映画のページ

美しき野獣 /
Ya-soo /
Running Wild

キム・ソンス/Kim Sung-su

2006 Korea 124 Min. 劇映画

出演者

クォン・サンウ/
Kwone Sang-woo
(チャン・ドヨン/
Jang Do-young - 刑事)

イ・ジュンムン
(イ・ドンジク - チャン・ドヨンの義理の弟)

ユ・ジテ/
Yu Ji-tae
(オ・ジヌ/
Oh Jin-woo - 検事)

ムン・ジョンヒ/
MoonJung-Hee
(ユン・ジョンミン - オ・ジヌの妻)

アン・ギルガン/
Ahn Kil-Kang
(Yang Ki-taek)

ソン・ビョンホ/
Son Byung-ho
(ユ・ガンジン/
Yu Kang-jin - やくざのボス)

チェ・リョン
(ペ・グァンチュン - やくざの幹部)

オム・ジウォン/
Uhm Ji-won
(カン・ジュヒ/
Kang Joo-hee)

見た時期:2006年8月

2006年 ファンタ参加作品

肝心なネタはばらしませんが、どういう方向に進むかざっと説明があります。

私は韓国語はからっきしダメなのですが、それでも韓国語のタイトルはもしかして野獣を韓国式に読んだ言葉なのかなあと考えているところです。韓国語に聞こえる日本語も、日本語に聞こえる韓国語も元は漢語なのでしょう。

日本では美しき野獣などというタイトルになっていますが、美しくはありません。話はどんどん醜くなって行きます。簡単にまとめると、ミイラ取りがミイラになるという話です。

今年の韓国映画には気合が入っていて、この作品も見ごたえがありました。ちょっと思い出したのが香港3部作。最初に思い描いていた未来と全く違った事態になってしまう警察官の話です。

性格の全然合わない、仕事ぶりも正反対の2人の男に共通するのが悪を倒そうという情熱。今時正義などとほざいても、世の中はそう簡単に行かないぞとか、そんなの時代遅れだと言われそうなテーマですが、正面から持ち込まれるとつい乗ってしまいます。確かに現代は醜い現実の方が強いと思い知らされる時代ですが、そこへ正攻法で来ると映画なら受けるということです。それだけ正義を望む観客が増えているということなのかも知れません。

1人は凶悪犯罪に取り組む警察官のチャン・ドヨン。曲がった事が許せずついやり過ぎてしまう、周囲から浮き上がった男。もう1人は湾岸署の室井を思い出してしまうようなガチガチの権力構造に通じたエリート。彼は警官ではなく、検事。ですから刑事以上に権力を持っています。

ドヨンには犯罪に手を染めた義理の弟イ・ドンジクがいます。犯罪者には乱暴、家族にはやさしいドヨンは弟の事も気遣っています。ちょうど出所して来た弟は町中、兄の目の前でやくざのべ・カンチュンに殺されてしまいます。この事件を機に静かに切れてしまったドヨンは心ひそかにこの組に対して宣戦布告。

そんな事件とは関係なく、ジワリと冷たくやくざに迫るエリート検事オ・ジヌ。彼はやくざを殴り倒したりする趣味は無く、あくまでも理論と法律で攻撃します。その方法について行けない同僚からは距離を置かれています。彼は家族に冷たいわけではありませんが、仕事熱心が行き過ぎて、家族はないがしろにされています。ジヌが考えているのは暴力事件での逮捕ではなく、金融面からの攻撃。狙いはズバリ、ボスのユ・ガンジン。1回戦は勝ちましたが、2回戦で負け、地方に飛ばされたこともあります。3回戦は証拠隠滅で空振り。検察庁には無間道を思わせる陰謀もあります。

その頃ドヨンとジヌにニアミスがあり、知り合います。始めは誤解があり対立しますが、やがて双方の身分が分かり、同じ目標を追っていたことも分かって来ます。で協力しようという話になります。ところが敵もだてにやくざのボスをやっているのではありません。そう簡単に尻尾は出しません。ドヨンとジヌの必死の努力が実りかけた時に、アッと驚くうっちゃりをかけられ、単に作戦が失敗するだけではなく、刑事と検察官の方がつかまってしまいます。扱っている問題は Miami Vice ほど単純ではなく、警察、検察が普段どこで妥協しているかが見えて来ます。

「許せない!」と力んでアクセルを踏んでしまった2人は自分たちが被告になってしまいます。しかしそれでも「許せない!」と思った2人はもう捨て身。

捕まえる側が被告になってしまっただけでもアッと驚く為五郎(古いねえ)ですが、それで我満できず最後の踏ん張りを見せる主人公には2度驚かされます。ユ・ジテは以前ファンタにオールド・ボーイを持ち込んでアッと言わせてくれた俳優ですが、今回も転んでもただでは起きて来ません。「俺はこのぐらい悔しいんだ」という最後の線まで行きます。刑事や検事にここまでやらせる世の中というのが情けないですが。

韓国映画は最近かなり頑張っていますが、それが1つの方向に固まらないのがいいです。今年怪獣映画が日本ではずっこけたそうですが、犯罪映画はかなり行けます。私が見ていないのは、ヨン様が出て来る作品とか、恋愛物。噂を聞くと日本では成功しているらしいのですが、目の前におもしろい犯罪映画やアクション映画をちらつかされると、ついそちらの方へフラフラ。大体からファンタには恋愛映画は来ません。

その犯罪映画のジャンルでも、1つに固まらず、時代物になっていたり、コメディーの要素のあるもの、暗くてマジな物、主人公のキャラクターを重視したもの、事件の内容を重視したものなどさまざまです。政治面では暗いニュースも伝わりますし、ここ数年日本と歩調が合わない面も多いようですが、ファンタに来る映画はドイツ人の観客も見ごたえがあると言っていました。今年目立ったのは、それなのに韓国人の観客が少なかった点です。韓国の作品は8本来ていて、1本がマーシャル・アート系、7本が犯罪映画やホラーです。中国(実は香港)が狼よ静かに死ね1本、日本は8本とは言え、うち3本が古い作品、1本はあずみという事を考えると、今年のアジア映画は韓国に押し捲られた形です。それにしては会場に東洋人の顔がほとんど見られなかったのが不思議です。

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