風散士惜落花　詩詞世界碇豊長の詩詞　来信・投稿

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　これは風散士雅兄の作品で、読み下しも風散士雅兄です。 ******************

惜落花
早曉憐聞檐滴音、芳時天氣半晴陰。落花雨是催花雨、宛似好逑憎愛心。

早暁憐れみ聞く　檐滴の音。
芳時の天気は　晴陰を半ばとす。
落花の雨は是　催花の雨、
宛ら似たり好逑　憎愛の心。

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・檐滴：	あまだれ。
・好逑：	よい配偶者（詩経・関雎より）。計らずも今年度NHKラジオ放送“漢詩をよむ”は詩経より始まった。

※　転句は頼鴨厓の「春廉雨窓」の転句を借用した。

　　春廉雨窓　　　　頼鴨厓
春自往來人送迎、　　　
愛憎何事別陰晴。　　　
落花雨是催花雨、　　　
一様檐聲前後情。　　　

春は自ずから往来し　人は送迎す、
愛憎何事ぞ　陰晴を別つ。
落花の雨は是　催花の雨、
一様の檐声　前後の情。

＜蛇足＞	非才わたくしが、この「春廉雨窓」に出会ったのは今から３０年も前で、吟詠を習っていた当時のことである。作者の名前にも余り関心がなかったが、含蓄のある頼鴨厓のこの詩は忘れることはなかった。作詩を志すようになって、この転句を用いて一詩を、と、考えてみるものの、この絶唱には遙か遠くで仰ぐのみであった。爾来２０余年、先日の暁雨を聞きながら最近の世情にヒントを得て作ったのが上記の詩であるが、詩才の違いをまざまざと感じる。ちなみに鴨厓は非才が尊敬する、頼山陽の第三子で、安政の大獄により吉田松陰らとともに惜しくも３５歳で刑死した。