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雨中重訪眞田山陸軍墓地



山上英靈未結髮,
夏朝冬夜今還伶。
孤臣涙歟天之愍,
春雨潸潸墓上櫻。






                                                 
       雨中に(かさ)ねて眞田山(さなだやま)陸軍墓地を(たづ)

山上の英靈  (いま)だ結髮せず,
夏の朝 冬の夜  今 ()(ひとり)なり。
孤臣( こ しん)の涙か  天の(あはれみ)なるか,
春雨(しゅんう) 潸潸(さんさん)たり  墓上(ぼじゃう)の櫻。

          *****     
  真田山陸軍墓地の桜を見たいと思い、今日、再び出かけた。あいにく、雨だったが桜は満開だった。
  普通の墓地とは違い、陸軍墓地という若者の墓地には、心を傷めさせるところがある。墓の主達は、長く過ごせたに違いない人生を、祖国のため、短く縮めてしまったのだ…。何ともいえないものを深く深く感じる。

  この詩、「墓に葬られている若者達は、(多くは)結婚をしていなかったことだろう。今も一人で過ごしているのだろう。(彼等は)孤臣(=主君に見捨てられた臣下)なのか?! (しかし、ここの墓の主は、御国の為に死ぬのは兵士の本分、と思って散っていったことだろうに…)。今、この陸軍墓地には、人は誰もいなかった。そのためか、天は、その英霊に感じて涙の雨を降らせて、桜は人に代わって、英霊を暖かく包んでいるのだろう」---というもの。  合掌。

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・結髪: 髪を結う。成人の風。転じて、成人として結婚する。前漢・蘇武の『留別妻一首』に「結髮爲夫婦,恩愛兩不疑。歡娯在今夕,嬿婉及良時。征夫懷往路,起視夜何其。參辰皆已沒,去去從此辭。行役在戰場,相見未有期。握手一長歎,涙爲生別滋。努力愛春華,莫忘歡樂時。生當復來歸,死當長相思。」とある。
・夏朝…: いつも(ひとりぼっちで)。夏も冬も…昼も夜も…(ひとりぼっちで)。『詩經・唐風』の『葛生』に「葛生蒙楚,蘞蔓于野。予美亡此,誰與獨處。 葛生蒙棘,蘞蔓于域。予美亡此,誰與獨息。 角枕粲兮,錦衾爛兮。予美亡此,誰與獨旦。 夏之日,冬之夜。百歳之後,歸于其居。 冬之夜。夏之日,百歳之後,歸于其室。」とある。
・伶: ひとりぼっち。
・孤臣: 主君に見捨てられた臣。一人取り残された家来。『晉書卷四十八列傳第十八』に「孟軻有云,『孤臣,其操心也危,慮患也深』,故多善功。」とある。両宋の張元幹の『石州慢』に「雨急雲飛,瞥然驚散,暮天涼月。誰家疏柳低迷,幾點流螢明滅。夜帆風駛,滿湖煙水蒼茫,菰蒲零亂秋聲咽。夢斷酒醒時,倚危檣C絶。   心折,長庚光怒,群盗縱横,逆胡猖獗。欲挽天河,一洗中原膏血。兩宮何處?塞垣只隔長江,唾壺空撃悲歌缺。萬里想龍沙,孤臣呉越。」とある。

(後日記:四月四日のニュース報道で、「真田山旧陸軍墓地の墓標が花見の酔客のために倒された」と。画面は、桜の木沿いの多数が倒されていた。最上段左の写真の最前列の墓碑群か。)

平成二十八年四月一日




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