詠菊 | |
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唐 白居易 |
一夜新霜著瓦輕,
芭蕉新折敗荷傾。
耐寒唯有東籬菊,
金粟初開曉更清。
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菊を詠ず
一夜 新霜瓦 に著 きて輕 く,
芭蕉 は 新たに折 れて敗荷 は傾く。
寒に耐ふるは唯 だ東籬 の菊のみに有りて,
金粟 初めて開きて曉 更に清し。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上積極的な活動を展開する。
※詠菊:(寒さに耐える)菊を詠む。菊の花を詠う。唐末の叛乱の指導者・黄巣にも『詠菊』がある。唐末・黄巣『詠菊』に「待到秋來九月八,我花開後百花殺。衝天香陣透長安,滿城盡帶黄金甲。」とある。この詩、『全唐詩』にはない。
※一夜新霜著瓦軽:一夜で新たな霜(しも)が瓦(かわら)に降りて軽(かろ)やかそうで。 *寒い季節の到来となったことをいう。 ・著:つく。あらわれる。
※芭蕉新折敗荷傾:芭蕉(ばしょう)は、(昨夜)新たに折れて、くずれたハスは傾いている。 *暑い季節に生き生きとしていた植物は廃れてきたことを謂う。 ・芭蕉:バショウ。多年生草本植物。その一品種の果実がバナナ。「芭蕉」や後出・「荷」は夏をイメージする植物である。 ・敗:花がしぼむ。くさる。くずれる。やぶれる。 ・荷:ハス。
※耐寒唯有東籬菊:寒さに強いのはただ、東の籬(まがき)の菊の花だけ有って。 ・耐寒:寒さに強い。寒さに耐えられる。 ・唯有:ただ…だけがある。=惟有。曹操の『短歌行』に「對酒當歌,人生幾何。譬如朝露,去日苦多。慨當以慷,憂思難忘。何以解憂,唯有杜康。」や、唐の劉希夷『白頭吟(代悲白頭翁)』に「洛陽城東桃李花,飛來飛去落誰家。洛陽女兒惜顏色,行逢落花長歎息。今年花落顏色改,明年花開復誰在。已見松柏摧爲薪,更聞桑田變成海。古人無復洛城東,今人還對落花風。年年歳歳花相似,歳歳年年人不同。寄言全盛紅顏子,應憐半死白頭翁。此翁白頭眞可憐,伊昔紅顏美少年。公子王孫芳樹下,C歌妙舞落花前。光祿池臺開錦繍,將軍樓閣畫~仙。一朝臥病無人識,三春行樂在誰邊。宛轉蛾眉能幾時,須臾鶴髮亂如絲。但看古來歌舞地,惟有黄昏鳥雀悲。」とあり、李白の『將進酒』に「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復回。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如青絲暮成雪。人生得意須盡歡,莫使金尊空對月。天生我材必有用,千金散盡還復來。烹羊宰牛且爲樂,會須一飮三百杯。岑夫子,丹丘生。將進酒,杯莫停。與君歌一曲,請君爲我傾耳聽。鐘鼓饌玉不足貴,但願長醉不用醒。古來聖賢皆寂寞,惟有飮者留其名。陳王昔時宴平樂,斗酒十千恣歡謔。主人何爲言少錢,徑須沽取對君酌。五花馬,千金裘。呼兒將出換美酒,與爾同銷萬古愁。」とあり、劉長卿は『尋盛禪師蘭若』で「秋草黄花覆古阡,隔林何處起人煙。山僧獨在山中老,唯有寒松見少年。」とあり、中唐・白居易の『闍瘁xに「自從苦學空門法,銷盡平生種種心。唯有詩魔降未得,毎逢風月一闍瘁B」とあり、後世、北宋・蘇軾の『江城子』乙卯正月二十日夜記夢には「十年生死兩茫茫,不思量。自難忘。千里孤墳,無處話淒涼。縱使相逢應不識,塵滿面,鬢如霜。 夜來幽夢忽還ク。小軒窗,正梳妝。相顧無言,惟有涙千行。料得年年腸斷處,明月夜,短松岡。」とあり、司馬光『居洛初夏作』「四月清和雨乍晴,南山當戸轉分明。更無柳絮因風起,惟有葵花向日傾。」とある。 ・東籬菊:東の籬(まがき)の菊の花。東晋・陶淵明の詩に基づく:『飮酒 其五』の「結廬在人境,而無車馬喧。問君何能爾,心遠地自偏。采菊東籬下,悠然見南山。山氣日夕佳,飛鳥相與還。此中有眞意,欲辨已忘言。」とある。両宋・李清照の『鷓鴣天』に「寒日蕭蕭上瑣窗,梧桐應恨夜來霜。酒闌更喜團茶苦,夢斷偏宜瑞腦香。 秋已盡,日猶長,仲宣懷遠更淒涼。不如隨分尊前醉,莫負東籬菊蕊黄。」とあり、『酔花陰』でも「薄霧濃雲愁永晝,瑞腦消金獣。佳節又重陽,玉枕紗廚,半夜涼初透。 東籬把酒黄昏後,有暗香盈袖。莫道不消魂,簾捲西風,人比黄花痩。」とある。
※金粟初開暁更清:菊の花は初めて開いて、早朝は一層清々(すがすが)しい。 ・金粟:菊の花の形容。また、金銭と米穀。また、桂の花(モクセイ)のの別名。また、金粟花。また、仏の名。ここは、前者一の意。中唐・李端の『聽箏』に「鳴箏金粟柱,素手玉房前。欲得周郎顧,時時誤拂弦。」とある。 ・暁:あかつき。 ・更:一層。さらに。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「軽傾清」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
●○○●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2016.10.3 10.5 10.6 |
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