2004ミステリ&SFベスト

2005.01.05 by SAKATAM


 2004年に読んだ本(再読を除く)の中から、個人的に面白かったもの(国内新刊・海外新刊・国内旧刊・海外旧刊を3作品ずつ)を挙げておきます。
 題名のリンク先は、もう少し詳しい内容紹介と感想です。

国内新刊
1『ウサギの乱』 霞 流一 人気アイドルの周辺で連続する“ウサギ”の見立て殺人。
 バカトリック“魔送球の密室”が炸裂。
2『星の牢獄』 谺 健二  地球を調査に訪れ、不可解な殺人事件に巻き込まれた宇宙人。
 宇宙人の探偵役+“館もの”ミステリという異色作。強烈なカタストロフ。
3『水の迷宮』 石持浅海 水族館を舞台に繰り広げられる悪質な悪戯と脅迫、そして殺人。
 しっかりと計算された巧妙なプロットと、感動的な(ただし見方による)物語。
 今年も国内新刊はかろうじて2桁読みました。山田正紀と霞流一の新刊が1冊ずつしか出なかったのが残念。


海外新刊
1『絹靴下殺人事件』 A.バークリー 相次いで起きる、絹のストッキングを使った首吊り事件。シェリンガムの推理は……?
 バークリーにしてはかなりオーソドックスなミステリ。シェリンガムのファンは必読。
2『死を呼ぶペルシュロン』 J.F.バーディン 精神科医のもとを訪れた奇妙な患者は、奇妙な小人に命じられて奇妙なアルバイトを……。
 悪夢のような物語世界に、なぜか(?)合理的な結末というミスマッチ。何ともシュールなミステリ。
3『大聖堂は大騒ぎ』 E.クリスピン オルガン奏者に迫る魔の手。そして大聖堂で起きる奇怪な事件。
 不可能犯罪・文学談義・怪奇趣味・ドタバタ喜劇の4本柱が揃ったクリスピンらしい作品。
 今年は海外新刊も2桁に達しました。ロジャー・シェリンガムのファンとしては、やはりこれが第1位ということで。


国内旧刊
1『風来忍法帖』 山田風太郎 個性豊かな7人の香具師たちの、痛快にして凄絶な戦いを描いた忍法帖。
 魅力的な人物、魅力的な物語、そして魅力的な結末。
2『月の扉』 石持浅海 ハイジャックされた飛行機の中で起きた殺人事件。極限状況における推理の行方は……。
 奇抜な状況と工夫が凝らされた展開が秀逸。
3『グラン・ギニョール城』 芦辺 拓 覆面作家による未完の探偵小説と、現実に起きる事件の謎。
 メインの趣向は出色の出来。細かい傷が多いのが残念。
 昨年に続いて山田風太郎作品が第1位。忍法帖の長編もあらかた読み終えました。


海外旧刊
1『検屍裁判』 P.ワイルド ほぼ全編が検屍裁判における関係者の証言で構成されたユニークなミステリ。
 全編に漂うユーモラスな雰囲気と、終盤の意外な展開が魅力。世評通りの傑作。
2『暗黒大陸の悪霊』 M.スレイド <スペシャルXシリーズ>。警官殺しと法廷劇、そして“最後の一撃”。
 趣向の凝らされた結末までノンストップ。(いい意味で)バカで悪趣味でマニアックなだけではない快作。
3『スモールボーン氏は不在』 M.ギルバート 法律事務所の書類保管箱から飛び出した死体。
 インパクトのある発端と、地味ながらしゃれた味わいの物語。
 第3位は『捕虜収容所の死』とどちらを選ぶか悩みましたが……。第2位は個人的にツボにはまったシリーズの(現時点での)最新刊。



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