食中毒事件はここ数年急激に増加しています。

 近年,食中毒の発生件数は年間1000件以内におさまっていたのですが、腸管出血性大腸菌O-157による食中毒が猛威をふるった1996年以降食中毒の発生件数が急激にのび、1998年には3000件を超えてしまいました。1999年は約2700件ですが,これは決して少ない数ではありません。まだまだ注意は必要です。今年も、雪印の事件をかわきりに、多数発生しています。

 食中毒菌

 食中毒菌別に見てみると、件数ではサルモネラが1位、次いで腸炎ビブリオ、キャンピロバクターの順になっています。サルモネラ菌による食中毒は加熱不十分な食肉や卵、腸炎ビブリオはさしみ、たたき、すしなど海産魚介類の生食、キャンピロバクターは加熱不十分な鶏肉などが原因となります。したがって,鶏肉、豚肉、牛肉などの食肉や卵は十分に加熱する、さしみなど生ものは短時間であっても必ず冷蔵庫に保存するなど心掛けて下さい。特に、7月から10月にかけては食中毒が多発する季節ですから注意が必要です。
 また、患者数ではサルモネラ、腸炎ビブリオについで小型球形ウイルスがあがっています。小型球形ウイルスによる食中毒は、生がきやホタテのさしみなどが原因となって起りますが、人から人への二次感染も起りますので注意が必要です。また発生時期が11月〜3月という点が特徴です。

 原因施設

 原因施設を見てみると、件数では例年家庭,飲食店,旅館の順になっていましたが、1999年は飲食店,家庭,旅館の順となっています。家庭での発生が増えていますので、各自注意が必要です。
 患者数で見てみると、飲食店が最も多く、次いで仕出屋、製造所の順となっています。一度に大量発生するのでこのようになります。

 月別食中毒発生状況

 月別の食中毒発生状況を見てみると、件数・患者数ともに6月〜10月にかけて食中毒が多発しています。また、最近では冬期の食中毒発生が目立ってきています(カキ、ふぐなど)。

それでは詳しく説明しましょう。詳細は菌の名前をクリックでGO!実際の事件も例にあげていますので、参考にして下さい。

病因菌・ウイルス 原因食材など 潜伏時間 症状
細菌 サルモネラ 生卵か半熟の状態の食品
、食肉加工品
8〜48時間 腹痛・下痢・発熱(38℃-40℃) ・嘔吐
腸炎ビブリオ 魚介類の刺身やすし類 6〜32時間 激しい腹痛・下痢
キャンピロバクター 加熱不十分な食肉や生食、
サラダ、生水など
2〜7日 発熱・倦怠感・頭痛・筋肉痛・下痢
黄色ブドウ球菌 にぎりめし、仕出し弁当、
和菓子、シュークリームなど
約30分〜6時間 嘔気・嘔吐・腹痛ときに下痢
病原性大腸菌 給食や飲用水(集団発生)、その他 下痢・嘔吐から、溶血性尿毒症までさまざま
ウェルシュ菌 給食などで大量調理された食品 4〜12時間 腹痛・下痢(下腹部がはる感じ)
セレウス菌 嘔吐型 チャーハンなどの米飯類,
スパゲティーなどのめん類
1〜5時間 嘔気・嘔吐
下痢型 スープ,プリン,生クリームなど 8〜16時間 下痢・腹痛
ボツリヌス菌 「いずし」と呼ばれる保存食品 12〜36時間 胃腸症状、視覚症状、言語障害、嚥下障害、運動麻痺、呼吸麻痺
ウイルス SRSV(小型球形ウイルス) カキ,シジミ,アサリ,ムール貝,サザエなどの貝類 24〜48時間 嘔気・嘔吐・腹痛・下痢・発熱(38℃以下)