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結果も
話を聞いた時期:2007年1月、結果2月
オスカーの結果が発表になりました。今年もまたクリント・イーストウッドか、マルティン・スコシージかとハラハラしましたが、今年はスコシージの年になりました。本人以上に最近主役を務めることの多いディ・カプリオが喜んでいたとの話です。
第79回オスカーのノミネーションが発表されました。
作品
今年のゴールデン・グローブ賞では硫黄島からの手紙が外国語映画賞に輝いてしまいましたが、オスカーではそういう不思議なトリックは使わず、正攻法で作品賞ノミネートとなりました。
後記: 来ましたね、遂にスコシージに。グレアム・キングという人が制作をしたようなので、彼の名が挙がっていますが、作品賞を取ると監督の名誉になります。今年は37年間無視され続けていたスコシージがダブル受賞。
イーストウッドは今年やや不運。2本も気合の入った作品を出して来ましたが、その彼を狙い撃ちするかのようにバベルも登場。そして、今年もまたスコシージとの正面衝突。さらにディ・カプリオがスコシージでない作品でもノミネートされてしまったので、私は1度ぐらいスコシージにあげてもいいと思いつつ、予想がつきませんでした。
この監督たちが手放しで好きというわけではありませんが、見ごたえのある作品を出して来る人たちなので、評価しています。
監督
ここは凄いぶつかり合いになりました。音楽では話の合うスコシージとイーストウッドですが、劇映画となると仇敵。これまでずっとイーストウッドの方が認められる結果となっています。この2人だけではなくそこへクィーンのフリアーズも飛び込んで来るので混戦模様です。まだどの作品も見ていないのですが、私はあまりオムニバス形式や輪舞形式で大成した作品は見たことが無いので、バベルにはあまり期待していません。イーストウッドはオムニバスなどいう小さい事はせず、同じ年度にいきなり2作作ってしまい驚きましたが、父親たちの星条旗の方はなぜか取り上げられていません。
後記: ディパーテッドの出来ではなく、過去37年間に作った優秀作に与えられたと考えるのが順当でしょう。私はイーストウッド、スコシージ両監督を評価していますが、賞の偏り方ははっきりしていました。今年はその差を埋めようとの試みでしょう。これまで受賞した人が全て実力を評価されたとは言えませんが、スコシージとイーストウッドは職人としてすばらしい腕を持っている人たち。スコシージの健康が悪化した頃に名誉賞が来るというフィナーレかと思ったこともありましたが、ハリウッドは今年方向をやや転換したようです。スコシージの活躍は昨年に限らずここ数年目覚しく、音楽、映画両面で映画界に貢献していました。デ・ニーロが卒業し、監督に昇格、ディ・カプリオとの共同作業も上手く行き始めているようで、スコシージ自身は第2ラウンドか第3ラウンドに入ったという印象です。
後記の続き: そうこうするうちに何作か見ました。ディパーテッドで受賞というのも図々しいですが、ユナイテッド93をノミネートするのも図々しい。クィーンもオスカーにノミネートするには貧弱です。何やってんだ、君たちは。
主演男優
作品は時々目にするので、落ち目とは絶対に言えないウィル・スミスですが、最近一頃の元気が無いように見えます。共演できた息子を誉めるのはいいですが、なんだか本人はちょっと追い詰められたような印象。これまでずっと順調で今節目に差し掛かっただけなのかも知れません。今後に期待。
カプリオはブラッド・ダイヤモンドとディパーテッドの両方が出てしまったので、票が割れそうです。オスカーではブラッド・ダイヤモンドが取り上げられています。その年に1点集中で来た方がいいのか、あちらこちらに網を張っておいた方がどこかに引っかかるので得なのかは分かり難いです。本人は 最近あまり受賞は気にしていないようにも見えるので、というか賞はありがたいけれど、それがなくてもいい映画に出る機会が増えたようなので、私もあまり気にしていません。カプリオは以前好きではなかったのですが、最近良くなっているような印象です。
今年のゴールデン・グローブ賞の所にも書きましたがウィタカーはこれまでずっとソフトな印象でした。これから変わるのかな。
後記: 賞がカプリオに行かないとは思っていました。彼がダメだからとかではなく、私個人としては、彼はもっと演技が上達するだろうと思っています。スコシージと作った作品で徐々に調子を上げて来ていますが、もっと上を狙えると思います。
ウィタカーはあまりこういう晴れがましい場所に縁の無い人ですが、今年は何かの意味があって、彼が選ばれるかなという感じがしました。他の候補はノミネートでは何度も出そうですが、ウィタカーはちょっと毛色が違うので、今年1回で勝負という風に思っていました。
後記の続き: ウィタカーが受賞というのはちょっと考え込んでしまいました。3月に見たのですが、彼の演技は言われているほどではありませんでした。彼が貰えるならエディー・マーフィーにも賞を、という感想です。努力の跡は見えますし、以前と違うタイプの役を演じていますが、努力が実り切らなかった感じです。
主演女優
ゴールデン・グローブ賞と変わらずちょっと退屈な人選です。諸々の事情で今年はミレンかなと思っています。
後記: 何かの理由があって、ミレンに行くと思っていました。他の候補は彼女を盛り立てるための脇役。私は彼女がコメディーで悪役をやった時に初めて見たのですが、なかなかおもしろい人だと思っていました。女王の役を2つも貰ってしまい、完全に女王になり切ってしまったようですね。
助演男優
フンスゥは4作ほど見たことがあるのですが、これまで演技で光ったという印象を受けたことはありません。しかし驚いたことにオスカーには2回、ゴールデン・グローブ賞には1回ノミネートされたことがあるのです。芸能界への貢献度から言うとエディー・マーフィーが横綱級ですが、コメディアンだということでこれまであまり認められていなかった感があります。今年あたりそのお礼を込めてマーフィーにあげたらと思うのは私見。
後記: アーキンがどういう演技をしたのかは分かりませんが、ちょっと意外でした。エディー・マーフィーかと思ったのです。貢献度を考えると何かあげてもいいかと思います。アーキンは大ベテランで演技力もあり、1967年以降2度主演でノミネートされています。
後記の続き: 先日見ましたが、エディー・マーフィーにはあげてもいいかと思いました。歌も上手かったですが、ドタバタとは全然違う演技をしていました。主演男優のウィタカーとは互角の勝負で、彼が取るならマーフィーも、彼が取らないなら、マーフィーも落ちても仕方がないという感じで、片方だけ受賞というのはちょっと片手落ちに思えました。
助演女優
バベルから2人も候補が出てしまうというのも気の毒な話です。票が割れますねえ。菊地は写真で見ると不健康な様子なのであまり好きになれませんが、もしかしたらそういう役だったのかも知れません。見てみないと何とも言い難い。
後記: 菊地凛子は取らないと思っていました。1回出て来てさっと取ってしまう人もたまにはいますが、普通はそうそう甘い世界ではありません。渡辺氏と同じく、最初の足がかりを作っただけ。本人もそう思っていたようです。
まだ1本も見ていないので、評価できませんが、ジェニファー・ハドソンが良くやったという声は時々耳にします。彼女が取って、マーフィーやノウルズが無視というのも気の毒な話ですが。
後記の続き: 3月に入って急に賞にノミネートされた作品を見る機会が増え、ドリームガールズも見ました。ハドソンはド迫力の歌い方で、管轄はオスカーではなく、グラミー賞という感じです。アレサ・フランクリンの再来と言い切れます。演技は共演の女性たちといい勝負です。損な役回りという役で得ができる仕掛けで、同情が集まります。
脚本
ギレルモ・デル・トロには会って話をしたことがあるのでつい贔屓してしまいます。マイケル・アーントはドイツ人のような名前ですが、詳細は不明。
後記: ドイツ人のような名前の人が取りました。デル・トロのパンズ・ラビリンスだけ見ましたが、評価しています。私はデル・トロを贔屓にしているので、その辺は差し引いて考えて下さい。ただ、この作品は脚本がどうのという良さでなく、美術なども含めた全体が良かったので、どの賞をあげるかについては難しい判断を要求されます。
脚色
やはり Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan にあげてしまうんでしょうかねえ。賞の品が落ちるように思うのですが。しかしアメリカで大受けしたのは確かだから・・・。
後記: ああ、良かった、サッシャ・コーエンでなくて。以前見た彼のコメディーはおもしろかったですが、Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan は予告を見ただけで引いてしまいました。これにあげたらアカデミー賞の品格がぐっと下がります。そういう予告編でした。
Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan が抜けた結果、ディパーテッドに行きましたが、これは作品を見てからでないと判断できないでしょう。井上さんがすでに音楽の使い方で愚痴を言っているぐらいですから、オリジナルの良さがどのように料理されているかちょっと心配です。
Notes on a Scandal はジュディー・デンチとケイト・ブランシェットが大クリンチをするドラマ。脚本ですと本来はそういう作品が賞を取るものと思いました。
長編アニメ
短編アニメ
スクラットの短編が今年も入りました。The Danish Poet はリブ・ウルマンがナレーションを担当。
後記: 受賞はノールウェイとカナダ制作の15分ほどのアニメ。
外国語映画
撮影
後記: 同じギレルモでもギレルモ監督でなく、ギレルモ・カメラマン。撮影はこの作品が良く見えるように貢献していました。
予告編を見る限り、ブラック・ダリアの撮影も良さそうでしたが、ストーリーがちょっと残酷で、多数の賛同を得られなかったのかも知れません。
トゥモロー・ワールドは見ていますが、撮影がどうのと言うより、脚本で描写されている町の様子の方に賞が行くべきかと思います。
ここにノミネートされた作品はSF、ファンタジー、スリラー、ミステリー風で、そのうち全部見てやろうと思っています。(後記: 見ました。)
美術
後記: パンズ・ラビリンスが多数ノミネートされていますが、受賞も重なっています。美術でノミネートは納得が行きます。
後記の続き: ドリームガールズで美術はいいかも知れませんが、パンズ・ラビリンスとはかち合います。ドリームガールズは、ステージや衣装が華やかなので、ノミネートされる価値はあります。
衣裳
後記: 監督がコッポラの娘なので、何か行くとは思っていました。マリー・アントワネットで衣装賞というのは、映画を見ないでも何となく納得が行きます。ダンストとコッポラの娘はただの仕事の依頼主と、受け手というだけでなく、友達同士らしいのですが、脚本が現代的だったとかで、ポップ調のアントワネットに仕上がったとのことです。
そういう意味では衣装が大きな意味を持ちそうなプラダを着た悪魔とは票が割れたのではと思います。
後記の続き: 強敵マリー・アントワネットがいますが、ドリームガールズを衣装でノミネートするのは理にかなっています。
音響
ここで初めて父親たちの星条旗の登場。俳優の演技はなかなかいいという話も聞こえて来たので、ノミネートの少なさに驚いたところです。
後記: 音楽映画なのでサウンドということですか。まだ見ていないので判断はできませんでした。
後記の続き: ドリームガールズを小さなホールで見たのですが、これは是非サウンドのいい大きなホールでご覧下さい。コンサートが楽しめます。
編集
後記: インファーナルですと、時代が変わったりする作品が3つある上に、それぞれで、ラウとヤンが対称的に絡み合うので、編集を上手にしないと話がややこしくなってしまいます。ディパーテッドはいずれ続編が作られるそうですが、どういう風に料理したんでしょうね。噂を聞いただけで言うと、オムニバス式のバベルの方が編集者が腕を見せられるように思いますが。
音響編集
後記: 今年自作が2本出てしまったイーストウッドは票が割れて気の毒ですが、軍配は硫黄島からの手紙に上がりました。ドーンとかキューンという弾丸や爆弾が飛び交う音の編集だったんでしょうか。この双子の作品ですが、戦争というのは始めてしまうと両方が苦しむものだという考え方で作られたとのことです。日本の事でありながらアメリカ人の監督が作ったのですが、内容に対する日本の側からの反論は今のところ聞いたことがありません。そのうち自分の目で見ようと思っています。
視覚効果
後記: こういう賞が行きそうな作品だけがノミネート。ポセイドンは多分かなりの視覚効果が使われたと思いますが、リメイクで、オリジナルにそっくりだったという噂を聞いたので、外れたのかも知れません。
メイクアップ
ツジさんというのは日本人のようなのですが、詳細は分かりませんでした。
後記: ツジさんというのは辻という字の普通の日本人だそうです。10年ほど前アメリカに渡り、その後着実に特殊メイクの分野で名をあげていると報道がありました。もしも昨日が選べたら、アメリカ版リング1と2、デル・トロ監督のヘルボーイ、メン・イン・ブラック 2、猿の惑星(リメイク)、ワイルド・ワイルド・ウエストに関わっています。
さて、パンズ・ラビリンスでメイクがオスカーを取ったとすれば、活躍したのは妖怪のメイクでしょう。ダグ・ジョーンズなどが恩恵に被ったのではと思います。
音楽(オリジナル・ソング)
ドリームガールズで3曲ノミネートというのは喜ぶべきなのでしょうか、それとも極端に票が割れるんでしょうか。ちょっと心配。
後記: 芸能関係でないジャーナリストが、今年は不都合な真実にオスカーが行くだろうと予想していましたが、音楽で行きました。3つもノミネートされたドリームガールズが取らなかったのはちょっと意外でした。
音楽(作曲)
短篇
後記: ウエスト・サイド物語でなく、ウエスト・バンク物語。ミュージカル・コメディーだそうです。
ドキュメンタリー(短篇)
後記: 今年は世界中が中国色に染まる年のようですが、賞を取ったのは、ルビー・ヤン監督の中国でエイズ孤児となった子供のドキュメンタリー。
ドキュメンタリー
以前はあまり注目されなかったカテゴリーですが、マイケル・ムーア以来ドキュメンタリーという形で世間に訴えて行こうという姿勢が目立つようになりました。
後記: 不都合な真実受賞は芸能関係者でないジャーナリストの予想ですと分かり切っていたとのこと。今後このテーマを推して行く前提のようです。環境保護政策はいいことですが、ワーッと1つのテーマに絞らず、環境全体を守るように行けばと祈っています。
後記の続き: 地球が温暖化しているそうなのですが、今年は5月になっても冬のコートが必要な日が続いています。(2010年)
名誉賞
この賞を貰うと死が近いという悪評のある賞。1928年生まれなのでかなりの高齢ですが、それでもまだ元気な人もたくさんいます。音楽はもう530本分ぐらい書いたので、特別賞貰うのは当然ですが、アカデミー賞は何と5回ノミネートされて、無冠。6回目の今年は名誉賞。GGの方は8回のノミネートで2回受賞。ちょっと少ないような気もします。全体を見ても働いた割には賞が少ないように思います。
後記: どうやら本人が会場に来て賞を受け取った様子ですが、ノミネートされた時には賞は要らないと言って いました。60年代から本格的な活動を始め500本以上の作品のために曲を書き、イタリア以外の国にも多く曲を提供しているのに、評価が低く、まだ130本程度の映画に曲を提供し、80年代中頃から活動開始のハンス・ツィンマーが6回、7項目ノミネート、当選1回というのは納得が行かないのかも知れません。今年6回目のノミネートは名誉賞。特定の映画に与えられるものではありません。
功労賞、科学技術賞、特別賞
Gordon E. Sawyer 賞
イーストウッド・スコシージ戦は今年スコシージの受賞、長年冷や飯食いだったモリコーネにも名誉賞を渡し、イタリア勢とのデタントを計った年のようです。そんな中、パンズ・ラビリンスにも6つノミネーションが来、受賞3というのは快挙。ディパーテッドが5つノミネーションで、4つ受賞なので、いい勝負をしていました。
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