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                     和凝

江城子

竹裏風生月上門。
理秦箏。
對雲屏。
輕撥朱絃、恐亂馬嘶聲。
含恨含嬌獨自語,
今夜月,
太遲生。


******

江城子
                 
竹裏に  風 生じて  月 門に 上る。
秦箏を 理
(ととの)へ。
雲屏に 對す。
朱絃を 輕やかに 撥き、 亂馬の嘶く聲を 恐る。
恨を含み  嬌を含みて  獨り 自ら 語る:
今夜の月,
太
(はなは)だ 遲生(おそ)し  と。

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◎ 私感註釈

※江城子:詞牌の一。詞の形式名。詳しくは下記の「構成について」を参照。この作品は、もう一首の『江城子』と対になって、一つの情景ができあがっている。これは、その前半とも謂えるもの。

※和凝:五代の政治家。詞人。濃艶な詞を作る。和凝は『花間集』にも載せられているが、この作品は収録されていない。

※竹裏風生月上門:(女性が)竹の叢みの中に(ある建物で男性が来るのを待ち続けているが、)竹叢を吹き抜ける風が、(もう夜もふけて周りが静かになったために、)聞こえるようになったし、(時間が経ったので)月が門の上のところにまで昇ってきた。 *待ち続けて夜も更け、時間も経ったのに、なかなか男性がやってこないということ。 ・竹裏:竹藪の中。何故とはなしに、盛唐の王維に『
竹里��』「獨坐幽篁裏,彈琴復長嘯。深林人不知,明月來相照。」がある。 ・風生:風が出てくる。 *夜ふけになって周りが静かになったために、竹叢を吹き抜ける風が聞こえるようになった。夜が更けたことを謂う。 ・月上:月が(門の上に)昇ってきた。 *これは、時間が経って天象が動いてきたことを謂う。

※理秦箏:古筝を演奏できるようにして。 ・理:ととのえる。コトを演奏できるようにする。 ・秦箏:古筝のこと。コト。日本に伝わって発展した形式のものに似通っている。古筝は、戦国時代に流行し、とりわけ秦国では、隆盛を極めたため、広く秦筝と称された。時代によって異なるが、五代は十三絃になる。

※對雲屏:雲母の屏風に向かって。 ・對:むかっている。むかう。 ・雲屏:雲母の屏風。半透明のウンモで作られたびょうぶ。雲母障。王維に『題友人
雲母障子』「君家雲母障,持向野庭開。自有山泉入,非因采畫來。」がある。

※輕撥朱絃:(閑をもてあまして)軽やかに赤い弦をはじき。 ・輕撥:軽やかに(弦を)はじく。 ・朱絃:赤い糸。弦=絃。

※恐亂馬嘶聲:多くの馬のいななく鳴き声を伴った男性の来着が、今か今かと気に掛かる。 ・恐:気遣う。おそれる。おそらくは。 ・亂馬嘶聲:多くの馬のいななく鳴き声。男性の来着を謂う。

※含恨含嬌獨自語:恨みがましくも、また、色っぽく、独り言を「今夜月,太遲生。(ほんとうに、もう、遅いのったら、ありゃしない!!)」と言う。 ・含恨含嬌:恨みっぽくて色っぽく。 ・獨自語:独り言を言う。

※今夜月:今夜の月は。 ここでは、「月」は、訪問してくる男性を指す。 *『尊前集』では、「今夜約」とする。その場合は、より強烈な意味を持ち、「今夜に逢い引きをする」「今夜に、密会をする約束をする」となる。 ・月と約:「月」〔げつ、ぐゎつ〕と「約」〔やく〕を日本に伝えられた音でみると大きく異なっている。しかし、中世は「月」〔iue〕と「約」〔iau、io〕、現代北方語では「月」〔iue4、yue4〕と「約」〔iue1、yue1〕となり、極めて似通っている。『尊前集』や『紅葉稿』の写本が出来た段階では、似通っており、容易に置き換えられたことが想像できる。

※太遲生:あまりにもぐずぐずしすぎて…。 *「もう、本当に何をぐずぐずしているんでしょう、こんな時間になっているじゃないの!!!」、という焦りや、苛立ちを表す。 ・太:あまりにも。はなはだ。 ・遲生:ぐずぐずしていて…。のろのろしていて…。 ・遲:動作がのろのろしていることを表す。 ・-生:宋代の詞に使われる口語で、副詞、形容詞接尾字として用いられる。古語の「○然」「○如」や、現代語の“○地”(“○的”)に似ている。李清照詞の『聲聲慢』「尋尋覓覓,冷冷�C�C,凄凄慘慘戚戚。乍暖還寒時候,最難將息。三杯兩盞淡酒,怎敵他、曉來風急。雁過也,正傷心,却是舊時相識。   滿地黄花堆積,憔悴損,如今有誰堪摘。守着窗兒,獨自
怎生得�K。」と、使われている。

                  ***********





◎ 構成について

  単調 三十六字。江城子は、長調もある。平韻一韻到底。韻式は「AAAAA」。韻脚は「箏屏聲生」で、詞韻第十一部平声八庚。

   ○●○○。(韻)
   ●○○,(韻)
   ●○○。(韻)
   ●○○,
   ●●●○○。(韻)
   ●○○●●,
   ○●●,
   ●○○。(韻)
  

2003.12.14
     12.15完
2019.11.23補

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