落日松陵道, 堤長欲抱城。 塔盤湖勢動, 橋引月痕生。 市靜人逃賦, 江寬客避兵。 廿年交舊散, 把酒歎浮名。 |
呉江 を過ぎて 感 有り
落日松陵 の道,
堤 長くして 城を抱 かんと欲す。
塔盤 かまりて 湖勢 動き,
橋引 きて 月痕 生ず。
市 靜かにして 人賦 を逃れ,
江寬 くして客 兵を避く。
廿年 交舊 散じ,
酒を把 り浮名 を歎 ず。
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◎ 私感訳註:
※呉偉業:明末清初の人。梅村と号する。新王朝である清に出仕するも、すぐに退隠する。
※過呉江有感:呉江(ごかう、現:ごこう)を過ぎて 心に思うことが有って(の詩)。 ・呉江:地名。呉江県。現・江蘇省の太湖東岸にある町。その東の方は、現在は上海となる。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)59-60ページ「両浙西路 両浙東路 江南東路」にある。 ・有感:心に思うことが有る。
※落日松陵道:太陽が松陵(呉江の地)に沈もうとして。 ・落日:沈もうとする太陽。夕日。いりひ。 ・松陵:地名。前出・呉江県の別称。なお、川の名称としては、呉淞江の別称として。ここは、前者の意。
※堤長欲抱城:堤は長くて、(恰も)城を抱くかのようである。
※塔盤湖勢動:(寺院の)塔は、曲がりくねって渦を巻くかのようで、湖の勢いは、動きだそうとしているかのようであり。 ・盤:〔ばん/はん;pan2○〕めぐる。渦を巻く。曲がりくねる。わだかまる。=蟠。
※橋引月痕生:橋は月を引き摺って、月影(つきかげ)が現れた。 ・橋…:呉江のあたりは運河と河が十字に交わっている。 ・月痕:月影。月のあと。
※市静人逃賦:街は静まりかえり、人は貢ぎ物から逃れようとして。 ・賦:〔ふ;fu4●〕みつぎ。貢ぎ物。年貢。租税。
※江寛客避兵:川は寛(ひろ)いので(それを頼りに)、人は兵士(の挑撥)から逃れようとしている。 ・寛:ひろい。 ・客:旅人。 ・兵:兵士。
※廿年交旧散:二十年年来の古くからの交わりである友もちりぢりになってしまい。 ・廿年:(にふ(現:にゅう)ねん)二十年。 ・廿:〔にふ(現:にゅう);nian4●〕20。 ・交旧:古くからの交わり。旧友。
※把酒歎浮名:酒を(手に)とって、実際には何もできない自分の評判や名声の儚(はか)さに歎いている。 ・把酒:酒を(手に)とる。 ・浮名:実際の値打ちに過ぎた評判や名声。
◎ 構成について
2022.1.31 2. 2 2. 3 2. 4 2. 5 2. 8 2.11 2.12完 2.17補 |
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