『イーハトーヴ・オノマトペ症候群』やってます。(^ ^;
          むかし、ある霧のふかい朝でした。                                  王子はみんながちょっと居なくなったひまに、                       玻璃(はり)で畳んだ自分のお室(へや)から、                    ひょいっと芝生へ飛び下りました。

 
         宝石よりもきれいだにゃぁ。『十力(じゅうりき)の金剛石(こんごうせき)


  『イーハトーヴオノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語) .
        そして蜂雀のついた青い大きな帽子を                             急いでかぶって、どんどん向うへかけ出しました。               「王子さま。王子さま。                                                 どちらに居らっしゃいますか。はて、王子さま。」                     と年よりのけらいが、室(へや)の中で                               あっちを向いたりこっちを向いたりして                               叫んでいるようすでした。
宮沢賢治童話の私設ファンコーナー15です。

               ★宮沢賢治童話を是非ぜひゼヒ読んでネ★
んで、15回目の今回は、


         ***** ポラーノの広場 *****
    新潮文庫 590円 405p 表紙:冬澤未都彦 注解・収録作品について:天沢退二郎 .
                                      贈与する人:中沢新一 .
                              王子は霧の中で、はあはあ笑って立ちどまり、                    一寸そっちを向きましたが、又すぐ向き直って                      音をたてないように剣のさやをにぎりながら、                        どんどんどんどん大臣の家の方へかけました。
               いちょうの実
 ──────────── 5p
               まなづるとダァリヤ──
──────── 7p
               鳥箱先生とフウねずみ
───────── 7p
               林の底
──────────────10p ここまで14ページです。
               十力(じゅうりき)の金剛石(こんごうせき) ─── 18p
               とっこべとら子 ───────── 28p
               若い木霊(こだま) ───────────  7p
               風野又三郎
───────────── 54p
               ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記── 52p
               ガドルフの百合
─────────── 10p
               種山ヶ原 ──────────── 18p
               タネリはたしかに
                 いちにち噛んでいたようだった
 ──11p
               氷河鼠の毛皮 ───────── 12p
                税務署長の冒険
 ───────── 32p
                銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕 ──── 62p →ここから16ページです。
                ポラーノの広場────────
──── 81p
                竜と詩人──────────
───── 5p の17短編です。

              注:
は『風の又三郎』ご覧ください。

                は『風の又三郎2』ご覧ください。

                は『セロ弾きのゴーシュ』ご覧ください。

                は『セロ弾きのゴーシュ2』ご覧ください。

                は『イーハトーボ農学校の春2』ご覧ください。

                   


 
 


『ポラーノの広場』の第五話です。
      芝生の草はみな朝の霧をいっぱいに吸って、                      青く、つめたく見えました。      大臣の家のくるみの木が、                                          霧の中から不意に黒く大きくあらわれました。      その木の下で、一人の子供の影が、                              霧の向うのお日様をじっとながめて立っていました。      王子は声をかけました。                                            「おおい。お早う。遊びに来たよ。」      その小さな影はびっくりしたように動いて、                           王子の方へ走って来ました。                                        それは王子と同じ年の大臣の子でした。
 じゅう りき   こん ごう せき     .
***** 『十力の金剛石』 18p *****
 

 王子と大臣の子が宝石よりも美しいものを見つけるんだにゃぁ、『十力の金剛石』。

 っつーことで、『
賢治童話丸写しシリーズその69』だよん。(^ ^;

 大臣の子はよろこんで顔をまっかにして、
 「王子さま、お早うございます。」と申しました。王子が口早にききました。
 「お前さっきからここに居たのかい。何してたの。」
 大臣の子が答えました。
 「お日さまを見て居りました。お日さまは霧がかからないと、まぶしくて見られません。」
 「うん。お日様は霧がかかると、銀の鏡のようだね。」
 「はい、又、大きな蛋白石
(たんぱくせき)の盤のようでございます。」
 「うん。そうだね。僕はあんな大きな蛋白石があるよ。けれどもあんなに光りはしないよ。
僕はこんど、もっといいのをさがしに行くんだ。お前も一諸に行かないか。」
 大臣の子はすこしもじもじしました。
 王子は又すぐ大臣の子にたずねました。
 「ね、おい。僕のもってるルビーの壺やなんかより、もっといい宝石は、どっちへ行ったら
あるだろうね。」
 大臣の子が申しました。
 「虹の脚もとにルビーの絵の具皿があるそうです。」
 王子が口早に云いました。
 「おい、取りに行こうか。行こう。」
 「今すぐでございますか。」
 「うん。しかし、ルビーよりは金剛石の方がいいよ。僕黄色な金剛石のいいのを持ってる
よ。そして今度はもっといいのを取って来るんだよ。ね、金剛石はどこにあるだろうね。」
 大臣の子が首をまげて少し考えてから申しました。
 「金剛石は山の頂上にあるでしょう。」
 王子はうなずきました。
 「うん。そうだろうね。さがしに行こうか。ね。行こうか。」
 「王さまに申し上げなくてもようございますか。」と大臣の子が目をパチパチさせて心配そ
うに申しました。
         
(丸写しオシマイ)
 『
賢治童話丸写しシリーズその69』でした。

ps.宝石の名前がいっぱい出て来るんだにゃぁ。

@天河石
(アマゾンストン)【微斜長石(びしゃちょうせき)の変種で青色。正長石(せいちょうせき)に似た
 単晶多数個の晶群。花崗岩
(かこうがん)の晶洞から産出。】
A紫水晶
(アメシスト)【水晶のうち、紫色に輝くもの。色は少量の鉄またはマンガンを含有するた
 め。】
B霰石
(アラゴナイト)【宝石名はメキシコ縞瑪瑙(しまめのう)・モザイク瑪瑙(めのう)。縞目、斑紋あるい
 は曇りを有する瑪瑙
(めのう)様の霰石(あられいし)。普通の瑪瑙は石英質であるが、本石は石灰
 質。このうち角礫
(かくれき)状のものをモザイク瑪瑙という。】
C猫睛石
(キャッツアイ)【猫目石ともいう。金緑色で変彩を示すものの宝石名。繊維状構造のた
 め、猫の目のような感じの絹糸状繊維光が現れる。絹状光沢、不透明あるいは半透明、帯
 緑色が多い。】
D琥珀
(こはく)【松、杉、檜(ひのき)類の樹脂が埋もれて化石となったもの。非晶質、透明ないし
 半透明で脂肪光沢を呈する。黄色で赤みまたは白みがかることもある。古来、ヨーロッパで
 もアジアでも宝石の一つに数えて珍重した。】
E金剛石
(ダイヤモンド)【炭素の同素体の一つで結晶質の炭素からなる。等軸晶系。無色、淡黄、
 淡褐色。青白色が最高とされる。】
F硅孔雀石
(けいくじゃくいし=クリソコラ)【翠銅鉱(すいどうこう)、トルコ玉および孔雀石に似ているが、
 翠銅鉱およびトルコ玉よりも硬度が低い。隠微晶質。青から青緑色エナメル様。】
Gサファイア【赤以外の色調をもつ鋼玉の宝石名。青いものが最上とされる。】
H水晶【石英の結晶のうち、特に透明で美しい結晶形を示すもの。形は多くは六角の柱をつくっ
 ている面(柱面)とこれにつながるほぼ三角形をした六つの面(錐面
(すいめん))からなる。】
I蛋白石
(オパール)【火成岩などのすきまに生じ、塊状、腎臓状、鍾乳石状、ブドウ状、ガラスま
 たは脂肪光沢があり、透明あるいは不透明。白から無地が多いが、黄・褐・赤・青・緑・黒色な
 どある。内部の細かい割れ目のため干渉を起こして虹色にきらめくのを貴蛋白石といい、宝
 石のオパールとなる。】
Jトパァス【黄玉ともいう。黄色の宝石。温度が低下してフッ化水素が濃集してきたような条件下
 で晶出したものと思われる。斜方晶系。ガラス状光沢。】
K土耳古玉
(トルコだま)【微晶質の塊状をなして産。空色、青緑色。一般に地表水の作用で生成
 する二次鉱物で、多く乾燥地帯に産する。青色で美しいものが宝石となる。】
L玻璃
(はり)【七宝の一つ。水晶のこと。】
M碧玉
(へきぎょく)【鉄を含む不純な石英。暗緑不透明の不規則塊状で破面に貝殻状がよく現れ
 る。弱い脂肪光沢がある。】
Nルビー【紅玉
(こうぎょく)ともいう。紅色を呈する鋼玉のこと。赤色は微量のクロムによるといわ
 れている。】
O瑠璃
(るり)【古く中国において七宝の一つに数えて珍重した宝石。鉱物学的には緑柱石(ベリル)
  であるといわれている。】
P緑青
(ろくしょう)【銅または銅合金の表面に生ずる青緑色のさびのことを、一般に緑青という。
 空気中で生ずるものは種々の組成の塩基性炭酸銅、孔雀石と同じ。有毒。】

  (ますむら版宮沢賢治童話集(朝日ソノラマ)319pを丸写しさせていただきました。感謝。)


 十力の金剛石 漫画紹介

 @ますむらひろし:ますむら版宮沢賢治童話集(朝日ソノラマ)

 A片山愁:
風の又三郎(角川書店)

 B坂口尚:宮沢賢治漫画館(潮出版社)第5巻

                  一等賞は坂口尚だにゃぁ。(^ ^;
 

 漫画版『十力の金剛石』は、坂口尚の大臣の子がいいのら。

@ますむらひろしは、例によって、猫クンたちが登場人物を演ずるマニアックな漫画。
 霧・雨・自然描写はまあまあ良い。
 けれども宮殿内部がゴージャスじゃにゃい。王子様に気品にゃい。蜂雀の表情いくにゃい。

A片山愁、王子様と宝石と少女漫画は相性いんだにゃぁ。
 霧・雨・自然描写いんだにゃぁ。王子様の気品いんだにゃぁ。
 でも単調なのか、感動しないんだにゃぁ。

B坂口尚、宮殿内部、ゴージャス。王子様、気品とユーモア。霧・雨・自然描写にリズム感。
 なんつっても大臣の子、天然ボケと気品とユーモア、いい味の脇役やっでるだにゃぁ。

 っつーことで、『十力の金剛石』の漫画版、一等賞は坂口尚だにゃぁ。
(^ ^;


     十力の金剛石 お気に入りオノマトペ
 季節: 夏          王子がにわかに叫びました。                                       「誰だ、今歌ったものは、ここへ出ろ。」        するとおどろいたことは、                                              王子たちの青い大きな帽子に飾ってあった                        二羽の青びかりの蜂雀が、ブルルルブルッと飛んで、             二人の前に降りました。           そして声をそろえて云いました。                     「はい。何かご用でございますか。」                  「今の歌はお前たちか。                                                なぜこんなに雨をふらせたのだ。」

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=☆☆ 5つが最高。)
23
ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイ、トン:【「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイ、トン。」】(霧)
25
ポッシャリポッシャリ、ツイツイトン:【「ポッシャリポッシャリ、ツイツイトン。」】(霧)
29
ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイツイ:【「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイツイ。」】(霧)
33
ポッシャン、ポッシャン、ツイ、ツイ、ツイ:【「ポッシャン、ポッシャン、ツイ、ツイ、ツ
      イ。」】(雨)
34
ポッシャン、ポッシャン、ポッシャン、シャン:【「ポッシャン、ポッシャン、ポッシャン、シャ
      ン。」】(雨)
50
ツァランツァリルリン:【「トッパァスのつゆはツァランツァリルリン、こぼれてきらめく サ
      ング、サンガリン、ひかりの丘に すみながらなぁにがこんなにかなしかろ。」】
51
サング、サンガリン:【「こぼれてきらめく サング、サンガリン、ひかりの丘に すみなが
      らなぁにがこんなにかなしかろ。」】

▼ボクの好きなオノマトペ(再読)=★★5つが最高。)
24
トントン:【霧がトントンはね躍りました。】
26
ポシャポシャ:【霧がポシャポシャ降って来ました。】
30
ポタリ:【「はやしのなかにふるきりの、つぶはだんだん大きくなり、いまはしづくがポタ
      リ。」】
31
ツイツイツイツイ:【霧がツイツイツイツイ降って来て、あちこちの木からポタリッポタリ
      ッと雫の音がきこえて来ました。】
32
ポタリッポタリッ:【あちこちの木からポタリッポタリッと雫の音がきこえて来ました。】
35
ポッシャンポッシャン:【きりはこあめにかわり、ポッシャンポッシャン降って来ました。】
37
ポシャポシャ:【今までポシャポシャやっていた雨が急に大粒になってざあざあと降って
      来たのです。】
45
ツァリン:【その時、風が来て、りんどうの花はツァリンとからだを曲げて、その天河石
      (アマゾンストン)の花の盃(さかずき)を下の方に向けましたので、トパァスはツァラ
      ツァランとこぼれて下のすずらんの葉に落ちそれからきらきらころがって草の
      底の方へもぐって行きました。】
46
ツァラツァラン:【トパァスはツァラツァランとこぼれて下のすずらんの葉に落ちそれから
      きらきらころがって草の底の方へもぐって行きました。】
52
ツァリル、ツァリル、ツァリルリン、ツァリル、ツァリル、ツァリルリン:【まっ碧(さお)な空
      でははちすずめがツァリル、ツァリル、ツァリルリン、ツァリル、ツァリル、ツァリル
      リンと鳴いて二人とりんどうの花との上をとびめぐって居りました。】
54
ぷりりぷりり:【ほんとうにそのうめばちそうは、ぷりりぷりりふるえていましたので、そ
      の花の中の一つぶのダイヤモンドは、まるで叫び出す位に橙や緑や美しくか
      がやき、うめばちそうの花びらにチカチカ映って云うようもなく立派でした。】
58
ブリリン:【うめばちそうはブリリンと起きあがってもう一ぺんサッサッと光りました。】
63
ギギンザン、リン、ギギン:【草も花もみんなからだをゆすったりかがめたりきらきら宝
      石の露をはらいギギンザン、リン、ギギンと起きあがりました。】
66
サァン、ツァン、サァン、ツァン:【ひかりしずかな天河石(アマゾンストン)のりんどうも、も
      うとても躍り出さずに居られないというようにサァン、ツァン、サァン、ツァン、から
      だをうごかして調子をとりながら云いました。】
67
ルルルルルル:【はちすずめのめぐりはあまり速くてただルルルルルルと鳴るぼんやり
      した青い光の輪にしか見えませんでした。】

 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

 ポッシャリ、ツイツイトン、トントン(霧)
 ポッシャンポッシャン、(雨)
 
霧から雨になっていく描写がいんだにゃぁ。


        その宝石の雨は、                                                    草に落ちてカチンカチンと鳴りました。                               それは鳴る筈だったのです。         りんどうの花は刻まれた天河石(アマゾンストン)と、              打ち劈(くだ)かれた天河石(アマゾンストン)で                    組み上がり、その葉はなめらかな                                   硅孔雀石(クリソコラ)で出来ていました。         黄色な草穂はかがやく猫睛石(キャッツアイ)、                    いちめんのうめばちそうの花びらは                                   かすかな虹を含む乳色の蛋白石、                                 とうやくの葉は碧玉(へきぎょく)、                                    そのつぼみは紫水晶(アメシスト)の                                 美しいさきを持っていました。         そしてそれらの中で一番立派なのは                               小さな野ばらの木でした。         野ばらの枝は茶色の琥珀や                                        紫がかかった霰石(アラゴナイト)でみがきあげられ、              その実はまっかなルビーでした。  

***** 十力の金剛石オノマトペ *****
 

@ひょいっ:【王子はみんながちょっと居なくなったひまに、玻璃(はり)で畳んだ自分のお室(へや)
      から、ひょいっと芝生へ飛び下りました。】
Aどんどん:【そして蜂雀のついた青い大きな帽子を急いでかぶって、どんどん向うへかけ出し

      ました。】
Bはあはあ:【王子は霧の中で、はあはあ笑って立ちどまり、一寸そっちを向きましたが、又す

      ぐ向き直って音をたてないように剣のさやをにぎりながら、どんどんどんどん大臣の
      家の方へかけました。】
Cどんどんどんどん:【又すぐ向き直って音をたてないように剣のさやをにぎりながら、どんどん

      どんどん大臣の家の方へかけました。】
Dじっ:【その木の下で、一人の子供の影が、霧の向うのお日様をじっとながめて立っていまし

      た。】
Eもっ:【「僕はこんど、もっといいのをさがしに行くんだ。お前も一諸に行かないか。」】
Fもじもじ:【大臣の子はすこしもじもじしました。】
Gパチパチ:【「王さまに申し上げなくてもようございますか。」と大臣の子が目をパチパチさせ

      て心配そうに申しました。】
Hぐいぐい:【王子は大臣の子の手をぐいぐいひっぱりながら、小声で急いで云いました。】
Iどんどん:【二人はどんどん野原の霧の中を走って行きました。】
Jずうっ:【ずうっとうしろの方で、けらいたちの声が又かすかに聞えました。】
Kだんだん:【そして野原はだんだんのぼりになって来ました。】
Lやっ:【二人はやっと馳けるのをやめて、いきをせかせかしながら、草をばたりばたりと踏ん

      で行きました。】
Mせかせか:【二人はやっと馳けるのをやめて、いきをせかせかしながら、草をばたりばたり

      と踏んで行きました。】
Nばたりばたり:【草をばたりばたりと踏んで行きました。】
Oすうっ:【いつか霧がすうっとうすくなって、お日さまの光が黄金色に透って来ました。】
Pふっ:【やがて風が霧をふっと払いましたので、露はきらきら光り、きつねのしっぽのような

      茶色の草穂は一面波を立てました。】
Qきらきら:【露はきらきら光り、きつねのしっぽのような茶色の草穂は一面波を立てました。】
Rずんずん:【それでも王子は、ずんずんはいって行きました。】
Sむくむく:【そして二人はどこまでもどこまでも、むくむくの苔やひかげのかつらをふんで森の

      奥の方へはいって行きました。】
21ふっ:【それは、森の中に青くさし込んでいた一本の日光の棒が、ふっと消えてそこらがぼん

      やりかすんで来たのでもわかりました。】
22ぼんやり:【そこらがぼんやりかすんで来たのでもわかりました。】
23ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイ、トン:【「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイ、トン。」】
(霧)
24トントン:【霧がトントンはね躍りました。】
25ポッシャリポッシャリ、ツイツイトン:【「ポッシャリポッシャリ、ツイツイトン。」】
(霧)
26ポシャポシャ:【霧がポシャポシャ降って来ました。】
27しん:【そしてしばらくしんとしました。】
28きょろきょろ:【二人はまわりをきょろきょろ見ましたが、どこにも誰も居ませんでした。】
29ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイツイ:【「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイツイ。」】
(霧)
30ポタリ:【「はやしのなかにふるきりの、つぶはだんだん大きくなり、いまはしづくがポタリ。」】
31ツイツイツイツイ:【霧がツイツイツイツイ降って来て、あちこちの木からポタリッポタリッと雫

      の音がきこえて来ました。】
32ポタリッポタリッ:【あちこちの木からポタリッポタリッと雫の音がきこえて来ました。】
33ポッシャン、ポッシャン、ツイ、ツイ、ツイ:【「ポッシャン、ポッシャン、ツイ、ツイ、ツイ。」】
(雨)
34ポッシャン、ポッシャン、ポッシャン、シャン:【「ポッシャン、ポッシャン、ポッシャン、シャン。」】
(雨)
35ポッシャンポッシャン:【きりはこあめにかわり、ポッシャンポッシャン降って来ました。】
36ブルルルブルッ:【するとおどろいたことは、王子たちの青い大きな帽子に飾ってあった二羽

      の青びかりの蜂雀が、ブルルルブルッと飛んで、二人の前に降りました。】
37ポシャポシャ:【今までポシャポシャやっていた雨が急に大粒になってざあざあと降って来た

      のです。】
38ざあざあ:【雨が急に大粒になってざあざあと降って来たのです。】
39ザッ、ザ、ザ、ザザァザ、ザザァザ、ザザア:【はちすずめが水の中の青い魚のように、なめ

      らかにぬれて光りながら、二人の頭の上をせわしく飛びめぐって、ザッ、ザ、ザ、ザ
      ザァザ、ザザァザ、ザザア、ふらばふれふれ、ひでりあめ、トパァス、サファイア、ダ
      イヤモンド。と歌いました。】
40パラパラパラパラ:【雨があられに変ってパラパラパラパラやって来たのです。】
41カチンカチン:【その宝石の雨は、草に落ちてカチンカチンと鳴りました。】
42ザッザザ、ザザァザ、ザザアザザザア:【はちすずめが度々宝石に打たれて落ちそうになり

      ながら、やはりせわしくせわしく飛びめぐって、ザッザザ、ザザァザ、ザザアザザザア、
      降らばふれふれひでりあめ、ひかりの雲のたえぬまま。と歌いましたので雨の音は一
      しお高くなりそこらは又一しきりかがやきわたりました。】
43ぴたり:【雨がぴたりとやみました。】
44きらきらっ:【おしまいの二つぶばかりのダイアモンドがそのみがかれた土耳古玉のそらから

      きらきらっと光って落ちました。】
45ツァリン:【その時、風が来て、りんどうの花はツァリンとからだを曲げて、その天河石
(アマゾン
      ストン)の花の盃(さかずき)を下の方に向けましたので、トパァスはツァラツァランとこぼ
      れて下のすずらんの葉に落ちそれからきらきらころがって草の底の方へもぐって行き
      ました。】
46ツァラツァラン:【トパァスはツァラツァランとこぼれて下のすずらんの葉に落ちそれからきらき

      らころがって草の底の方へもぐって行きました。】
47きらきら:【下のすずらんの葉に落ちそれからきらきらころがって草の底の方へもぐって行きま

      した。】
48ギギン:【りんどうの花はそれからギギンと鳴って起きあがり、ほっとため息をして歌いました。】
49ほっ:【ほっとため息をして歌いました。】
50ツァランツァリルリン:【「トッパァスのつゆはツァランツァリルリン、こぼれてきらめく サング、

      サンガリン、ひかりの丘に すみながらなぁにがこんなにかなしかろ。」】
51サング、サンガリン:【「こぼれてきらめく サング、サンガリン、ひかりの丘に すみながらなぁ

      にがこんなにかなしかろ。」】
52ツァリル、ツァリル、ツァリルリン、ツァリル、ツァリル、ツァリルリン:【まっ碧
(さお)な空でははち
      すずめがツァリル、ツァリル、ツァリルリン、ツァリル、ツァリル、ツァリルリンと鳴いて
      二人とりんどうの花との上をとびめぐって居りました。】
53むくむく:【「むくむく虹が湧いてるようだよ。」】
54ぷりりぷりり:【ほんとうにそのうめばちそうは、ぷりりぷりりふるえていましたので、その花の

      中の一つぶのダイヤモンドは、まるで叫び出す位に橙や緑や美しくかがやき、うめば
      ちそうの花びらにチカチカ映って云うようもなく立派でした。】
55チカチカ:【その花の中の一つぶのダイヤモンドは、まるで叫び出す位に橙や緑や美しくかが

      やき、うめばちそうの花びらにチカチカ映って云うようもなく立派でした。】
56パラリ:【その時丁度風が来ましたのでうめばちそうはからだを少し曲げてパラリとダイアモン

      ドの露をこぼしました。】
57ちくちくっ:【露はちくちくっとおしまいの青光をあげ碧玉の葉の底に沈んで行きました。】
58ブリリン:【うめばちそうはブリリンと起きあがってもう一ぺんサッサッと光りました。】
59サッサッ:【もう一ぺんサッサッと光りました。】
60ポトポト:【野ばらの木が赤い実から水晶の雫をポトポトこぼしながらしずかに歌いました。】
61サラサラサラッ:【この時光の丘はサラサラサラッと一めんけはいがして草も花もみんなからだ

      をゆすったりかがめたりきらきら宝石の露をはらいギギンザン、リン、ギギンと起きあ
      がりました。】
62きらきら:【草も花もみんなからだをゆすったりかがめたりきらきら宝石の露をはらいギギンザ

      ン、リン、ギギンと起きあがりました。】
63ギギンザン、リン、ギギン:【ギギンザン、リン、ギギンと起きあがりました。】
64チクチク:【王子は向うの鈴蘭の根もとからチクチク射して来る黄金
(きん)色の光をまぶしそうに
      手でさえぎりながら 「十力の金剛石ってどんなものだ。」とたずねました。】
65チカチカ:【「十力の金剛石はただの金剛石のようにチカチカうるさく光りはしません。」】
66サァン、ツァン、サァン、ツァン:【ひかりしずかな天河石
(アマゾンストン)のりんどうも、もうとても
      躍り出さずに居られないというようにサァン、ツァン、サァン、ツァン、からだをうごかして
      調子をとりながら云いました。】
67ルルルルルル:【はちすずめのめぐりはあまり速くてただルルルルルルと鳴るぼんやりした青い

      光の輪にしか見えませんでした。】
68カチカチ:【野ばらがあまり気が立ち過ぎてカチカチしながら叫びました。】
69キイーン:【にわかにはちすずめがキイーンとせなかの鋼鉄の骨も弾けたかと思うばかりするど

      いさけびをあげました。】
70スッ:【はちすずめのあとを追って二つぶの宝石がスッと光って二人の青い帽子に下
(お)ちそれ
      から花の間に落ちました。】
71とうとう:【「来た来た。ああ、とうとう来た。十力の金剛石がとうとう下った。」と花はまるでとびた

      つばかりかがやいて叫びました。】

 『十力の金剛石』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝 (^ ^;
                                                    2006.5.07.

 
 


『ポラーノの広場』の第七話です。
      「ふん。こいつらがざわざわざわざわ云っていたのは、                ほんの昨日のようだったがなあ。                                     大低雪に潰されてしまったんだな。」      木霊(こだま)は、                                                     明るい枯草の丘の間を歩いて行きました。      丘の窪みや皺(しわ)に、                                            一きれ二きれの消え残りの雪が、                                  まっしろにかがやいて居ります。      木霊(こだま)はそらを見ました。                                     そのすきとおるまっさおの空で、                                      かすかにかすかにふるえているものがありました。     「ふん。日の光がぷるぷるやってやがる。                              いや、日の光だけでもないぞ。風だ。                               いや、風だけでもないな。」      「何かこう小さなすきとおる蜂のようなやつかな。                    ひばりの声のようなもんかな。いや、そうでもないぞ。              おかしいな。おれの胸までどきどき云いやがる。ふん。」      若い木霊(こだま)は                                                 ずんずん草をわたって行きました。
      こ だま  .
******* 『若い木霊』 7p *******
 

 ふくふくの春だにゃぁ、『若い木霊(こだま)』。

 っつーことで、『
賢治童話丸写しシリーズその70』だよん。(^ ^;

 若い木霊はずんずん草をわたって行きました。
 丘のかげに六本の柏の木が立っていました。風が来ましたのでその去年の枯れ葉はザラザラ
鳴りました。
 若い木霊はそっちへ行って高く叫びました。
 「おおい。まだねてるのかい。もう春だぞ、出て来いよ。おい。ねぼうだなあ、おおい。」
 風がやみましたので柏の木はすっかり静まってカサっとも云いませんでした。若い木霊はその
幹に一本ずつすきとおる大きな耳をつけて木の中の音を聞きましたがどの樹もしんとして居りま
した。そこで
 「えいねぼう。おれが来たしるしだけつけて置こう。」 と云いながら柏の木の下の枯れた草穂を
つかんで四つだけ結び合いました。
 そして又ふらふらと歩き出しました。丘はだんだん下って行って小さな窪地になりました。そこは
まっ黒な土があたたかにしめり湯気はふくふく春のよろこびを吐いていました。
 一疋の蟇
(ひきがえる)がそこをのそのそ這って居りました。若い木霊はギクッとして立ち止まりまし
た。
 それは早くもその蟇
(ひきがえる)の語(ことば)を聞いたからです。
 「鴾
(とき)の火だ。鴾の火だ。もう空だって碧(あお)くはないんだ。
 桃色のペラペラの寒天でできているんだ。いい天気だ。
 ぽかぽかするなあ。」
              
(丸写しオシマイ)
 『
賢治童話丸写しシリーズその70』でした。


 若い木霊漫画紹介はできましぇん。

    さびしかぁぁぁぁ。

 

 漫画版『若い木霊』は、おそらく多分ありましぇん。
 漫画版『風野又三郎』も、『タネリはたしかにいちいち噛んでいたようだった』も、
おそらく多分ありましぇん。


 っつーことで漫画の紹介は、ずうっとしばらくシバラク暫く、お待ちくなさい。(^ ^;


  若い木霊 お気に入りオノマトペ
 季節: 春      若い木霊はそこで一寸意地悪く笑って                            青ぞらの下の栗の木の梢を仰いで                                 黄金(きん)色のやどり木に云いました。    「おい。この栗の木は貴様らのおかげで                              もう死んでしまったようだよ。」    やどり木はきれいにかがやいて笑って云いました。          「そんなこと云っておどそうたって駄目ですよ。                       睡(ね)ってるんですよ。                                              僕下りて行ってあなたと一諸に歩きましょうか。」    「ふん。お前のような小さなやつが                                    おれについて歩けると思うのかい。ふん。さよならっ。」    やどり木は黄金色のべそをかいて                                   青いそらをまぶしそうに見ながら                                     「さよなら。」 と答えました。    若い木霊は思わず                                                  「アハアハハハ」 とわらいました。

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=5つが最高。)
Jふくふく:【そこはまっ黒な土があたたかにしめり湯気はふくふく春のよろこびを吐いていま
      した。】
Mペラペラ:【「桃色のペラペラの寒天でできているんだ。」】
R
ふくふく:【その窪地はふくふくした苔に覆われ、所々やさしいかたくりの花が咲いていまし
      た。】

ボクの好きなオノマトペ(再読)=5つが最高。)
Aぷるぷる:【「ふん。日の光がぷるぷるやってやがる。」】
 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

ふくふく:【そこはまっ黒な土があたたかにしめり湯気はふくふく春のよろこびを吐いていました。】
ふくふく:【その窪地はふくふくした苔に覆われ、所々やさしいかたくりの花が咲いていました。】

ふくふく、っつーの、春っぽいにゃぁ。


        その窪地はふくふくした苔に覆われ、                               所々やさしいかたくりの花が咲いていました。         若い木だまにはそのうすむらさきの立派な花は                     ふらふらうすぐろくひらめくだけで                                      はっきり見えませんでした。         却(かえ)ってそのつやつやした緑色の葉の上に                    次々せわしくあらわれて又消えて行く                               紫色のあやしい文字を読みました。         「はるだ、はるだ、はるの日がきた、」              字は一つずつ生きて息をついて、                                   消えてはあらわれ、あらわれては又消えました。         「そらでも、つちでも、くさのうえでもいちめんいちめん、              ももいろの火がもえている。」         若い木霊ははげしく鳴る胸を弾けさせまいと                       堅く堅く押えながら急いで又歩き出しました。  

******* 若い木霊オノマトペ *******
 

@ざわざわざわざわ:【「ふん。こいつらがざわざわざわざわ云っていたのは、ほんの昨日のよう
      だったがなあ。」】
Aぷるぷる:【「ふん。日の光がぷるぷるやってやがる。」】
Bどきどき:【「おかしいな。おれの胸までどきどき云いやがる。ふん。」】
Cずんずん:【若い木霊は、ずんずん草をわたって行きました。】
Dザラザラ:【風が来ましたのでその去年の枯れ葉はザラザラ鳴りました。】
Eすっかり:【風がやみましたので柏の木はすっかり静まってカサっとも云いませんでした。】
Fカサっ:【柏の木はすっかり静まってカサっとも云いませんでした。】
Gしん:【若い木霊はその幹に一本ずつすきとおる大きな耳をつけて木の中の音を聞きましたがど

      の樹もしんとして居りました。】
Hふらふら:【そして又ふらふらと歩き出しました。】
Iだんだん:【丘はだんだん下って行って小さな窪地になりました。】
Jふくふく:【そこはまっ黒な土があたたかにしめり湯気はふくふく春のよろこびを吐いていました。】
Kのそのそ:【一疋の蟇
(ひきがえる)がそこをのそのそ這って居りました。】
Lギクッ:【若い木霊はギクッとして立ち止まりました。】
Mペラペラ:【「桃色のペラペラの寒天でできているんだ。」】
Nぽかぽか:【「いい天気だ。ぽかぽかするなあ。」】
Oはあはあ:【若い木霊の胸はどきどきして息はその底で火でも燃えているように熱くはあはあす

      るのでした。】
Pそっ:【木霊はそっと窪地をはなれました。】
Qドキッ:【その声はあおぞらの滑らかな石までひびいて行きましたが又それが波になって戻って

      来たとき木霊はドキッとしていきなり堅く胸を押えました。】
Rふくふく:【その窪地はふくふくした苔に覆われ、所々やさしいかたくりの花が咲いていました。】
Sふらふら:【若い木だまにはそのうすむらさきの立派な花はふらふらうすぐろくひらめくだけでは

      っきり見えませんでした。】
21はっきり:【若い木だまにはそのうすむらさきの立派な花はふらふらうすぐろくひらめくだけでは
      っきり見えませんでした。】
22つやつや:【却ってそのつやつやした緑色の葉の上に次々せわしくあらわれて又消えて行く紫

      色のあやしい文字を読みました。】
23だらだら:【右の方の象の頭のかたちをした潅木の丘からだらだら下
(くだ)りになった低いところ
      を一寸越しますと、また窪地がありました。】
24きらきら:【太陽は今越えて来た丘のきらきらの枯草の向うにかかりそのななめなひかりを受け

      て早くも一本の桜草が咲いていました。】
25ぐるぐる:【若い木霊は風よりも速く丘をかけおりて蘆
(あし)むらのまわりをぐるぐるまわって叫び
      ました。】
26ゆらゆらゆらゆら:【そこには桜草がいちめん咲いてその中から桃色のかげろうのような火が

      ゆらゆらゆらゆら燃えてのぼって居りました。】
27ぶちぶち:【ペラペラの桃色の寒天で空が張られまっ青な柔らかな草がいちめんでその処々に

      あやしい赤や白のぶちぶちの大きな花が咲いていました。】
28がやがや:【たその向うは暗い木立で怒鳴りや叫びががやがや聞えて参ります。】
29きょろきょろ:【その時森の中からまっ青な顔の大きな木霊が赤い瑪瑙
(めのう)のような眼玉をき
      ょろきょろさせてだんだんこっちへやって参りました。】
30しいん:【栗の木の幹はしいんとして何の音もありません。】
31ひらり:【若い木霊は大分西に行った太陽にひらりと一ぺんひらめいてそれからまっすぐに自分

      の木の方にかけ戻りました。】
32ずうっ:【「さよなら。」とずうっとうしろで黄金
(きん)色のやどり木のまりが云っていました。】

 『若い木霊』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝
(^ ^;
                                                  2006.5.24.

 
 


『ポラーノの広場』の第八話です。
   「ほう、いいなあ、又三郎さんだちはいいなあ。」                    小さな子供たちは一諸に云いました。   すると又三郎はこんどは少し怒りました。                         「お前たちはだめだねえ。                                              なぜ人のことをうらやましがるんだい。」   「僕だってつらいことはいくらもあるんだい。                            お前たちにもいいことはたくさんあるんだい。」   「僕は自分のことを一向考えもしないで                              人のことばかりうらやんだり馬鹿にしているやつらを                 一番いやなんだぜ。」
   「僕たちの方ではね、                                                  自分を外(ほか)のものとくらべることが                             一番はずかしいことになっているんだ。                              僕たちはみんな一人一人なんだよ。」   「さっきも云ったような僕たちの                                        一年に一ぺんか二へんの大演習の時にね、                      いくら早くばかり行ったって、うしろをふりむいたり                   並んで行くものの足なみを見たりするものがあると、              もう誰も相手にしないんだぜ。」   「やっぱりお前たちはだめだねえ。                                      外(ほか)の人と                                                      くらべることばかり考えているんじゃないか。」   「僕はそこへ行くと                                                      さっき空で遭(あ)った鷹がすきだねえ。」
******** 『風野又三郎』 54p ********
 

 子供だけに見える、風の妖精だにゃぁ、『風野又三郎』。

 っつーことで、『
賢治童話丸写しシリーズその71』だよん。(^ ^;

 一郎が一番うしろからあまりさわぐものを一人づつ叱りました。みんなはしんとなりました。
 「みなさん休みは面白かったね。朝から水泳ぎもできたし林の中で鷹にも負けないくらい高く
叫んだりまた兄さんの草刈りについて行ったりした。それはほんとうにいいことです。けれどもも
う休みは終りました。これからは秋です。むかしから秋は一番勉強のできる時だといってあるの
です。ですから、みなさんも今日から又しっかり勉強しましょう。みなさんは休み中でいちばん面
白かったことは何ですか。」
 「先生。」と四年生の悦治が手をあげました。
 「はい。」
 「先生さっきたの人あ何だったべす。」
 先生はしばらくおかしな顔をして
 「さっきの人……」
 「さっきたの髪の赤いわらすだんす。」みんなもどっと叫びました。
 「先生髪のまっ赤なおかしなやづだったんす。」
 「マント着てたで。」
 「笛鳴らなぃに教室さはいってたぞ。」
 先生は困って
 「一人づつ云うのです。髪の赤い人がここに居たのですか。」
 「そうです、先生。」
         
(丸写しオシマイ)
 『
賢治童話丸写しシリーズその71』でした。

ps.
『風の又三郎』の前作だども、こっちもなかなか面白いんだなや。
   赤道直下から北極光
(オーロラ)まで、全編、風にまつわる蘊蓄(うんちく)話だなや。
   妖精の風野又三郎クン、童子
(わらす)の風博士だなや。(^ ^;


  風野又三郎 お気に入りオノマトペ
                        「サイクルホールの話、お前たちは聴きたくないかい。               聴きたくないなら早くはっきり                                         そう云ったらいいじゃないか。僕行っちまうから。」      「聴きたい。」 一郎はあわてて云いました。          又三郎は少し機嫌を悪くしながら                                  ぼつりぼつり話しはじめました。                                     「サイクルホールは面白い。                                          人間だってやるだろう。見たことはないかい。」      「秋のお祭なんかにはよくそんな看板を見るだがなあ、             自転車で                                                             すりばちの形になった格子の中を馳けるんだよ。」
 季節: 九月一日〜九月十日      「だんだん上にのぼって行って、                                       とうとうそのすりばちのふちまで行った時、                           片手でハンドルを持ってハンケチなどを振るんだ。                 なかなかあれでひどいんだろう。」      「ところが僕等がやるサイクルホールは、                             あんな小さなもんじゃない。                                          尤(もっと)も小さい時もあるにはあるよ。」      「お前たちのかまいたちっていうのは、                                サイクルホールの小さいのだよ。」      「ほ、おら、かまいたぢに足切られたぞ。」                            嘉助が叫びました。

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=5つが最高。)
@どっどどどどうど どどうど どどう:【どっどどどどうど どどうど どどう、ああまいざくろも吹
      きとばせ すっぱいざくろもふきとばせ どっどどどどうど どどうど どどう】
H
ちょうはあぶどり、ちょうはあぶどり:【「ちょうはあぶどり、ちょうはあぶどり」と高く叫ぶ声が
      してそれからいなづまのように嘉助が、かばんをかかえてわらって運動場へかけて来
      ました。】
26
ピル:【「みなさんお早う。どなたも元気ですね。」と云いながら笛を口にあててピルと吹き
      ました。】
52
チッチクチッチク:【「鳥がチッチクチッチクなき出したろう。」】
63
フィウ:【又三郎は立ちあがってマントをひろげたと思うとフィウと音がしてもう形が見えません
      でした。】
65
ツイツイ:【又三郎は来ないで、却ってみんな見上げた青空に、小さな小さなすき通った渦巻
      が、みずすましの様に、ツイツイと、上ったり下ったりするばかりです。】
72
ドンブラゴッコ、ドンブラゴッコ:【「霧が一杯にかかってその中で波がドンブラゴッコ、ドンブ
      ラゴッコ、と云ってるような気がするだけさ。」】

ボクの好きなオノマトペ(再読)=5つが最高。)
27きろきろ:【ところがおかしな子どもはやっぱりちゃんとこしかけたまま、きろきろこっちを見て
      います。】
103
くりくり:【又三郎はまっ黒な眼を少し意地わるそうにくりくりさせながらみんなを見まわしまし
      た。】
108
くりくり:【「そいつは頭をくりくりの芥子(けし)坊主にしてね、着物だって袖の広い支那服だろ
      う、沓
(くつ)もはいてるねえ、大へんかあいらしいんだよ、一番はじめの日僕がそこを
      通ったら斯
(こ)う言っていた。」】
122
とろとろ:【「あすこを通った日は丁度お天気だったけれど、そうそう、その時は丁度日本で
      は入梅だったんだ、僕は観測所へ来てしばらくある建物の屋根の上にやすんでいた
      ねえ、やすんで居たって本当は少しとろとろ睡
(ねむ)ったんだ。」】
171
きろきろ:【「けれどもなんにも卑怯をしないものは割合平気だねえ、大循環の途中でわざ
      とつかれた隣りの人の手をはなしたものだの早くみんなやめるといいと考えてきろき
      ろみんなの足なみを見たりしたものはどれもすっかり入れられちまうんだ。」】
182
ごとんごとん:【遠くの方の林はまるで海が荒れているようにごとんごとん鳴ったりざあと聞
      こえたりするのでした。】
185
どかどか:【けれども又じっとその鳴って吠えてうなってかけて行く風をみていますと今度は
      胸がどかどかなってくるのでした。】
 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

くりくり:【又三郎はまっ黒な眼を少し意地わるそうにくりくりさせながらみんなを見まわしました。】
くりくり:【「そいつは頭をくりくりの芥子(けし)坊主にしてね、着物だって袖の広い支那服だろう、沓
      
(くつ)もはいてるねえ、大へんかあいらしいんだよ、一番はじめの日僕がそこを通ったら
      斯
(こ)う言っていた。」】

くりくり:、っつーの、大へんかあいらしいんだなす。(^ ^;


     すると気象台の風力計や風信器や置いてある                   屋根の上のやぐらにいつでも                                         一人の支那人の理学博士と                                       子供の助手とが立っているんだ。    博士はだまっていたが子供の助手は                               いつでも何か言っているんだ。    そいつは頭をくりくりの芥子(けし)坊主にしてね、                 着物だって袖の広い支那服だろう、                                沓(くつ)もはいてるねえ、大へんかあいらしいんだよ、             一番はじめの日僕がそこを通ったら                                 斯(こ)う言っていた。    『これはきっと颶風(ぐふう)ですね。                                  ずいぶんひどい風ですね。』    すると支那人の博士が葉巻をくわえたまま                          ふんふん笑って    『家が飛ばないじゃないか。』 と云うと                                子供の助手はまるで口を尖(とが)らせて、                       『だって向うの三角旗や何かぱたぱた云ってます。』                 というんだ。    博士は笑って相手にしないで壇を下りて行くねえ、               子供の助手は少し悄気(しょげ)ながら                            手を拱(こまね)いて                                                  あとから恭恭(うやうや)しくついて行く。    僕はそのとき二・五米というレコードを                              風力計にのこして笑って行ってしまったんだ。  

******** 風野又三郎オノマトペ ********
 

@どっどどどどうど どどうど どどう:【どっどどどどうど どどうど どどう、ああまいざくろも吹きと
      ばせ すっぱいざくろもふきとばせ どっどどどどうど どどうど どどう】
Aどう:【青ぞらで風がどうと鳴り、日光は運動場いっぱいでした。】
Bびっくり:【「ほう、おら一等だぞ。一等だぞ。」とかわるがわる叫びながら大悦びで門をはいって
      来たのでしたが、ちょっと教室の中を見ますと、二人ともまるでびっくりして棒立ちになり、
      それから顔を見合せてぶるぶるふるえました。】
Cぶるぶる:【ちょっと教室の中を見ますと、二人ともまるでびっくりして棒立ちになり、それから顔を
      見合せてぶるぶるふるえました。】
Dとうとう:【がひとりはとうとう泣き出してしまいました。】
Eしん:【というわけはそのしんとした朝の教室のなかにどこから来たのか、まるで顔も知らないおか
      しな赤い髪の子供がひとり一番前の机にちゃんと座っていたのです。】
Fちゃん:【まるで顔も知らないおかしな赤い髪の子供がひとり一番前の机にちゃんと座っていたの
      です。】
Gりん:【もひとりの子ももう半分泣きかけていましたが、それでもむりやり眼をりんと張ってそっちの
      方をにらめていましたら、ちょうどそのとき川上から、「ちょうあぶどり、ちょうあぶどり」と高
      く叫ぶ声がしてそれからいなづまのように嘉助が、かばんをかかえてわらって運動場へか
      けて来ました。】
Hちょうはあぶどり、ちょうはあぶどり:【「ちょうはあぶどり、ちょうはあぶどり」と高く叫ぶ声がしてそ
      れからいなづまのように嘉助が、かばんをかかえてわらって運動場へかけて来ました。】
Iどやどや:【と思ったらすぐそのあとから佐太郎だの耕助だのどやどややってきました。】
Jわあ:【するとその子もわあと泣いてしまいました。】
Kしゃん:【おかしいとおもってみんながあたりを見ると、教室の中にあの赤毛のおかしな子がすま
      してしゃんとすわっているのが目につきました。】
Lしん:【みんなはしんとなってしまいました。】
Mだんだん:【だんだんみんな女の子たちも集って来ましたが誰も何とも云えませんでした。】
Nじっ:【赤毛の子どもは一向こわがる風もなくやっぱりじっと座っています。】
Oゆっくり:【一郎はまるで坑夫のようにゆっくり大股にやってきて、みんなを見て「何
(な)した」ときき
      ました。】
Pがやがや:【みんなははじめてがやがや声をたててその教室の中の変な子を指しました。】
Qしっかり:【一郎はしばらくそっちを見ていましたがやがて鞄をしっかりかかえてさっさと窓の下へ
      行きました。】
Rさっさ:【一郎はしばらくそっちを見ていましたがやがて鞄をしっかりかかえてさっさと窓の下へ行
      きました。】
Sすっかり:【みんなもすっかり元気になってついて行きました。】
21きょろきょろ:【けれどもそのこどもはきょろきょろ室
(へや)の中やみんなの方を見るばかりでやっ
      ぱりちゃんとひざに手をおいて腰掛に座っていました。】
22やっぱり:【けれどもそのこどもはきょろきょろ室
(へや)の中やみんなの方を見るばかりでやっぱり
      ちゃんとひざに手をおいて腰掛に座っていました。】
23がやがやがやがや:【「外国人だな。」「学校さ入るのだな。」みんなはがやがやがやがや云いま
      した。】
24きちん:【変なこどもはやはりきょろきょろこっちを見るだけきちんと腰掛けています。】
25キラキラ:【ところがおかしいことは、先生がいつものキラキラ光る呼子笛を持っていきなり出入
      口から出て来られたのです。】
26ピル
:【「みなさんお早う。どなたも元気ですね。」と云いながら笛を口にあててピルと吹きまし
      た。】
27きろきろ:【ところがおかしな子どもはやっぱりちゃんとこしかけたまま、きろきろこっちを見てい
      ます。】
28どっ:【「さっきたの髪の赤いわらすだんす。」みんなもどっと叫びました。】
29こっそり:【女の子たちもこっそりついて行きました。】
30がっかり:【けれどもみんなは山にのぼるとがっかりしてしまいました。】
31やっ:【みんながやっとその栗の木の下まで行ったときはその変な子はもう見えませんでした。】
32そろそろ:【けれども小さい方のこどもらはもうあんまりその変な子のことばかり考えていたもんで
      すからもうそろそろ厭きていました。】
33ちらちら:【次の日もよく晴れて谷川の波はちらちらひかりました。】
34ぐんぐん:【二人は鞄をきちんと背負い、川を渡って丘をぐんぐん登って行きました。】
35ひょっ:【丘の途中の小さな段を一つ越えて、ひょっと上の栗の木を見ますと、たしかにあの赤髪
      の鼠色のマントを着た変な子が草に足を投げ出して、だまって空を見上げているのです。】
36どきどき:【二人はそこで胸をどきどきさせて、まるで風のようにかけ上りました。】
37じっ:【その子は大きな目をして、じっと二人を見ていましたが、逃げようともしなければ笑いもしま
      せんでした。】
38きっ:【小さな唇を強そうにきっと結んだまま、黙って二人のかけ上って来るのを見ていました。】
39はあはあ:【けれどもあんまり息がはあはあしてすぐには何も云えませんでした。】
40はあはあ:【一郎がまだはあはあ云いながら、切れ切れに叫びました。】
41はあはあはあはあ:【するとその子は空を向いて、はあはあはあはあ笑い出しました。】
42ぷいっ:【又三郎は少し怒ったようにマントからとがった小さな手を出して、草を一本むしってぷい
      っと投げつけながら云いました。】
43ずうっ:【「逃げたんじゃないや。昨日は二百十日だい。本当なら兄さんたちと一諸にずうっと北の
      方へ行ってるんだ。」】
44きりきりきりっ:【すると風の又三郎はよろこんだの何のって、顔をまるでりんごのようにかがやく
      ばかり赤くしながら、いきなり立ってきりきりきりっと二三べんかかとで廻りました。】
45ギラギラ:【鼠色のマントがまるでギラギラする白光りに見えました。】
46ぐるっ:【「僕は小屋のまわりを一ぺんぐるっとまわったんだよ。」】
47じっ:【「そしてまっくろな地面をじっと見おろしていたら何だか足もとがふらふらするんだ。」】
48ふらふら:【「そしてまっくろな地面をじっと見おろしていたら何だか足もとがふらふらするんだ。」】
49どんどん:【「僕らは、もう、少しでも、空(あ)いているところを見たらすぐ走って行かないといけない
      んだからね、僕はどんどん下りて行ったんだ。谷底はいいねえ。」】
50ころころかさかさ:【「それは僕の前にまっ黒な崖があってねえ、そこから一晩中ころころかさかさ
      石かけや火山灰のかたまったのやが崩れて落ちて来るんだ。」】
51ちらちらちらちら:【「そうそう、まだ明るくならないうちにね、谷の上の方をまっ赤な火がちらちらち
      らちら通って行くんだ。」】
52チッチクチッチク:【「鳥がチッチクチッチクなき出したろう。」】
53ひらっ:【「さあ僕はひらっと飛びあがった。」】
54ピゥ:【「そしてピゥ、ただ一足でさっきの白いきものの人たちのとこまで行った。」】
55フゥ:【「僕がマントをフゥとやって通ったら火がぽっぽっと青くうごいてね、とうとう消えてしまった
      よ。」】
56ぽっぽっ:【「火がぽっぽっと青くうごいてね、とうとう消えてしまったよ。」】
57どっ:【「みんなどっと笑ったね。」】
58ガヤガヤ:【「するとね、ガヤガヤ云うだろう、見るとさっきの人たちがやっと登って来たんだ。」】
59バラリバラリ:【「みんなで火口のふちの三十三の石ぼとけにね、バラリバラリとお米を投げつけて
      ね、もうみんな早く頂上へ行こうと競争なんだ。」】
60ぐんぐんぐんぐん:【「みんなぐんぐんぐんぐん走っているんだ。」】
61ぷんぷん:【「それでも頂上に着いてしまうとそのとし老りがガラスの瓶を出してちいさなちいさなコ
      ップについでそれをそのぷんぷん怒っている若い人に持って行って笑って拝むまねをして
      出したんだよ。】
62ホウ:【「僕はもう丁度こっちへ来ないといけなかったもんだからホウと一つ叫んで岩手山の頂上
      からはなれてしまったんだ。」】
63フィウ:【又三郎は立ちあがってマントをひろげたと思うとフィウと音がしてもう形が見えませんでし
      た。】
64どうどっ:【「又三郎、又三郎、どうどっと吹いで来
(こ)。」】
65ツイツイ:【又三郎は来ないで、却ってみんな見上げた青空に、小さな小さなすき通った渦巻が、
      みずすましの様に、ツイツイと、上ったり下ったりするばかりです。】
66ギラッ:【あのすきとおる沓
(くつ)とマントがギラッと白く光って、風の又三郎は顔をまっ赤に熱らせ
      て、はあはあしながらみんなの前の草の中に立ちました。】
67もっ:【「僕ね、もっと早く来るつもりだったんだよ。」】
68さらさら:【「小さな小さな氷のかけらがさらさらぶっかかるんだもの、そのかけらはここから見えや
      しないよ」】
69ぴくぴく:【「唇がぴくぴくして、いかにもうれしいのを、無理にまじめになって歩きまわっていたらし
      かったんだ。」】
70ドッドド ドドウド ドドウド ドドウ:【「ドッドド ドドウド ドドウド ドドウ、甘いざくろも吹き飛ばせ 
      酸っぱいざくろも吹き飛ばせ」】
71ばたばた:【「ホラね、ざくろの実がばたばた落ちた。」】
72ドンブラゴッコ、ドンブラゴッコ:【「霧が一杯にかかってその中で波がドンブラゴッコ、ドンブラゴッ
      コ、と云ってるような気がするだけさ。」】
73ひらりひらり:【「銀色の羽をひらりひらりとさせながら、空の青光の中や空の影の中を、まっすぐ
      にまっすぐに、まるでどこまで行くかわからない不思議な矢のように馳けて行くんだ。」】
74きりきりっ:【それから一寸立ち上ってきりきりっとかかとで一ぺんまわりました。】
75ギラギラ:【そこでマントがギラギラ光り、ガラスの沓
(くつ)がカチッ、カチッとぶっつかって鳴ったよ
      うでした。】
76カチッ、カチッ:【ガラスの沓
(くつ)がカチッ、カチッとぶっつかって鳴ったようでした。】
77きゃっきゃっ:【「僕がいつでもあらんかぎり叫んで馳ける時、よろこんできゃっきゃっ云うのは子
      供ばかりだよ。」】
78がりがり:【「栗の木の青いいがを落したり、青葉までがりがりむしってやったね。」】
79ぶるぶる:【「その小さな子がね、まるでまっ青になってぶるぶるふるえているだろう。」】
80パチパチ:【「僕の前に行ったやつがいたずらして、その兄弟の眼を横の方からひどく圧しつけ
      て、とうとうパチパチ火花が発
(た)ったように思わせたんだ。」】
81パリパリパリパリ:【「それでもその小さな子は空が紫色がかった白光をしてパリパリパリパリと
      燃えて行くように思ったんだ。」】
82ちりぢり:【「そしてもう天地がいまひっくりかえって焼けて、自分も兄さんもお母さんもみんなちり
      ぢりに死んでしまうと思ったんだい。」】
83ばらばら:【「豆つぶくらいある石ころをばらばら吹きあげて、たたきつけてやったんだ。」】
84ピクッ:【「けれどとうとうあんまり弟が泣くもんだから、自分も怖くなったと見えて口がピクッと横
      の方へまがった、そこで僕は急に気の毒になって、丁度その時行く道がふさがったの
      を幸に、ぴたっとまるでしずかな湖のように静まってやった。」】
85ぴたっ:【「そこで僕は急に気の毒になって、丁度その時行く道がふさがったのを幸に、ぴたっと
      まるでしずかな湖のように静まってやった。」】
86はっきり:【「サイクルホールの話、お前たちは聴きたくないかい。聴きたくないなら早くはっきり
      そう云ったらいいじゃないか。僕行っちまうから。」】
87ぼつりぼつり:【又三郎は少し機嫌を悪くしながらぼつりぼつり話しはじめました。】
88くるくる:【くるくるまわって走れぁいいからね。】
89かんかん:【「日がかんかんどこか一とこに照る時か、また僕たちが上と下と反対にかける時ぶ
      っつかってしまうことがあるんだ。」】
90だんだん:【南の方の海から起って、だんだんこっちにやってくる時、一寸僕等がはいるだけな
      んだ。】
91ふう:【ふうと馳けて行って十ぺんばかりまわったと思うと、もうずっと上の方へのぼって行って、
      みんなゆっくり歩きながら笑っているんだ。】
92ずっ:【もうずっと上の方へのぼって行って、みんなゆっくり歩きながら笑っているんだ。】
93ちらちら:【「曇った日でねえ、すると向うの低い野原だけ不思議に一日、日が照ってね、ちらちら
      かげろうが上っていたんだ。」】
94ピーッ:【「僕はその平地をめがけてピーッと飛んで行った。」】
95ぐるぐる:【ぐるぐるひどくまわっていたら、まるで木も折れるくらい烈しくなってしまった。】
96ざあっ:【「その時友だちがまわるのをやめたもんだから、水はざあっと一ぺんに日詰の町に落ち
      かかったんだ。】
97ばらばら:【「その時は僕はもうまわるのをやめて、少し下に降りて見ていたがね、さっきの水の中
      にいた鮒やなまずが、ばらばらと往来や屋根に降っていたんだ。」】
98にこにこ:【「僕等は竜じゃないんだけれども拝まれるとやっぱりうれしいからね、友だち同志にこに
      こしながらゆっくりゆっくり北の方へ走って行ったんだ。」】
99ぐるぐる:【「あんまりサイクルホールの話をしたから何だか頭がぐるぐるしちゃった。」】
100ぎらっ:【又三郎のマントがぎらっと光ったと思うと、もうその姿は消えて、みんなは、はじめてほう
      と息をつきました。】
101ほう:【みんなは、はじめてほうと息をつきました。】
102ぎらっ:【みんなが丘へのぼったとき又三郎がいきなりマントをぎらっとさせてそこらの草へ橙や青
      の光を落しながら出て来てそれから指をひろげてみんなの前に突き出して云いました。】
103くりくり:【又三郎はまっ黒な眼を少し意地わるそうにくりくりさせながらみんなを見まわしました。】
104にやにや:【けれども上海と東京ということは一郎も誰も何のことかわかりませんでしたからお互し
      ばらく顔を見合せてだまっていましたら又三郎がもう大得意でにやにや笑いながら言った
      のです。】
105くるくるくるくる:【「どうしてって風力計がくるくるくるくる廻っていて僕たちのレコードはちゃんと下の
      機械に出て新聞にも載るんだろう。」】
106ピーッ:【「そのかわりほんとうに一生けん命かけてる最中に気象台へ通りかかるときはうれしい
      ねえ、風力計をまるでのぼせるくらいにまわしてピーッとかけぬけるだろう、胸もすっとな
      るんだ。」】
107すっ:【「胸もすっとなるんだ。」】
108くりくり:【「そいつは頭をくりくりの芥子
(けし)坊主にしてね、着物だって袖の広い支那服だろう、沓
      
(くつ)もはいてるねえ、大へんかあいらしいんだよ、一番はじめの日僕がそこを通ったら斯
      
(こ)う言っていた。」】
109ふんふん:【「すると支那人の博士が葉巻をくわえたままふんふん笑って 『家が飛ばないじゃない
      か。』と云うと子供の助手はまるで口を尖
(とが)らせて、『だって向うの三角旗や何かぱたぱ
      た云ってます。』というんだ。」】
110ぱたぱた:【『だって向うの三角旗や何かぱたぱた云ってます。』】
111きっ:【これは仕方ないんだよ、お日さんさえ出たらきっともう僕たちは陸の方へ行かなけぁならな
      いようになるんだ、僕はだんだん岸へよって鴎
(かもめ)が白い蓮華の花のように波に浮んで
      いるのも見たし、また沢山のジャンクの黄いろの帆や白く塗られた蒸気船の舷
(げん)を通っ
      たりなんかして昨日の気象台に通りかかると僕はもう遠くからあの風力計のくるくるくるくる
      廻るのを見て胸が踊るんだ。】
112すっ:【「すっとかけぬけただろう。」】
113ぶらぶら:【「そしてその日はずうっと西の方の瀬戸物の塔のあるあたりまで行ってぶらぶらし、そ
      の晩十七夜のお月さまの出るころ海へ戻って睡ったんだ。」】
114ほくほく:【「その次の日僕がまた海からやって来てほくほくしながらもう大分の早足で気象台を通
      りかかったらやっぱり博士と助手が二人出ていた。」】
115ぐらぐら:【「子供はまるで顔をまっ赤にして 『それでもどの木もみんなぐらぐらしてますよ。』と云う
      んだ。」】
116があがあ:【『これは本当の暴風ですね、林ががあがあ云ってますよ、枝も折れてますよ。』】
117きれぎれ:【「僕はその語
(ことば)をきれぎれに聴きながらそこをはなれたんだそれからもうかけてか
      けて林を通るときは木をみんな狂人のようにゆすぶらせ丘を通るときは草も花もめっちゃめ
      ちゃにたたきつけたんだ、そしてその夕方までに上海から八十里も南西の方の山の中に行
      ったんだ。」】
118めっちゃめちゃ:【「丘を通るときは草も花もめっちゃめちゃにたたきつけたんだ、そしてその夕方
      までに上海から八十里も南西の方の山の中に行ったんだ。」】
119ぴくっ:【「もう子供の助手が何を云ったかただその小さな口がぴくっとまがったのを見ただけ少しも
      僕にはわからなかった。」】
120ぐんぐん:【「そうだ、そのときは僕は海をぐんぐんわたってこっちへ来たけれども来る途中でだんだ
      んかけるのをやめてそれから丁度五日目にここも通ったよ。」】
121だんだん:【「来る途中でだんだんかけるのをやめてそれから丁度五日目にここも通ったよ。」】
122とろとろ:【「あすこを通った日は丁度お天気だったけれど、そうそう、その時は丁度日本では入梅
      だったんだ、僕は観測所へ来てしばらくある建物の屋根の上にやすんでいたねえ、やすん
      で居たって本当は少しとろとろ睡
(ねむ)ったんだ。」】
123キョロキョロ:【「木村博士は痩せて眼のキョロキョロした人だけれども僕はまあ好きだねえ、それ
      に非常にテニスがうまいんだよ。」】
124よろよろ:【「僕はしばらく見てたねえ、どうしてもその技手の人はかなわない、まるっきり汗だらけ
      になってよろよろしているんだ。」】
125じっ:【「あんまり僕も気の毒になったから屋根の上からじっとボールの往来をにらめてすきを見て
      置いてねえ、丁度博士がサーヴをつかったときふうっと飛び出して行って球を横の方へ外ら
      してしまったんだ。」】
126ふうっ:【「丁度博士がサーヴをつかったときふうっと飛び出して行って球を横の方へ外らしてしまっ
      たんだ。」】
127すっ:【又三郎はすっと見えなくなってしまいました。】
128ぽたぽた:【みんなは傘をさしたり小さな簑
(みの)からすきとおるつめたい雫をぽたぽた落したりして
      学校に来ました。】
129カンカン:【おひるすぎ授業が済んでからはもう雨はすっかり晴れて小さな蝉などもカンカン鳴きは
      じめたりしましたけれども誰も今日はあの栗の木の処へ行こうとも云わず一郎も耕一も学
      校の門の処で「あばえ。」と言ったきり別れてしまいました。】
130ごうごう:【まがり角を二つまわってもう学校も見えなくなり前にもうしろにも人は一人も居ず谷の水
      だけ崖の下で少し濁ってごうごう鳴るだけ大へんさびしくなりましたので耕一は口笛を吹きな
      がら少し早足に歩きました。】
131ぐらっ:【耕一が何気なくその下を通りましたら俄かに木がぐらっとゆれてつめたい雫が一ぺんにざ
      っと落ちて来ました。】
132ざっ:【つめたい雫が一ぺんにざっと落ちて来ました。】
133ぎょっ:【耕一はぎょっとしましたけれどもやっぱり口笛を吹いて歩いて行きました。】
134びくびく:【雫は一ぱいにたまって全く今にも落ちそうには見えましたしおまけに二度あることは三
      度あるとも云うのでしたから少し立ちどまって考えて見ましたけれどもまさか三度が三度と
      も丁度下を通るときそれが落ちて来るということはないと思って少しびくびくしながらその
      下を急いで通って行きました。】
135ざあっ:【そしたらやっぱり、今度もざあっと雫が落ちて来たのです。】
136ぶるっ:【けれども何とも仕方ありませんでしたから冷たさに一ぺんぶるっとしながらもう少し行きま
      した。】
137ざあ:【すると、又ざあと来たのです。】
138しん:【「誰だ。誰だ。」耕一はもうきっと誰かのいたずらだと思ってしばらく上をにらんでいました
      がしんとして何の返事もなくただ下の方で川がごうごう鳴るばかりでした。】
139ごうごう:【何の返事もなくただ下の方で川がごうごう鳴るばかりでした。】
140どうっ:【そしたら俄にどうっと風がやって来て傘はぱっと開きあぶなく吹き飛ばされそうになりまし
      た。】
141ぱっ:【傘はぱっと開きあぶなく吹き飛ばされそうになりました。】
142がりがり:【耕一はよろよろしながらしっかり柄をつかまえていましたらとうとう傘はがりがり風にこ
      わされて開いた蕈
(きのこ)のような形になりました。】
143はあはあ:【すると丁度それと一諸に向うではあはあ笑う声がしたのです。】
144きぃん:【耕一はあたりがきぃんと鳴るように思ったくらい怒ってしまいました。】
145しくしく:【そしてしばらく口惜しさにしくしく泣いていましたがやっとあきらめてその壊れた傘も持た
      ずうちへ帰ってしまいました。】
146うん:【ただ耕一は昨日又三郎にあんなひどい悪戯をされましたのでどうしても今日は遭
(あ)って
      うんとひどくいじめてやらなければと思って自分一人でもこわかったもんですから一郎をさ
      そって朝の八時頃からあの草山の栗の木の下に行って待っていました。】
147どきっ:【さあ、しっかり談判しなくちゃいけないと考えて耕一はどきっとしました。】
148ぷりぷり:【一郎はこたえましたが耕一はぷりぷり怒っていました。】
149パチパチ:【又三郎は少し眼をパチパチさせて気の毒そうに云いましたけれども耕一の怒りは
      仲々解けませんでした。】
150ひらひら:【マントも一諸にひらひら波を立てました。】
151キラッ:【そしていつもの栗の木の下へかけ上るかあがらないうちにもう又三郎のガラスの沓
(くつ)
      がキラッと光って又三郎は一昨日の通りまじめくさった顔をして草に立っていました。】
152うろうろ:【「一年中うろうろど歩ってばがり居でいだずらばがりさな。」】
153きぃっ:【「かけるときはきぃっとかけるんだ。」】
154とろっ:【「海は油のようにとろっとなってそれでもほんの申しわけに白い波がしらを振っている。」】
155ぼんぼん:【「島で銅鑼がだるそうにぼんぼんと鳴り椰子の木もパンの木も一ぱいにからだをひ
      ろげてだらしなくねむっているよう、赤い魚も水の中でもうふらふら泳いだりじっととまった
      りして夢を見ているんだ。」】
156ふらふら:【「赤い魚も水の中でもうふらふら泳いだりじっととまったりして夢を見ているんだ。」】
157ぷかぷか:【「青ぞらをぷかぷか泳いでいると思っているんだ。」】
158そおっ:【「けれどものぼって行くたってそれはそれはそおっとのぼって行くんだよ。」】
159ちらちら:【「はじめはそれでも割合早いけれどもだんだんのぼって行って海がまるで青い板のよ
      うに見え、その中の白いなみがしらもまるで玩具
(おもちゃ)のように小さくちらちらするように
      なり、さっきの島などはまるで一粒の緑柱石のように見えて来るころは、僕たちはもう上の
      方のずうっと冷たい所に居てふうと大きく息をつく、ガラスのマントがぱっと曇ったり又さっ
      と消えたり何べんも何べんもするんだよ。」】
160ふう:【「僕たちはもう上の方のずうっと冷たい所に居てふうと大きく息をつく、ガラスのマントがぱ
      っと曇ったり又さっと消えたり何べんも何べんもするんだよ。」】
161ぱっ:【「ガラスのマントがぱっと曇ったり又さっと消えたり何べんも何べんもするんだよ。」】
162さっ:【「又さっと消えたり何べんも何べんもするんだよ。」】
163がたがた:【「けれどもとうとうすっかり冷くなって僕たちはがたがたふるえちまうんだ。」】
164どんどんどんどん:【「もうそう云ってしまうかしまわないうち僕たち北極行きの方はどんどんどんど
      ん走り出しているんだ。」】
165ポーッ:【「にわかにポーッと霧の出ることがあるだろう。」】
166ぼんやり:【「夜がぼんやりうすあかるくてそして大へんみじかくなる。」】
167ふっ:【「ふっと気がついて見るともう北極圏に入っているんだ。」】
168がちがち:【「それはみんながちがちの氷なんだ。」】
169じろじろ:【「ヘルマン大佐はまっすぐに立って腕を組んでじろじろあたりをめぐっているものを見て
      いるねえ、そして僕たちの眼の色で卑怯だったものをすぐ見わけるんだ。」】
170ぐるぐるぐるぐる:【「そう云われたらもうおしまいだ極渦の中へはいってぐるぐるぐるぐるまわる、
      仲々出ていいとは云わないんだ。」】
171きろきろ:【「けれどもなんにも卑怯をしないものは割合平気だねえ、大循環の途中でわざとつか
      れた隣りの人の手をはなしたものだの早くみんなやめるといいと考えてきろきろみんなの
      足なみを見たりしたものはどれもすっかり入れられちまうんだ。」】
172すれすれ:【「おしまいはまるで海とすれすれになる。」】
173ざぶん:【「あいつはふざけたやつだねえ、氷のはじに立ってとぼけた顔をしてじっと海の水を見
      ているかと思うと俄かに前脚で頭をかかえるようにしてね、ざぶんと水の中へ飛び込むん
      だ。」】
174あっぷあっぷ:【「あっぷあっぷ溺れるまねをしたりなんかもするねえ、そんなことをしてふざけな
      がらちゃんと魚をつかまえるんだからえらいや、魚をつかまえてこんどは大威張りで又氷
      にあがるんだ。」】
175ぱちぱち:【「それからその次に面白いのは北極光
(オーロラ)だよ。ぱちぱち鳴るんだ、ほんとうに
      鳴るんだよ。」】
176ぐんぐん:【「どうしてどうして途中のひどいこと前に高いとこをぐんぐんかけたどこじゃない、南の
      方から来てぶっつかるやつはあるし、ぶっつかったときは霧ができたり雨をちらしたり負
      ければあと戻りをしなけぁいけないし丁度力が同じだとしばらくとまったりこの前のサイク
      ルホールになったりするし勝ったってよっぽど手間取るんだからそらぁ実際気がいらいら
      するんだよ。」】
177いらいら:【「丁度力が同じだとしばらくとまったりこの前のサイクルホールになったりするし勝っ
      たってよっぽど手間取るんだからそらぁ実際気がいらいらするんだよ。」】
178ばらばら:【みんなはばらばら丘をおりました。】
179ばたっ:【馬屋のうしろの方で何かの戸がばたっと倒れ馬はぶるるっと鼻を鳴らしました。】
180ぶるるっ:【馬はぶるるっと鼻を鳴らしました。】
181どんどんどんどん:【空では雲がけわしい銀いろに光りどんどんどんどん北の方へ吹きとばされて
      いました。】
182ごとんごとん:【遠くの方の林はまるで海が荒れているようにごとんごとん鳴ったりざあと聞こえたり
      するのでした。】
183ざあ:【ざあと聞こえたりするのでした。】
184さらさら:【もう又三郎が行ってしまったのだろうかそれとも先頃約束したように誰かの目をさますう
      ち少し待って居て呉れたのかと考えて一郎は大へんさびしく胸がさらさら波をたてるように
      思いました。】
185どかどか:【けれども又じっとその鳴って吠えてうなってかけて行く風をみていますと今度は胸がど
      かどかなってくるのでした。】
186はあ、はあ:【昨日まで丘や野原の空の底に澄みきってしんとしていた風どもが今朝夜あけ方俄
      かに一斉に斯う動き出してどんどんどんどんタスカロラ海床の北のはじをめがけて行くこと
      を考えますともう一郎は顔がほてり息もはあ、はあ、なって自分までが一諸に空を翔けて行
      くように胸を一杯にはり手をひろげて叫びました。】
187ドッドドドドウドドドウドドドウ:【「ドッドドドドウドドドウドドドウ、あまいざくろも吹きとばせ、すっぱいざ
      くろも吹きとばせ、ドッドドドドウドドドウドドドウ、ドッドドドドウドドドードドドウ。」】
188ちらっ:【かきねのずうっと向うで又三郎のガラスマントがぎらっと光りそれからあの赤い頬とみだ
      れた赤毛とがちらっと見えたと思うと、もうすうっと見えなくなってただ雲がどんどん飛ぶば
      かり一郎はせなか一杯風を受けながら手をそっちへのばして立っていたのです。】
189すうっ:【もうすうっと見えなくなってただ雲がどんどん飛ぶばかり一郎はせなか一杯風を受けなが
      ら手をそっちへのばして立っていたのです。】

 『風野又三郎』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝
(^ ^;
                                                   2006.5.25.

 
 


『ポラーノの広場』の第十二話です。

     「おい、柏の木、                                                       おいらおまえと遊びに来たよ。遊んでおくれ。」   .    この時、風が行ってしまいましたので、                              柏の木は、もうこそっとも云わなくなりました。       .    「まだ睡(ね)てるのか、柏の木、                                     遊びに来たから起きてくれ。」  

** 『タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった』 11p **
 

 にちゃにちゃ噛んでたんだにゃぁ、『タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった』。

 っつーことで、『
賢治童話丸写しシリーズその72』だよん。(^ ^;
<イントロ>
 ホロタイタネリは、小屋の出口で、でまかせのうたをうたいながら、何か細かくむしったものを、
ばたばたばたばた、棒で叩いて居りました。
    「山のうえから、青い藤蔓
(ふじつる)とってきた
       …西風ゴスケに北風カスケ…
     崖のうえから、赤い藤蔓とってきた
       …西風ゴスケに北風カスケ…
     森のなかから、白い藤蔓とってきた
       …西風ゴスケに北風カスケ…
     洞
(ほら)のなかから、黒い藤蔓とってきた
       …西風ゴスケに北風カスケ…
     山のうえから、…」
 タネリが叩いているものは、冬中かかって凍らして、こまかく裂いた藤蔓
(ふじつる)でした。
    「山のうえから、青いけむりがふきだした
       …西風ゴスケに北風カスケ…
     崖のうえから、赤いけむりがふきだした
       …西風ゴスケに北風カスケ…
     森のなかから、白いけむりがふきだした
       …西風ゴスケに北風カスケ…
     洞のなかから、黒いけむりがふきだした
       …西風ゴスケに北風カスケ…
 ところがタネリは、もうやめてしまいました。向うの野はらや丘が、あんまり立派で明るくて、そ
れにかげろうが、「さあ行こう、さあ行こう。」というように、そこらいちめん、ゆらゆらのぼってい
るのです。
 タネリはとうとう、叩いた蔓
(つる)を一束もって、口でもにちゃにちゃ噛みながら、そっちの方へ
飛びだしました。
        
(丸写しオシマイ)
 『
賢治童話丸写しシリーズその72』でした。

ps.
『若い木霊(こだま)』とストーリーが、ほぼそっくりだにゃぁ、でまかせのうたはないけどネ。
   ホロタイタネリは子供、若い木霊は思春期の少年、っつー感じで、『若い木霊』はどこかし
   らセクシュアルっぽいのら。(^ ^;


  タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった
              お気に入りオノマトペ
 季節: 春           タネリは、こっそり爪立(つまだ)てをして、                           その一本のそばへ進んで、                                          耳をぴったり茶いろな幹にあてがって、                              なかのようすをうかがいました。        けれども、中はしんとして、                                          まだ芽も葉もうごきはじめるもようがありませんでした。     
   「来たしるしだけつけてくよ。」                                          タネリは、さびしそうにひとりでつぶやきながら、                      そこらの枯れた草穂をつかんで、                                    あちこちに四つ、結び目をこしらえて、                               やっと安心したように、また藤の蔓(つる)を                         すこし口に入れてあるきだしました。

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=5つが最高。)
Cにちゃにちゃ:【タネリはとうとう、叩いた蔓(つる)を一束もって、口でもにちゃにちゃ噛みな
      がら、そっちの方へ飛びだしました。】
G
もがもが:【タネリは、もがもがつぶやきました。】
23
ぺらぺら:【(どうだい、おれの頭のうえは。いつから、こんな、ぺらぺら赤い火になったろ
      う。)】

ボクの好きなオノマトペ(再読)=5つが最高。)
Iついつい:【そこには、小さなすきとおる渦巻きのようなものが、ついついと、のぼったりお
      りたりしているのでした。】
 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

ついつい:【そこには、小さなすきとおる渦巻きのようなものが、ついついと、のぼったりおりたり
      しているのでした。】

ついつい、っつーの、いろんな使われ方しちょるんだなや。


   「栗の木 死んだ、何して死んだ。                                   子どもにあたまを食われて死んだ。」                                すると上の方で、やどりぎが、                                       ちらっと笑ったようでした。                                            タネリは、面白がって節をつけてまた叫びました。        「栗の木食って   栗の木死んで                                    かけすが食って 子どもが死んで                                  夜鷹が食って   かけすが死んで                                  鷹は高くへ飛んでった。」            やどりぎが、上でべそをかいたようなので、                          タネリは高く笑いました。
** タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった  .
                       オノマトペ **
 

@ばたばたばたばた:【ホロタイタネリは、小屋の出口で、でまかせのうたをうたいながら、何か細
      かくむしったものを、ばたばたばたばた、棒で叩いて居りました。】
Aゆらゆら:【向うの野はらや丘が、あんまり立派で明るくて、それにかげろうが、「さあ行こう、さあ

      行こう。」というように、そこらいちめん、ゆらゆらのぼっているのです。】
Bとうとう:【タネリはとうとう、叩いた蔓
(つる)を一束もって、口でもにちゃにちゃ噛みながら、そっち
      の方へ飛びだしました。】
Cにちゃにちゃ:【タネリはとうとう、叩いた蔓
(つる)を一束もって、口でもにちゃにちゃ噛みながら、
      そっちの方へ飛びだしました。】
Dごろごろ:【枯れた草は、黄いろにあかるくひろがって、どこもかしこも、ごろごろころがってみた

      いくらい、そのはてでは、青ぞらが、つめたくつるつる光っています。】
Eつるつる:【そのはてでは、青ぞらが、つめたくつるつる光っています。】
Fがたがた:【タネリの小屋が、兎ぐらいに見えるころ、タネリはやっと走るのをやめて、ふざけた

      ように、口を大きくあきながら、頭をがたがたふりました。】
Gもがもが:【タネリは、もがもがつぶやきました。】
Hざわざわざわざわ:【「こいつらがざわざわざわざわ云ったのは、ちょうど昨日のことだった。」】
Iついつい:【そこには、小さなすきとおる渦巻きのようなものが、ついついと、のぼったりおりた

      りしているのでした。】
Jちらちらちらちら:【そのなめらかな青ぞらには、まだ何か、ちらちらちらちら、網になったり紋

      になったり、ゆれてるものがありました。】
Kぷっ:【タネリは、柔らかに噛んだ藤蔓
(ふじつる)を、いきなりぷっと吐いてしまって、こんどは力
      いっぱい叫びました。】
Lざらざら:【向うにはさっきの、四本の柏が立っていてつめたい風が吹きますと、去年の赤い枯

      れた葉は、一度にざらざら鳴りました。】
Mやっ:【タネリはおもわず、やっと柔らかになりかけた藤蔓
(ふじつる)を、そこらへふっと吐いてしま
      って、その西風のゴスケといっしょに、大きな声で云いました。】
Nこそっ:【この時、風が行ってしまいましたので、柏の木は、もうこそっとも云わなくなりました。】
Oこっそり:【タネリは、こっそり爪立てをして、その一本のそばへ進んで、耳をぴったり茶いろな

      幹にあてがって、なかのようすをうかがいました。】
Pぴったり:【その一本のそばへ進んで、耳をぴったり茶いろな幹にあてがって、なかのようすを

      うかがいました。】
Qしん:【けれども、中はしんとして、まだ芽も葉もうごきはじめるもようがありませんでした。】
Rぼんやり:【そこではまっくろな泥が、あたたかに春の湯気を吐き、そのあちこちには青じろい

      水ばしょう、牛(べご)の舌の花が、ぼんやりならんで咲いていました。】
Sしぃん:【それはいよいよ青くひかって、そこらはしぃんと鳴るばかり、タネリはとうとう、たまら

      なくなって、「おーい、誰か居たかあ。」と叫びました。】
21のそのそ:【すると花の列のうしろから、一ぴきの茶いろの蟇
(ひきがえる)が、のそのそ這ってで
      てきました。】
22ぎくっ:【タネリは、ぎくっとして立ちどまってしまいました。】
23ぺらぺら:【(どうだい、おれの頭のうえは。いつから、こんな、ぺらぺら赤い火になったろう。)】
24こわごわ:【「火なんか燃えてない。」タネリはこわごわ云いました。】
25どかどか:【タネリは、やどり木に何か云おうとしましたが、あんまり走って、胸がどかどかふい

      ごのようで、どうしてもものが云えませんでした。】
26ちらっ:【すると上の方で、やどりぎが、ちらっと笑ったようでした。】
27しょんぼり:【けれども、その笑い声が、潰れたように丘へひびいて、それから遠くへ消えたと

      き、タネリは、しょんぼりしてしまいました。】
28ぎらぎら:【はねのうらは桃いろにぎらぎらひかり、まるで鳥の王さまとでもいうふう、タネリの

      胸は、まるで、酒でいっぱいのようになりました。】
29ゆっくり:【鳥は、あたりまえさというように、ゆっくり丘の向うへ飛んで、まもなく見えなくなりま

      した。】
30ぐるぐる:【タネリは、北風カスケより速く、丘を馳け下りて、その黄いろな蘆むらのまわりを、

      ぐるぐるまわりながら叫びました。】
31ふらふら:【タネリは、青い影法師といっしょに、ふらふらそれを追いました。】
32ゆらゆら:【かたくりの花は、その足もとで、たびたびゆらゆら燃えましたし、空はぐらぐらゆれ

      ました。】
33ぐらぐら:【空はぐらぐらゆれました。】
34きょろきょろ:【タネリは、ほんとうにさびしくなって、また藤の蔓
(つる)を一つまみ、噛みながら、
      もいちど森を見ましたら、いつの間にか森の前に、顔の大きな犬神みたいなものが、
      片っ方の手をふところに入れて、山梨のような赤い眼をきょろきょろさせながら、じっ
      と立っているのでした。】
35じっ:【じっと立っているのでした。】
36きらきら:【それはさっきのやどりぎでした。いかにもタネリをばかにしたように、上できらきら

      ひかっています。】

 『タネリはたしかにいちいち噛んでいたようだった』のオノマトペ
                    まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝
(^ ^;
                                                    2006.5.26.

 
 







 
 

      「サイクルホールは面白い。                                          人間だってやるだろう。見たことはないかい。                       秋のお祭なんかにはよくそんな看板を見るだがなあ、             自転車で                                                             すりばちの形になった格子の中を馳けるんだよ。                  だんだん上にのぼって行って、                                       とうとうそのすりばちのふちまで行った時、                           片手でハンドルを持ってハンケチなどを振るんだ。                 なかなかあれでひどいんだろう。」








 
       
 


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  (貴重なほんのわずかな読者の方々へ)
目次の掲示板におたより等お寄せくなさい。 スネオ 拝 (^ ^;

       
 
ポラーノの広場
 
次回配本は第十五話『銀河鉄道の夜〔初期形第三次稿〕』です。


   「僕たちは  みんな  一人一人なんだよ。」                                                                    by 『風野又三郎』


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