朱欄映晩樹,
金魄落秋池。
還似錢唐夜,
西樓月出時。
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池西の亭
朱欄 晩樹に 映じ,
金魄 秋池に 落つ。
還(ま)た 似たり 錢唐の夜,
西樓 月の出づる時。
◎ 私感註釈 *****************
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。
※池西亭:池の西にある亭を詠う。作者は、池の東側におり、そこから、西側の対岸にある亭を池を越えて望んでの作。作者は洛陽の履道里の家池のことを詠っているのか、もう少し前の長安の新昌里なのか、不明だが、錢塘を思い出している表現から、杭州刺史(長慶年間)の後のことになる。つまり、洛陽の履道里の時のことになる。
※朱欄映晩樹:赤く塗った建物の欄干が、夕暮れの中にある樹木に映えている。 ・朱欄:赤く塗った建物の欄干。 ・映:はえる。 ・晩樹:夕暮れの中にある樹木。
※金魄落秋池:月が秋の気配の漂う池に月影がうつっている。 ・金魄:月をいう。沈期『和元舍人萬頃臨池玩月戲爲新體詩』に「春風搖碧樹,秋霧卷丹臺。復有相宜夕,池C月正開。玉流含吹動,金魄度雲來。」や、李白の『古風』「大雅久不作,吾衰竟誰陳。…蟾蜍薄太C,蝕此瑤臺月。圓光虧中天,金魄遂淪沒。」と月を詠う。 ・落:(月影が水面に)うつっている。また、西に沈む。月が夕刻に沈むのは、新月の頃になるので、後者は苦しい。後者の意では。張継の『楓橋夜泊』「月落烏啼霜滿天,江楓漁火對愁眠。姑蘇城外寒山寺,夜半鐘聲到客船。」
がある。 ・秋池:秋の気配が漂う池。
※還似錢唐夜:なおもまた杭州の夜に似ている(それは、)。 ・還:また。なおまた。 ・似:…似ている。 ・錢唐:杭州。
※西樓月出時:杭州の西樓に月が出た時(の風情に似ている)。 ・西樓:杭州の西樓。また、西よりにある建物。ややもの寂しげな風情や惜別の情を喚起する語。「西樓」は前出「秋池」「落」によくマッチする語。白居易の『西樓喜雪命宴』の「西樓」は蘇州。李Uの『烏夜啼』「無言獨上西樓,月如鈎。寂寞梧桐深院 鎖C秋。 剪不斷,理還亂,是離愁。」と同じ。 朱敦儒の『相見歡』「金陵城上西樓,倚清秋,萬里夕陽垂地、大江流。 中原亂,簪纓散,幾時收?試倩悲風吹涙、過揚州。」
、王昌齢『少年行』「走馬遠相尋,西樓下夕陰。結交期一劍,留意贈千金。高閣歌聲遠,重門柳色深。夜闌須盡飲,莫負百年心。」
とある。 ・月出時:夕刻。実際上、夕刻に東に昇るのは満月の時であるが…。
◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「池時」で、平水韻上平四支。次の平仄はこの作品のもの。
○○●●●,
○●●○○。(韻)
○●○○●,
○○●●○。(韻)
2006.5.7 |
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