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Hannibal 1

Apéritif / Töchter

監督: David Slade
原作: Thomas Harris
テレビ用脚色: Bryan Fuller

2013- @ 43 Min. 劇映画

出演者 レギュラー

Hugh Dancy
(Will Graham - FBI のプロファイラー)

Laurence Fishburne
(Jack Crawford - FBI 特別捜査官、グレアムの上司)

Mads Mikkelsen
(Hannibal Lecter - 医師、FBI に協力する精神分析の開業医、美食家)

Caroline Dhavernas
(Alana Bloom - 精神科教授、FBI に協力するプロファイラー、レクター博士の友人)

Hettienne Park
(Beverly Katz - FBI の CSI 捜査官、繊維の専門家)

Scott Thompson
(Jimmy Price - FBI の CSI 捜査官、指紋の専門家)

Aaron Abrams
(Brian Zeller - FBI の CSI 捜査官)


第1回の出演者

Vladimir Jon Cubrt
(Garret Jacob Hobbs - 殺人犯)

Krista Patton
(Louise Hobbs - ギャレットの妻)

Kacey Rohl
(Abigail Hobbs - ギャレットの娘)

Wayne Ward
(Nichols - 娘を誘拐された男)

Sarah Evans
(Nichols 夫人)

Torianna Lee
(Elise Nichols - 誘拐された娘)

Bernadette Couture
(Theresa Marlow)

Wayne Downer
(Thomas Marlow)

Greg Dunfield (修理工)

Suzanne Coy (Dixie)

Dan Fogler
(Franklin - レクター博士の患者)

見た時期:2013年9月

要注意: ネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ どうして見る事ができたか

アメリカでは4月、ドイツでは9月に始まったテレビ・シリーズ。テレビを持っていない私がなぜ見る事ができたかと言うと、ドイツ語版が無料でインターネットに流れているからです。

★ 概要

おなじみトーマス・ハリス原作のハンニバル・レクター・シリーズのレッド・ドラゴンをベースにし、時代は現代、場所はアメリカ、登場する役所は FBI、扱うのは凶悪殺人事件。

登場人物は原作と同じ3人がメインで、小説とも映画とも違う連続殺人事件を扱っているようです。2014年もシリーズ続行が決まっているので、いくつかの殺人事件にこの3人が関わることになると思われます。毎週8人だの9人だのが殺されるとすると、2シーズンで200人近く殺される計算になります(!?)。

元々は新聞記者だったトーマス・ハリスが記者やレポーター時代に得た経験を生かして小説家になり、ブラック・サンデー羊たちの沈黙で成功しています。書き始めたのは70年代半ばなので、テレビ・シリーズと電話や通信手段が大きく違いますが、今でも読み応えのある小説です。

羊たちの沈黙で一躍有名になったアーム・チェア系探偵の亜流とも言えるハンニバル・レクター博士の登場する作品は CSI: 科学捜査班でおなじみのウィリアム・ピーターセン主演(グレアム役)で刑事グラハム 凍りついた欲望として1986年に1度映画化され、その後アンソニー・ホプキンス主演(レクター博士役)で羊たちの沈黙を皮切りに次々と映画化、その後レクター博士の少年時代まで映画化されました。

羊たちの沈黙で新鮮な魅力を放ったクラリス・スターリング役のジョディー・フォスターは同じ役を押し付けられることを嫌ってかすぐ降板。ホプキンスはその後快進撃を続けましたが、この役に執着はしておらず、適度な年齢になったら止めるつもりだったようで、若手にバトン・タッチしています

引き継いだ若手は後が続かず、劇映画は頓挫した感がありますが、今年からテレビ・シリーズが登場しました。ハリスは出版社や映画会社からは大きな期待を寄せられても寡作で、ハンニバル・ライジング以降は作品を出していません。メディアにはほとんど顔を出さず、印税だけで食べていける身分なのか、エラリー・クイーンのように別名でもしっかり稼いでいるのか、何をしているのかは知られていません。

ドイツ語のタイトルでは引き継いでいませんが、英語のタイトルは毎回食べ物に関連する名前をつけています。英語では第1話は《食前酒》、第2話は《前菜》という意味ですが、ドイツ語では第1話は《娘たち》、第2話は《きのこ》となっています。

★ 良く研究している

まだ第1シーズンの1作目を見ただけですが、キャストはいいです。FBI の捜査官ジャック・クロフォードにはローレンス・フィッシュバーンが扮しています。

CSI: 科学捜査班でウィリアム・L・ピーターセンの後任として似たような捜査官を演じていたフィッシュバーンですが、完全なミスキャストでした。フィッシュバーンは名優なのか大根役者なのか分かりにくい時があります。Hannibal では第1回を見る限り粗と言える粗も無く、CSI: 科学捜査班よりしっくり来ます。

テレビ・シリーズではウィル・グレアムに重きを置いているのですが、ウィルの役は英国のヒュー・ダンシーが演じています。刑事グラハム 凍りついた欲望のピーターセンを良く勉強しているという印象を受けます。ダーシーは90年代終わり頃から何度もテレビに出演しています。劇映画ではブラック・ホーク・ダウンキング・アーサー(ミケルセンと共演)、氷の微笑 2 などに出演していますが、軸足はテレビに置いているようです。

レクター博士の役はデンマークのマッズ・ミケルセン。欧州にいるとミケルセンはどちらかと言えばコメディー俳優という印象なのですが、英語圏に出ると悪役を演じるという典型的な路線変更組。

ミケルセンはブライアン・コックスのレクター博士ではなく、ホプキンスのレクター博士を良く勉強していて、劇映画のシリーズを見た人が違和感を抱かないような演技をしています。ホプキンスが20年ぐらい若ければミケルセンだと感じられるような様子です。

レクター博士はカンニバリストなのですが、もしかしたらドイツで近年有名になった実在のカンニバリストの研究もしたのかも知れません。彼にそっくりな表情も浮かべます。いずれにしろ自分の役に関連する事を良く勉強したなあという印象です。

3人のバランスはいいです。

(まだ or 全然?)登場しないのがクラリス・スターリング捜査官見習い。レクター博士は初回では刑務所に入っておらず、精神分析の開業医。原作でも逮捕前はアメリカで開業医をやっていたことになっていて、ホプキンス版の一部分のイメージを取り入れています。

初回はこのまま劇映画にしてもいいんじゃないかと思えるような格調高い撮影のシーンが多いです。やや弱いのはグレアムがプロファイリングをしている時の想像シーン。それ以外はいちゃもんをつける場所がありませんでした。

★ 第1回のあらすじ

毎回のエピソードを全部ご紹介というわけには行きませんが、1回目はこんな感じです。

事件の発端を見て、「あっ、レッド・ドラゴンに似ている」と思ったら、本当にレッド・ドラゴンを下敷きにしていました。全部そのまま使ったシナリオというわけではありませんが、全体の印象が良く似ています。

☆ 8件目の失踪事件発生

FBI 捜査官クロフォードはこれまでに7件起き、どれもそっくりのパターンで行われる失踪事件を担当していて、この日8件目が起きたという連絡を受けます。7件ですでに手一杯だったため、FBI 本部で心理学の講義をしているグレアムに手助けを求めに行きます。

グレアムは今では世界的に有名になった捜査方法、プロファイリングの才能があるのですが、その洞察力故に日常生活ではやや支障を来たし、どこかの有名人と同じく、人間より犬を信頼する生活を送っていました。

ハリスが元々の原作を書いた頃はまだプロファイリングという手法が始まったばかりで、グレアムのような存在は珍しかったのですが、テレビ・シリーズではもうこういう職業は普通になっているようです。

困り切ったクロフォードに強引に仕事を手伝わされてしまうグレアムは8人の同じタイプの女学生失踪事件に手をつけます。全員が同じ特徴を持った、普通の家の娘さん。

ちょうどドラマが始まるところでは、8人目が誘拐されていて、家族の事情聴取が行われますが、家の様子を見ているうちにグレアムはもう女学生が生きていないだろうということと、死体が家に戻されているだろうということを洞察。ぴったり当たります。

ま、素人の私にも分かりますが、消えた8人は全く同じタイプなので、犯人はそういう外見の1人の若い女性に何かこだわりがあるのだろうということになります。

CSI や検視官の調査、検査の結果、最後の女性がどういう傷を負っているかが判明します。性的暴行の方向ではないという結論と、なぜか死体に対し敬意を払っているらしいという事が分かります。だからと言っても殺人には違いありません。

同じく FBI に協力しているブルーム博士の推薦でクロフォードは精神分析の開業医であるハンニバル・レクター博士の協力も求めに行きます。博士はやる気満々で承諾。

愉快なのはクロフォードが初めてレクター博士を訪ねたシーン。クロフォードはレクターの患者をレクター博士と取り違えます。実は横にいた男がレクター博士だと分かると、今度はレクター博士がクロフォードに「自分を捕まえに来たのか」と聞くシーン。「なんだ、自分で分かっているんじゃないか」と思わず笑ってしまいました。

グレアムが現場の様子を見たりしながら事件全体の流れを頭の中で再現するのに対し、レクター博士は犯人の心理に踏み込んだ洞察力を発揮します。

妙な儀式のような形で山に置かれた9人目の死体発見。死体からは肺が抜き取られています。グレアムは犯人2人説を取ります。模倣犯の可能性も浮上。

視聴者にしか分からないのですが、レクター博士は超美食家で、料理はプロ級の腕。ちょうど今人間の肺を料理している最中。どこから取って来たのかなあ。グレアムは1人が女学生を殺し、もう1人が内臓を抜き取ったという説を考慮中。

8人目の犠牲者の衣服についていた金属片からギャレット・ジェイコブ・ホッブスという男が捜査線上に浮かびます。(ここはちょっと話が飛ぶ印象を受けます。)FBI の事務所で資料が届くのを待っていてもいいようなものですが、どういうわけか犯人逮捕に向かう時に2人のプロファイラーもついて行きます。レクター博士はそこでホッブスの犯行に確信を持つのですが、何としたことか、彼はホッブスの勤める会社からホッブスに FBI の手が回ることを知らせてしまいます。

電話を受けたホッブスは自宅にいて、FBI が駆けつけるとちょうど妻を殺し終え、これから娘に手をかけるところ。FBI が到着した時には妻が大量失血で死ぬところ。無事だった娘は FBI との対決中に父親に喉を切られ深手を負いますが、一命を取り留めます。ホッブスはグレアムに射殺されます。事件後暫くしてグレアムが娘の病室を訪ねると、先客が。レクター博士がまるで身内のようにホッブスの娘アビゲイルの側についていました。

FBI の外勤捜査にあまり適性が無く、クウァンティコで捜査官を育てるための授業をしているグレアムがなぜ大型のピストルを持っていたのかが突っ込み所ですが、全体の流れにはあまり大きなプロットの穴はありません。

このエピソードはここでほぼ終わりますが、レクター博士と重症の女学生の間にはだ何か起きそうです。

初回から堂々とレクター博士が人の内臓を料理しているところを出してしまうのですが、劇映画を見た私たちとしてはむしろ、普通の市民生活を送っているレクター博士を見慣れていないので、こんな男をその辺歩き回らせていて大丈夫かというスリルがあります。

また、クロフォードとグレアムは正義感だけ振り回していればいいのですが、レクター博士は捜査に協力しつつ、自分の犯罪はせっせと積み重ねる様子なので、彼がどうやって2つの顔を使い分けるかというところが、シリーズを通しての注目点になりそうです。

ミケルセンの役はエキセントリックなので、その気になれば彼の独壇場になりますが、押さえた演技で、フィッシュバーンとダンシーをつぶさないようにバランスを取っています。

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