■略歴
イギリスの画家、木口木版画家。ケンブリッジ生まれ。10歳で素描を始め、レンブラントを崇拝し、ビュイック(18世紀末に木口木版画を確立したイギリスの版画家)に憧れた。両親の反対を押し切ってスレード美術学校に入学、独学で木口木版画を始める。パリのソルボンヌ大学に留学し、フランス人画家ジャック・ラヴェラと結婚、一時はフランスに住むが、夫の死後、故郷のケンブリッジに戻り、物語の挿絵(『ダフニスとクロエ』1933年など)やケンブリッジとその周辺を主題にした独立の木口木版画を数多く制作した。独自の境地をひらいて、当時沈滞しかけていた木口木版画に新しい息吹を吹き込んだ。象徴主義的な光と影の表現を木口木版画で試みた先駆者であった。20世紀前半を代表する作家の一人である。
グウェン・ラヴェラは、『思い出のケンブリッジ――ダーウィン家の子どもたち』の著者としても知られている。『種の起源』の著者チャールズ・ダーウィンの孫娘として生まれ、ケンブリッジ大学教授の娘として育ったグウェンの回想記で、19世紀末期から20世紀初頭にかけてのケンブリッジの知識人や上流階級の私的な生活やものの考え方を、エリートの伝統の内側から、しかしその権威とは無関係な子どもの視点から、多数のペン画の挿絵とともに、いきいきと描き出している。(山内玲子訳、秀文インターナショナル。訳者はこの本に出会って木口木版画を知り、やがて〈ありす〉を通して、イギリスの木口木版画を日本に紹介する仕事を始めることとなる。)
グウェンの作品はその多くが1920年代、1930年代の制作のため、これまで入手は難しかったが、最近状況がかわり、ようやく展観できることになったことは、大きな喜びである。 |