調笑令
唐・戴叔倫
邊草,
邊草,
邊草盡來兵老。
山南山北雪晴,
千里萬里月明。
明月,
明月,
胡笳一聲愁絶。
**********************
。
調笑令
邊草,
邊草,
邊草 盡き來りて 兵 老ゆ。
山南 山北 雪は 晴れ,
千里 萬里 月は 明るし。
明月,
明月,
胡笳の 一聲 愁ひ 絶す。
******************
◎ 私感訳註:
※調笑令:詞牌の一。詳しくは下記「構成について」を参照。作者はこれを『轉應詞』とした。
※邊草:辺疆の草。辺境の草。国境地帯をいう。第二句は第一句の畳句とする。
※邊草盡來兵老:辺境の草はことごとく皆、枯れてしまって、兵士は老いてしまった。 ・盡來:ことごとく皆…となった。 ・兵老:兵士が歳を取ってしまった。
※山南山北雪晴:山の南北の方々では、雪が止んで空が晴れ渡った。 ・山南山北:山の南北では。山の方々では。 ・雪晴:雪が止んで空が晴れ渡る。雲が無くなっているので、次の句に繋がる。
※千里萬里月明:千里、万里の遥か彼方まで月が冴えわたって明るい。 ・千里萬里:千里や万里の遥か彼方まで。 ・月明:月が冴えわたる。月が明るい。
※明月,明月:冴え渡った月。前の句末の「月明」を顛倒させて「明月」として使う。畳句にする。
※胡笳一聲愁絶:辺疆の異民族の吹く笛の音の一節は、悲しみの極みである。 ・胡笳:辺疆の異民族の吹く笛の音。 ・愁絶:悲しみの極みである。 ・絶:はなはだ。非常に。飛び抜けて。
◎ 構成について
作者は『轉應詞』とする。『調笑令』のこと。三十二字(単調) 換韻。韻式は「aaaBBccc」。韻脚は「草草老」「晴明」「月月絶」で、詞韻第八部上声十九皓、第十一部平声八庚、第十八部入声五物六月。
○●,
(a韻)
○●,
(a韻)r(畳句。前の句を繰り返す)
○
●
。(a韻)
●
○
,(B韻)
○○●●○。
(B韻)
○●,
(c韻)顛(前句末の二字を顛倒して使うこと)
○●,
(c韻)r(畳句。前の句を繰り返す)
○
●。
(c韻)
韻式の「aaaBBccc」、つまり、「a仄韻a仄畳韻a仄韻・B平韻B平韻・c仄韻c仄畳韻c仄韻」と換韻する。一番目のa仄韻と三番目のc仄韻は別の韻目にする。また、第二句と第七句はそれぞれ別個の畳韻。
注意 其の一:
第一句と第二句は同一内容で、第一句の繰り返し。第六句と第七句も同一内容で、第六句の繰り返し。但し、第一、二句と第六、七句は異なった表現。
注意 其の二:
第五句の最後の二字(六字目と七字目)を、第六、七句で上下顛倒させて使う。
邊草,
邊草,
邊草盡來兵老。
山南山北雪晴,
千里萬里
月明
。
明月,
明月,
胡笳一聲愁絶。
第四句句中の対が多い点について、他の『調笑令』『宮中調笑』『三臺令』と見比べてみると、次のようになる。前三首は、黒字や青緑字部分が対になっており、後三首は、そうではないのがよく分かる。
「
邊草,邊草
,邊草盡來兵老。
山南山北
雪晴,
千里萬里
月明
。
明月,明月
,胡笳一聲愁絶。」
「
胡馬,胡馬
,遠放燕支山下。
沙
雪
獨嘶,
東望西望
路迷
。
迷路,迷路
,邊草無窮日暮。」
「
河漢,河漢
,曉挂秋城漫漫。愁人起望相思,
塞北江南
別離
。
離別,離別
,河漢雖同路絶。」
「
團扇,團扇
,美人並來遮面。玉顏憔悴三年,誰復商量
管絃
。
絃管,絃管
,春草昭陽路斷。」
「
南浦,南浦
,翠鬢離人何處。當時攜手高樓,依舊樓前
水流
。
流水,流水
,中有傷心雙涙。」
「
楊柳,楊柳
,日暮白沙渡口。船頭江水茫茫,商人少婦
斷腸
。
腸斷,腸斷
,鷓鴣夜飛失伴。」
2004.1.5
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