勝さんはニッカリンTを以前購入していたため、犯人と疑われ、そのニッカリンTをぶどう酒に入れて犯行を行ったと虚偽の自白の中で述べています。
ニッカリンTは、テップ剤と呼ばれる農薬ですが、ニッカリンTの製造方法では、主成分のテップの他、副生成物としてトリエチルピロリン酸(トリエチルピロホスフェート)が生成されます。
しかし毒物が混入されていたぶどう酒の飲み残りからは、テップとテップが加水分解した物質であるDEPが検出されているものの、トリエチルピロリン酸は検出されていません。
【図の解説】
左端(1)が飲み残りのぶどう酒を検査した結果。トリエチルピロリン酸の反応はない。
それと比べると、他の検査結果には、トリエチルピロリン酸の反応がある。
当時の鑑定人は、トリエチルピロリン酸が検出されなかった理由について、加水分解速度が非常に速く、それにより消失したと説明していました。
ところが、弁護団の労苦を重ねた調査と研究によって、ニッカリンTに関する様々な分析の実験を行った結果、ニッカリンTには、製造後30年を経過しても15%以上のトリエチルピロリン酸が含まれており、このトリエチルピロリン酸の加水分解速度はテップ剤と比較すると非常に遅いことが判明しました。
つまり、飲み残りのぶどう酒からテップが検出されているにも関わらず、トリエチルピロリン酸が検出されていないということは、事件に使われた農薬は勝さんが所有していたニッカリンTではない、なにか別のテップ剤であることが分かったのです。 ※当時市販されていた別のテップ剤の製造方法では、トリエチルピロリン酸が生成されません。
捏造された歯形鑑定、二転三転する証言の数々、自白と異なる事実、そしてこの実験結果から総合的に判断しても、真実はまったく明らかになっていません。
事件から54年。勝さんはいまも「無実」を主張し続けています。
【無実を語る】
|王冠の歯形鑑定|ぶどう酒到着時間|アリバイ|自白と事実の矛盾|赤色のニッカリンT|毒物が違う|
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