Huanying xinshang Ding Fengzhang de wangye

                            


落日


盛唐・杜甫

落日在簾鉤,
溪邊春事幽。
芳菲緣岸圃,
樵爨倚灘舟。
啅雀爭枝墜,
飛蟲滿院遊。
濁醪誰造汝,
一酌散千憂。

                                            
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落日                                  

落日(らくじつ)  簾鉤(れんこう)に在り,
溪邊(けいへん)  春事(しゅんじ) (かす)かなり。
芳菲(はう ひ )なり  岸に()()
樵爨(せうさん)す  (だん)()る舟。
啅雀(とうじゃく)  枝を爭ひて()ち,
飛蟲(ひちゅう)  院に滿ちて遊ぶ。
濁醪(だくらう)  (たれ)(なんぢ)を造りし,
一酌(いつしゃく)  千憂(せんいう)を散ず。

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◎ 私感註釈

※杜甫:盛唐の詩人。712年(先天元年)〜770年(大暦五年)。字は子美。居処によって、少陵と号する。工部員外郎という官職から、工部と呼ぶ。晩唐の杜牧に対して、老杜と呼ぶ。さらに後世、詩聖と称える。鞏県(現・河南省)の人。官に志すが容れられず、安禄山の乱やその後の諸乱に遭って、流浪の一生を送った。そのため、詩風は時期によって複雑な感情を込めた悲痛な社会描写のものになる。

※落日:入り日。落暉。夕日。

※落日在簾鉤:入り日がカーテンに(かかり)。 ・簾鉤:カーテン(のフック)。〜南宋・李清照の『鳳凰臺上憶吹簫』に「香冷金猊,被翻紅浪,起來慵自梳頭。任寶奩塵滿,日上
簾鈎。生怕離懷別苦,多少事、欲説還休。新來痩,非干病酒,不是悲秋。   休休!這回去也,千萬遍陽關,也則難留。念武陵人遠,煙鎖秦樓。惟有樓前流水,應念我、終日凝眸。凝眸處,從今又添,一段新愁。」とあり、後世、清・毛先舒の『江城子』「暮江煙外是高樓。簾鉤。望呉州。遠水遙峰,相對兩悠悠。   滄海月明キ換涙,還道是,不曾愁。」とある。

※溪辺春事幽:谷川沿いの春の耕作のしごとは、かすかである。 ・春事:春の耕作のしごと。 ・幽:〔いう;you1○〕かすか。ほのか。

※芳菲縁岸圃:花が芳(かぐ)しく匂(にお)う、岸辺にまつわる畑。 ・芳菲:〔はうひ;fang1fei1○○〕花が芳(かぐ)しく匂(にお)う。よい匂いの花。 *この「芳菲」の部分は、「樵爨」と対になっている部分。“匂い”の対か! ・縁:よる。まつわる。 ・圃:〔ほ;pu3●〕はたけ。菜園。

※樵爨倚灘舟:(たきぎ)を取って、飯を炊(た)く(においのする)、早瀬をたよっている船。 ・樵爨:〔せうさん;qiao2cuan4○●〕薪(たきぎ)を取って、飯を炊(た)く、意。 ・樵:〔せう;qiao2○〕きこる。たきぎをとる。また、たきぎ。 ・爨:〔さん;cuan4●〕炊(かし)ぐ。 ・倚:たよる。すがる。よる。 ・灘:〔だん/たん;tan1○〕せ。はやせ。

※啅雀争枝墜:かまびすしいスズメが枝を争いあって落ちて。 ・啅:〔たう;zhuo2●〕かまびすしい。やかましい。 ・墜:落ちる。くずれる。

※飛虫滿院遊:飛ぶ虫が中庭いっぱいに遊んでいる。 ・院:建物に囲まれた庭。中庭。

※濁醪誰造汝:濁り酒よ、一体誰がお前を創り出したのか。(杜甫ならぬ杜康だな…)。 ・濁醪:〔だくらう;zhuo2lao2●○〕にごり酒。どぶろく。 ・造:手間をかけてつくる。しおこして、つくりあげる。こしらえる。=創。なお、酒をこしらえた人物は、伝説では
杜康。魏・曹操の『短歌行』に「對酒當歌,人生幾何。譬如朝露,去日苦多。 慨當以慷,憂思難忘。何以,唯有杜康。 青青子衿,悠悠我心。但爲君故,沈吟至今。 鹿鳴,食野之苹。我有嘉賓,鼓瑟吹笙。 明明如月,何時可輟。憂從中來,不可斷絶。 越陌度阡,枉用相存。契闊談讌,心念舊恩。 月明星稀,烏鵲南飛。繞樹三匝,何枝可依。  山不厭高,水不厭深。周公吐哺,天下歸心。」とある。 ・汝:おまえ。なんぢ。前出・「濁醪」を指す。

※一酌散千憂:一杯で、多くの憂いが消えてしまう。盛唐・賈至は『對酒曲』で「春來酒味濃,舉酒對春叢。
一酌千憂散,三杯萬事空。放歌乘美景,醉舞向東風。寄語尊前客,生涯任轉蓬。」とする。 ・酌:〔しゃく;juo2●〕酒をくむ。酒をつぐ。 ・散:解(と)かす、意。 ・千憂:多くのうれい。千載の憂い。永遠に解けない憂い。死の憂い。「憂」を「愁」とするのもある。ただし、その場合は前出・後出の参考詩は該当しなくなろう。『古詩十九首』之十五・『生年不滿百』に「生年不滿百,常懷千歳。晝短苦夜長,何不秉燭遊。爲樂當及時,何能待來茲。愚者愛惜費,但爲後世嗤。仙人王子喬,難可與等期。」、東晋・陶潛の『遊斜川』に「開歳倏五日,吾生行歸休。念之動中懷,及辰爲茲游。氣和天惟澄,班坐依遠流。弱湍馳文魴,闥J矯鳴鴎。迥澤散游目,緬然睇曾丘。雖微九重秀,顧瞻無匹儔。提壺接賓侶,引滿更獻酬。未知從今去,當復如此不。中觴縱遙情,千載。且極今朝樂,明日非所求。」とあり、同・陶潛『飮酒・二十首』其七に「秋菊有佳色,其英。汎此,遠我遺世情。一觴雖獨進,杯盡壺自傾。日入羣動息,歸鳥趨林鳴。嘯傲東軒下,聊復得此生。」とある。

               ***********





◎ 構成について

韻式は、「AAAAA」。韻脚は「鉤幽舟遊憂」で、平水韻下平十一尤。この作品の平仄は、次の通り。

●●●○○,(韻)
○○○●○。(韻)
○○○●●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
●●●○○。(韻)
2020.9.13
      9.14
      9.15
      9.16
      9.17完
     10. 1補
     10.10



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