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UK/USA 2005 85 Min. 劇映画
声と姿の出演
Peter Sallis
(Wallace / Hutch - 町の発明家、畑の害虫駆除業者、ハッチはウサギ)
Ralph Fiennes
(Lord Victor Quartermaine - 俗物貴族、レディー・カンパヌラに気がある)
Helena Bonham Carter
(Lady Campanula Tottington - 年1回行われる野菜コンテストの司会)
Peter Kay
(Albert Mackintosh - 警官)
Nicholas Smith
(Clement Hedges - 牧師)
Dicken Ashworth (Mr. Mulch - 町民)
Liz Smith
(Mrs. Mulch - 町民)
John Thomson
(Windfall - 町民)
Mark Gatiss
(Blight - 町民)
Vincent Ebrahim (Caliche - 町民)
Geraldine McEwan (Thripp - 町民)
Edward Kelsey (Growbag - ウォレスの近所に住む町の長老)
Robert Horvath (Dibber - 町民)
Pete Atkin (Crock - 町民)
Noni Lewis (Girdling - 町民)
Ben Whitehead (Leaching - 町民)
Christopher Fairbank (その他の声)
James Mather (その他の声)
William Vanderpuye (その他の声)
Nigel Pilkington (その他の声)
姿の出演
Gromit
(ウォレスの忠犬、ビーグル)
Philip
(ビクターの忠犬)
見た時期:2010年頃
★ 長編は止めておけばよかった
3作の中篇、10作の短編を作った後、ウォレスとグロミットを主人公に初めての長編に挑みました。ニック・パークはマルチ・タレントではなく、専門職における天才。最初の3作では主人公たちのキャラクターも調和が取れており、物語に方向と広がりがあり、パークの天賦の才能が最高の形で生かされています。
パークが長編に大きな興味を示したことは無く、私の勝手な想像では、同じ予算と時間を貰って改めて中篇を3本撮る契約の方が本人も喜んだのではないかと思えるぐらいです。
しかし周囲は大喜びだったらしく、この作品はアカデミー賞で長編アニメのオスカーを取っていますし、英国を代表するスターが声で出演しています。パークは仕事が早い人ではないのですが、周囲は5年以上忍耐強く協力しています。
★ ストーリーがわざとらしい
☆ 長過ぎる
最初の3本のストーリーは全てをパークが思いついたわけではなく、合議制の部分もあったのですが、出されたアイディアが良く、メリハリもあり、コンパクトにまとまっていました。映画全体に対する愛情にあふれ、オマージュがたくさん見られます。
そういうスタイルのパークに90分近い時間を与え、1つのストーリーで全編を通すことが元から無理だったのではないかと思います。ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!のストーリーはパークでない人たちが合議制で作っています。
無論この人たちはパークの最初の3作を良く学習しており、加えてパークと趣味の合いそうな映画や文学の洒落やオマージュをたくさん取り入れています。そうやって元々の熱狂的なファンの期待に応えつつ、初めて見た人には中篇3作で見逃したシーンを加えてあるので、そこで笑いが取れるようになっています。
ただ、最初から見ている者としては同じギャグを使いまわしているように見え、そのシーンを長くして意味も無く間を繋いでいるようにも見え、二番煎じの印象がぬぐえません。やはりパークの独壇場は30分以内の中篇と思えます。日本人はしつこく全部出すのではなく、チラッと出して残りを想像させることを評価する国民ですが、その意味で、パークは日本人の趣味に合う中篇を作っていました。
☆ 下品な貴族
もう1つこの作品で目に付くのは貴族の下品さ。ウォレスとグルミット、危機一髪!ではウォレスは町の毛糸店主に恋をしてしまいますが、この女性は淑女という印象を与えます。ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!では地位から言うと淑女中の淑女と言えるレディー。
注: レディーというのはただその人が上品な振る舞いをするから言われるのではなく、貴族の敬称や称号。女性があるレベルまでの貴族の配偶者や子供だとレディーと呼ばれます。
ところが本物の貴族の役のレディー・カンパヌラは、髪型から顔、立ち居振る舞いまであまり上品ではありません。また彼女に求婚するクォーターメイン卿も下品な印象を与える上、これ以上無いぐらいの俗物。うがった見方をすると、ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!は英国王室への宣戦布告とも取れるぐら貴族を悪く描いています。
皇室と違い、欧州の王室は武力を使った権力争いの末勝ち残った者が王という地位についているので、一般の人の中には中世の頃から王族に反感を持つ人がいます。また王族という地位に対しては反感を抱かなくても、自分たちの王でない人が国の王として中央に座っていることに反感を抱く人もいます(地元の人が王の地位につくのではなく、外国など他所の王室から血縁者を送って来て王の地位につけるという例が欧州には多いです)。
パークは最初にご紹介したようにエリザベス女王から勲章を貰っています。そして特別政治的な人物にも見えないので、パーク自身が政治的な立場を映画に反映することは考えにくいですが、シナリオとしては貴族が俗物に見えるという方向です。恐らくは脚本を考え出した人たちの意思だったのでしょう。
☆ 下手を打った怪奇映画
ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!のベースになっているのは狼男の伝説で、狼の代わりにウサギに変身することになっています。
恐らくはこれまで SF や犯罪スリラーに取り組んだので、ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!で怪奇映画に進出しようと考えたのでしょう。その考えは良いと思いますが、私なら30分程度の中篇にして、ボリス・カーロフ(英)、クリストファー・リー(英)、ピーター・カッシング(英)、ロン・チェイニー(米)、ベラ・ルゴシ(ハンガリー、後米国籍)、ビンセント・プライス(米)の有名な作品のオマージュだらけにしたいところ。
そういう枠を作った上で1本を狼男、もう1本を吸血鬼、そしてさらに別な1本をフランケンシュタイン特集にしたら、楽しかっただろうなあと思います。ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!は1つのストーリーに90分近い枠をもらった結果、大味で間延びがした感じがします。
注: 例えばファンタが独自に作らせたフェスティバルのトレイラーは1分以内ですが、こういったモンスター、怪人が大集合して楽しいドラマを作っています。アードマンの後継者かと思えるほどすばらしい出来です。パークもあの時(企画は2005年より前)その方向を選べば良かったのにと思います。
それでもまあ、個々のシーンには部分的に熱意が感じられます。私がいいなあと思ったのはグロミットの温室、レディー・カンパヌラの大温室、ウォレスとグロミットが仕事に使っている車など。
ただ、グロミットの育てている野菜に対する愛情の表現はちょっと行き過ぎと思いました。グロミットはあっさりと深い気持ちを表現する犬で、べたっとした愛情のタイプではありません。このあたり《英国風、感情を表にあからさまに出さない犬グロミット》というこれまで築いて来たキャラクターから逸脱したように思います。
ウォレスはいつもの通り後先考えずに行動し。グロミットは2、3歩先を見て行動。そして探偵犬らしさなどは中篇3本の伝統を引き継いでいます。
これまでのファンを納得させるためにはある程度前の作品の伝統を引き継がなければなりません。それでいて行き詰まり感を持たせないために新しい分野を開拓しなければなりません。その妥協点を考えかつスピールバーグの契約をこなすには、例えば90分枠でホラー3部作という形が良かったのではと思った次第。
タランティーノとロドリゲスが中は独立しつつ、大枠は一緒に作った作品がありましたが、ああいう風に90分怪奇枠を作って、中に3本というのが私の希望です。
★ とは言うものの一応ストーリーのご紹介 − 良い点を探しつつ
☆ ウォレスとグロミットの生計と村の様子
冒頭おなじみのウォレスとグロミットの住む家の壁が映ります。グロミットはどうやら学位を取った様子。壁に飾ってある写真を見ると時々ウォレスと仲違いもしている様子。
オープニングは上に書いたような著名俳優主演の怪奇映画風。
ドイツと言っても良さそうな古い町並み、深夜、制服警官がパトロールをしています。舌なめずりするような変な音、抗ペストの札のかかっている家。最近のウォレスとグロミットは村で《アンチ・ペスト》(害虫・害動物退治)業をやっています。
注: ペストと聞くと、中世の欧州がどうなったかを知っている人はぎょっとしますが、ここではどうやら一般的に《駆除すべき動物や昆虫》を指してペストと言っているらしく、黒死病と直接は関係無いようです。
ちなみに中世の欧州がペスト(=黒死病)でどういう目に遭ったかと言うと:
・ ポーランド、チェコ、ハンガリーの一部と運良く助かった点のような小さな地域を除き欧州全土がやられた
・ 猛威を振るってから収束するまでに4世紀近くかかった
・ 中世の欧州の人口の4分の1から3分の1の死者が出たと推計されている(約2500万人と考えられている)
・ 同時並行して魔女狩りで大勢の人間が処刑されていたため労働人口激減
最初の2本のエピソードではウォレスとグロミットは小さな町に住んでいるような印象でした。3本目では町の部分は町として栄えていましたが、すぐ近くに羊農場がありました。続く10本の短いエピソードはまた小さな町という印象でしたが、ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!では町らしい町は無く、付近の住民は全て農業。そして町の有力者の貴族が500年前から大邸宅を構えているという、これまでとガラッと変わった設定になっています。それでいてウォレスとグロミットの家の中は以前と似ていて、家ごと田舎に引っ越したのかと訝っている私です。というわけでこのページでは町と呼ばず、村とします。
さて、現在のウォレスとグロミットは窓拭きの仕事を辞めて、付近の農家のために害になる動物駆除の仕事を請け負っています。依頼を受けた農家の畑にガーデンノームのセンサーを置き、駆除すべき動物が侵入して来ると、ウォレスの家で警報が鳴る仕組み。警報が鳴れば深夜でも出動。
注: ガーデンノームというのは《庭の小人》という意味で、元々はゲルマン、ギリシャ系の伝説に始まり、グリムの童話にも登場します。ウォレスとグロミットの他の作品にもチラッと顔を見せています。派手な色の服を着た老人の姿をしたミゼット型小人で、現在では地中に住み、庭を守ってくれる精霊と考えられています。非常に長寿で、家庭を作り、家族と暮らしています。
ドイツで自宅に庭を持っている人の多くが瀬戸物の庭の小人を飾っています。庭に小人を飾る習慣は近年欧州の多くの国で見られます。
この作品全体については批判的な私ですが、村で使われている警報装置には感心しています。
庭に侵入動物が・・・すると、
→ 庭の小人の人形につけたセンサーがキャッチ
→ ウォレスの家に信号が
→ ガスレンジが自動点火(なぜ?どうやって?)
→ やかんから出る湯気でファンの羽が回る
→ その動きが棒に伝達される
→ その棒が2階で眠っているグロミットを突っつく
→ グロミットが目を覚ます
→ 同時にチーズの臭いに釣られ易いウォレスも《チーズ目覚まし》で目を覚ます
→ ウォレスとグロミット出動(の前にしっかり紅茶を飲む)
→ トラックに乗って契約した家に駆けつける
→ かぼちゃを盗もうとしていたウサギを捕獲
という手の込んだ事をします。
ウォレスとグロミットが駆除するのはウサギ。
注1: かぼちゃの大きさに驚かれる日本人が多いと思いますが、少なくともドイツではこんな大きなかぼちゃが売られています。英国もそう遠くないのできっと同じでしょう。
日本のかぼちゃに比べ水分が多く、筋がはっきり分かります。しかし値段が安く、大量に買えます。色々料理する方法があり、一部はケーキにもできます。
注2: 本格的カーマニアの方は出動する車にも是非御注目下さい。
☆ 商売とは言え、ウサギを殺せない駆除士
捕らえたウサギを家に連れ帰り地下牢に放り込むと、グロミットはダスター・シュートから下に捕らえれているウサギに人参を投げ入れます。地下室には恐ろしい数のウサギが・・・。駆除のはずが自宅でウサギを飼っています。
☆ 菜食主義ではなく、ダイエット中のウォレス・・・の秘密の書庫
「夜中にきつい仕事をした、朝食をたっぷり食べたい」と一緒に夜中にきつい仕事をしたグロミットに命じるウォレス。しかしこの日の朝食はダイエット用の菜食。ウォレスは中年太り。
前3作には見られなかった温室が自宅の庭にあります。そこでピーマンやサラダ菜を育てているグロミット。ウォレスはグロミットが朝食に出した野菜だけの食事に感謝しつつ、ウサギのダスター・シュートに放り込んでしまい、グロミットに隠れてチーズを食べようと思います。ウォレスの書棚には各国名産のチーズの専門書が並んでいます。実はその後ろに隠れた棚があり、チーズが隠してあります。
注: このシーンに出て来る専門書は他所でも話題になっています。チーズに引っ掛けた洒落なのですが、有名な文学書や映画をパロティーにしています。
The Hunt For Red Leicester
元ネタはトム・クランシーの小説 The Hunt for Red October / レッド・オクトーバーを追え。
レスターは羊の種類。
Brighton Roquefort
元ネタはグレアム・グリーンの小説 Brighton Rock / ブライトン・ロック。
How Green Was My Cheese
元ネタはリチャード・レウェインの小説 How Green Was My Valley / わが谷は緑なりき。
ジョン・フォードが映画化。
Brie Encounter
元ネタはノエル・カワードの Brief Encounter / 静物画。
デヴィッド・リーンが逢びきとして映画化。
Swiss Cheese Family Robinson
元ネタはヨハン・ダビット・ウィースの児童小説 Der Schweizerische Robinson / The Swiss Family Robinson / スイスのロビンソン。
この作品自体はロビンソン・クルーソーを元に書かれている。
ディスニーがスイスファミリーロビンソンとして映画化。主演は名子役ヘイリー・ミルズのお父さんのジョン・ミルズ。ミルズはノエル・カワード、デビッド・リーンと知り合い。
East of Edam
元ネタはジョン・スタインベックの小説 East of Eden / エデンの東。
エリア・カザンが映画化。
Grated Expectations
元ネタはチャールズ・ディケンズの小説 Great Expectations / 大いなる遺産。
デビッド・リーンを始め7回映画化。
Fromage to Eternity
元ネタはジェームズ・ジョーンズの小説 From Here to Eternity / 地上より永遠に。
フレッド・ジンネマンで映画化。
Waiting for Gouda
元ネタはサミュエル・ベケットの戯曲 Waiting for Godot / ゴドーを待ちながら。
よくまあここまでたくさん思いついたものだと思いますが、アードマンにはスタッフが多いので、色々調べてくれる人がいるのかも知れません。物静かなパークもこういう所にチラッと洒落を隠して置きそうな人物。
しかしそのチーズ入れ物にはネズミ捕りが仕掛けてあって、ウォレスは手を挟まれてしまいます。グロミットはウォレスがダイエットを破るのをお見通しでした。
注: ドイツ語には Gouvernante という言葉があります。正式な意味は 日本語で言うガヴァネス。欧州各国で国の教育制度が整っていなかった古い時代にお金持ちが雇って子女を教育させる時の先生。きちんと教えることのできる高級な家庭教師。普通は女性。
現代のドイツでは「ちゃんとしなさい」と言う口うるさいお姉さん(若い女性)に対して悪口として使います。グロミットはまさにウォレスの生活に日夜目を光らせているお姉さんみたいです。
グロミットは最近太り過ぎのウォレスに良かれと思ってやったのですが、我慢とか苦しい事の嫌いなウォレスは自己流のダイエットを考えます。新発明で、まだテストをしていない機械を動かそうと思ったその時、町の有力者レディー・カンパヌラから電話が入ります。
☆ 500年の歴史のある大型野菜コンテスト
レディー・カンパヌラはこの町の貴族で、由緒正しい家の出。ところが下品な印象を与えます。
注: 声を担当しているのはヘレナ・ボーナム・カーター。カーター自身かなり由緒正しい家の生まれで、父親は銀行頭取、母親は精神分析医。上の代には映画監督、英国首相がいて、本人もかなりのインテリ。出演作には英国を代表するような作品もあります。現在ティム・バートンと事実婚中。レディー・カンパヌラよりカーター自身の方が上品そうに見えます。
☆ コンテスト直前にウサギ問題発生
レディー・カンパヌラが企画している大型野菜コンテストが近づいていますが、町の野菜が軒並みウサギの被害に遭っているため、ウォレスに駆除を依頼します。
注: 正直なところ私は大型野菜には反対の立場を取っています。日本から欧州に来てびっくりするのは野菜や果物の大きさ。日本の野菜や果物は小型で味がとてもいいです。欧州の野菜、果物は払うお金に対して確かに馬鹿でかくて水ぶくれ。大きいので得をしたように感じますが、大味で、きゅうりなどは水を飲む代わりに齧ったりします。
日本を離れた頃、80年代初頭の記憶と比べると、きゅうり、苺、かぼちゃ、ピーマン、なす、スイカ、一部のトマト、一部のキャベツ、マッシュルーム、柿は許しがたい大きさ、大味です。
写真などを見ると最近は日本でも一部その影響を受けているようです。
トルコ人と話が合うのはこの点。トルコ人も日本と同じような物を食べる傾向があり、きゅうりなども欧州で売っている30センチ近い長さ、5センチ近い太さの物の他に、日本人がお漬物にするようなサイズのものもあるそうです。トルコ人自身は小型の方を正しい野菜と感じていて、ドイツの馬鹿でかい野菜には眉をしかめていました。
レディー・カンパヌラにはビクターという貴族の知人がいます。真っ赤なバラの花束を持って来て彼女の歓心を買おうとしますが、凄く嫌味な奴。
注: 声の出演はこれまた由緒正しい家柄のレイフ・ファインズ。写真家と小説家の両親を持ち、血筋には作曲家、俳優、映画監督、記録映画家、考古学者(養子)などがいて、以前キラー・エリートで触れたことのあるラノフ・ファインズも身内です。この家にはまだ有名人がたくさんいます。一時期美男と言われたこともあるレイフですが、私の目には大した美男には見えません。悪役が上手で、変な役をもらうと輝きます。先日 MI6 の新しい M に就任しましたが、芸達者な彼がただの上司ということはないだろうと思うので、将来の展開を期待しています。
平和主義で殺しを嫌がるレディー・カンパヌラと、猟犬猟銃を持ち歩いて狩猟大好きのビクターは波長が合いません。そのレディー・カンパヌラは立派な住居用のお城に住んでいますが、庭中ウサギだらけ。
注1: キリスト教でない日本では祝いませんが、欧州では毎年春先イースター休暇があります。その時のシンボルがウサギ。すぐたくさん子供を産むので子孫繁栄のシンボルになっています。
注2: 欧州には日本語で言う《お城》に2つの種類があり、
・ 1つは以前「戦闘用の砦、日本のお城と似た機能を持つ」と言ったことがありますが、
・ もう1つは居住用のお城。それがレディー・カンパヌラが住んでいるようなタイプの大邸宅です。京都の二条城や御所のようなものですが、大きさは様々。
最近では音楽やスポーツのスターがこういう邸宅を買っているようですが、維持費は大変な金額になります。特に暖房費。入居前にはそれこそペスト業者を雇って鼠などを退治しなければなりませんし、配線、配管は全部やり直し。天井が高いので掃除も人を雇ってやらせなければなりません。ま、ミリオン・セラーを何枚も出した人や、スポーツで何度も優勝した人でないと維持は無理。
ウサギ殺しを望まないレディー・カンパヌラには猟銃をすぐぶっ放したがるビクターより、生け捕りにするウォレス方式の方が好ましく、レディー・カンパヌラの大きな庭ですでに仕事を始めたウォレスは次々にウサギを大型掃除機で吸い上げて行きます。
ビクターがどうしても銃をぶっ放してウサギを狩るというのでレディー・カンパヌラとは言い合いになります。そのビクターもウォレスの機械に吸い込まれてしまいます。そのために鬘を被っていたことがばれてしまいます。
注: レイフ・ファインズは最近髪が薄くなり始めていますが、本人は全然隠すつもりは無いようです。ファインズからはかなりのナルシストという印象を受けていたのですが、本当はあまり自分の容姿にこだわっていない様子。容姿が美しい時代にはそれに合った役を演じたので、これからは渋い小父さんを目指しているのかも知れません。
初めてレディー・カンパヌラを見たウォレスは毛糸店主のウェンドリンの時のように一目惚れしてしまいます。
☆ 捕らえてみたものの・・・ − 必要は発明の父、母? − 手違いは発明の親?
レディー・カンパヌラも望みませんし、ウォレスとグロミットも殺すのは忍びないので、捕まえたウサギをどうしようかという話になります。そこでウォレスはウサギの洗脳を思いつきます。野菜を食い荒らさなければウサギは無害なので放してもいいだろうというわけです。
あまりの馬鹿馬鹿しいアイディアに呆れて立ちすくむグロミット。計画通り行ったので喜ぶウォレス。しかしウォレスが間違って入れてしまったスイッチがトラブルを起こします。洗脳中のウサギ1羽とウォレスの脳が混ざってしまうのです。
手違いがきっかけで何かが大成功してしまうのが劇映画のマッド・サイエンティストの常。この特別なウサギは機械のマインド・コントロールが効いて人参が大嫌いになってしまいます。
注: 台所で紅茶を入れているグロミットに注目。こげ茶色のティー・ポットは英国でおなじみですが、ティーバッグも英国の典型的な物。日本やドイツで売っているティーバッグは糸がついていて、上に会社の名前か何か書いた紙がついていますが、英国の普通のティーバッグにはそういうのがついていません。1箱50袋などとたくさん入っていて、余計な手間がかからないようになっています。
☆ 怪奇映画になって行く
温室で丹念に野菜を育てているグロミット。彼もレディー・カンパヌラのコンテストに参加するつもりです。
その夜ウォレスの機械で食べ物の好みがガラッと変わってしまった特別なウサギのハッチを閉じ込めておいた檻に何かが起きます。
教会の老牧師(クリストファー・リーに合いそうな役)も野菜を育てています。教会の中でフェスティバルの準備をしていた牧師は妙な気配に気づきます。教会に怪物が侵入していて、牧師はショックで失神。怪物はそこいらじゅうの野菜を荒らしまわり、齧りまくってから去って行きます。
突然契約している全ての家から警報が鳴り、目を覚ますグロミット。こんな田舎でもどの家も近代的な警報装置を備えています。ウォレスとグロミットも参加して村中の被害者が教会に集まり、警官に被害届を出します。ちょうどそこへやって来た牧師は狼男ならぬウサギ男の話をします。
そこに現われたのは銃をぶっ放したくてうずうずしているビクター。彼はウサギ男なる迷信を信じず、「大男ではあっただろうけれど犯人は人間に違いない」と言います。ウサギ殺しに反対のレディー・カンパヌラはビクターを抑えて、動物駆除業のウォレスにセカンド・チャンスをやろうと提案。
☆ 探偵犬グロミット
話はグロミットの考えと違う方向に行きますが、ウォレスの考え出したあほらしい作戦にグロミットも付き合います。
その後夜の村で妙な気配に気づくグロミット。大きな人影が見え、八百屋が1軒襲われます。グロミットがクラクションを鳴らしても誰も現われません。仕方なく1匹で追跡するグロミット。怪物に縄をかけたものの怪力で地中へ引っ張られるグロミットの車。
結局怪人を捕まえ損ねたグロミットは外に出て来て、大きな足跡が自宅に続いているのを発見します。家の中は散らかっています。その時ウォレスは契約者から次々に緊急電話が入り、てんてこ舞い。
ウォレスが帰宅したグロミットに「この忙しい時に何をしてたんだ」と文句を言う中、足跡を追って行くグロミット。行き着いたのは自宅の地下室。そしてウォレスとグロミットが発見したのは例の洗脳されたウサギのハッチ。
ウォレスは「ハッチがあの怪物だ」と結論付けますが、グロミットは懐疑的。グロミットはチーズ・ホリデーの乗りで夜な夜な怪物に変身するだろうハッチを閉じ込めるために大型の檻を作ります。厳重に檻に鍵をかけ、地下室へのドアもロック。
しかし足跡は何か別な事を示していると気づき、さらに後を追うグロミット。足跡は何と2階へ続きウォレスの寝室へ。寝室に近づくにつれて足跡は小さくなり、人間の足跡に変わって行きます。そしてウォレスの寝室で発見したのは・・・。
☆ 自覚の無いウォレス
一方大発明が成功したと思ったウォレスはレディー・カンパヌラに会いに行きます。大変な真相に気づいたグロミットはウォレスを追ってカンパヌラの邸宅へ。ウサギの性格を自分の中に取り込み、植物中毒になってしまったことにまだ自分で気づいていないウォレスは出されたケーキではなく、側に飾ってあった花を食べてしまいます。
少しずつウサギの習慣が表に出始めたウォレスをレディー・カンパヌラは知らずに秘密の菜園に招き入れてしまいます。外から心配そうに見守るグロミット。
注: 屋敷の上の階が菜園になっていますが、この建築様式はベルリンの植物園と同じ。どこか他の場所にも書いたかと思いますが、この様式は100年近く前、欧州の国際博覧会でよく使われました。
ブルース・ダーン主演のサイレント・ランニングの宇宙船もこの様式に似ていました。
このシーンもそうですが、全体を見てもウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!は色彩が派手過ぎて、他の作品と一線を画しています。私は3作の中篇のような地味な色が好きです。
☆ ビクターの嫉妬 − 本性を見せたウォレス
ちょうどその時ビクターも屋敷を訪ねて来ます。レディー・カンパヌラに贈る真っ赤なバラは、彼女の庭に生えていたのを失敬。楽しそうに話すウォレスとカンパヌラを見て嫉妬心がメラメラ。
ウォレスの禁断症状の事など知る由も無いレディー・カンパヌラは自分の作った巨大な人参をウォレスに披露。自分ではなぜか分からず野菜の禁断症状と戦っているウォレス。危ない所でグロミットが機転を利かせ、ばれずに助かりますが、ウォレスとグロミットが帰路迂回している最中に日没。
森の迂回路には大木が倒れていて前に進めません。日が暮れるとウォレスは怪物ウサギに変身してしまいます。大木が故意に倒されていたことに気づいたグロミット。
犯人はウォレスに嫉妬したビクター。ウォレスを助けようとするグロミットは小型プレストンを思わせるようなブルドッグ風の犬に阻止されます。
まさにその時月が出て・・・。恐ろしい事が起きることを予想して車をロックするグロミット。怪力を出してビクターを投げ飛ばすウォレスは前歯2本が急成長。体がハルクのように巨大化し全身にふわふわの毛が生えて来ます。車の中のグロミットはこの事態を恐れていました。
ハルクのように服のボタンを弾き飛ばして巨大化するウォレスですが、はいていたパンツまでビクターの所へ飛んで来ます。
注: こういった下品さは過去の作品には見られませんでした。
上流の人間ではないウォレス。しかし社会の規範を守り、まじめに生きている市民というスタンスでこれまでそれなりの尊厳を守っていましたが、この作品では品格が下がります。
☆ ビクター流ウサギ対策
ウォレスの正体を確と見届けたビクターは村の牧師を訪ねます。牧師の書庫には各種怪物対策の古文書があり、ビクターは牧師からウサギ男の退治法を聞き出します。それに必要な純金製の弾丸を3発強引に貰い受けて去って行きます。
☆ 自覚に至るウォレス − レディー・カンパヌラどころではない
夜が明けて目を覚ますウォレス。まだ夜の影響が残っていて、ウサギの耳をしています。まだ自分が新聞の一面に報道されている怪物と気づいていないウォレスに必死で鏡を見せるグロミット。常に自分に都合のいいように考えるウォレスに事実を信じさせるのは大変。地下室に連れて行かれて、チーズ好きに変身したウサギのハッチを見せられ、ようやく事の次第に気づくウォレス。
カンパヌラ邸ではコンテストの準備中。そこへウサギの被害に遭った農夫たちが押し寄せて来ます。ウサギ駆除もウォレスに依頼しているし、500年続いたコンテストを中止することはできないレディー・カンパヌラですが、農夫たちはまだ安心できいる状態ではないと主張。そこへまた猟銃を持って現われるビクターと犬。
ウォレスの家では変身したために発明や修理の技術を失ってしまったウォレスが悩んでいる最中。それを見ていた今では口が利ける、ウォレス化したハッチがウォレスとグルミット、危機一髪!で吐いた台詞を語ります。ウォレスが失った能力はこのウサギに宿っていました。機械を修理できれば元の状態に戻れそうな気配。
そこへ訪ねて来るレディー・カンパヌラ。しかし駆除が成功しなかったので以前のように親しく振舞ってくれません。コンテストを前にビクターに怪物ウサギを撃たせる以外選択の余地がなくなったことを知らせに来ました。
日没が近くなり、レディー・カンパヌラと話している最中にウサギに変身し始めるウォレス。そのためレディー・カンパヌラに対して礼儀正しく振舞っている場合ではなく、不本意にも失礼な別れ方をします。自分の方から距離を保とうとしてやって来たレディー・カンパヌラは、自分がぞんざいに扱われ二重のショック。失望の上、自尊心も傷つけられ、泣きながら去って行きます。
☆ 正体をもろ現わすビクター
喜ぶのは物陰から様子を見ていたビクター。銃を構えてウォレスの家に近づいて来ます。
危険を察知し裏口からウォレスを逃がそうとするグロミット。すでにウォレスの変身が始まっていて大型化し、戸口から出られません。純金の弾を込めるビクター。グロミットは一計を案じてウサギ化したウォレスをとにかく家の外に誘い出します。
ビクターが弾を撃ったので問題が解決したと思った村人。しかし弾が当たったのはグロミットの着ぐるみ。怒り狂ったビクターに《駆除》と書かれた檻に閉じ込められたグロミット。ビクターはウサギに変身したウォレスを追います。大きな野菜がたくさん置いてあるフェスティバルの会場で野菜中毒になっているウォレスを待ち構えるビクター。ビクターは警官にこっそり「怪物はまだ死んでいない」と言いますが、ラウドスピーカーを持っていた警官は大声でそれを言ってしまったため、村人に伝わります。お祭り気分は一瞬で醒めてしまいます。
☆ グロミットの巻き返し
ハッチに助けられグロミットは檻から脱出。実はグロミットもコンテストに参加したかったのですが、一計を案じ、手塩にかけて育てた野菜を大太刀でばっさり。
地中からコンテスト会場に近づくウサギ化したウォレス。車で会場に駆けつけるグロミットとハッチ。すでにそこにいて最後の黄金の弾丸をこめて待ち構えるビクター。はらはらして見守るカンパヌラと大勢の村人。グロミットが手塩にかけて育てた野菜がウサギに変身したウォレスを誘い、会場から遠ざかるグロミットとハッチにウォレスは釣られて会場から去ります。
☆ 執念のビクター
最後の弾丸を無駄に使ってしまったビクターはコンテストの賞品の黄金の人参を使おうと思いつき、レディー・カンパヌラと争いになります。それまでグロミットの野菜に釣られていたウォレスはレディー・カンパヌラの窮地に気づき、助けに引き返します。ここから先はキング・コングの乗り。ウサギ・ウォレスはビクターを殴り倒し、レディー・カンパヌラを脇に抱えてその場を去ります。村の貴婦人をさらわれたので、村人は自警団を作って追跡。
レディー・カンパヌラは大ウサギの動作から怪物ウサギがウォレスだと気づきます。
☆ 決死の空中戦
大追跡の始まり。遊園地の飛行機にコインを入れて飛び立つグロミット。ウォレスとグルミット、危機一髪!のパクリと言うか、過去の作品からの引用。向かう先はウォレスがレディー・カンパヌラを運び込んだカンパヌラの大温室。
ウォレスの状況に同情し、助けようとするレディー・カンパヌラの前に嫉妬でめらめら燃え上がるビクターが現われます。彼の銃には黄金の人参が装填されています。飛行機でレディー・カンパヌラの温室へ近づくグロミット。温室では話の最中にウォレスの正体を以前からビクターが知っていたことがばれ、ビクターはレディー・カンパヌラの信頼を一瞬で失います。元々レディー・カンパヌラの財産を狙っていたビクターはもうやけくそ。
ビクターはレディー・カンパヌラを動けないようにし温室に残したまま、ウォレスを追います。そこへグロミットの飛行機が到着。しかし真後ろにビクターの飼い犬も飛行機でついて来ています。
このあたりからビクターとレディー・カンパヌラの会話に映画のタイトルをパロディーにしたような台詞が飛び出します。
ビクターは飛行機に突き飛ばされて屋根の上の風見鶏に引っかかってしまいますが、その時お尻が丸出し。このシーンは欧米風に見ると笑いを誘うだけでなく、とても下品です。
その後は2匹の犬の空中戦。元ネタはウォレスとグルミット、危機一髪!ですが、墜落したビクターの犬は炎の中で大破。いつから遊園地の飛行機はガソリンで動くようになったのでしょう。
それでもしつこく生き延びたビクターの犬はグロミットの飛行機に喰らい付き2匹は格闘の最中。ウォレスは塔のような建物の天辺にキング・コングの乗りでしがみつき、黄金の人参を装填した銃を構えているビクターと対決。
ちょうどその時飛行機のコインが切れたため2匹の犬は休戦。グロミットがコインを入れようとします。悲しいかなコインが足りない。すると花模様の財布を取り出して、ビクターの犬も協力(!?)。このシーンは珍しく他の自作のパクリではなく、その上とても愉快です。
その後一瞬で勝負ありです。
・ 銃をぶっ放すビクター。
・ マトリックスの乗りで飛び出す黄金の人参。
・ 弾にぶつかってウォレスを助けるグロミット。
・ 墜落しかけるグロミットを身を挺して助けるウォレス。
・ レディー・カンパヌラに殴られるビクター。
・ ビクターに着ぐるみを着せて村人に大ウサギと思わせ後を追わせるグロミット。
・ 大ウサギとして息絶えるウォレス。
☆ 終わり良ければ
その後ハッピーエンドに向かいます。
・ 元気でチーズを食べているハッチを見て好い事を思いつくグロミット。
・ チーズの臭いをかがされて我に返るウォレスはハルクの時に洋服を弾き飛ばしたので全裸。
・ 礼としてちょっと先の曲がった黄金の人参をレディー・カンパヌラから贈られるグロミット。
・ レディー・カンパヌラの庭に溢れる洗脳されたウサギ。
・ ウォレスとはちょっと距離を保ちながらも仲直りしたレディー・カンパヌラ。ビクターとの距離は縮まりません。
後半のかなり後まで少ない話の展開を長く引き伸ばし、最後のところで急にこういう慌しい展開になり、話は終了します。
★ 全体としてあまり好きになれない
・・・とまあ大団円です。
できるだけ良い所を探してみましたが、全体としては最初の3作に比べ、何度も見ようという気になるほどではありませんでした。1度見てしまって「そういうストーリーか」と納得して終わり。
他の作品が30分でも起承転結がしっかりしていたので、90分近く取る必要が無いというのがまず最初に浮かんだ感想です。実際85分を持たせるためにさほど必要で無いシーンがあったり、もう少し短くてもいいのにと思えるシーンがありました。
加えて最初の3作のギャグの使い回しがあちらこちらに見え、最初からのファンにはそこが目立ってしまいます。まあ、この点は初めて見た作品がウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!という人も多いだろうと想像してお目こぼし。
最初の3作が奇跡だったのかも知れません。シーンの写真を見るとどれも絵になっていて、そこを切り取って部屋に飾っておきたくなります。実際ウォレスの居間にはそういう写真が飾ってありますが、私も家に数枚飾っています。ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!にはそういうシーンが無く、一通り上映が終わってしまうとそれでさようなら。
色彩も派手過ぎて私の好みには合いませんでした。欧州の人は比較的地味な色を好むのでなぜこんなに信号機の色のように派手にしたのだろうと訝ったのですが、大金かけて長編を作って、観客にそっぽを向かれたら困るので、アメリカ人の好みに合わせたのかも知れません。単なる想像ですが、欧州人とやや色の好みが違います。日本人は少し抑え気味の色を好む人が多く、前の3作の方が好感を持たれるのではないかと思います。
レディー・カンパヌラの衣装ではっきり政治色を出していますが、 子供の世界に政治をどの程度持ち込むのかも考えてみるべきかと思いました。
そこで謎に思えたのがレディー・カンパヌラの不思議な立場。 オレンジ色のファンには動物の殺傷に反対で、野菜大好きという人が多いようなので、そこは何となく1つの路線に思えるのですが、その女性が500年以上続いた貴族で、そういう邸宅に住んでいる点が???でした。
田舎の城に住む貴族の趣味はビクターが体現しているような狩。しかしレディー・カンパヌラとビクターは反りが合いません。なるほど、近年菜食主義に転向した貴族なのだろうと思っていると、彼女と反りが合いそうなのがウォレス。しかし彼は菜食主義ではなく、チーズや牛乳などは取る人。ウォレスの家では特別菜食主義ではなく、たまたま今ウォレスが太り過ぎなので、ダイエットのために食事に野菜が増えただけ。この辺が曖昧でしたが、まあ、子供向けのアニメだから細かい事は言わない方がいいのでしょう。
注: ところでグロミットの菜園を見てすぐ思いついたのは「ラタトゥイユが作れる!」でした。
貴族を笑い者にする姿勢もはっきりしています。この部分はスピールバーグの意思なのかやや疑問。
片方でレディー・カンパヌラを善玉とし、ビクターを悪漢にしてあり、制作者の立場はちょっと曖昧。とは言うものの、貴族に対しての反感ははっきり出ていました。レディー・カンパヌラは例外的に良い人扱いなのでしょう。
王室が現存している国と、廃止した国でスタンスが違い、現存している国は中で賛否が強いエネルギーを持ちながら分かれています。なのでメディアからはひどく叩かれたり、人があこがれるようなハイ・ソサエティーの写真を掲載したり。
ドイツは王室は廃止していて、元貴族に特権も無く普段はひっそりしていますが、女性が読む写真誌には毎週外国の王室のきれいな写真が載ります。現役のドイツ王室が無いためドイツのゴシップは稀です(王室の血を引く人や元貴族はそこそこの人数生存していますが、公務などは無く、全くの私人)。
王室現存国には日本では考えられないような批判のエネルギーもあり、それこそお尻を丸出しで嫌王室感情を現わす人たちもいるわけです。成り立ちと歴史の違いによるもので、皇室しか身近に知らない日本人には理解し難いものがあります。
また、例えば財産を失い元貴族が貧しい生活をすることを歓迎するような面があり、他方で元貴族のお城を芸能人などが買い取り、贅沢な暮らしをして、それをメディアに載せます。一般の読者があこがれるようになっています。貴族や王室の制度を廃止に持って行くように引っ張っておきながら、庶民で財を成した人に貴族の生活をさせて、「あこがれろ」というスタンスなので、頭の弱い私には???となってしまいます。
日本の皇族は遊びまわったり、贅沢し放題という立場の人が限りなくゼロに近く、制約の多い生活をしておられますが、欧州では国や序列によって少し違うようです。ビジネスの話に乗る人もおり、時にはスキャンダルも飛び出します。それが過去の搾取の歴史と混ざって、好感を抱かない人も多いのでしょう。で、子供のアニメにもそんな批判が飛び込んで来るのでしょう。ただ、ウォレスとグロミットにはそぐわないように思えます。
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