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地僻門深少送迎,
披衣閒坐養幽情。
秋庭不掃攜藤杖,
閒蹋梧桐黄葉行。
晩秋の閑居
地僻 り 門 深くして 送迎少 に,
衣を披 り 閒坐して 幽情を 養ふ。
秋庭掃 はず 藤杖を攜 へ,
閒 かに 梧桐の黄葉を蹋 みて 行く。
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◎ 私感註釈
※晩秋閑居:晩秋の世間との交わりを熄(や)めて、心静かに住む心を詠う。 *白居易の『秋居書懷』「門前少賓客,階下多松竹。秋景下西墻,涼風入東屋。有琴慵不弄,有書閑不讀。盡日方寸中,澹然無所欲。何須廣居處,不用多積蓄。丈室可容身,斗儲可充腹。況無治道術,座受官家祿。不植一株桑,不鋤一壟穀。終朝飽飯,卒歳豐衣服。持此知愧心,自然易爲足。」の前半と、そのイメージは似通っている。 ・晩秋:秋の末。秋の暮。陰暦九月。 ・閑居:世間との交わりを熄(や)め、煩(わずら)わされることなく、心静かに住むこと。
※地僻門深少送迎:場所が辺鄙で、門が奥深くて、人の訪れることもあまりない。 ・地僻:その場所が辺鄙である。偏(かたよ)っている。晉・陶潛『飮酒二十首』其五「結廬在人境,而無車馬喧。問君何能爾,心遠地自偏。采菊東籬下,悠然見南山。山氣日夕佳,飛鳥相與還。此中有眞意,欲辨已忘言。」の意。 ・僻:〔へき;pi4●〕辺鄙である。かたすみ。かたいなか。いやしい。かたよる。 ・門深:門が奥深い。 ・少:すくない。まれである。 ・送迎:送り迎え。来客、交際のあることをいう。唐・蔡希寂の『洛陽客舍逢祖詠留宴』に「綿綿鐘漏洛陽城,客舍貧居絶送迎。逢君貰酒因成醉,醉後焉知世上情。」
とある。
※披衣閒坐養幽情:上着を羽織って、静かに坐っていて心の奥底に潜んでいる気持ちを育てているのだ。 ・披衣:〔ひい;pi1yi1○○〕上着を羽織る。 ・披:〔ひ;pi1○〕はおる。まとう。 ・閒坐:何もしないでぽかんと坐っている。静かに坐る。 ・養:やしなう。からだや気力などを衰えないように保つ。育てる。 ・幽情:〔いうじゃう;you1qing2○○〕心の奥底に潜んでいる気持ち。
※秋庭不掃攜藤杖:秋の庭は、掃かずにしておいたので、藤の木のつえを携えて。 ・秋庭:秋の庭先。 ・不掃:(紅葉、黄葉を)掃除をしない(ように使用人に命じておく)。「不掃」には、掃除をさせないという作者の意志がこもっている。もしも、「使用人が掃除を忘れていたために、落ち葉で一杯になっていた」ということを詩で表現するとすれば、「未掃」とする。 ・攜:〔けい;xie2○〕たずさえる。ひっさげる。手に提げて持つ。=携。 ・藤杖:フジの木で作られたつえ。
※閑蹋梧桐黄葉行:のどかに、アオギリのもみぢ葉を踏んで行こう。 ・閑:しずかに。のどかに。 ・蹋:〔たふ;ta4●〕ふむ。踏む。「散策する」意を含む。≒踏〔たふ;ta4●〕。 ・梧桐:〔ごとう;wu2tong2○○〕あおぎり。秋の落葉の情を表すのに屡々用いられる。 ・黄葉:もみぢ葉。 ・行:行く。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「迎情行」で、平水韻下平八庚。次の平仄はこの作品のもの。
●●○○●●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
○●○○○●○。(韻)
2005.7.31 8. 1完 2012.8.26補 |
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