huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye





                     
  精衞 

                                    
顧炎武
                        
萬事有不平,
爾何空自苦。
長將一寸身,
銜木到終古。
我願平東海,
身沈心不改。
大海無平期,
我心無絶時。
嗚呼君不見西山銜木衆鳥多,
鵲來燕去自成窠。




    **********************
             精衞せいゑい

萬事  平らかならざること 有り,
なんぢ なんすれぞ  むなしくみづから苦む。
ちゃうじて 一寸いっすんの身をって,
木をくはへて  終古しゅうこに到る。
我が願ひは  東海をたひらけくすること,
は 沈むとも  心は 改まらず。
大海は  平らかなるとき 無からんも,
我が心も  ゆる時 無し。
嗚呼あゝ 君 見ずや  西山に 木をくはへたる  衆鳥 多く,
かささぎ 來り 燕 去りて  おのづを成す。

             ******************


◎ 私感訳註:

※顧炎武:明末清初の儒学者。反清復明運動に携わる。名は絳。(字は忠清)。清朝になっての字は寧人。号は亭林。江蘇省崑山の人。1613年(萬暦四十一年)〜1682年(康熙二十一年)。清朝考証学の基礎を確立し、浙西学派の祖と称される。黄宗羲、王夫之とともに清初の三大師と呼ばれる。

※精衛:〔せいゑい;jing1wei4○●〕西山の木石を銜えて運び、東海を埋めようと尽きることなく努力し続けている鳥。本来は、發鳩之山にいるカラスのような想像上の鳥のことで、模様のある頭に白い嘴、赤い足で、啼き声は自分で自分の名を呼んでいるような鳥のことである。精衛鳥は、実は炎帝の娘の女娃の魂で、東海で溺れ死んだ女娃は、その魂が精衛鳥となって、ずっと西山の木石を銜えて運び、東海を埋めようとし続けているという。決意を固め、犠牲を恐れず、万難を排して、活動し続けること。或いは、及ばないことを企て、徒労に終わることを謂う。『山海經』(せんがいきゃう;Shan1hai3jing1)に基づく“精衛填海”(深いあだをむくいること。困難を恐れず最後まで頑張って目的を達すること。或いは、及ばないことを企て、徒労に終わること)の神話。このことは、『山海經・北山經』に「發鳩之山,其上多拓木。有鳥焉,其状如烏,文首,白喙,赤足,名曰精衛,其名自叫;是炎帝之少女名曰女娃。女娃游於東海,溺而不返,故爲牙ハ,常銜西山之木以堙於東海。」『述異記』にある。愚公、呉剛の類である。炎帝そのものは漢民族の象徴的存在で、秋瑾も「寶劍歌」で「炎帝世系傷中絶,茫茫國恨何時雪?」と歌い上げている。秋瑾に『精衛石』「余也處此過渡時代,趁文明一線之曙光,擺脱範圍。稍具智識,毎痛我女同胞處此K闇之世界,如醉如夢,不識不知,雖有學堂而能來入校者、求學者,寥寥無幾。試問二萬萬之女子,呻吟伏於專制男子之下者不知凡幾。」という作品がある。蛇足になるが、民国の汪兆銘の号、精衛も、日中両国の間に横たわる溝(東海)を埋めようと努力する意から来ていようか。後世、或いは黄遵憲がその意を換えて『贈梁任父同年』「寸寸山河寸寸金,離分裂力誰任。杜鵑再拜憂天涙,精衞無窮填海心。」と使う。東海を填めようと志した者に汪精衛もいる。

※萬事有不平:あらゆることに、平らかでなく不満に思うことがあり。 ・萬事:あらゆること。すべてのこと。 ・不平:心が穏やかでないこと。不満に思うこと。また、後出の東海を填(う)めることともかけている。

※爾何空自苦:あなたはどうして、意味もなく自分を苦しめているのか。 ・爾:なんじ。漢民族の象徴である炎帝の娘・女娃の魂の精衛鳥を指す。 ・何:なぜ。 ・空:いたずらに。意味もなく。むなしく。 ・自:自分自身。みずから。 ・苦:くるしむ。

※長將一寸身:(精衛鳥は)大きく育った一寸の身体をもって。 ・長:〔ちゃう;zhang3●〕長ずる。大きく育つ。動詞。 ・將:〔しゃう;jiang1○〕…をもって。〔將+名詞〕で古漢語の「以」と似た働きがある。 ・一寸:わずかな。=3.11cm。=3.2cm(清)。李C照の『點絳唇』に「寂寞深閨,柔腸一寸愁千縷。惜春春去,幾點催花雨。倚遍欄干,只是無情緒。人何處,連天衰草,望斷歸來路。」とあり、宋の朱熹は、『偶成詩』で、「少年易老學難成,一寸光陰不可輕。」と、詠っている。後世、前出・黄遵憲『贈梁任父同年』「
寸寸山河寸寸金,離分裂力誰任。杜鵑再拜憂天涙,精衞無窮填海心。」と使う。 ・身:身体。肉体。

※銜木到終古:木を(嘴(くちばし)で)銜(くわ)えて、永遠に続けている。 *中国版「シジフォスの神話」とも謂える「呉剛伐桂」と同様に、永遠に尽きることのない労働をいう。 ・銜木:〔かんぼく;xian2mu4○●〕木を嘴(くちばし)で銜(くわ)える。『山海經・北山經』に「故爲精衞,常
西山之石以堙於東海。」とある部分を指す。 ・銜:〔かん;xian2○〕くわえる。ふくむ。 ・終古:永遠に。永久に。

※我願平東海:わたしの願いは(精衛鳥と同様に)東海を平らかにしたいということで。 ・我願:わたしは……を願う。 ・平:たいらかにする。動詞。 ・東海:中国の東にある海。東シナ海。

※身沈心不改:(たとえ、この)身が(東海に)沈んだとしても、志は変わらない。 *「我願平東海,身沈心不改」わたしの願いは東海を平らかにすることであって、この身が(たとえ海に)沈んでも、その志は変わらない。 ・沈:しずむ。 ・心:志。 ・不改:変わらない。

※大海無平期:大海は、平らかになる時はないが。 ・平:たいらかになる。形容詞。 ・期:とき。時期。

※我心無絶時:わたしの志も、絶えて停まる、という時はない。 ・絶時:白居易の『長恨歌』の最終部分に「臨別殷勤重寄詞,詞中有誓兩心知。七月七日長生殿,夜半無人私語時。在天願作比翼鳥,在地願爲連理枝。天長地久有時盡,此恨綿綿
無絶期。(此恨綿綿無盡時)」とある。

※嗚呼君不見:ああ。あなたも御覧になったでしょう。 ・嗚呼:〔をこ;wu1hu1○○〕ああ。感歎、歎息の時出す声。 ・君不見:あなた、ご覧なさい。詩をみている人(聞いている人)に対する呼びかけ。樂府体に使われる。「君不見」「君不聞」がある。使用法は、七言が主となる詩では「君不見□□□□□□□」とする場合が多いものの、「君不見…」の後(青字部分)は必ずしも一定でない。杜甫の『兵車行』「君不見青海頭,古來白骨無人收。新鬼煩冤舊鬼哭,天陰雨濕聲啾啾。」、岑参に「君不聞胡笳聲最悲,紫髯濠瘡モ人吹。」、李白「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復回。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如絲暮成雪。」 顧況「君不見古來燒水銀,變作北山上塵。藕絲挂身在虚空,欲落不落愁殺人。」李白の『將進酒』「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復迴。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如青絲暮成雪。人生得意須盡歡,莫使金樽空對月。」 、白居易『新豐折臂翁』「君不聞開元宰相宋開府,不賞邊功防黷武。又不聞天寶宰相楊國忠,欲求恩幸立邊功。邊功未立生人怨,請問新豐折臂翁。」などがある。

※西山銜木衆鳥多:西山に木を銜(くわ)えた群れなす鳥が多くいて。 ・西山:大陸の西の方にある山。⇔東海。精衛がそこの木や石を東海に運んでいる。 ・衆鳥:多くの鳥。群れなす鳥。孤高の精衛鳥に対して使われる。ここでは、明朝から清朝になっても気にしない俗人どもを指している。李白の『独坐敬亭山』に「
衆鳥高飛盡,孤雲獨去閨B相看兩不厭,只有敬亭山。」とある。

※鵲來燕去自成窠:(精衛鳥のような孤高で意志を遂げるという鳥ではなく)カササギやツバメなど(の通俗で生活力の逞しい鳥=俗人)が行ったり来たりしてせわしなく、自分で巣を作って(繁栄して)いるのを。 ・鵲來燕去:カササギやツバメなどが行ったり来たりしてせわしなく。蛇足になるが、この「鵲來燕去」を「鵲燕來去」とすれば意味がやや変わり、「鵲と燕とが行き来している」の意になる。 ・鵲:〔じゃく;que4●〕カササギ。ここでの鵲や燕は、精衛鳥に対して使われ、俗人どもの意の。 ・來…去…:行ったり来たりして。 ・燕:〔えん;yan4●〕ツバメ。 ・自:おのずから。 ・窠:〔くゎ;ke1○〕(穴の中にある鳥獣の)巣。蛇足になるが、「巣」〔さう;chao2〕は木の上にある獣や鳥のすみか。





◎ 構成について

韻式は「aabbCCDD」。韻脚は「苦古 海改 期時 多窠」で、平水韻上声七、上声十賄、上平四支、下平五歌。次の平仄はこの作品のもの。

●●●●○,
●○◎●●。(a韻)
○○●●○,
○●●○●。(a韻)
●●○○●,(b韻)
○○○●●。(b韻)
●●○○○,(C韻)
●○○●○。(C韻)
○○ ○●● ○○○●●●○,(D韻)
●○●●●○○。(D韻)

2007.11.25
     11.26
     11.27
     11.28

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