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第六幕
ピッコ郎は自分の失態をなかったことにしてお裁きを強行した。 「代官フリーザ衛門、並びに細胞屋セル、その 「そんな、横暴ですよ!」 用人のラディッツに引っ立てられながらわめいているフリーザ衛門の横で、セルはおとなしく口をつぐんでいる。 「細胞屋さん、あなたも何とかおっしゃい」 セルはにんまり笑って答えた。 「ふっふっふ。わたしは獄門になっても、頭の核さえ残っていれば復活出来るのだ」 「あっ、ずるい」 フリーザ衛門とセルが後ろへ下がり、今度は悟飯とビーデルがギニュー特戦隊を引っ張って来た。 「行きますよ! ビーデルさん」 「いいわよ! 悟飯くん」 「あ、ゥワン、ツウ、ステップ、パン。あ、ゥワン、ツウ、ステップ、パン。あくは――――ぜったい――――ゆ・る・さ・な・い。イェイ♪」 悟飯とビーデルは後ろ手に縛られたギニューの目の前で、教えられたステップを踏んでみせた。 「どうだっ、完璧にマスターしたぞ」 「これであたしたちの勝ちね」 「ふっ、話にならんな。きさまらのポーズには致命的な欠点がある」 「な、なんですって!?」 「教えろ! どういうことだ」 「オレさまの特戦隊に入るというなら教えてやろう」 「ぐっ……」 「そ、それは……」 「できんと言うなら仕方がない。きさまらのポーズは永遠にカッコ悪いままだ!! はあっはっはっはっは!!」 ギニューは高らかに笑いながらどさくさに紛れて逃げてゆく。悟飯とビーデルは顔を見合わせると後を追った。 「ま、待って!」 「先生と呼ばせてください!」 「ご、ごはーーーーーーーーーーーーーーーん!!」 諸肌脱いだピッコ郎は階段に足をかけたまま絶叫し、そのままそこで石のように固まってしまった。控えていた悟空がピッコ郎のうつろな目の前でひらひらと片手を振ってみせる。その後ろからこわごわおチチがのぞき込んだ。 「ダメだ、こりゃ。完全にイッちまってる。悟飯がギニューのやつを師と仰いだのが、よほどショックだったんだろうなあ……」 「不憫だべ」おチチは 「仕方ねえ」悟空は階段を上ると、詮議の間に立ち、一同を見渡した。「お奉行さまがこうなっちまったからには、オラが代わりにお裁きを続けっぞ。次の罪人を連れて来い」 縄につながれたベジー太がわめきながら引きずり出されて来た。 「ちょっと待て、カカロット! なんできさまがそこにいる。きさまなんぞに裁かれるくらいなら、死罪になった方がマシだ!」 罪状を見ながら悟空が神妙な顔で言った。 「心配すんな、ベジー太。十両盗めば首が飛ぶこの時代だ。ご禁制の品を密輸して幕府転覆を謀った一味に加わったおめえの死罪は間違えねえぞ。 「さ、三択やってんじゃねえ!!」 「しょうがねえな〜」悟空はポリポリと頭を掻いた。「んじゃ、市中引き回しの上、 「きっ、きっさま〜、なんでオレがフリーザ衛門どもより重い刑なんだよ!!」 ベジー太は怒りに我を忘れて超化し、額の左右に青筋を立てて身悶えした。 ぶちぶちっ。しゃあああああああああ。 ![]() 額の青筋が音を立てて弾け、四方八方へ勢いよく血が飛び出した。まるで水芸のようだ。一同は思わず拍手喝采した。 そこへブルマ太夫が飛び出してきてベジー太にすがりついた。 「お奉行さま、っていうか、孫くん、この人が悪事を働いたのは、みんなあたしのためなの」 「えっ、ほんとか」 「そうなんでしょ、ベジー太。あたしを身請けするためのお金が欲しくて、だからあんなやつらと……。美しいって罪よね〜。ほーっほっほっほっほ」 ベジー太は赤くなってそっぽを向いた。「だ、誰がおまえみたいな下品な女と所帯なんて持つか」 「悪あがきはいけませんよ、父さん」と、桃太郎侍の格好のままでトランクスが進み出た。 「ト、トランクス」 「いくらあなたが否定しても、父さんと母さんの愛の結晶であるこのオレが生き証人なんだ」 「ふざけるな! だいたい結婚もしないうちから、なんだってきさまのようなでかい息子がいやがるんだ」 「できちゃった結婚だ」 「できちゃった結婚だ」 後ろで誰かが囁き交わす。ベジー太はゆでダコのようになって怒鳴りちらした。 「やかましい! 下品な言い方してんじゃねえ!!」 「静まれい!!」 その時、ようやく死の淵から這い上がったピッコ郎の 「無宿人ベジー太、そのほうの罪状、許し難きことではあるが、未来から来たりし息子に免じておとがめなしとする。ブルマ太夫と所帯を持ち、幸せに暮らすがよい」 「なっ、何だと!? 冗談じゃねえ。陰謀だ! 第一こんなバカバカしい結末じゃ、観客が納得しないぞ」 ベジー太はお白洲の砂利を蹴散らし、階段を踏み抜きながら詮議の間へなだれ込み、文机を投げ飛ばすは襖を蹴倒すはと大立ち回りを演じた。その周りを人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。 てんやわんやの大騒動の中、ピッコ郎はひとり扇子を広げて 「これにて一件落着〜」 ―――― 幕 ―――― (舞台挨拶へつづく) |