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到底君王負舊盟,
江山情重美人輕。
玉環領略夫妻味,
從此人閒不再生。
再題馬嵬驛
到底 君王 舊盟に 負(そむ)き,
江山の情は 重んずるも 美人は 輕んず。
玉環 夫妻の味を 領略せば,
此(こ)れ從(よ)り 人閒(じんかん)に 再びは 生れず。
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◎ 私感註釈
※袁枚:清代の詩人。1716年(康煕五十五年)~1797年(嘉慶二年)。散文家。字は子才。号して簡齋。別号に隨園老人ともいう。銭塘(現・浙江省杭州)の人。 乾隆年間の進士で、県令の任につく。やがて官を退き、江寧(金陵=現・南京附近)小倉山の隨園(別号に基づく)に隠棲する。詩では性霊説を唱えて、格調説を論駁する。
※再題馬嵬驛:楊貴妃が玄宗より死を賜った馬嵬駅について再び詠ったもの。 ・馬嵬驛:楊貴妃が死を賜ったところ。長安の西50キロメートルのところ。『中国史稿地図集』下冊(郭沫若主編 中国地図出版社)19ページ「安禄山之乱」、『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)41ページ「長安附近」にある。 ・再題:袁枚には『馬嵬驛』「莫唱當年長恨歌。人閒亦自有銀河。石壕村裏夫妻別。涙比長生殿上多。」という詩があり、それに次いでの作ということ。白居易の『長恨歌』「九重城闕煙塵生,千乘萬騎西南行。翠華搖搖行復止,西出都門百餘里。六軍不發無奈何,宛轉蛾眉馬前死。花鈿委地無人收,翠翹金雀玉掻頭。君王掩面救不得,回看血涙相和流。……天旋地轉迴龍馭,到此躊躇不能去。馬嵬坡下泥土中,不見玉顏空死處。」
と、詳しい。
※到底君王負舊盟:玄宗皇帝は、結局、古い約束を反故にしてしまった(が)。 ・到底:結局。つまり。 ・君王:ここでは、楊貴妃の仕えた玄宗のことになる。 ・負:そむく。 ・舊盟:古い約束。
※江山情重美人輕:国事を重視して、個人的な女性問題を軽く見た。公私の弁別ができていた。 ・江山:祖国の山河。ここでは、祖国、国家の意。 ・情:情義。 ・重:重視する。第一とする。 ・美人:美女。また、宮女の位。ここでは、女性の意 ・輕:軽視する。
※玉環領略夫妻味:楊玉環も夫婦としての結婚生活のあじわいも充分に分かったことだろう(から)。 ・玉環:楊貴妃の名。 ・領略:味わい知る。理解する。 ・夫妻:夫婦。 ・味:あじ。あじわい。おもむき。
※從此人閒不再生:それから後には、この世に二度とは生まれてこようとしないのだ。 ・從此:これより。今後。 ・人閒:この世。浮き世。人間(じんかん)。 ・不再生:二度とは生まれてこようとしない。 ・不再:二度とは。一度きりで。「ふたたびは…せず」。蛇足だが、「再不」とすれば、またもやしない、一度もできなかったの意になり、「ふたたび…せず」と読む。 ・不:意志の否定。
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◎ 構成について
仄起。一韻到底。韻式は、「AAA」。韻脚は「盟輕生」で、平水韻下平八庚。次の平仄はこの作品のもの。
●●○○●●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
●○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2004.4.29 4.30完 |
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