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ブリティッシュ・ギャングスター / Charlie

Malcolm Needs

2004 USA 95 Min. 劇映画

出演者

Luke Goss
(Charlie Richardson - ロンドンの南半分をシマにしていた英国の元犯罪者、)

William Richardson-Smith
(Charlie Richardson、ティーンエージャー)

Alfie Furneaux
(Charlie Richardson Junior)

Steven Berkoff
(Charlie Richardson - 主人公チャーリーの父親)

Anita Dobson
(チャーリーの母親)

Langley Kirkwood
(Eddy Richardson - チャーリーの兄弟)

Dominic Longley
(Eddie Richardson Junior)

Christopher Harper
(Alan Richardson)

Chris Curran
(Frankie Fraser)

Neil Scholtz
(Ronnie Kray - ロンドンの北半分をシマにしていたファミリーの1人)

Gareth Simons
(Reggie Kray - ロンドンの北半分をシマにしていたファミリーの1人)

Charlie Richardson (パブの男)

見た時期:2004年8月

2004年 ファンタ参加作品

ストーリーの説明あり

今年は伝記物にかなり気合が入っていて、この作品もテンションが高いです。Aro Tolbukhin. En la mente del asesino の淡々としたドキュメンタリー・タッチと違い、Charlie はやや騒がしい作りです。大勢の俳優が集まって雰囲気を盛り上げています。特に目立つのは主人公のチャーリーを演じたルーク・ゴス。有名な作品としてはヘルボーイを作ったデル・トロ監督のブレード2に出演した人ですが、見た当時は知りませんでした。今回は大出世。きちんと主役がつとまっています。この人のおかげでエキセントリックさが良く出ており、恐さが増しています。

私は彼の時代に生きていながら、全然知らなかったのですが(日本では大きく報道されていなかった?)、チャーリー・リチャードソンという英国では悪名高き犯罪者の伝記です。リチャードソンは刑期を終了し、釈放されてからは合法的な事業にしか手を出しておらず、実業家になっています。この作品を見ているとなるほど頭が良さそうで、犯罪が割りに合わないと悟ってからはその才能を合法的に使う決心をしたかのようです。このぐらい度胸と頭があれば、元から合法で行っても良かったと思いますが。しかしそれにしても恐い人です。

★ 実話的あらすじ

やれビートルズだ、ミニ・スカートだとやっていた頃のロンドンに、一旦決めたら決して的をはずさない、徹底した男が住んでおりました。どういうはずみか犯罪の世界でデビューしてしまったため、あこぎな方法で強引に地域のボスにのし上がっています。才能があったのでメキメキ。周囲はたまったものではありません。彼に捕まって拷問された人は数知れず、あんな男とは決して知り合いになりたくないと思ってしまいますが、仁義というものは一応心得ていたらしく、素人さんには手を出さずというのが原則だったようです。家族愛は人一倍強く、弟思いでした。その彼がのし上がった後どういう風に裁判になって刑務所送りになるかという筋です。おおむね実際の事件、記録を中心に作られたようで、裁判シーンなども出て来ます。

★ 最近の法律では・・・

もっと驚くのは60年代だったから彼を刑務所に送る事ができたのであって、現代では裁判にもならない可能性があると聞かされた時。電気ショックや、歯を抜いてしまったりとかなりひどい拷問をやり、平然としていたという話が記録されているようですが、この程度では現代では・・・と聞いて唖然。今年のファンタは痛そうな話が多く、マシニスト では職場の事故、ソウ では脱出の手段、オールド・ボーイでは金槌で喧嘩、変態村ではパッションの真似、地球を守れ!では拷問オンパレード 、暴力の描写が具体的になって来ています。ドイツでは恐らく年齢制限がつくでしょう。

見せ場は仲間、弁護士などにがっちりガードされていたリチャードソンが、軽い刑で済むと思っていたら、25年の刑になってしまうシーン。陪審に選ばれた人が次々と降り、のべ100人以上を数え、陪審に選ばれた人には特別の警護が必要だったという恐怖の裁判です。裏で Runaway jury (= 逃げ出した陪審員、邦題: ニューオーリンズ・トライアル )のような事をやったのでしょうか。

事実だという前提があって恐いのか、主演の実力があり過ぎて恐いのかさだかではありませんが、とにかく背筋が寒くなります。画面は明るく、カメラは素晴らしいです。登場人物の大部分がロンドンの下町特有の訛りでしゃべるので、ファンタの友達は「全然分からなかった」と言っていました。私はロンドンには数日しか滞在したことがなかったのですが、どういうわけかあまり問題ありませんでした。言葉が分からないというほど無茶苦茶なしゃべり方をしているわけではありませんし、俳優が体で示す部分もかなりインパクトがあったので、それが両方混ざって、監督が言いたい事は大体伝わって来ます。しかしファンタでは英語の作品は字幕がつかないので、困った人がいたようです。ドイツの学校で習う英語と違う発音だったから戸惑ったのかも知れません。あるいは《標準語でない》ということが意識に上ると、分かるものも分からなくなってしまうのかも知れません。あるいは英国のラジオにはロンドン訛りの英語講座(国際放送)というのもありますが、ドイツ人はあまりそういう番組に縁が無いのかも知れません。

この作品が当時の現実と違うといちゃもんつけた英語圏の観客もいたようです。現実と違ったとしても、本人がそういう風にしたかったのか、あるいは「映画はエンターテイメントで劇的効果を狙っているのだから」とあまり気にしなかったのか、現実はもっと凄惨で言葉にもできないから映画化もできなかったのか、どれかでしょう。監督や脚本家とチャーリーが争ったという話は聞こえていません。姿形は全然違うのに、チャーリーを見てジェームズ・キャグニーを思い出したのは私だけでしょうか。

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