勝さんは
①事件前夜、自宅にあった農薬ニッカリンTを竹筒に入れ、丸めた新聞紙で栓をして犯行を準備し、
②農薬のビンは当日の朝、近くの名張川に捨て、
③公民館にぶどう酒を運び、ひとりになった隙に竹筒内のニッカリンTを混入し、
④竹筒を公民館のいろりで焼いた、
と「自白」しています。
ところが、事件直後、名張川を大々的に捜索したにもかかわらず、農薬ビンはかけらも見つかりませんでした。
※当時、志摩の海女さんも動員して捜索
※投棄実験ではビンはすぐに沈む→必ず見つかるはず
さらに、公民館のいろりからは、竹筒の燃えかすもリンの成分も発見されませんでした。
※いろりで燃やしたなら、必ず有機リンが検出されるはず
「自白」を裏付ける物証は何ひとつないのです。
懇親会で女性にぶどう酒がふるまわれることが決まったのは当日。それまでは予算の関係で、ぶどう酒はあきらめていたのです。それなのに「前日から犯行の準備をしていた」と自白したというのは、何とも奇妙です。
また、公民館でぶどう酒にニッカリンTを入れるという、肝心の場面の時期や状況について「自白」がころころと変わり、「ここが一番はっきりしない」というのです。
犯行前夜に計画を練り、一生忘れられないはずの犯罪決行の瞬間を覚えていない、ということがあるのでしょうか。
「三角関係の清算」が動機とされていますが、勝さんと妻、愛人の三人はいつも連れだって仕事や映画に行ったりと、全然深刻さがなかったというのです。
この他にも自白の内容には、数多くの疑問が残されています。
勝さんの自白は、暗く密閉された取り調べ室の中で、連日、厳しく、なかば強制的な尋問を続け、なにか新しい証拠や証言が出るたびに、それに合わせてつじつまをころころと変えてつくりだされた、捜査官のストーリーに他なりません。
勝さんは「全部調べが終わったら本当のことを聞いてやる」といわれ、話をすべて聞いてもらえませんでした。勝さんも裁判所できちんと無実を主張すれば信じてもらえるものだと思っていたのです。
【無実を語る】
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