23ばたん:【わたくしはばたんと戸をしめてファゼ−ロとミ−ロのあとに立ちました。】
24ずんずん:【「僕ばかな小さいときだから、ずんずん行ったんだ。」】
25そっ:【わたくしはこの前のことを思いだしながらそっとたずねました。】
26とっぷり:【そのときはもう、あたりはとっぷりくらくなって西の地平線の上が古い池の水あかり
      のように青くひかるきりそこらの草も青黝
(ぐろ)くかわっていました。】
27むっ:【なるほど向うの黒い草むらのなかに小さな円いぼんぼりのような白いつめくさの花が
      あっちにもこっちにもならびそこらはむっとした蜂蜜のかおりでいっぱいでした。】
28はっきり:【「そんなにはっきり書いてあるかねえ。」】
29どんどん:【わたくしどもはじつにいっぱいに青じろいあかりをつけて向うの方はまるで不思議
      な縞物のように幾条にも縞になった野原をだまってどんどんあるきました。】
30だんだん:【その野原のはずれのまっ黒な地平線の上では、そらがだんだんにぶい鋼
(はがね)
      のいろに変っていくつかの小さな星もうかんできましたしそこらの空気もいよいよ甘く
      なりました。】
31ぼぉっ:【そのうち何だかわたくしどもの影が前の方へ落ちているようなのでうしろを振り向い
      て見ますと、おお、はるかなモリ−オの市のぼぉっとにごった灯照
(ほて)りのなかから
      十六日の青い月が奇体に平べったくなって半分のぞいているのです。】
32ぶんぶん:【「ああ、蜂が、ごらん、さっきからぶんぶんふるえているのは、月が出たので蜂が
      働きだしたのだよ。」】
33ずっ:【「そうでないよ。蜂ならぼくはずっと前から知っているんだ。」】
34ぼぉ:【ぼぉとたしかにトロ−ンボ−ンかバスの音がきこえました。】
35くびっ:【じいさんはのどをくびっと鳴らしました。】
36よろよろ:【じいさんは額を押えてよろよろしました。】
37ぶりぶり:【じいさんはぶりぶり怒ってぐんぐんつめくさの上をわたって南の方へ行ってしまいま
      した。】
38ぐんぐん:【ぐんぐんつめくさの上をわたって南の方へ行ってしまいました。】
39ひょろひょろ:【「いのししむしゃのかぶとむし つきのあかりもつめくさの ともすあかりも眼に
      入らず めくらめっぽに飛んで来て 山猫馬丁につきあたり あわてて ひょろひょろ」】
40わざわざ:【「ミ−ロ、おまえの歌は上手だよ。わざわざポラ−ノの広場まで習いに行かなくても
      いいや。」】
41むしゃくしゃ:【その日はわたくしは役所で死んだ北極熊を剥製にするかどうかについてひどく仲
      間と議論をして大へんむしゃくしゃしていましたから少し気を直すつもりで酒石酸をつめ
      たい水に入れて呑んでいましたらずうっと遠くですきとおった口笛が聞えました。】
42すっかり:【「わかったよ、とうとう。僕ゆうべ行くみちへすっかり方角のしるしをつけて置いた。」】
43ぼんやり:【わたくしどもがこの前別れたところへ来たころは丁度夕方の青いあかりがつめくさに
      ぼんやり注いでいて、その葉の爪の痕のような紋ももう見えなくなりかかったときでした。】
44ぴたり:【ファゼ−ロはしばらく経
(た)ってぴたりと止まりました。】
45りん:【処々
(ところどころ)にはせいの高い赤いあかりもりんと灯(とも)りその柄の所には緑いろのしゃ
      んとした葉もついていたのです。】
46しゃん:【その柄の所には緑いろのしゃんとした葉もついていたのです。】
47りいんりいん:【俄かにどこからか甲
(かぶと)虫の鋼の翅(はね)がりいんりいんと空中に張るような音
      がたくさん聞えてきました。】
48がやがや:【その音にまじってたしかに別の楽器や人のがやがや云う声が時々ちらっときこえて
      またわからなくなりました。】
49ちらっ:【時々ちらっときこえてまたわからなくなりました。】
50ぎくっ:【「山猫博士?」ファゼ−ロはぎくっとしたようすでした。】
51ちらちら:【木の下では白いシャツや黒い影やみんながちらちら行ったり来たりしています。】
52きらきら:【さっきの青いのは可成
(かなり)大きなはんの木でしたがその梢(こずえ)(こずえ)からはた
      くさんのモ−ルが張られてその葉まできらきらひかりながらゆれていました。】
53ぐるぐるぐるぐる:【その上にはいろいろな蝶や蛾が列になってぐるぐるぐるぐる輪をかいていた
      のです。】
54ばらばら:【一まわり踊りがすむとみんなはばらばらになってコップをとりました。】
55わあわあ:【そしてわあわあ叫びながら呑みほしています。】
56がぶがぶ:【「あれが山猫博士だよ。」ファゼ−ロが向うの卓にひとり座ってがぶがぶ酒を呑んで
      いる黄いろの縞のシャツと赤皮の上着を着た肩はばのひろい男を指さしました。】
57たじたじ:【ファゼ−ロはたじたじ後退りしました。】
58しいん:【どういうわけかみんなしいんとして穴の明くほどわたくしどものことばかり見ています。】
59ぐるっ:【みんなは呆れてだんだんやめてぐるっとデストゥパ−ゴのまわりに立ってしまいました。】
60ざわざわ:【しまいにはみんなの前を踏むようなかたちをして行ったりいきなり喧嘩でも吹っかけ
      るときのようにはねあがったりみんなはそのたんびにざわざわ遁
(に)げるようになりまし
      た。】
61パチパチ:【みんなはパチパチ手を叩きました。】
62がぶっ:【するとデストゥパ−ゴはいきなり酒をがぶっと呑みました。】
63ぐるぐる:【すると何のことはない、デストゥパ−ゴはそのみじかいナイフを剣のように持って一生
      けんめいファゼ−ロの胸をつきながら後退りしましたしファゼ−ロは短刀をもつように柄
      をにぎってデストゥパ−ゴの手首をねらいましたので、三度ばかりぐるぐるまわってからデ
      ストゥパ−ゴはいきなりナイフを落して、左の手で右の手くびを押さえてしまいました。】
64がやがやがやがや:【みんなはあとでまだがやがやがやがや云っていました。】
65じっ:【すると所長は一枚の紙きれを持って扉をあける前から恐い顔つきをしてわたくしの方を見
      ていましたが、わたくしが前へ行って恭
(うやうや)しく礼をすると、またじっとわたくしの様子
      を見てからだまってその紙切れを渡しました。】
66ちらっ:【所長は安心したようにやっと顔つきをゆるめてちらっと時計を見上げましたが「よし、す
      ぐ行くように。」と云いました。】
67どきどき:【巨
(おお)きな桜の街路樹の下をあるいて行って警察の赤い練瓦造りの前に立ちました
      らさすがにわたくしもすこしどきどきしました。】
68がらん:【そこはがらんとした窓の七つばかりある広い室
(へや)でした−がその片隅みにあの山猫
      博士の馬車別当がからだを無暗にこわばらしてじつに青ざめた変な顔をしながら腰掛け
      て待って居りました。】
69うろうろ:【するとじいさんはこんな悪者と話し合ってはどんな眼にあうかわからないというようにう
      ろうろどこか遁げ口でもさがすように立ちあがって、またべったり座りました。】
70べったり:【どこか遁げ口でもさがすように立ちあがって、またべったり座りました。】
71がたがた:【じいさんはやっと云いましたがそれからがたがたふるえました。】
72がたっ:【いきなり奥の扉ががたっとあきました。】
73しょんぼり:【ファゼ−ロが居ない、ファゼ−ロが居ない、あの青い半分の月のあかりのなか、争
      って勝ったあとのあの何とも云われないさびしい気持をいだきながら、ファゼ−ロがつめ
      くさのあおじろいあかりの上に影を長く長く引いて、しょんぼりと帰って行った、そこには
      麻の夏外套のえりを立てたデストゥパ−ゴが三四人の手下を連れて待ち伏せしている、
      ファゼ−ロがそれを見て立ちどまると向うは笑いながらしずかにそばへ追って来る、いき
      なり一人がファゼ−ロを撲りつける、みんなたかって来て、むだに手をふりまわすファゼ
      −ロをふんだりけったりする、ファゼ−ロは動かなくなる、デストゥパ−ゴがそれをまため
      ちゃくちゃにふみつける、ええもう仕方ない持ってけ持ってけとデストゥパ−ゴが云う、み
      んなはそれを乾溜工場のかまの中に入れる。】
74めちゃくちゃ:【ファゼ−ロは動かなくなる、デストゥパ−ゴがそれをまためちゃくちゃにふみつけ
      る、】
75ぞっ:【わたくしはひとりでかんがえてぞっとして眼をひらきました。】
76しいん:【突然わたくしは頭がしいんとなってしまいました。】
77どん:【隣りの室でかすかなすすり泣きの声がしてそれからそれは何とかだっ、叫びながらおどす
      ように足をどんとふみつけているのです。】
78がちっ:【するとまたしばらくしずかになっていましたが間もなく扉のとってが力なくがちっとまわっ
      てロザ−ロが眼を大きくあいてよろめくようにでてきました。】
79おろおろ:【中ではこんどは山猫博士の馬車別当が何か訊かれているようす、たびたび、何か高
      声でどなりつけるたびに馬車別当のおろおろした声がきこえていました。】
80ごちゃごちゃ:【わたくしはその間にすっかり考えをまとめようと思いましたが、何もかもごちゃごち
      ゃになってどうしてもできませんでした。】
81がじゃっ:【すると間もなくさっきの扉ががじゃっとあいて馬車別当がまっ青になってよろよろしなが
      ら出てきました。】
82ぱちぱち:【そこにはも一人正面に卓に書類を載せて鬚の立派な一人の警部らしい人がたったい
      まあくびをしたところだというふうに目をぱちぱちしながらこっちを見ていました。】
83せいせい:【「わたくしはあれですっかりかたが着いたと思ってせいせいして働いていたのでありま
      す。」】
84どきっ:【わたくしはどきっとしました。】
85どうどう:【すると大扇風機から風がどうどうやって来ました。】
86ぱたぱた:【尤も私の席はその風の通り路からすこし外れていましたから格別涼しかったわけでも
      ありませんでしたがそれでも向うの書類やテ−ブルかけがぱたぱた云っているのを見る
      のは実際愉快なことでした。】
87ふっ:【それでもそんな仕事のあいまにふっとファゼ−ロのことを思いだすと胸がどかっと熱くなっ
      てもうどうしたらいいかわからなくなるのでした。】
88どかっ:【胸がどかっと熱くなってもうどうしたらいいかわからなくなるのでした。】
89うつらうつら:【その八月二日の午すぎ、わたくしが支那漢時代の石に刻んだ画の説明をうつらう
      つら写していましたら、給仕がうしろからいきなりわたくしの首すじを突っついて、「所長さ
      ん来いって。」といいました。】
90むっ:【わたくしはすこしむっとしてふり返りましたら給仕はまた威張って云いました。】
91ほくほく:【わたくしはまるでほくほくしてしまいました。】
92てかてか:【すると給仕はてかてかの髪をちょっと撫でて 「はい、誠にお気の毒でございますが、
      当地方には、毒蛾がひどく発生して居りまして、夕刻からは窓をあけられませんのでござ
      います。只今、扇風機を運んで参ります。」と云ったのでした。】
93ぐったり:【向うには、髪もひげもまるで灰いろの、肥ったふくろうのようなおじいさんが、安楽椅子
      にぐったり腰かけて、扇風機にぶうぶう吹かれながら、「給仕をやっていながら、一通りの
      ホテルの作法も知らんのか。」と頬をふくらして給仕を叱りつけていました。】
94ぶうぶう:【扇風機にぶうぶう吹かれながら、「給仕をやっていながら、一通りのホテルの作法も知
      らんのか。」と頬をふくらして給仕を叱りつけていました。】
95どしどし:【そして、どしどし階段を踏んで、通りに下りました。】
96ぞろっ:【それは向側の鏡が、九枚も上手に継いであって、店が丁度二倍の広さに見えるようにな
      って居り、糸杉やこめ栂(つが)の植木鉢がぞろっとならび、親方らしい隅のところで指図
      をしている人のほかに職人がみなで六人もいたのです。】
97ずんずん:【さて、私の頭はずんずん奇麗になり、疲れも大へん直りました。】
98チャキチャキ:【これなら、今夜よく寝
(やす)んで、あしたは大学のあの地下になった標本室で向うの
      助手といちにち暮しても大丈夫だと思って、気もちよく青い植木鉢や、ア−ティストの白い
      指の動くのや、チャキチャキ鳴る鋏
(はさみ)の影をながめて居りました。】
99プイッ:【親方のア−ティストは、少ししゃくにさわったと見えて、プイッとうしろを向いて、フラスコを
      持ったまま向うへ行ってしまいました。】
100ぷんぷん:【デストゥパ−ゴはぷんぷん怒りだしました。】
101ずんずん:【「きさまの店を訴えるぞ。」と云いながら、ずんずん赤くはれて行く頬を鏡で見ていま
      した。】
102シャアシャア:【ア−ティストは、つめたい水でシャアシャアと私の頭を洗い時々は指で顔も拭い
      ました。】
103すっ:【あちこちの工場の笛は一斉に鳴り、子供らは叫び、教会やお寺の鐘まで鳴り出して、そ
      れから電燈がすっと消えたのです。】
104ぐらぐら:【それはあのセンダ−ドの市の大きな西洋造りの並んだ通りに、電気が一つもなくて、
      並木のやなぎには、黄いろの大きなランプがつるされ、みちにはまっ赤な火がならび、そ
      のけむりはやさしい深い夜の空にのぼって、カシオピイアもぐらぐらゆすれ、琴座も朧に
      またたいたのです。】
105ガラン:【その声はガランとした通りに何べんも反響してそれから闇に消えました。】
106つかつか:【ところがその撃剣の先生はつかつかと歩いて来ました。】
107すたすた:【その声がだんだん遠くなってどこかの町の角でもまがったらしいときその青い海の
      中のような床屋の店のなかからとうとうデストゥパ−ゴが出て来てしばらく往来を見まわし
      てからすたすた南の方へあるきだしました。】
108ぐんぐん:【わたくしは知らないふりをしてぐんぐん歩いて行きました。】
109ぶるぶる:【デストゥパ−ゴは毒蛾のためにふくれておかしな格好になった顔でななめにわたくし
      を見ながらぶるぶるふるえてまるで聞きとれないくらい早口に云いました。】
110かちかち:【デストゥパ−ゴは何か瓶をかちかち鳴らしてから白いきれで顔を押えながら出て来
      ました。】
111しゃん:【所長はカラ−をはめてしまってしゃんとなりました。】
112とろとろ:【するとやっぱりよほど疲れていたと見えてちょっと椅子へかけたと思ったらいつかも
      うとろとろ睡
(ねむ)ってしまっていました。】
113ぐらぐら:【俄かに舟がぐらぐらゆれ何でも恐ろしくむかし風の竜が出てきてわたくしははねとば
      されて岩に投げつけられたと思って眼をさましました。】
114ぐんぐん:【雲が黄ばんでけわしくひかりながら南から北へぐんぐん飛んで居りました。】
115ひっそり:【けれども野原はひっそりとして風もなくただいろいろの草が高い穂を出したり変にも
      つれたりしているばかり、夏のつめくさの花はみんな鳶いろに枯れてしまってその三つ葉
      さえ大へん小さく縮まってしまったように思われました。】
116ぽっ:【そこの草穂のかげに小さな小さなつめくさの花が青白くさびしそうにぽっと咲いていまし
      た。】
117どうっ:【俄かに風が向うからどうっと吹いて来て、いちめんの暗い草穂は波だち、私のきものの
      すきまからはその冷たい風がからだ一杯に浸みこみました。】
118ざぁっ:【おしまい何と云ったか風がざぁっとやって来て声をもって行ってしまいました。】
119ざわざわざわざわ:【のはらはだんだん草があらくなってあちこちには黒い藪も風に鳴りたびた
      び柏の木か樺の木かがまっ黒にそらに立ってざわざわざわざわゆれているのでした。】
120ちらちら:【その大きな黒い建物の窓にちらちらあかりが射しているのです。】
121どっ:【みんなはどっとわらいました。】
122ぐっ:【みんなはぐっと呑みました。】
123がたっ:【私も呑んでがたっとふるえました。】
124パチパチ:【みんなはパチパチ手を叩いてわらいました。】

 『ポラーノの広場』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝 (^ ^;
                                                      2006.6.03.

 
 


          『ポラーノの広場』の第十七話です。
   竜のチャ−ナタは洞(ほら)のなかへさして来る                     上げ潮からからだをうねり出した。   洞(ほら)の隙間から朝日がきらきら射して来て                    水底の岩の凹凸(おうとつ)を                                       はっきり陰影で浮き出させ、                                         またその岩につくたくさんの                                            赤や白の動物を写し出した。   チャ−ナタはうっとり                                                   その青くすこし朧(おぼ)ろな水を見た。

   それから洞(ほら)のすきまを通して                                  火のようにきらきら光る海の水と                                     浅黄いろの天末にかかる火球日天子の座を見た。   〔おれはその幾千由旬の海を自由に潜(かつ)ぎ、                その清いそらを絶え絶え息して                                      黒雲を巻きながら翔(か)けれるのだ。〕   〔それだのにおれはここを出て行けない。                             この洞(ほら)の外の海に通ずる隙間は                            辛(から)く外をのぞくことができるに過ぎぬ。〕       〔聖竜王、聖竜王。わたくしの罪を許し                              わたくしの呪(のろい)をお解きください。〕
               チャ−ナタはかなしくまた                                             洞(ほら)のなかをふりかえり見た。
  ******* 『竜と詩人』 5p *******
 

 ゲージュツの著作権問題、考えさせるにゃぁ(オミャァに云われたくねぇだ!)、『竜と詩人』。

 っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその75』だよん。(^ ^;

 そのとき竜は洞
(ほら)の外で人の若々しい声が呼ぶのを聴いた。竜は外をのぞいた。
 〔敬うべき老いた竜チャ−ナタよ。朝日の力をかりてわたしはおまえに許しを乞いに来た。〕
 瓔珞
(ようらく)をかざり黄金(きん)の大刀をはいた一人の立派な青年が外の畳石の青い苔にすわっ
ていた。
 〔何を許せというのか。〕
 〔竜よ。昨日の誌賦
(しふ)の競いの会に、わたしも出て歌った。そしてみんなは大へんわたしをほ
めた。いちばん偉い詩人のアルタは座を下りて来て、わたしを礼してじぶんの高い座にのぼせ
(二字空白)の草蔓(くさつる)をわたしに被(かぶ)せて、わたしを賞(ほ)める四句の偈(げ)をうたい、じぶん
は遠く東の方の雪ある山の麓に去った。わたしは車にのせられてわたくしのうたった歌のうつくし
さに酒のように酔いみんなのほめることばや、わたしを埋める花の雨にわれを忘れて胸を鳴らし
ていたが、夜更けてわたしは長者のルダスの家を辞してきらきらした草の露を踏みながらわたし
の貧しい母親のもとに戻るとき月天子
(がってんし)の座に瑪瑙(めのう)の雲がかかりくらくなったのでわ
たくしがそれをふり仰いでいたら、誰かミルダの森で斯
(こ)うひそひそ語っているのを聞いた。
 《わかもののス−ルダッタは洞
(ほら)に封ぜられているチャ−ナタ老竜の歌をぬすみ聞いてそれ
を今日歌の競べにうたい古い詩人のアルタを東の国に去らせた》 わたしはどういうわけか足が
ふるえて思うように歩けなかった。そして昨夜一ばんそこらの草はらに座って悶えた。考えて見
るとわたしはここにおまえの居るのを知らないでこの洞
(ほら)穴のま上の岬に毎日座り考え歌い
つかれては眠った。そしてあのうたはある雲くらい風の日のひるまのまどろみのなかで聞いたよ
うな気がする。そこで老いたる竜のチャ−ナタよ。わたくしはあしたから灰をかぶって街の広場
に座りおまえとみんなにわびようと思う。あのうつくしい歌を歌った尊ぶべきわが師の竜よ。おま
えはわたしを許すだろうか。〕
                 
(丸写しオシマイ)
 『賢治童話を丸写しシリーズその75』でした。

ps.『著作権』について、このホムペ『イーハトーヴのオノマトペ』は、完璧に著作権侵害ですね。
   文字数から見れば、95%以上が著作権侵害ですよ。宮沢賢治クン、ごみんね。
   あきれ果てる、っつーか、ごりっぱ、っつーか、たいしたもんだなす、我ながら。
   (んなこと自慢すんなぁぁぁぁぁ!)
   ま、アマチュアなんて、こんなもんずら。
   って開き直っちゃうわけなんですが、まぁまぁ、怒んないでボクの言い訳を聞いてくださいよぉ。
   95%以上の著作権侵害は、逆に云うと、5%未満のボクらしさ、5%未満のジブン探しが面白
 いんだなす、ボクにとってはね。つまり、95%以上の美
(=宮沢賢治童話など)で着飾る5%未満の
 ブッサイクなボクの厚化粧・悪あがきがなんとなしに面白いんだなす、ボクにとってはね。
   虎の威を借る狐状態、他人のフンドシじゃないと相撲が取れないんだなす、馬鹿にされたい症
 候群なボクは。
   『竜と詩人』のホムペを作らない限り、こんなアホ文章も浮かばない、っつーことなんすよ。
   ほんと〜〜〜に、アイデンティティーが薄っぺら、オリジナリティ足りないんだなす、ボクって。
   『馬鹿にされたい症候群』、っつーのが、唯一ボクのオリジナリティかも知んないにゃぁ。(^ ^;
   (やれやれまた自慢してるじゃん、やっだねぇぇぇぇぇ!)
   アマチュアの自慢話ほどつまんないものはない! だなす。(んだんだ。)(^ ^;


  竜と詩人 お気に入りオノマトペ
       〔あのうつくしい歌を歌った尊ぶべきわが師の竜よ。                 おまえはわたしを許すだろうか。〕    〔東へ去った詩人のアルタは                                           どういう偈(げ)でおまえをほめたろう〕 
   〔わたしはあまりのことに心が乱れて                                   あの気高い韻を覚えなかった。                                      けれども多分は      風がうたい                                                                雲が応じ                                                                 波が鳴らす                                                               そのうたを                                                                 ただちにうたう                                                             ス−ルダッタ      星が                                                                      そうなろうと思い                                                         陸地が                                                                   そういう形をとろうと覚悟する      あしたの世界に叶うべき                                                 まことと美との模型をつくり                                              やがては世界を                                                          これにかなわしむる予言者、                                           設計者ス−ルダッタ        と、こういうことであったと思う〕

 季節: 不明                      〔尊敬すべき詩人アルタに                                             幸(さいわい)あれ。〕

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=ありましぇん。


▼ボクの好きなオノマトペ(再読)=ありましぇん。

 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」
 なぬぅ? ありましぇん?? どういうこっちゃ???

 たった4種のオノマトペじゃぁ、「ありましぇん」も、仕方なかっぺさ。(^ ^;


   〔ス−ルダッタよ、あのうたこそは                                       わたしのうたでひとしくおまえのうたである。〕   〔いったいわたしはこの洞(ほら)に居て                                うたったのであるか考えたのであるか。                              おまへはこの洞(ほら)の上にいて                                   それを聞いたのであるか考えたのであるか。〕   〔おおス−ルダッタ。                                                   そのときわたしは雲であり風であった、                              そしておまえも雲であり風であった。〕   〔詩人アルタがもしそのときに冥想すれば                           恐らく同じいうたをうたったであろう。〕   〔けれどもス−ルダッタよ。                                              アルタの語(ことば)とおまえの語はひとしくなく                      おまえの語とわたしの語はひとしくない                              韻も恐らくそうである。〕   〔この故にこそあの歌こそはおまえのうたで                            またわれわれの雲と風とを御する分の                              その精神のうたである。〕


   〔おお竜よ。そんならわたしは許されたのか。〕
                      〔誰が許して誰が許されるのであろう。                               われらがひとしく風でまた雲で水であるというのに。〕


******* 竜と詩人オノマトペ *******


 

@きらきら:【洞(ほら)の隙間から朝日がきらきら射して来て水底の岩の凹凸(おうとつ)をはっきり陰影で
      浮き出させ、またその岩につくたくさんの赤や白の動物を写し出した。】
Aうっとり:【チャ−ナタはうっとりその青くすこし朧
(おぼ)ろな水を見た。】
Bぎらぎら:【そのとき日光の柱は水のなかの尾鰭
(おひれ)に射して青くまた白くぎらぎら反射した。】
Cひそひそ:【わたしは車にのせられてわたくしのうたった歌のうつくしさに酒のように酔いみんなの
      ほめることばや、わたしを埋める花の雨にわれを忘れて胸を鳴らしていたが、夜更けてわ
      たしは長者のルダスの家を辞してきらきらした草の露を踏みながらわたしの貧しい母親の
      もとに戻るとき月天子
(がってんし)の座に瑪瑙(めのう)の雲がかかりくらくなったのでわたくしがそ
      れをふり仰いでいたら、誰かミルダの森で斯
(こ)うひそひそ語っているのを聞いた。】

 『竜と詩人』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝 (^ ^;
                                                  2006.6.04.

 
 







 
 

     「ミーロ、おまえの歌は上手だよ。                                    わざわざポラーノの広場まで習いに行かなくてもいいや。          じゃさよなら。」








 
       
 


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  (貴重なほんのわずかな読者の方々へ)
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銀河鉄道の夜

 
次回配本は『銀河鉄道の夜』の第二話『よだかの星』です。


   ミーロはていねいにおじぎをしました。                               わたくしはそしてそのうつくしい野原を                                胸いっぱいに蜂蜜のかおりを吸いながら                            わたくしの家の方へ帰ってきました。                                                                        by 『ポラーノの広場』