Nゲージ蒸気機関車>蒸機の紹介>9600
2001 9600形 1980年 | 2001 9600形 1980年 (拡大写真) |
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2002 9600形(除煙板付) 1981年 | 2002 |
1980年に登場した真鍮製の9600です。9mmゲージの9600はこれしかない時代が続いたので、お持ちの方も多いと思います。
無骨な実機の質感がよく出ていて、模型のよさはディテールだけではないんだなと思わせます。
当時のKATOの蒸機に合わせたのか、縮尺は約1/140になっています。
テンダーに押されて走りますが、機関車からも集電を行っているため、テンダーのみでの自走はできません。
→エンドウ9600のテンダー内部
ちゃんと主台枠の上にボイラーが乗った構造をしていて、ボイラーの下も向こう側に抜けています。
動輪のスポークは抜けていませんが、車輪の小さい9600は台枠に阻まれて効果が薄いので、それほど大きい欠点ではありません。ただ車輪の転がりはあまり良くないので、動きがぎこちないものがあります。これを改善するため、あとでボイラー内にウエイトが追加されました。走行音はゴロゴロとやや大きめです。
煙室扉を取り外せるようになっており、ここにはワールド工芸の発煙装置を組み込むことができました。発熱する発煙装置に適応できて、何とか入手できる日本型Nゲージの模型は、現在でもこれだけではないかと思います。 現在はプラ製品がたくさんあるのと、今となっては大きめのスケールになってしまったため、コレクション目的を除いては使われることは少なくなったと思います。
中古品販売店やオークション等でもたまに出物があるので、今でも入手は不可能ではないと思います。 |
2050 9600形(デフ付) 1999年 | 2050 9600形(デフ付) 1999年 (拡大写真) |
発売時点でトミックス17年ぶりの蒸機、そのうえ待ち望まれていた9600!という一大センセーションとなるはずが、なんと直前にマイクロエースからドーンと先行発売。しかもその出来映えが会心の一撃だったため、一転して悲惨な商品になってしまいました。デフ付き・デフなしの両方が発売されるはずでしたが、デフなしは中止になった模様です。
各部の表現はかなり簡素です。ライトがただの輪切りのように見えたり、端梁に何もディテールがなかったりするのは、よほど急いで作ったのでしょうか。 分解すると、テンダーのビス穴の中心がずれていたり、モーターの配線が動き回るドローバーにハンダ付けされていたりと、試作品的な部分も見られます。 70年代のトミーNスケールを思い起こさせるような作りで、ちょっと懐かしい気持ちにさせられます。
国内のプラ製蒸機では、関水金属の初代C50以来となるテンダーモーターを採用しています。 ジージーとやや高めの音を立てますが、ギヤ比が大きいのかスローが効いた走りとなっています。ただ中古品をこれから入手しようとする方は、なるべく走行チェックをすることをお勧めします。 個体によっては、キャブを貫通しているシャフトが非常に外れやすいものがあるので、なくさないように注意が必要です(個体によってはまったく平気なものもあります)。
当時の雑誌のトミックスに対するインタビューで、9600をテンダーモーターにした理由は「試行錯誤のうえ、当社の厳しい性能基準をクリアするにはこれしかなかった」とのことでした。 ハシゴがハンドレールの下にあるのも、模型としての見た目のバランスを考慮してという答えでした。色んな読み方ができて面白い記事でした。
他製品を差し置いてトミックスの9600を買う動機にはどんなものがあるかというと、やはり大手メーカーのひとつが作った9600であることや、日本型のプラ量産品でテンダーモーターという構造が珍しいことなど、これも今となってはコレクション的な要素が大きいのではないかと思います。 実用面での購入動機には、テンダーに自動解放可能なMカプラーが標準装備されているというものもあり、これを利用して9600の大きな用途である入れ替え運転をそのまま楽しめます。
発売後5年間は頑張りましたが、残念ながら2004年秋にカタログ落ちしてしまいました。逆オーパーツという感じにも見えますが、この9600の経験が、2009年のC57 135の原動力のひとつになったと信じたいです。 ちなみに、私はスターよりは一歩引いたような存在が好きなので、この模型は結構好きです。
2014 9600 2002年(写真は2009年ロット) | 2014 →KATO 9600 ※20年後に書いたもの |
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2015 9600デフ付 2002年(写真は2009年ロット) | 2015 9600デフ付 2002年(写真は2009年ロット) (拡大写真) |
初回の発売は2002年です。マイクロエースやトミックスから9600が発売されるころにカタログで予告され、数年がかりで世に出ました。
輸出型蒸機で以前から行っていたことを日本型蒸機に取り入れており、ボイラーにフライホイール付きモーターを収めています。ハンドレールの別パーツ化や煙室の塗り分けなど、細密度も時代相応にアップしています。
地域的に特化した商品ではありませんが、軽く九州型がイメージされているようで、テンダーの炭庫もそんな感じになっています。前面のカプラー解放テコも片側式と両側式の2種が付属しています。
モールドは大変シャープで組み立て精度も高く、この点はマイクロエース製品よりも進んでいます。カッチリしていて、よれよれになっていた実物と比べると冷たい感じがするほどです。
マイクロエースに比べて動輪の軸距離が長く、全体は若干大きめです。縮尺ははっきりわかりませんが、機関部の端梁間を実測すると1/144くらいのようです。
9600としての印象把握は上手です。特にデフなしの煙室廻りのフォルムは端整で、立ち姿が美しい模型です。
走りに関しては従来のKATO蒸機と同等で、それまでと同じかやや高いジージー音がします。個体差が大きいようで、走りは全然ダメと切って捨てる方がいるのも付け加えておきます。フライホイールの効果は特にあるようには感じません。
テンダーは前方2軸からの集電です。テンダー下部の集電線がずれると、集電不良になってうまく走らなくなります。他にも微妙な原因で集電不良になることがあるようでした。
テンダー内部のライト基板のバネがあまり下に強く曲がっていると、第1〜2軸を下に強く押し下げてしまい、どちらかの車輪を中心にシーソー状態になってしまいます。 | |
集電板内側の集電線があまり強く外側に当たっていると、集電板が強く固定されてしまい、車輪が線路の凸凹に追従できず、集電不良になることがあります。またピボット軸から集電板が遠ざけられます。 |
下手にいじると微妙な軸重のバランスが崩れるので、調子よく走っている場合はあまり集電機構に触らないほうがよいと思います。なお上右の写真は第3軸からも集電するようにしてあります。
2009年の再生産のときに、先輪が薄いものに変更され、ハンドレールが取り付け済みになるなどの小改良がありました。
こちらでもご紹介しています。→KATO9600 2009年再生産
初回品 | 再生産 車輪が薄い |
KATO 旧D51(改造品)との重連です。
KATO以降、9600を新たに発売するメーカーはしばらくありませんでしたが、2018年になってやえもんデザインがコンバージョンキットを4種発売しました。
Y9600-1 9600標準タイプ 2018年 | Y9600-1 |
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Y9600-3 9600九州タイプ 2018年 | Y9600-3
Y9600-2 9600北海道タイプ 2018年(写真なし) |
今までになかったバリエーションを補完する製品というよりは、自分の手で9600を組み立てるという、楽しみ方のほうを補完した製品かと思います。
下廻りとテンダーにはKATOまたはマイクロエースの9600を使用します。ちょうど、同じやえもんデザインのD51に似た構成です。
9600の印象は大変よく捉えられていると思いました。特にデフやハシゴ・キャブ周辺のすっきりした表現は、薄い金属素材ならではです。
→9600の組み立て(やえもんデザイン)