疑問① ぶどう酒が届いた時間はいったい何時?
疑問② 村人の供述が変遷したのはなぜ?
疑問③ 検察官の意図は何だったの?
死刑判決は「勝さんが公民館で一人になった10分間以外に犯行の機会はない」としていますが、本当にそうなのでしょうか?
ここで、事件当日のぶどう酒の足どりを見てみましょう。
〈ぶどう酒と折詰弁当購入・運搬の経路〉
ぶどう酒の購入を決めたのは、当日の朝。実際に買ったのは、Rさん |
ぶどう酒が懇親会に出ることが決まったのは当日の朝。決めたのは三奈の会会長の農協に勤めるN氏で、農協職員のRさんに購入を命じました。
Rさんは村に飼料を運ぶため農協に立ち寄った車に便乗し、H酒店で清酒2本とぶどう酒1本を購入し、N氏宅に運びました。受け取ったのはN氏の妻・F子さん(事件で死亡)です。
その後、隣家の勝さんがN氏宅に来て5時20分頃に公民館へ運びました。
事件当初Rさんや酒屋など運搬に関わった村人の供述では、ぶどう酒がN氏宅に届いたのは4時前。つまり、N氏宅に1時間以上も置かれていたことになっています。
ぶどう酒が村に搬入されてから農薬が入れられたとすると、1時間以上置かれていたN氏宅でも犯行機会があったということになります。
ところが事件から2週間以上経ってから、関係者の供述はいっせいに変わり、「ぶどう酒が届いたのは勝さんが来る直前」ということになってしまったのです。
供述が変わったことへの、合理的な説明はなされていない。
一審・津地裁は、検察側の意図的な供述操作を痛烈に批判 |
第一審・無罪判決は事件当初の供述を採用し、「勝さん以外にも犯行機会はあった」としました。村人たちの供述の変更については、「検察官の並々ならぬ努力の所産」と捜査当局の意図的な供述操作を痛烈に批判したのです。
しかし二審は、一斉に変更されてからの供述を採用し、勝さんにしか「犯行の機会はない」として、勝さんを有罪・死刑としたのです。
弁護団は、「勝さん以外にも犯行の機会があったはず」と主張 |
ぶどう酒の瓶の開栓鑑定を準備
なお弁護団は第五次再審請求で、「勝さん以外にも犯行の機会はあったはずだ。ぶどう酒の栓は公民館に運んでくる前に開けられている可能性があるはずだ」と主張してきました。
ところが裁判所は「残された封緘紙は一度はがしてまた貼った形跡はないし、耳付き冠頭も形状を観察すると二度開栓されている可能性はない」と断定しています。詳細は省略しますが、それを根拠に「勝さんしか公民館で毒を入れた犯人はいない」と認定しています。
それはぶどう酒の到着時刻の問題などから考えても矛盾だらけなのですが、率直に、「裁判所は、観察をして勝さんが犯人と認定したというが一体どんな観察の仕方をしたのだろうか?」という疑問が沸きました。
【無実を語る】 |王冠の歯形鑑定|ぶどう酒到着時間|アリバイ|自白と事実の矛盾|赤色のニッカリンT|毒物が違う|
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