huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye
 
室思

                        後漢末〜三国・魏・徐幹


浮雲何洋洋,
願因通我詞。
飄飄不可寄,
徙倚徒相思。
人離皆復會,
君獨無返期。
自君之出矣,
明鏡暗不治。
思君如流水,
有何窮已時。





*******************
                      室思(しつ し )

浮雲( ふ うん)  (なん)洋洋(やうやう)たる,
(ねが)はくは()りて  我が(ことば)(つう)ぜん。
飄飄(へうへう)として  ()()からず,
徙倚(しい)して  (いたづ)らに()ひ思ふ。
(はな)るれば  (みな) ()()ひ,
(ひと)り  (かへ)るの() 無し。
君の()でしより,
明鏡(めいきゃう)  暗くして(をさ)めず。
君を思へば  流水(りうすゐ)の如く,
(なん)ぞ  (きは)まり()む時 有らん。

             ******************





◎ 私感訳註:

※徐幹:後漢末期の文学者・哲学者。建寧四年(171年)〜建安二十三年(218年)。建安七子の一人。字は偉長。青州北海郡劇県の人。司空軍謀祭酒の掾属、五官中郎将の文学となった。『中論』二十余篇を著して儒家に基本理念を解明。 また、詩賦をよくした。

※室思:(夫を思う)妻の思い。 *この詩は、女性の立場から、遠くに行った夫を思い偲んだもの。女性自身は「我」と表され、夫(おっと)は「君」となっている。初めに出る「浮雲」は「空に浮く雲」であるが、また、遠く離れている「遊子」=夫(おっと)のことでもある。 ・室:妻。

※浮雲何洋洋:空に浮いて漂っている雲(のように遠く離れていて、何の関係もなく、あてにならない「遊子」である夫(おっとを想起させ、)なんと広々として大きいのか。 ・浮雲:空に浮いて漂っている雲。空に浮く雲のように、遠く離れていて、何の関係もないこと。あてにならないこと。小人の譬喩。この「浮雲」は、「遊子」を想起させ、別離を表す情景でしばしば使われる。『古詩十九首之一・行行重行行』に「行行重行行,與君生別離。相去萬餘里,各在天一涯。道路阻且長,會面安可知。胡馬依北風,越鳥巣南枝。相去日已遠,衣帶日已緩。
浮雲蔽白日遊子不顧返。思君令人老,歳月忽已晩。棄捐勿復道,努力加餐飯。」とあり、顧況の「故櫪思疲馬,故巣思迷禽。浮雲蔽我ク,躑躅遊子吟。遊子悲久滯,浮雲鬱東岑。客堂無絲桐,落葉如秋霖。艱哉遠遊子,所以悲滯淫。一爲浮雲詞,憤塞誰能禁。」や李白の『送友人』「青山北郭,白水遶東城。此地一爲別,孤蓬萬里征。浮雲遊子意,落日故人情。揮手自茲去,蕭蕭班馬鳴。」、また、「浮雲終日行,遊子久不至。」「遊子欲言去,浮雲那得知。」と対にしても使われる。 ・何:なんぞ。反語や感嘆の意。 ・洋洋:広々として大きいさま。また、水が満ち満ちているさま。水の盛んなさま。多いさま。りっぱで美しいさま。ここは、前者の意。

※願因通我詞:(浮き雲よ)どうか願いを聞いて、わたしのことばを(夫に)伝えてほしい。 ・願:望む。ねがう。 ・因:よる。ちなむ。もとづく。 ・通:通じさせる。 ・我詞:わたしのことばの意。

※飄飄不可寄:風に吹かれて、空中をさまよう(雲に、わたしの言葉を)託すことは出来ない。 ・飄飄:〔へうへう;piao1piao1○○〕ふわふわと浮くさま。(雲等が)風に吹かれて、空中に舞うさま。さまようさま。そよそよと吹くさま。翻るさま。風が物を翻すように吹くさま。東晋・陶淵明の『歸去來兮辭』に「歸去來兮,田園將蕪胡不歸。既自以心爲形役,奚惆悵而獨悲。悟已往之不諫,知來者之可追。實迷途其未遠,覺今是而昨非。舟遙遙以輕颺,
飄飄而吹衣。問征夫以前路,恨晨光之熹微。乃瞻衡宇,載欣載奔。僮僕歡迎,稚子候門。三逕就荒,松菊猶存。攜幼入室,有酒盈樽。引壺觴以自酌,眄庭柯以怡顏。倚南窗以寄傲,審容膝之易安。園日渉以成趣,門雖設而常關。策扶老以流憩,時矯首而游觀。雲無心以出岫,鳥倦飛而知還。景翳翳以將入,撫孤松而盤桓。」とあり、唐・高適の『燕歌行』に「漢家煙塵在東北,漢將辭家破殘賊。男兒本自重行,天子非常賜顏色。摐金伐鼓下楡關,旌旆逶迤碣石間。校尉衷藻瀚海,單于獵火照狼山。山川蕭條極邊土,胡騎憑陵雜風雨。戰士軍前半死生,美人帳下猶歌舞。大漠窮秋塞草腓,孤城落日鬥兵稀。身當恩遇恆輕敵,力盡關山未解圍。鐵衣遠戍辛勤久,玉箸應啼別離後。少婦城南欲斷腸,征人薊北空回首。邊庭飄飄那可度,絶域蒼茫更何有。殺氣三時作陣雲,寒聲一夜傳刁斗。相看白刃血紛紛,死節從來豈顧勳。君不見沙場征戰苦,至今猶憶李將軍。」とあり、盛唐・杜甫の『旅夜書懷』に「細草微風岸,危檣獨夜舟。星垂平野闊,月湧大江流。名豈文章著,官應老病休。飄飄何所似,天地一沙鴎。」とあり、中唐・張仲素の『塞下曲』に「朔雪飄飄開雁門,平沙歴亂捲蓬根。功名恥計擒生數,直斬樓蘭報國恩。」とある。 ・不可:…することができない。 ・寄:よせる。あずける。たのむ。

※徙倚徒相思:(わたしは)彷徨(さまよ)って、徒(いたずら)に相手(=夫)を思う。 ・徙倚:〔しい;xi3yi3●●〕さまよう。たちもとおる。そぞろ歩く。徘徊する。後世、隋〜唐・王績の『野望』に「東皋薄暮望,
徙倚欲何依。樹樹皆秋色,山山唯落暉。牧人驅犢返,獵馬帶禽歸。相顧無相識,長歌懷采薇。」とあり、南宋・陳與義の『登岳陽樓』に「洞庭之東江水西,簾旌不動夕陽遲。登臨呉蜀分地,徙倚湖山欲暮時。萬里來遊還望遠,三年多難更憑危。白頭弔古風霜裏,老木蒼波無限悲。」とある。 ・徒:いたずらに。 ・相思:相手を思う。また、互いに慕い合う。ここは、前者の意。 ・相-:動作が対象に及んでくる時に使う。「…てくる」「…ていく」の意。「相互に」の意味はここではない。中唐・白居易の『勸酒』「昨與美人對尊酒,朱顏如花腰似柳。今與美人傾一杯,秋風颯颯頭上來。年光似水向東去,兩鬢不禁白日催。東鄰起樓高百尺,題照日光。」盛唐・李白に『把酒問月』「天有月來幾時,我今停杯一問之。人攀明月不可得,月行卻與人。皎如飛鏡臨丹闕,拷喧ナ盡C輝發。但見宵從海上來,寧知曉向雲陝刀B白兔搗藥秋復春,娥孤棲與誰鄰。今人不見古時月,今月曾經照古人。古人今人若流水,共看明月皆如此。唯願當歌對酒時,月光長照金樽裏。」や、東晋・陶潜の『飮酒二十首』其一「衰榮無定在,彼此更共之。邵生瓜田中,寧似東陵時。寒暑有代謝,人道毎如茲。達人解其會,逝將不復疑。忽與一觴酒,日夕歡。」、陶淵明の『雜詩十二首』其七の「日月不肯遲,四時催迫。寒風拂枯條,落葉掩長陌。弱質與運頽,玄鬢早已白。素標插人頭,前途漸就窄。家爲逆旅舍,我如當去客。去去欲何之,南山有舊宅。」や張説の『蜀道後期』「客心爭日月,來往預期程。秋風不,先至洛陽城。」杜甫の『州歌十絶句』其五に「西一萬家,江北江南春冬花。背飛鶴子遺瓊蕊,趁鳧雛入蒋牙。」とある。南唐後主・李U『柳枝詞』「風情漸老見春羞,到處消魂感舊遊。多謝長條似,強垂煙穗拂人頭。」、唐〜・韋莊の『江上別李秀才』に「前年送灞陵春,今日天涯各避秦。莫向尊前惜沈醉,與君倶是異ク人。」とあり、范仲淹の『蘇幕遮』「碧雲天,黄葉地,秋色連波,波上寒煙翠。山映斜陽天接水,芳草無情,更在斜陽外。   黯ク魂,追旅思,夜夜除非,好夢留人睡。明月樓高休獨倚,酒入愁腸,化作思涙。」とあり、唐末・韋莊の『浣溪沙』「夜夜思更漏殘 など、下図のように一方の動作がもう一方の対象に及んでいく時に使われている。
B

もっとも、李白の『古風』「龍虎
相啖食,兵戈逮狂秦」、『遠別離』の「九疑聯綿相似,重瞳孤墳竟何是。」や『長相思』「相思,在長安」や王維の「入鳥不相亂,見獸相親。」などは、下図のような相互の働きがある。
B
勿論、これらとは別に言葉のリズムを整える働きのために使っていることも詩では重要な要素に挙げられる。 

※人離皆復会:人は、別れた後も、また顔を合わせるが。 ・離:別れる。離れる。 ・復会:また、会って顔を合わせる。なお、「あう」という語に対応するするものに「会」「逢」「遭」「遇」などがあるが、「会」は:(場所や時間を決めて)ある所にあつまって面会する。「逢」は:であう。その時節にあう。「遭」は:よくないことに行きあう。「遇」は:途中で予期せずにあう。

※君独無返期:あなただけは、(元の所へ)戻ってくる時期が無い。 ・君:あなた。夫を指す。 ・独:…だけ。ひとり。 ・返期:(元の所へ)戻ってくる時期。帰って来る時。

※自君之出矣:あなたの旅立ちより。 ・自:…から。…より。 ・君之出:あなたの旅立ち、の意。 ・矣:…った。…ってしまった。文末にあって、完了や過去を表す。語気詞。

※明鏡暗不治:曇りのない鏡も、曇ったままで、整えられていない。 ・明鏡:曇りのない鏡。 ・治:整える。整理する。

※思君如流水:あなたを思うことは、流れ去る川の水のように。 ・流水:流れ去る川の水や時間。

※何有窮已時:きわまりやむ時がどうしてあろうか、ない。 ・何有:どうして有ろうか、何もない。何(物)もない。何ぞ有らん。何か有らん。また、何もさしつかえはない。自然のままで、何の作為もないこと。ここは、前者の意。 ・窮:きわまる。 ・已:やむ。





◎ 構成について

韻式は「AAAAA」。韻脚は「詞思期治時」(「思〔動詞○〕」「治」は両韻)で、平水韻上平四支。次の平仄はこの作品のもの。

○○○○○,
●○○●○。(韻)
○○●●●,
●●○○○。(韻)
○○○●●,
○●○●○。(韻)
●○○●●,
○●●●◎。(韻)
○○○○●,
○●○●○。(韻)

2015. 5.26
      5.27
      5.28
      5.29
      5.30完
2019.11.3補




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