陌頭楊柳枝,
已被春風吹。
妾心正斷絶,
君懷那得知。
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子夜四時歌六首 春歌
陌頭(はくとう) 楊柳の枝,
已(すで)に 春風に 吹かる。
妾心(せふしん) 正に 斷絶す,
君が懷(おも)ひ 那(いかで)か 知ることを得ん。
◎ 私感註釈 *****************
※郭振:初唐の詩人。顯慶元年(656年)~先天二年(713年)。郭震ともする。字は元振。魏州貴郷の人。則天武后に寶劍篇を認められ、右武衛鎧曹参軍、…涼州都督…となった。玄宗の時代に、朔方軍大総管となったが、やがて、新州に流された。
※子夜四時歌六首春歌:女性の悲しみをうたった『子夜四時歌』の春歌。 ・子夜:『子夜歌』のことで、南朝の楽府民歌篇名。『清商曲辞・呉声歌曲』に属す。『呉声歌曲』を略して『呉歌』という。長江下流、建業(現・南京)の民歌の系統になる。晋宋斉で四十二首作られて、遺されている。『子夜歌』から生まれたのが『子夜四時歌』で、春夏秋冬から構成される。子夜の名称は晋代の女性の名に由来し、女性の悲しく切ない歌声のことをいう。詩の表現も女性の立場に立って詠うものである。「女性の歎きの歌」の意である。盛唐・李白に『子夜呉歌』「長安一片月,萬戸擣衣聲。秋風吹不盡,總是玉關情。何日平胡虜,良人罷遠征。」これは「秋歌」。後世、詞牌にも『子夜歌』がある。李煜の『子夜歌』「人生愁恨何能免?銷魂獨我情何限?故國夢重歸,覺來雙涙垂!高樓誰與上? 長記秋晴望。往事已成空,還如一夢中!」
がある。『王孫歸』
の思いをうたう。 ・四時歌:四季の歌。 ・春歌:四季の中の春の歌にあたる歌。
※陌頭楊柳枝:道のほとりのヤナギの枝は。 ・陌頭:道のほとり。街頭。 ・楊柳枝:ヤナギの枝。中唐・白居易の『楊柳枝』其一「六水調家家唱」
、『楊柳枝』其二「陶令門前四五樹」
、、『楊柳枝』其三「依依嫋嫋復青青」
、『楊柳枝』其四「紅版江橋青酒旗」
、『楊柳枝』其五「蘇州楊柳任君誇」
、『楊柳枝』其六「蘇家小女舊知名」
、『楊柳枝』其七「葉含濃露如啼眼」
、『楊柳枝』其八「人言柳葉似愁眉」
がある。温庭
の『折楊柳』に「館娃宮外城西」
とある
※已被春風吹:もうとっくに春風に吹かれている。(あなた(男性)が、ここ(女性の許)を旅立ってより、長い月日が経ち、季節も移り変わって春になってしまった。) ・已:とっくに。すでに。 ・被:…られる。受身表現。 ・吹:この風情を、後世、李煜は『柳枝詞』で「風情漸老見春羞,到處消魂感舊遊。多謝長條似相識,強垂煙穗拂人頭。」とうたう。前出・温庭
の『折楊柳』に「館娃宮外城西,遠映征帆近拂堤。繋得王孫歸意切,不關春草綠萋萋。」
とある。
※妾心正斷絶:わたし(女性)の心は、ちょうど(思い続けてきたのが)絶えようとしている(のに)。 ・妾心:わたし(女性)の心。 ・正:ちょうど。まさに。 ・斷絶:(思い続けてきたのが)絶える。
※君懷那得知:(いったい)あなた(男性)の胸の内は、どうなのかが分からないでいる。 ・君:あなた。ここでは、男性を指す。 ・懷:思い。胸の内。 ・那:なんぞ。どうして。蛇足になるが、現代語では「あれ」「あの」を表す語は“那”〔na4〕であり、疑問詞の“那”〔na3〕と文字表現上の区別するために、疑問詞の方には口偏を附けて「」と表記する。 ・得知:分かる。知る。
◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「枝吹知」で、平水韻上平四支。平仄はこの作品のもの。
●○○●○,(韻)
●◎○○○。(韻)(◎:ここでは●韻の意)
○○◎●●,(◎:ここでは●韻の意)
○○●●○。(韻)
2007.3.15 3.16 |
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