ふたりの休日
  

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第4章

「いったい何だっておめえたちケンカなんてしたんだ?」
 ようやく笑いがおさまると、指で涙を拭いながらチチが尋ねた。
「ケンカじゃないわ。あのバカ、ふらっと出て行ったきり、もう3週間も帰ってこないのよ。ずっと重力室にこもっていると煮詰まってくるからって、今までにも何度か外でトレーニングすることはあったんだけど、こんなに長いのは初めて。ふん、もう帰ってこないつもりじゃない?」

 一気にまくしたてたブルマは、おかしそうに見ているチチの視線を感じると、あわてて言いつくろった。
「ト、トランクスが寂しがってんのよ。あたしはべつに……。あんな大メシ食らいで横柄な男、いなくてせいせいしてるんだから」
「ふーん……。ま、そういうことにしとくだか」
 チチはニヤニヤ笑っている。ブルマは居心地悪そうに目をそらしていたが、残りの水割りをぐいとあおると急いで言った。
「こんないい女をほっぽっとくような罰当たりなんてやめて、もっといい男探そうかしら。チチさんも一緒にどう?」

「3週間くらいで何言ってんだ。おらなんて1年もほっとかれたことあんだぞ。悟飯が4つの時から闘い続きで、ろくすっぽ一緒に暮らした想い出もなくて。……あげくの果てに未亡人にされちまって……」
 ブルマを笑い飛ばしていたチチの明るい声が、だんだんと沈んでいったかと思うと、とうとう彼女は声をあげて泣き出してしまった。アルコールのおかげで感情の起伏が激しくなっているようだ。

「この上、悟飯に彼女が出来たら、そいつはきっと性悪女で、悟飯をそそのかしておらを家から追い出してしまうんだべ」
「ま、まだ、そうと決まったわけじゃないわよ」
 チチにハンカチを手渡しながら、ブルマはつい口をすべらせてしまった。
「でも、悟飯くんて女性に弱そうだから、そういうこともあるかもね」
「ええっ、するってえと、おらの老後はパオズ山でホームレスけ!? ……悟空さが死んじまったばっかりに……。うわぁーーーっ、悟飯! おらを捨てねえでけれ〜!!」
 ハンカチで涙を拭くと、チチはバッグからティッシュを取り出して勢いよく鼻をかんだ。


「彼女たち、彼氏に振られてヤケ酒かい?」
 いつのまにかあの二人組がブルマとチチの横に立っていた。ガードの堅そうな彼女たちが酔っぱらうのを待っていたらしい。最初に口を開いたのは金髪の男だった。
「そんな冷たい男のことなんて忘れてさ、僕たちと一緒に遊ばない?」今度はピアスの男が言い、チチの顔をのぞきこんでにっこり微笑みかけた。
 金髪の男はブルマの肩に馴れ馴れしく手を置いて顔を近づけてきた。「いい男ならここにもいるぜ」
 酒臭い息がブルマの顔にかかる。彼らも相当飲んでいるようだ。

 突然、氷まじりの冷たい液体を顔に浴びせかけられて、金髪の男は飛び上がった。うわっと叫んであわてて袖で目を拭う。
「目が覚めた? 顔を洗って出直してらっしゃい」しずくの垂れるグラスを構え、男を睨みすえたままブルマが言った。
「な、何しやがるんだ」
 怒ってブルマに詰め寄ろうとした金髪の男の前にチチが立ちふさがる。男の鼻先に人差し指をつきつけて大声で叫んだ。
「おめえたち、不良だな。なんだ、髪なんか染めて。かあちゃんが泣いてるぞ!」
「オ、オレは生まれつき――」
 たじろいで弁解する男にかまわず、今度はピアスの男に向き直ると、その耳をぐいと引っ張った。
「い、いてててて……」
「おめえもだ! なんだこの耳飾りは! 親にもらった大事な体に穴なんて開けるのは百年早えだ!!」

 思いもよらない展開に、毒気を抜かれた男たちは唖然としている。やがて気を取り直したピアスの男がまあまあとチチをなだめた。
「そんなにカリカリすんなよ。僕たち何もあんたたちを取って食おうって訳じゃないんだから。ただ一緒に楽しくデュエットしようって言ってるだけなんだからさ」
「デュエット……」
 チチの目がキラリと光った。


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