秋瑾詩詞　弾詞　精衛石　碇豊長の詩詞　漢詩qiujin

◎私感注釈

※弾詞：琵琶や月琴などを伴奏に歌う、ひき語りのことで、ここでは、その台本。我が国では琵琶法師の奏でる『平家物語』に近い。近現代では、浪曲に近いとも云えるが、その場合はより京劇の唱・念に近いか。『精衛石』から、秋瑾の考えや詩歌について、よく理解できる部分を抜粋していく。
※精衞石：決意を固め、犠牲を恐れず、万難を排して、活動し続けること。『山海經』（せんがいきゃう；shan1hai3jing1）に基づく“精衛填海”（深いあだをむくいること。困難を恐れず最後まで頑張って目的を達すること。）の神話。精衞とは、發鳩之山にいるカラスのような鳥のことで、模様のある頭に白い嘴、赤い足で、啼き声は自分で自分の名を呼んでいるような鳥のことである。しかし、実は炎帝

の娘の女娃の魂で、東海で溺れ死んだ女娃は、その魂が精衛鳥となって、ずっと西山の木石を銜えて運び、東海を埋めようとし続けているという。このことは、『山海經・北山經』に「發鳩之山，其上多拓木。有鳥焉，其状如烏，文首，白喙，赤足，名曰精衛，其名自叫；是炎帝之少女名曰女娃。女娃游於東海，溺而不返，故爲精衞，常銜西山之木石以堙於東海。」『述異記』にある。愚公、呉剛の類である。炎帝そのものは漢民族の象徴的存在で秋瑾も「寶劍歌」で「炎帝世系傷中絶，茫茫國恨何時雪？」

と歌い上げている。黄遵憲の『贈梁任父同年』では「寸寸山河寸寸金，

離分裂力誰任。杜鵑再拜憂天涙，精衞無窮填海心。」

と詠われている。
※余：わたし。
※也：語気の停頓を表す。〔上古漢語〕語勢を強めるための助辞。冒頭の句を浮きだたせる。呼びかけに用いる。〔白話〕また。…もまた。ここは、文言系統の語気の停頓を表す働き。
※處此この…を処するに。この（時代）を過ごすのに。　・「處」は動詞。身を置く。日を過ごす。生活する。世を送る。
※過渡時代：過渡期の時代。移行している時代。
※趁：乗る。つけこむ。利用する。…に乗じて。
※文明：西洋の近代文明をいう。
※一線：一縷の、かすかな、わずかな。第一線の。前者の意。
※曙光：あけぼのの光。黎明。
※文明一線之曙光：（西洋の近代）文明のあけぼのの光。
※擺脱：抜ける。抜け出す。離脱する。振り切る。
※範圍：範囲。ここでは、古くから決められてきた世の中の枠組み。因習、因襲を謂う。
※稍具：いささか…をそなえている。少しは…を持っている。
※智識：知識。
※毎痛：いつも…を辛く思っている。いつも…を痛んでいる。
※我女同胞：我が漢民族の女性。
※黑闇之世界：暗黒世界。未解放状態の女性の社会的地位を謂う。
※如醉：酔っているようで。
※如夢：夢のようで。
※不識：知らない。知識がない。
※不知：分からない。
※雖有：…ではあるが。…とはいうものの。
※學堂：旧時の学校。
※而：…て、
※能來：来ることができる。
※入校者、求學者：入学する者や学問を究めようとする者。
※寥寥：乏しい。少ない。
※無幾：いくばくも無い。はなはだ少ない。
※試問：お訊ねするが。試みに問うが。
※二萬萬：二億。２００００００００。白話では、「億」を“万万”と言う。
※女子：婦人。女性・
※呻吟：うめく。うなる。呻吟している。
※

伏：ちぢこまってふせる。
※於：…に。
※專制男子之下者：専制的な男の許では。専制的な男の許に居る者は。
※不知：分からない。
※凡幾：いくばく。どれ程になるか。
※不知凡幾：どれ程かわからない。