歳日 | |
元稹 |
******
一日今年始,
一年前事空。
淒涼百年事,
應與一年同。
歳日
一日 今年 始まり,
一年 前事 空し。
凄涼たり 百年の事,
應に 一年と 同じなるべし。
****************
◎ 私感註釈
※元稹:中唐の詩人。進士に及第して官僚となる。白居易と親交があり元白と称され、その詩風は二人合わせて「元軽白俗」とも評される。字は微之。河南・洛陽の人。779年〜831年。二人の交流を示すものに、元稹は『聞白樂天左降江州司馬』「殘燈無焔影幢幢,此夕聞君謫九江。垂死病中驚坐起,暗風吹雨入寒窗。」 や、白居易の『舟中讀元九詩』「把君詩卷燈前讀,詩盡燈殘天未明。眼痛滅燈猶闇坐,逆風吹浪打船聲。」がある。
※歳日:元日。旧暦・一月一日。 *この詩、どこか一休の「門松は 冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」と味わいが似ている。
※一日今年始:(元旦の今日の)一日から今年が始まった。崔敏童の『宴城東莊』に「一年始有一年春,百歳曾無百歳人。能向花前幾回醉,十千沽酒莫辭貧。」 とある。 ・一日:一月一日の元日。きょう。 ・今年:ことし。 ・始:はじまる。
※一年前事空:(過ぎ去ったこの)一年間の過去の出来事は、むなしく実体がないものとなった。 ・一年:(この)一年間。 ・前事:以前の出来事。過去の出来事。白居易に『商山路有感』「憶昨徴還日,三人歸路同。此生都是夢,前事旋成空。杓直泉埋玉,虞平燭過風。唯殘樂天在,頭白向江東。」がある。 ・空:むなしい。なにもない。実体がない。
※淒涼百年事:(思えば)さびしいものだ、百年(=人の一生)というものは。 ・淒涼:〔せいりゃう;qi1liang2○○〕さびしい。みじめな。あじけない。 ・百年:人の一生。陶淵明『飮酒二十首』其三「道喪向千載,人人惜其情。有酒不肯飮,但顧世間名。所以貴我身,豈不在一生。一生復能幾,倏如流電驚。鼎鼎百年内,持此欲何成。」や、同・陶潛『雜詩十二首』其四「丈夫志四海,我願不知老。親戚共一處,子孫還相保。觴弦肆朝日,樽中酒不燥。緩帶盡歡娯,起晩眠常早。孰若當世士,冰炭滿懷抱。百年歸丘壟,用此空名道。」 『古詩十九首』之十五「生年不滿百,常懷千歳憂。晝短苦夜長,何不秉燭遊。爲樂當及時,何能待來茲。愚者愛惜費,但爲後世嗤。仙人王子喬,難可與等期。」、『詩經』唐風『葛生』「葛生蒙楚,蔓于野。予美亡此,誰與獨處。葛生蒙棘,蔓于域。予美亡此,誰與獨息。角枕粲兮,錦衾爛兮。予美亡此,誰與獨旦。夏之日,冬之夜。百歳之後,歸于其居。冬之夜。夏之日,百歳之後,歸于其室。」に同じ。劉希夷(劉廷芝)の『公子行』「傾國傾城漢武帝,爲雲爲雨楚襄王。古來容光人所羨,況復今日遙相見。願作輕羅著細腰,願爲明鏡分嬌面。與君相向轉相親,與君雙棲共一身。願作貞松千歳古,誰論芳槿一朝新。百年同謝西山日,千秋萬古北邙塵。」とある。 ・事:ことがら。できごと。 *用例から判断して、「事」は日本語の「こと」よりも、より具体的な物事を指す。(日本語では、用言の体言化で頻繁に使われるが、漢語「事」の用法とは異なる)。以上、蛇足。
※應與一年同:(人の一生の百年も)きっと、一年(三百六十日(旧暦)と同じことだろう。(一年と同じで、あっという間に過ぎてしまう)。魏・阮籍の『詠懷詩』其十「昔年十四五,志尚好書詩。被褐懷珠玉,顏閔相與期。開軒臨四野,登高望所思。丘墓蔽山岡,萬代同一時。千秋萬歳後,榮名安所之。乃悟羨門子,今自嗤。」とあるのに同じ。 ・應:きっと…にちがいない。まさに…べし。 ・與:…と。 ・一年:一年(三百六十日(旧暦)。 ・同:同じだ。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「空同」で平水韻上平一東。この作品の平仄は、次の通り。
●●○●●,
●○○●○。(韻)
○○●○●,
○●●○○。(韻)
2012.28 12.30完 2021.12.1補 |
次の詩へ 前の詩へ 抒情詩選メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 陶淵明集 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |
メール |
トップ |