今回はスー・スカラードの新作10点を中心に、おなじみのイギリスの作家グウェン・ラヴェラ、イヴォンヌ・スカーゴン、ミリアム・マグレガー、コーディリア・ジョーンズの作品をテーマに合わせて選びました。グウェン・ラヴェラのカレンダーは今年は早々と届き、雨田グッズも健在です。日本の作家たちも柄澤 齊、河内利衣、牧野妙子、鈴木康生、宮崎敬介と、充実のメンバーです。
スーの新作は『ラークライズ――村の生活』(Folio Society出版)の新版のための制作です。これはフローラ・トンプソンによる自伝的な小説3部作(1945)で、オックスフォードシャーで過ごした少女時代から青春時代の回想です。19世紀末のラークライズの村は貧しかったけれど、人々の生活は自然と密着していて、働けばそれだけ実りがあり、心豊かで喜びにあふれていました。けれども、農作業は機械化され、村にはじわじわと都市化の波が押し寄せ、やがて村の生活は消えゆく運命にさらされます。若者たちは戦争に駆り出されて村を去り、帰ることはありませんでした。フローラ・トンプソンが40年の月日を経て失われた古きよき昔をいきいきと再現したこの物語は、農村の生活の貴重な記録であり、社会史として高く評価されると同時に、現代人の郷愁をかきたてます。イギリスでは今でもたいへん人気が高く、舞台劇化されて、毎年かならずどこかで上演されるとか。2007年にはBBCがドラマ化して、大好評を博し、2010年にもシリーズが続くとのことです。
スーの版画によるこの本は、版画展会場でごらんいただけます。予約も受け付けます。
なお版画展では、一部の版画や〈ありす〉出版の本など、思い切った特別価格でご提供します。どうぞごらんください。 |