BACKHOME│

 
 
   SUB MENU
 昭和歌謡史
 
 
【第X章
「同期の桜」のルーツ分かる

作詩・作曲者不詳のまま太平洋戦争後歌い続けられてきた歌に昭和58年6月、東京地裁が本当の”生みの親”を認定した。この歌は「同期の桜」で戦争中から歌われてきた歌だが、広く流行したのは戦後のことだ。作詩、作曲不詳でレコードにもなったが、昭和55年「これは私が戦争中作ったもの…」と福岡県の元海軍兵、山下輝義さんが名乗りを上げ、更に著作権存続確認とレコード会社6社に不当利得金返還訴訟を起こしたため、世間の注目を浴びる騒ぎとなった。
驚いたレコード会社が八方手をつくして調べた結果、ほとんど同じ歌と思われるものが、すでに昭和14年にレコード発売されていて、そのレコード(キング)も発見された。この歌は西条八十作詩、大村能章作曲の「戦友の唄」で、歌手は樋口静雄。そしてこの歌詞だけが先に掲載された、昭和13年に講談社から発売された雑誌「少女倶楽部」も見つけ出された。「君と僕とは二輪の桜 同じ部隊の枝に咲く 血肉分けたる仲ではないか なぜか気が合うて離れられぬ」という「同期の桜」と殆んど似ていて、更に作曲は全く同じというもの。結局、時の東京地裁、牧野裁判長は「同期の桜」の元歌は昭和14年にレコード発売された「戦友の唄である」と認定、原告の請求を棄却、ここにようやく本当の作詞者、作曲者がよみがえった。     

本当の懐メロ「心の歌」

長い年月が過ぎても、忘れられない歌がある。昭和58年春、第一勧業銀行が忘年会シーズンを前に東京都内に住む5百人のサラリーマンに「あなたの忘れられない歌は…?」と尋ねて出た結果がある。その心の歌の第一位は村田英雄の「王将」で、勝つ、そして忍ぶ…という男のロマン理由。同じような理由で「人生劇場」同じく村田英雄歌、や「柔」(美空ひばり)も十位の中に、そして太平洋戦争後の本の経済が上昇機運に乗っていた昭和三十七〜八年ごろ流行した「上を向いて歩こう」(坂本九)や高校三年生(舟木一夫)大変懐かしい歌としてアンケートの上位に上がった。 
また翌五十九年秋、ニッポン放送「梶みきおの昼休み天国」の”思い出のオルゴール”コーナーが「今の季節、今の時間あなたの聴きたい唄いたい歌は…と質問した電話リクエストに答えてきた総数九百五十二人のベストテンは一位が「赤とんぼ」二位が「里の秋」三位が「もみじ」以下、「小さな秋みつけた」「ふるさと」「みかんの花咲く丘」「月の砂漠」「虫の声」「浜辺の歌」「野菊」といった結果が出た。この中の「月の砂漠」などは大正十二年の作品だから、実は六十年も前の歌。
千葉県御宿海岸には「月の砂漠」像が建てられてあり、詩吟などの世界でもこの歌を中に挟んで吟詠「月の砂漠」がつくられ、吟じられている。こうした歌が本当の懐メロというものかも知れない。

競作ブームに16人が登場

「氷雨」「矢切の渡し」「釜山港へ帰れ」「片恋酒」など、昭和57年頃から賑やかな演歌の競作ブームが続いたが、昭和59年にヒットした「浪花節だよ人生は」もその競作となったひとつである。歌手とそのレコード会社を列記すると、木村友衛(ビクター)細川たかし、こまどり姉妹(以上、コロンビア)小野由起子(徳間)姿憲子(クラウン)二葉百合子(キング)水前寺清子(RVC)杉良太郎(CBSソニー水木一郎(ユビテル)三つ橋けん柴田あき子(以下東芝)祐子と弥生(テイチク)泉ちどり(センチュリー)玄ひろし(リバスター)実に12社、16人がこの歌を唄って競い合った。
しかしこの歌、そもそもは浪曲師で歌手の木村友衛が三年余り辛抱強く歌い続けたあげく、ヒットに結びつけたものといういきさつがある。
木村友衛は福島県生まれ、浪曲関西節の父、岡本鶴隆に厳しく教え込まれ、六歳で初舞台、のち関東節に転じて、元日本浪曲協会会長だった木村友衛の二代目を襲名した。歌謡曲は15〜6歳頃からつづけ、レコード歌手としてのデビューは昭和42年、テイチクの専属となり、「妻恋渡り鳥」などを吹き込んだがヒットに結びつかず、思いあぐねた末、父の手ずるで作詞家、藤田まさと(昭和5年没)を訪ね、「何か私にいい歌を」……とと頼み込んだ。「それでは、これはどうだろう」と渡されたのがこの歌。
実はこの歌、昭和51年に徳間レコードから小野由起子の歌「旅に出よう」のB面で売り出されたもののヒットせず、しかし作詩者は心残りで、もう一度アタック、木村友衛に賭けた。ということだった。
昭和45年6月、ビクターから売り出されたものの、頼りにするおプロダクションの無く、ひとり歩きのキャンペーン、しかしさっぱり売れず、3年後の夏頃から爆発的に売れ出し、さらには大競作時代のきっかけを作る。

 
 
 

BACK HOME


  MENU 

   昭和歌謡史序章
   VOL.2 東京行進曲
   VOL.3 赤いリンゴ
   VOL.4 いやいや歌って

  

   PROFILE
   INFORMATION
   CONTACT

   DISCOGRAPHY
   COLLABORATION
   COLUMN
   ALACARTE

   SCHOOL
   VOCAL
   BLOG
   LINKS