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亂後 | |
明・辛愿 |
兵去人歸日,
花開雪霽天。
川原荒宿草,
墟落動新煙。
困鼠鳴虚壁,
飢烏啄廢田。
似聞人語亂,
縣吏已催錢。
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亂の後
兵 去り 人歸 りし日,
花 開き 雪霽 るるの天。
川原 宿草 荒れ,
墟落 新煙 動く。
困鼠 虚壁 に鳴き,
飢烏 廢田に啄 む。
人語 の亂るるを 聞くに似たるは,
縣吏 已 に錢を催 す。
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◎ 私感註釈
※辛愿:〔しんげん;Xin1 Yuan4〕金代の詩人。
※乱後:金末の動乱を描いたものに金・元好問の『初挈家還讀書山雜詩』「并州一別三千里,滄海橫流二十年。休道不蒙稽古力,幾家兒女得安全。」や、『岐陽』「百二關河草不橫,十年戎馬暗秦京。岐陽西望無來信,隴水東流聞哭聲。野蔓有情縈戰骨,殘陽何意照空城。從誰細向蒼蒼問,爭遣蚩尤作五兵。」
がある。
※兵去人帰日:(モンゴルの)兵士が去って、里人が自宅に戻ってきた日(は)。 ・兵去:ここでは、モンゴルの兵士が去ることを謂う。 ・人帰:ここでは、里人が自宅に戻ってくることを謂う。
※花開雪霽天:花が咲いて、雪がやんで晴れあがった天候である。 ・雪霽:雪がやんで晴れる。 ・霽:〔せい;ji4●〕(雪や雨がやんで)晴れる。(雨が)あがる。
※川原荒宿草:平原には、前からの雑草が地を覆って。 ・川原:〔せんげん;chuan1yuan2○○〕平原。広野。広々として人影のないところ。平川広野。(平野の中に)川が一筋流れている平野。川辺の平原。一川。 *(詩)詞では川の有無に関わらず、「川原」と表現することが多い。王維の『臨高臺送黎拾遺』に「相送臨高臺,川原杳何極。日暮飛鳥還,行人去不息。」とあり、盛唐・杜甫の『秦州雜詩二十首』其三に「鼓角縁邊郡,川原欲夜時。秋聽殷地發,風散入雲悲。抱葉寒蝉靜,歸來獨鳥遲。萬方聲一概,吾道竟何之。」
とあり、南宋・張孝祥の『六州歌頭』に「長淮望斷,關塞莽然平。征塵暗,霜風勁,悄邊聲。黯銷凝。追想當年事,殆天數,非人力。洙泗上,絃歌地,亦羶腥。隔水氈鄕,落日牛羊下,區脱縱橫。看名王宵獵,騎火一川明,笳鼓悲鳴,遣人驚。」
とあり、賀鋳の『青玉案(凌波不過横塘路)』の「若問閑情都幾許?一川煙草,滿城風絮,梅子黄時雨」(一川煙草:一面に茂れる草)とあり、呂本中の『滿江紅』東里先生に「東里先生,家何在、山陰溪曲。對一川平野,數間茅屋」とある。「かわら」ではない。また、川のみなもと。川源。ここは、前者の意。 ・川:はら。原(はら)。広野。 ・荒:雑草が地を覆う。あれはてる。 ・宿草:地中で冬を越した根や地下茎から翌年新しく茎や葉の生え出るもの。前からの草。
※墟落動新煙:村里には、新たにおこった生活の煙が立ち始めた。 ・墟落:〔きょらく;xu1luo4○●〕むらざと。村落。 ・新煙:新たにおこった生活の煙。「煙」は人煙の意で、人家から立ち上る煙。人の住む気配。
※困鼠鳴虚壁:くるしんでいるネズミは、人のいない部屋で鳴き。 ・困:くるしむ。こまる。とぼしい。まずしい。 ・虚壁:人のいない部屋。=虚室。また、木もなにも生えていない絶壁。ここは、前者の意。
※飢烏啄廃田:うえたカラスが、廃(すた)れた田畑をついばんでいる。 ・飢:〔き;ji1○〕腹がへる。うえる。 ・啄:〔たく;zhuo2●〕(くちばしで)つつく。ついばむ。 ・廃:すたれた。用いない。こわれた。
※似聞人語乱:人の声がざわざわとしているようだが。 ・似聞:…のようだが。 ・人語乱:人の声が入り乱れる。
※県吏已催銭:地方の下級役人が、はやもう税金の督促をしている。 ・県吏:県(地方)の下級役人。「県」は各時代、郡や国、府州の下位にある下級行政単位。日本でのイメージと異なる。 ・已:はや。すでに。 ・催銭:(税として)お金を出す催促をしている。
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◎ 構成について
韻式は、「AAAA」。韻脚は「天煙田錢」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。
○●○○●,
○○●●○。(韻)
○○○●●,
○●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
●●●○○。(韻)
2012. 8. 9(音楽) 8.10 8.11完 8.12 2021.11.30補 |
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