三五七言
李白
秋風清，
秋月明。
落葉聚還散，
寒鴉棲復驚。
相思相見知何日，
此時此夜難爲情。
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三五七言
秋風 淸く，
秋月 明かなり。
落葉 聚（あつ）まりて 還（ま）た 散じ，
寒鴉 棲（す）みて 復（ま）た 驚く。
相思 相ひ見る 知んぬ 何（いづ）れの日ぞ，
此の時 此の夜 情を爲（な）し 難し。
◎ 私感註釈 *****************
※李白：７０１年（嗣聖十八年）～７６２年（寶應元年）。盛唐の詩人。字は太白。自ら青蓮居士と号する。世に詩仙と称される。西域・隴西の成紀の人で、四川で育つ。若くして諸国を漫遊し、後に出仕して、翰林供奉となるが高力士の讒言に遭い、退けられる安史の乱では苦労をし、後、永王が謀亂を起こしたのに際し、幕僚となっていたため、罪を得て夜郎にながされたが、やがて赦された。
※三五七言：「三五七言」は詩題ではあるが、様式名である。三五七言体詩。填詞
で謂えば詞牌
○○○（韻），
○●○（韻）。
●●●○●，
○○○●○（韻）。
○○○●○○●，
●○●●○○○（韻）。
となるが、劉長卿のものは「新安路，人來去。早潮復晩潮，明日知何處。潮水無情亦解歸，自憐長在新安住。」で：
○○●（韻），
○○●（韻）。
●○●●○，
○●○○●（韻）。
○●○○●●○，
●○○●○○●（韻）。
と、平字韻／仄字韻や、粘法・対句などの有無で異なる。
両者を比べて表すと：
句の字数にのみこだわった詩体とも謂え、その点、前出・填詞
李白の三五七言体 劉長卿の三五七言体 ○○○（韻）， ○○●（韻）， ○●○（韻）。 ○○●（韻）。 ●●●○●， ●○●●○， ○○○●○（韻）。 ○●○○●（韻）。 ○○○●○○●， ○●○○●●○， ●○●●○○○（韻）。 ●○○●○○●（韻）。
※秋風清：秋風は、爽（さわ）やかで。 ・秋風：秋に吹く風。この作品は「秋」を多用するが、「秋」字には、勢いの衰えを暗示する季節であり物寂しく物思いに耽る心地を呼び起こす働きがある。 ・清：（涼しくて）すがすがしい。
※秋月明：秋の月は、明るく澄み亘っている。 ・秋月：秋の空に出る月。やはり、人への回想を誘発するものでもある。李煜の『虞美人』「春花秋月何時了，往事知多少。小樓昨夜又東風，故國不堪回首 月明中。 雕欄玉砌應猶在，只是朱顏改，問君能有幾多愁。恰似一江春水 向東流。」など多い。 ・明：（満月で）月影が明るく澄み亘っているさま。
※落葉聚還散：落ち葉が（風のために）集まっては、また、散らばってゆく。 *落ち葉の動きを見て、出逢っては別れてゆく人の姿を聯想している。初唐・陳子良の『送別』に「落葉聚還散，征禽去不歸。以我窮途泣，沾君出塞衣。」
※寒鴉棲復驚：冬の烏が、住み着いた（と思ったら）、またふたたび驚いて飛び立った。 ・寒鴉：冬の烏。 ・棲：（鳥などが）巣くう。住む。住み着く。 ・復：また。またふたたび。 ・驚：おどろく。ここでは､驚いて飛び立つ意になる｡
※相思相見知何日：好きな者同士がお互いに会うのは、何時のことになるのか分からない。 ・相思：好きな者同士。恋人。互いに慕うこと。また、…を慕っていく。 ・相見：お互いに会う。また、…に会う。 ・相：相互に、の意の外に、対象に働きかけてゆく趨勢を表す。…に…していく。 ・知：分かる。知る。孟浩然に『春曉』「春眠不覺曉，處處聞啼鳥。夜來風雨聲，花落知多少？」
※此時此夜難爲情：この時、この夜、この思いをどうしたらよいのか（心が悶える）。 ・此時：この時。 ・此夜：この夜。 ・難爲情：感情をどのようにすべきか困る。情誼に合わない。間が悪い。感情にしっくり来ない。
◎ 構成について
韻式は「AAAA」。韻脚は「清明驚情」で、平水韻下平八庚。平仄はこの作品のもの。
○○○（韻），
○●○（韻）。
●●●○●，
○○○●○（韻）。
○○○●○○●，
●○●●○○○（韻）。
| ２００６．６． ９ ６．１０ ６．１７ |
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