![]() |
![]() |
|
![]() |
||
門生請題於余自像即綴短句述其懷云 | ||
華岡靑洲 |
||
竹屋蕭然鳥雀喧, 風光自適臥寒村。 唯思起死回生術, 何望輕裘肥馬門。 |
竹屋 蕭然 として鳥雀 喧 しく,
風光 自 づから寒村 に臥 すに適す。
唯 だ思ふ起死 回生 の術 を,
何 ぞ望まん輕裘 肥馬 の門を。
*****************
◎ 私感註釈
※華岡青洲:江戸(中)後期の外科医。寶暦十年(1760年)~天保六年(1835年)。紀伊の人。名は震。字は伯行。京都に出て古医方及びオランダ外科を学び、帰国して開業。苦辛研究を重ね、麻沸湯と称する麻酔剤を創製、西洋の麻酔手術に先立って、1805年(文化二年)乳癌手術を行い外科手術で名を揚げた。また、学塾を開き、和歌山藩医ともなった。
※門生請題於余自像。即綴短句。述其懷云:門人がわたしの画像に言葉がほしいともとめたので、そこで短い句を書いて、その思いを述べた。 ・門生:門下生。弟子。門人。 ・請:(…が…に)ねがう。(…が…に)もとめる。(…が…に)こう。 ・題於:…に詩文を作る。この用法での「題」は動詞。 ・余:わたし。ここは、作者のこと。 ・自像:作者自身が描かれた画像。 ・即:ただちに。そこで。すなわち。 ・短句:みじかい句。字数の少ない句。 ・懷:思い。 ・云:…ということだ。書物の引用や伝聞を表す。また、文末にあって上文をおさめることば。いう。ここは、後者の意で使われる。
※竹屋蕭然鳥雀喧:竹林の中の家は、がらんとしてものさびしく、スズメなどの小さな鳥(の声だけ)がやかましい。 ・竹屋:竹林の中の家。また、庭に竹を植えてある家。 ・蕭然:〔せうぜん;xiao1ran2○○〕ものさびしいさま。がらんとしたさま。 ・鳥雀:〔てうじゃく;niao3que4●●〕スズメなどの小さな鳥。『續南紀風雅集』では「鳥雀」とする。インターネット上で「烏雀」も見かける。なお、詩詞では「鳥雀」はよくあるが、「烏雀」は見かけない。唐の劉希夷『白頭吟(代悲白頭翁)』に「洛陽城東桃李花,飛來飛去落誰家。洛陽女兒惜顏色,行逢落花長歎息。今年花落顏色改,明年花開復誰在。已見松柏摧爲薪,更聞桑田變成海。古人無復洛城東,今人還對落花風。年年歳歳花相似,歳歳年年人不同。寄言全盛紅顏子,應憐半死白頭翁。此翁白頭眞可憐,伊昔紅顏美少年。公子王孫芳樹下,淸歌妙舞落花前。光祿池臺開錦繍,將軍樓閣畫神仙。一朝臥病無人識,三春行樂在誰邊。宛轉蛾眉能幾時,須臾鶴髮亂如絲。但看古來歌舞地,惟有黄昏鳥雀悲。」とある。 ・喧:〔けん;xuan1○〕やかましい。かまびすしい。
※風光自適臥寒村:景色を自分の心のままに楽しむ(ために)貧しそうでさびれた村で過ごす。 ・風光:景色。優れた趣き。おもかげ。光栄。本来の義は、草木が風に揺られて光ること。 ・自適:自分の心のままに楽しむ。 ・臥:(うつぶせに)ねる。ふせる。ふす。 ・寒村:貧しそうで、見るからに寒々とした村。さびれた村。
※唯思起死回生術:ただ医療技術のことだけを思い。 ・唯:ただ…だけ。ただ…のみ。 ・起死回生:〔きしくゎいせい;qi3si3hui2sheng1●●○○〕死にかかっている病人を生き返らせる。死んだものを生き返らせる。医療技術などの優れたさまに用いる。
※何望軽裘肥馬門:どうして軽(かろ)やかで暖かい皮衣(かわごろも)に太った馬などのある富貴な家柄(になること)を望もうか。 ・何:どうして…しようか。なんぞ…ん(や)。反語。 ・軽裘肥馬:軽(かろ)やかで暖かい皮衣(かわごろも)に太った馬。富貴な人のいでたちの譬喩。 ・軽裘:軽(かろ)やかな皮衣(かわごろも)。 ・肥馬:太った馬。 ・門:いえ。家柄。また、仲間。一門。ここは、前者の意。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は、「喧村門」。平水韻上平十三元。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
○○●●○○●,
○◎○○●●○。(韻)
平成26.9.11 9.23 9.25 9.26 |
![]() トップ |