仲良し兄妹ペムペルとネリのかあいそうな話、っつーの気になるにゃぁ、『黄いろのトマト』。
っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその84』だよん。(^ ^;
すると蜂雀は話しました。
「ペムペルとネリは毎日お父さんやお母さんたちの働くそばで遊んでいたよ。おひるすぎにな
って、すっかり仕事がすむころはペムペルは汗で顔がてかてかしてた。
ネリははんけちで堅く髪をつつんでいるので頭は卵のかたちになっている。
ネリは畠のへりに立って、顔が日に焼けてぴりぴりするので、ちいさなお口をすぼめたりする。
するとペムペルはネリの顔を、両方のてのひらでちょっとはさんでやったりする。
その時僕も
『さようなら。さようなら。』と云ってペムペルのうちのきれいな木や花の間からまっすぐにおう
ちにかえった。
それから勿論小麦も搗(ま)いた。
二人で小麦を粉にするときは僕はいつでも見に行った。小麦を粉にする日ならペムペルはち
ぢれた髪からみじかい浅黄のチョッキから木綿のだぶだぶずぼんまで粉ですっかり白くなりな
がら赤いガラスの水車場でことことやっているだろう。ネリはその粉を四百グレンぐらいずつ木
綿の袋につめ込んだりつかれてぼんやり戸口によりかかりはたけをながめていたりする。
そのときぼくは『ネリちゃん。あなたはもぐらはすきですか』とからかったりして飛んだのだ。そ
れからもちろんキャベジも植えた。
二人がキャベジを穫るときは僕はいつでも見に行った。
ペムペルがキャベジの太い根を截(き)ってそれをはたけにころがすと、ネリは両手でそれをも
って水いろに塗られた一輪車に入れるのだ。そして二人は車を押して黄色のガラスの納屋にキ
ャベジを運んだのだ。青いキャベジがころがってるのはそれはずいぶん立派だよ。
そして二人はたった二人だけずいぶんたのしくくらしていた。」
「おとなはそこらに居なかったの。」わたしはふと思い付いてそうたずねました。
「おとなはすこしもそこらあたりになかった。なぜならペムペルとネリの兄妹の二人はたった二
人だけずいぶん愉快にくらしてたから。けれどほんとうにかあいそうだ。
ペムペルという子は全くいい子だったのにかあいそうなことをした。
ネリという子は全くかあいらしい女の子だったのにかあいそうなことをした。」
蜂雀は俄かにだまってしまいました。
私はもう全く気が気でありませんでした。
蜂雀はいよいよだまってガラスの向うでしんとしています。
(丸写しオシマイ)
『賢治童話を丸写しシリーズその84』でした。
『黄いろのトマト 』の漫画の紹介
@坂口尚:宮沢賢治漫画館(潮出版社)第2巻
.
◆非・少女マンガなかあいらしさだにゃぁ。(^
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坂口尚の漫画版『黄いろのトマト』は、全くかあいらしいにゃぁ。
坂口尚は、『十力の金剛石』に次いで二度目の登場。
ペムペルとネリの兄妹が全くかあいらしい。
非・少女マンガなかあいらしさ、
非・童話挿絵なかあいらしさ、
誰にも似てない、
坂口尚のかあいらしさ、
漫画もちゃんとちゃんとのファンタジー、
好きだにゃぁ。
と、大絶賛しといて何だけど、『十力の金剛石』の大臣の子のボケキャラのほうが、断然好きな
んだにゃぁ。(^ ^;
っつーことで、『黄いろのトマト』の漫画版、かあいらしいファンタジーなのら。(^
^;
「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」
ミィミィ:【生きてたときはミィミィとなき蝶のように花の蜜をたべるあの小さなかあいらしい
蜂雀です。】
蜂雀って、ほんとにミィミィと鳴くのかにゃぁ? 知らんかったにゃぁ。
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『黄いろのトマト』のオノマトペ
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@ミィミィ:【生きてたときはミィミィとなき蝶のように花の蜜をたべるあの小さなかあいらしい蜂雀
です。】
Aつるつる:【それは眼が赤くてつるつるした緑青(ろくしょう)いろの胸をもち、そのりんと張った胸に
は波形のうつくしい紋もありました。】
Bりん:【そのりんと張った胸には波形のうつくしい紋もありました。】
Cこっそり:【小さいときのことですが、ある朝早く、私は学校に行く前にこっそり一寸ガラスの前
に立ちましたら、その蜂雀が、銀の針の様なほそいきれいな声で、にわかに私に言い
ました。】
Dとうとう:【私は本の入ったかばんの上に座るのは一寸困りましたけれどもどうしてもそのお話
を聞きたかったので、とうとうその通りにしました。】
Eすっかり:【「おひるすぎになって、すっかり仕事がすむころはペムペルは汗で顔がてかてかし
てた。」】
Fてかてか:【「ペムペルは汗で顔がてかてかしてた。」】
Gぴりぴり:【「ネリは畠のへりに立って、顔が日に焼けてぴりぴりするので、ちいさなお口をすぼ
めたりする。」】
Hだぶだぶ:【「小麦を粉にする日ならペムペルはちぢれた髪からみじかい浅黄のチョッキから
木綿のだぶだぶずぼんまで粉ですっかり白くなりながら赤いガラスの水車場でことこ
とやっているだろう。」】
Iことこと:【「赤いガラスの水車場でことことやっているだろう。」】
Jぼんやり:【「ネリはその粉を四百グレンぐらいずつ木綿の袋につめ込んだりつかれてぼんや
り戸口によりかかりはたけをながめていたりする。」】
Kしん:【蜂雀はいよいよだまってガラスの向うでしんとしています。】
Lじっ:【私もしばらくは耐えて膝を両手で抱えてじっとしていましたけれども、あんまり蜂雀がい
つまでもだまっているもんですから、それにそのだまりようと云ったらたとえ一ぺん死
んだ人が二度とお墓から出て来ようたって口なんか聞くもんか云うように見えました
ので、とうとう私は居たたまらなくなりました。】
Mやっぱり:【けれども蜂雀はやっぱりじっとその細いくちばしを尖(とが)らしたまま、向うの四十
雀(しじゅうから)の方を見たっきり二度と私に答えようともしませんでした。】
Nそっ:【「まだ入口を開けるに一時間半も間があるのにおまえだけそっと入れてやったのだ。」】
Oやっ:【私はやっと云いました。「だって蜂雀がもう私に話さないんだもの。」】
Pきっ:【「ええおい。さあ坊ちゃん。きっとこいつは話します。」】
Qぐじゃぐじゃ:【「早く涙をおふきなさい。まるで顔中ぐじゃぐじゃだ。」】
Rさっぱり:【「そらええ、ああ、すっかりさっぱりした。」】
Sことりことり:【番人のおじいさんは私の涙を拭いてくれて、それから両手をせなかで組んで
ことりことり向うへ見まわって行きました。】
21どきっ:【私はどきっとしたのです。】
22だんだん:【「だんだんそれが大きくなって、葉からはトマトの青いにおいがし、茎からはこま
かな黄金(きん)の粒のようなものも噴き出した。」】
23ギザギザ:【「ギザギザの青黒い葉の間から、まばゆいくらい黄いろなトマトがのぞいている
のは立派だった。」】
24どんどん:【「そこで二人は手をつないで果樹園を出てどんどんそっちへ走って行った。」】
25ひょろひょろ:【「ひょろひょろした笛の音も入っていたし、大喇叭(おおらっぱ)のどなり声もきこえ
た。」】
26しっかり:【『ネリ、もう少しだよ、しっかり僕につかまっておいで。』】
27ぼやぼや:【「二人がも一度、樺の木の生えた丘をまわったとき、いきなり眼の前に白いほこ
りのぼやぼや立った大きな道が、横になっているのを見た。」】
28チラチラ:【「ほこりの中から、チラチラ馬の足が光った。」】
29ふうふう:【「馬は汗をかいて黒く光り、鼻からふうふう息をつき、しずかにだくをやっていた。」】
30ひらひら:【「乗ってるものはみな赤シャツで、てかてか光る赤革の長靴をはき、帽子には鷺
の毛やなにか、白いひらひらするものをつけていた。」】
31ぼんやり:【「ほこりの為にお日さまはぼんやり赤くなった。」】
32はっきり:【「みんなの行った方から、あのいい音がいよいよはっきり聞えて来た。」】
33ゆっくり:【「まもなくみんなは向うの丘をまわって見えなくなったが、左の方から又誰かゆっく
りやって来るのだ。」】
34ぎらぎら:【「だんだん近くになって見ると、ついて居るのはみんな黒ん坊で、眼ばかりぎらぎ
ら光らして、ふんどしだけして裸足だろう。」】
35ふう、ふう:【「四本の脚はゆっくりゆっくり、上ったり下ったりしていたし、時々ふう、ふうとい
う呼吸の音も聞えた。」】
36どんより:【「そのうちお日さまは、変に赤くどんよりなって、西の方の山に入ってしまい、残
りの空は黄いろに光り、草はだんだん青から黒く見えて来た。」】
37ひんひん:【「さっきからの音がいよいよ近くなり、すぐ向うの丘のかげでは、さっきのらしい
馬のひんひん啼くのも鼻をぶるるっと鳴らすのも聞えたんだ。」】
38ぶるるっ:【「鼻をぶるるっと鳴らすのも聞えたんだ。」】
39どんどんどんどん:【「四日のお月さんが、西のそらにしずかにかかっていたけれど、そのぼ
んやりした青じろい光で、どんどんどんどんペムペルはかけた。」】
40ぐるぐる:【「眼がぐるぐるして、風がぶうぶう鳴ったんだ。」】
41ぶうぶう:【「風がぶうぶう鳴ったんだ。」】
42ちらちら:【「ネリはちらちらこっちの方を見てばかりいた。」】
43わっ:【「その一つはひどくネリの耳にあたり、ネリはわっと泣き出し、みんなはどっと笑ったん
だ。」】
44どっ:【「みんなはどっと笑ったんだ。」】
45きっ:【「ああいうかなしいことを、お前はきっと知らないよ。」】
46チクチクッ:【そして俄かにあんまりの明るさと、あの兄妹のかあいそうなのとに、眼がチクチ
クッと痛み、涙がぼろぼろこぼれたのです。】
47ぼろぼろ:【涙がぼろぼろこぼれたのです。】
『黄いろのトマト』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。
スネオ 拝 (^ ^;
2006.7.25.
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