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  王子と大臣の子が宝石よりも美しいものを見つけるんだにゃぁ、『十力の金剛石』。
 っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその69』だよん。(^ ^;
 
 大臣の子はよろこんで顔をまっかにして、
 「王子さま、お早うございます。」と申しました。王子が口早にききました。
 「お前さっきからここに居たのかい。何してたの。」
 大臣の子が答えました。
 「お日さまを見て居りました。お日さまは霧がかからないと、まぶしくて見られません。」
 「うん。お日様は霧がかかると、銀の鏡のようだね。」
 「はい、又、大きな蛋白石(たんぱくせき)の盤のようでございます。」
 「うん。そうだね。僕はあんな大きな蛋白石があるよ。けれどもあんなに光りはしないよ。
 僕はこんど、もっといいのをさがしに行くんだ。お前も一諸に行かないか。」
 大臣の子はすこしもじもじしました。
 王子は又すぐ大臣の子にたずねました。
 「ね、おい。僕のもってるルビーの壺やなんかより、もっといい宝石は、どっちへ行ったら
 あるだろうね。」
 大臣の子が申しました。
 「虹の脚もとにルビーの絵の具皿があるそうです。」
 王子が口早に云いました。
 「おい、取りに行こうか。行こう。」
 「今すぐでございますか。」
 「うん。しかし、ルビーよりは金剛石の方がいいよ。僕黄色な金剛石のいいのを持ってる
 よ。そして今度はもっといいのを取って来るんだよ。ね、金剛石はどこにあるだろうね。」
 大臣の子が首をまげて少し考えてから申しました。
 「金剛石は山の頂上にあるでしょう。」
 王子はうなずきました。
 「うん。そうだろうね。さがしに行こうか。ね。行こうか。」
 「王さまに申し上げなくてもようございますか。」と大臣の子が目をパチパチさせて心配そ
 うに申しました。
 (丸写しオシマイ)
 『賢治童話を丸写しシリーズその69』でした。
 
 ps.宝石の名前がいっぱい出て来るんだにゃぁ。
 
 @天河石(アマゾンストン)【微斜長石(びしゃちょうせき)の変種で青色。正長石(せいちょうせき)に似た
 単晶多数個の晶群。花崗岩(かこうがん)の晶洞から産出。】
 A紫水晶(アメシスト)【水晶のうち、紫色に輝くもの。色は少量の鉄またはマンガンを含有するた
 め。】
 B霰石(アラゴナイト)【宝石名はメキシコ縞瑪瑙(しまめのう)・モザイク瑪瑙(めのう)。縞目、斑紋あるい
 は曇りを有する瑪瑙(めのう)様の霰石(あられいし)。普通の瑪瑙は石英質であるが、本石は石灰
 質。このうち角礫(かくれき)状のものをモザイク瑪瑙という。】
 C猫睛石(キャッツアイ)【猫目石ともいう。金緑色で変彩を示すものの宝石名。繊維状構造のた
 め、猫の目のような感じの絹糸状繊維光が現れる。絹状光沢、不透明あるいは半透明、帯
 緑色が多い。】
 D琥珀(こはく)【松、杉、檜(ひのき)類の樹脂が埋もれて化石となったもの。非晶質、透明ないし
 半透明で脂肪光沢を呈する。黄色で赤みまたは白みがかることもある。古来、ヨーロッパで
 もアジアでも宝石の一つに数えて珍重した。】
 E金剛石(ダイヤモンド)【炭素の同素体の一つで結晶質の炭素からなる。等軸晶系。無色、淡黄、
 淡褐色。青白色が最高とされる。】
 F硅孔雀石(けいくじゃくいし=クリソコラ)【翠銅鉱(すいどうこう)、トルコ玉および孔雀石に似ているが、
 翠銅鉱およびトルコ玉よりも硬度が低い。隠微晶質。青から青緑色エナメル様。】
 Gサファイア【赤以外の色調をもつ鋼玉の宝石名。青いものが最上とされる。】
 H水晶【石英の結晶のうち、特に透明で美しい結晶形を示すもの。形は多くは六角の柱をつくっ
 ている面(柱面)とこれにつながるほぼ三角形をした六つの面(錐面(すいめん))からなる。】
 I蛋白石(オパール)【火成岩などのすきまに生じ、塊状、腎臓状、鍾乳石状、ブドウ状、ガラスま
 たは脂肪光沢があり、透明あるいは不透明。白から無地が多いが、黄・褐・赤・青・緑・黒色な
 どある。内部の細かい割れ目のため干渉を起こして虹色にきらめくのを貴蛋白石といい、宝
 石のオパールとなる。】
 Jトパァス【黄玉ともいう。黄色の宝石。温度が低下してフッ化水素が濃集してきたような条件下
 で晶出したものと思われる。斜方晶系。ガラス状光沢。】
 K土耳古玉(トルコだま)【微晶質の塊状をなして産。空色、青緑色。一般に地表水の作用で生成
 する二次鉱物で、多く乾燥地帯に産する。青色で美しいものが宝石となる。】
 L玻璃(はり)【七宝の一つ。水晶のこと。】
 M碧玉(へきぎょく)【鉄を含む不純な石英。暗緑不透明の不規則塊状で破面に貝殻状がよく現れ
 る。弱い脂肪光沢がある。】
 Nルビー【紅玉(こうぎょく)ともいう。紅色を呈する鋼玉のこと。赤色は微量のクロムによるといわ
 れている。】
 O瑠璃(るり)【古く中国において七宝の一つに数えて珍重した宝石。鉱物学的には緑柱石(ベリル)
 であるといわれている。】
 P緑青(ろくしょう)【銅または銅合金の表面に生ずる青緑色のさびのことを、一般に緑青という。
 空気中で生ずるものは種々の組成の塩基性炭酸銅、孔雀石と同じ。有毒。】
 
 (ますむら版宮沢賢治童話集(朝日ソノラマ)319pを丸写しさせていただきました。感謝。)
 
            
                | 『十力の金剛石 』の漫画の紹介
 
 @ますむらひろし:ますむら版宮沢賢治童話集(朝日ソノラマ)
 
 A片山愁:風の又三郎(角川書店)
 
 B坂口尚:宮沢賢治漫画館(潮出版社)第5巻
 
 ◆一等賞は坂口尚だにゃぁ。(^ ^;
 
 |  漫画版『十力の金剛石』は、坂口尚の大臣の子がいいのら。
        
 @ますむらひろしは、例によって、猫クンたちが登場人物を演ずるマニアックな漫画。
 霧・雨・自然描写はまあまあ良い。
 けれども宮殿内部がゴージャスじゃにゃい。王子様に気品にゃい。蜂雀の表情いくにゃい。
 
 A片山愁、王子様と宝石と少女漫画は相性いんだにゃぁ。
 霧・雨・自然描写いんだにゃぁ。王子様の気品いんだにゃぁ。
 でも単調なのか、感動しないんだにゃぁ。
 
 B坂口尚、宮殿内部、ゴージャス。王子様、気品とユーモア。霧・雨・自然描写にリズム感。
 なんつっても大臣の子、天然ボケと気品とユーモア、いい味の脇役やっでるだにゃぁ。
 
 っつーことで、『十力の金剛石』の漫画版、一等賞は坂口尚だにゃぁ。(^
        ^;
 
  「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」
 ポッシャリ、ツイツイトン、トントン(霧)
 ポッシャンポッシャン、(雨)
 霧から雨になっていく描写がいんだにゃぁ。
 
 
            
                | 
 ***** 『十力の金剛石』のオノマトペ *****
 | @ひょいっ:【王子はみんながちょっと居なくなったひまに、玻璃(はり)で畳んだ自分のお室(へや)から、ひょいっと芝生へ飛び下りました。】
 Aどんどん:【そして蜂雀のついた青い大きな帽子を急いでかぶって、どんどん向うへかけ出し
 ました。】
 Bはあはあ:【王子は霧の中で、はあはあ笑って立ちどまり、一寸そっちを向きましたが、又す
 ぐ向き直って音をたてないように剣のさやをにぎりながら、どんどんどんどん大臣の
 家の方へかけました。】
 Cどんどんどんどん:【又すぐ向き直って音をたてないように剣のさやをにぎりながら、どんどん
 どんどん大臣の家の方へかけました。】
 Dじっ:【その木の下で、一人の子供の影が、霧の向うのお日様をじっとながめて立っていまし
 た。】
 Eもっ:【「僕はこんど、もっといいのをさがしに行くんだ。お前も一諸に行かないか。」】
 Fもじもじ:【大臣の子はすこしもじもじしました。】
 Gパチパチ:【「王さまに申し上げなくてもようございますか。」と大臣の子が目をパチパチさせ
 て心配そうに申しました。】
 Hぐいぐい:【王子は大臣の子の手をぐいぐいひっぱりながら、小声で急いで云いました。】
 Iどんどん:【二人はどんどん野原の霧の中を走って行きました。】
 Jずうっ:【ずうっとうしろの方で、けらいたちの声が又かすかに聞えました。】
 Kだんだん:【そして野原はだんだんのぼりになって来ました。】
 Lやっ:【二人はやっと馳けるのをやめて、いきをせかせかしながら、草をばたりばたりと踏ん
 で行きました。】
 Mせかせか:【二人はやっと馳けるのをやめて、いきをせかせかしながら、草をばたりばたり
 と踏んで行きました。】
 Nばたりばたり:【草をばたりばたりと踏んで行きました。】
 Oすうっ:【いつか霧がすうっとうすくなって、お日さまの光が黄金色に透って来ました。】
 Pふっ:【やがて風が霧をふっと払いましたので、露はきらきら光り、きつねのしっぽのような
 茶色の草穂は一面波を立てました。】
 Qきらきら:【露はきらきら光り、きつねのしっぽのような茶色の草穂は一面波を立てました。】
 Rずんずん:【それでも王子は、ずんずんはいって行きました。】
 Sむくむく:【そして二人はどこまでもどこまでも、むくむくの苔やひかげのかつらをふんで森の
 奥の方へはいって行きました。】
 21ふっ:【それは、森の中に青くさし込んでいた一本の日光の棒が、ふっと消えてそこらがぼん
 やりかすんで来たのでもわかりました。】
 22ぼんやり:【そこらがぼんやりかすんで来たのでもわかりました。】
 23ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイ、トン:【「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイ、トン。」】(霧)
 24トントン:【霧がトントンはね躍りました。】
 25ポッシャリポッシャリ、ツイツイトン:【「ポッシャリポッシャリ、ツイツイトン。」】(霧)
 26ポシャポシャ:【霧がポシャポシャ降って来ました。】
 27しん:【そしてしばらくしんとしました。】
 28きょろきょろ:【二人はまわりをきょろきょろ見ましたが、どこにも誰も居ませんでした。】
 29ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイツイ:【「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイツイ。」】(霧)
 30ポタリ:【「はやしのなかにふるきりの、つぶはだんだん大きくなり、いまはしづくがポタリ。」】
 31ツイツイツイツイ:【霧がツイツイツイツイ降って来て、あちこちの木からポタリッポタリッと雫
 の音がきこえて来ました。】
 32ポタリッポタリッ:【あちこちの木からポタリッポタリッと雫の音がきこえて来ました。】
 33ポッシャン、ポッシャン、ツイ、ツイ、ツイ:【「ポッシャン、ポッシャン、ツイ、ツイ、ツイ。」】(雨)
 34ポッシャン、ポッシャン、ポッシャン、シャン:【「ポッシャン、ポッシャン、ポッシャン、シャン。」】(雨)
 35ポッシャンポッシャン:【きりはこあめにかわり、ポッシャンポッシャン降って来ました。】
 36ブルルルブルッ:【するとおどろいたことは、王子たちの青い大きな帽子に飾ってあった二羽
 の青びかりの蜂雀が、ブルルルブルッと飛んで、二人の前に降りました。】
 37ポシャポシャ:【今までポシャポシャやっていた雨が急に大粒になってざあざあと降って来た
 のです。】
 38ざあざあ:【雨が急に大粒になってざあざあと降って来たのです。】
 39ザッ、ザ、ザ、ザザァザ、ザザァザ、ザザア:【はちすずめが水の中の青い魚のように、なめ
 らかにぬれて光りながら、二人の頭の上をせわしく飛びめぐって、ザッ、ザ、ザ、ザ
 ザァザ、ザザァザ、ザザア、ふらばふれふれ、ひでりあめ、トパァス、サファイア、ダ
 イヤモンド。と歌いました。】
 40パラパラパラパラ:【雨があられに変ってパラパラパラパラやって来たのです。】
 41カチンカチン:【その宝石の雨は、草に落ちてカチンカチンと鳴りました。】
 42ザッザザ、ザザァザ、ザザアザザザア:【はちすずめが度々宝石に打たれて落ちそうになり
 ながら、やはりせわしくせわしく飛びめぐって、ザッザザ、ザザァザ、ザザアザザザア、
 降らばふれふれひでりあめ、ひかりの雲のたえぬまま。と歌いましたので雨の音は一
 しお高くなりそこらは又一しきりかがやきわたりました。】
 43ぴたり:【雨がぴたりとやみました。】
 44きらきらっ:【おしまいの二つぶばかりのダイアモンドがそのみがかれた土耳古玉のそらから
 きらきらっと光って落ちました。】
 45ツァリン:【その時、風が来て、りんどうの花はツァリンとからだを曲げて、その天河石(アマゾン
 ストン)の花の盃(さかずき)を下の方に向けましたので、トパァスはツァラツァランとこぼ
 れて下のすずらんの葉に落ちそれからきらきらころがって草の底の方へもぐって行き
 ました。】
 46ツァラツァラン:【トパァスはツァラツァランとこぼれて下のすずらんの葉に落ちそれからきらき
 らころがって草の底の方へもぐって行きました。】
 47きらきら:【下のすずらんの葉に落ちそれからきらきらころがって草の底の方へもぐって行きま
 した。】
 48ギギン:【りんどうの花はそれからギギンと鳴って起きあがり、ほっとため息をして歌いました。】
 49ほっ:【ほっとため息をして歌いました。】
 50ツァランツァリルリン:【「トッパァスのつゆはツァランツァリルリン、こぼれてきらめく サング、
 サンガリン、ひかりの丘に すみながらなぁにがこんなにかなしかろ。」】
 51サング、サンガリン:【「こぼれてきらめく サング、サンガリン、ひかりの丘に すみながらなぁ
 にがこんなにかなしかろ。」】
 52ツァリル、ツァリル、ツァリルリン、ツァリル、ツァリル、ツァリルリン:【まっ碧(さお)な空でははち
 すずめがツァリル、ツァリル、ツァリルリン、ツァリル、ツァリル、ツァリルリンと鳴いて
 二人とりんどうの花との上をとびめぐって居りました。】
 53むくむく:【「むくむく虹が湧いてるようだよ。」】
 54ぷりりぷりり:【ほんとうにそのうめばちそうは、ぷりりぷりりふるえていましたので、その花の
 中の一つぶのダイヤモンドは、まるで叫び出す位に橙や緑や美しくかがやき、うめば
 ちそうの花びらにチカチカ映って云うようもなく立派でした。】
 55チカチカ:【その花の中の一つぶのダイヤモンドは、まるで叫び出す位に橙や緑や美しくかが
 やき、うめばちそうの花びらにチカチカ映って云うようもなく立派でした。】
 56パラリ:【その時丁度風が来ましたのでうめばちそうはからだを少し曲げてパラリとダイアモン
 ドの露をこぼしました。】
 57ちくちくっ:【露はちくちくっとおしまいの青光をあげ碧玉の葉の底に沈んで行きました。】
 58ブリリン:【うめばちそうはブリリンと起きあがってもう一ぺんサッサッと光りました。】
 59サッサッ:【もう一ぺんサッサッと光りました。】
 60ポトポト:【野ばらの木が赤い実から水晶の雫をポトポトこぼしながらしずかに歌いました。】
 61サラサラサラッ:【この時光の丘はサラサラサラッと一めんけはいがして草も花もみんなからだ
 をゆすったりかがめたりきらきら宝石の露をはらいギギンザン、リン、ギギンと起きあ
 がりました。】
 62きらきら:【草も花もみんなからだをゆすったりかがめたりきらきら宝石の露をはらいギギンザ
 ン、リン、ギギンと起きあがりました。】
 63ギギンザン、リン、ギギン:【ギギンザン、リン、ギギンと起きあがりました。】
 64チクチク:【王子は向うの鈴蘭の根もとからチクチク射して来る黄金(きん)色の光をまぶしそうに
 手でさえぎりながら 「十力の金剛石ってどんなものだ。」とたずねました。】
 65チカチカ:【「十力の金剛石はただの金剛石のようにチカチカうるさく光りはしません。」】
 66サァン、ツァン、サァン、ツァン:【ひかりしずかな天河石(アマゾンストン)のりんどうも、もうとても
 躍り出さずに居られないというようにサァン、ツァン、サァン、ツァン、からだをうごかして
 調子をとりながら云いました。】
 67ルルルルルル:【はちすずめのめぐりはあまり速くてただルルルルルルと鳴るぼんやりした青い
 光の輪にしか見えませんでした。】
 68カチカチ:【野ばらがあまり気が立ち過ぎてカチカチしながら叫びました。】
 69キイーン:【にわかにはちすずめがキイーンとせなかの鋼鉄の骨も弾けたかと思うばかりするど
 いさけびをあげました。】
 70スッ:【はちすずめのあとを追って二つぶの宝石がスッと光って二人の青い帽子に下(お)ちそれ
 から花の間に落ちました。】
 71とうとう:【「来た来た。ああ、とうとう来た。十力の金剛石がとうとう下った。」と花はまるでとびた
 つばかりかがやいて叫びました。】
 
 『十力の金剛石』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝 (^ ^;
 2006.5.07.
 
 
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