犯行機会とされている「10分間」には実はアリバイがあった
勝さんはぶどう酒を運んだ後の公民館で10分間ひとりきりになり、その間に毒を入れたとされています。しかし、この「10分間」は本当にあったのか、大いに疑問とするところです。勝さん自身、一貫して「公民館でひとりになっていない」と裁判で主張しています。
この「10分間」は、そのころ公民館とN氏宅を往復したS子さんの証言にもとづいています。
「私は5時頃、2回公民館に行った。一度目はぶどう酒を運ぶ勝さんと一緒だった。公民館へ行くと雑巾がなかったので、N宅に取りに戻り、もう一度公民館に引き返した。私が雑巾を取りにいっている間、勝は公民館にひとりでいた」
というものです。
しかしY子さんは、子牛の運動をさせる勝るさんを見た! |
N氏宅で総会のための炊事仕事をとりしきっていたY子さんは、再審請求の裁判のなかで、「S子さんが最初に公民館に行ったあと勝を道で見たけど、勝は牛の運動をしていた」と、こう証言しています。とすると、S子さんの証言には重大な疑念が生ずるのです。
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勝さんアリバイの真相 |
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①S子さんは、Y子さんから風呂敷包みを受け取り、1回目に公民館に行った。 |
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②S子さんが、公民館に行っている時、トイレに立ち寄ったY子さんは、牛に運動をさせている勝さんを見た。 |
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③S子さんは、雑巾を取りに、N氏宅に戻る。 |
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④S子さんは、竹柴と雑巾を持ち勝さんは、清酒とぶどう酒を持って、途中出会ったFS子さんと、3人で公民館に行った。 |
つまり、勝さんが「犯行を決行した」とされる「10分間」はないのである。
また、名古屋高裁での第六次再審請求において提出されたのは、新たに発見された事件当時の名張署長の捜査ノート(「中西ノート」)です。
このノートは当時の捜査会議の内容を克明にメモしたものですが、事件後3~4日後の記述には、S子さんの供述として、勝さんは公民館でS子さんや別の主婦とずっと一緒にいた、と書かれており、勝さんの「公民館で一人になった機会はない」という主張を裏付ける内容になっています。
S子さんは事件直後の新聞記者の取材に対しても同様の延言をしています。こうした記億の鮮明な事件直後の供述と明らかに食い違うS子さんの供述は信用できません。
死刑判決が認定した勝さんの犯行機会(=「10分間」)がそもそも存在しないことがいっそうはっきりしたのです。
【無実を語る】
|王冠の歯形鑑定|ぶどう酒到着時間|アリバイ|自白と事実の矛盾|赤色のニッカリンT|毒物が違う|
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