★　新しい監督

この回から新しい監督が加わります。今のところ4本撮っています。これまでテレビ畑の仕事が多く、長編の劇映画は1本。欧州3カ国が出資した犯罪、ホラー、スリラー系の作品です。

★　私生活が関係し過ぎ

前のシーズンから警察関係者の私生活が今まで以上に中央に張り出して来ています。今回もクロエの養女リリーが通う小学校で同級の生徒が行方不明になり、その捜査が行われます。現在資料室勤務になっていてすでに今シーズンの最初の2話でクロエが捜査にしゃしゃり出てくる事が問題になっていましたが、3話では逆にトマが資料室にいるクロエを上の捜査部門に引っ張り出して来ます。事件にリリーの学校が絡んでいるためグレゴワが上と掛け合い正式の許可を得ています。正式にはクロエはあと3ヶ月資料室勤務で、その後捜査に復帰できるようです。

前回までの2話でイポリットに付きまとう新人刑事がいましたが、第2話の最後にそのトマシ刑事の DNA が99％以上の確率でつい最近死んだフレッドの物と一致するという結果が出ていました。私はなのでフレッドの2人目の妹かと思っていたのですがもっと大きなサプライズ。

元々私は警察の捜査本部の刑事として登場する人たちの私生活が毎週のドラマに関係して来るという筋書きに反対だったのですが、このシリーズの脚本家たちは真逆路線を選択したようで、回が進むにつれメインの事件をしのぐ分数が割かれるようになっています。この回はたまたまリリーの通う学校が事件の舞台になってしまっただけですが、それを理由にティームはクロエを地下室勤務から上の階に戻すきっかけにしてしまいました。その上資料室の責任者メルカデもクロエに対して肯定的になっています。

★　メインの事件

なぜかこの回の出演者の名簿が発表されておらず、上には分かる部分だけを記しました。ドイツ語のタイトルは《モンスター・ペアレンツ》といった意味です。

フレッドの死に伴う職場の変化にすぐには馴染めなかったクロエもようやく仕事に慣れ、最初は意地悪だった上司もクロエの能力を知るにいたり、好意的になっていました。そんなある日顔色を変えたトマが資料室にやって来て、クロエを借り出して行きます。グレゴワも許可しており、すぐ捜査に協力しろと言うのです。

小学校から8歳の少年アルトゥールが消え、その学校にリリーも通っていると言われ、クロエも顔色を変えます。リリーの無事は確認され、捜査は監視ビデオの分析から始まります。少年の公開捜査も始まり、テレビで報道されています。

消えた少年は最後に中年の女性と一緒のところを目撃されており、少年は無理やり連れ出されたようではありません。やがてこの女性がこの学校の教師だということが分かり、謎が深まります。

少年の母親は気鋭のジャーナリストで、出張が多く、父親は死亡。少年は内向的で最近は成績が落ちていました。担任は同僚とは傲慢だとして反りが合わないけれど、生徒や親たちからは文句は全く出ていませんでした。

アルトゥールの母親に事情を聞くと、最近は親子関係が悪化中。母親があまり自分に構ってくれないということで子供は不満。

具体的な手がかりとしては公開捜査のテレビ放送で少年の顔を見た男からの連絡。高速道路の休憩所で少年を連れていた女性に話しかけたところいきなり殴られたという証言しています。太った男が2人についていたとのことで、似顔絵が作成されます。

その間に新しい同僚刑事トマシが内務省に逮捕されます。

アルトウールの学校を真夜中に訪ねたトマとクロエが校長に容疑者の似顔絵を見せたところ学校の庭師のセバスチャンだったことが判明。同時に彼がアルトゥールだけでなく、学校に通っている他の子供の写真も持っていたことが分かります。リリーもその1人。リリーも誘拐の候補者だったことを知ったクロエは半狂乱。トマが一生懸命なだめます。

翌日リリーを訪ねた2人。リリーは現在クロエの母親の家に住んでいます。非常にドイツっぽい家です。トマがうまくリリーと話し、大体の様子をつかみます。リリーは担任や庭師から他の生徒より親しく付き合う申し出を受けていましたが、2人の様子を変だと感じて授業以外では会っていませんでした。トマとクロエは教師と庭師がペドフェリー（子供に対し性的な虐待をする人）と疑っていますが、ちょっとおかしいのはこういう犯人は少年か少女のどちらかだけを狙うのに、2人は男女両方の子供を狙っています。

2人のやり口からアルトゥールが初犯ではないというのが捜査本部の見解。

資料室にあった過去の記録から、高速道路の休憩所で男を殴ったのが本名セバスチャン・コデールという男、12年前に失踪、その前に通っていた学校の担任が今回の事件に巻き込まれているのと同じ女性だったことが分かります。彼女は4ヶ月間の代講を引き受け、4ヵ月後に予定通り退職。その直後に当時彼女の生徒だったセバスチャンが失踪しています。

彼女は当時学校の職員だった夫と一緒に誘拐をしていたようなのですが、夫は暫くして死亡。どうやらその後セバスチャンを共犯にしたようです。

現在の彼女の居所をつかんだ警察は彼女を逮捕。しかし何も話しません。しかしリリーも次の犠牲者として狙っていたことは確か。

イポリットがコンピューターの調査でセバスチャンの母親について情報をつかみます。現在誘拐事件の情報提供者として謝礼を要求しているだけではなく、過去には自分はアル中で、暴力的な夫と一緒に息子を苛めており、子供の頃セバスチャンは2度施設に預けられていました。捜査中の家からはさらに別な2人の DNA が発見されています。こちらの2人は女の子。その両親は犯罪者。

クロエは犯人の教師が虐待されている子供を救うために誘拐したのではないかと考え始めます。で、彼女はアルトゥールの母親に会いに行きます。これまでの犠牲者は両親が子供をきちんと育てなかったか、虐待をしているかのいずれかだったため、アルトゥールの母親にも確認したかったのです。

母親は自分はそんな事はした覚えがないと主張。この家族の真相は全然別な所にありました。彼女は死期の迫った癌の患者。彼女はまだ息子に真実を伝えておらず、病院に行ったとか治療中とは言わず、出張で出かけると言っていました。

改めて犯人を尋問するクロエ。父親に殴られている子供ルイの担任だった彼女は、ルイを助けられなかったことが心に引っかかり、後に虐待されている子供を誘拐し、自分が母親になる仕事を始めていました。

クロエと対決した彼女は納得の上警察を隠れ家に案内して、ハッピーエンド。クロエが罪がいくらか軽くなるように手配すると約束。2人の誘拐された少女たちは一旦施設に預けられ、後に一緒に暮らせるように手配するとのこと。

★　コンセプトをパクッタか

犯人の犯行動機以外は似ていませんが、犯行動機と口の堅さはトールマンとよく似ています。まだインディペンデント映画のスターだったジェシカ・ビールが主演でした。この種の問題の落とし穴は、こういう犯罪を犯す人が確信犯で、人の幸せ、不幸をこの人たちが定義してしまう点です。

犯人の教師の目にはリリーも薬をちゃんと飲まなかったため精神分裂症を悪化させたクロエに虐待されていると映るのです。クロエは器用な人間ではないため何かをやり失敗をしながら学んで行く最中。周囲にその彼女をサポートしようという人が大勢いるので、クロエの生活もリリーの生活も成り立っています。しかし学校だけにいると、クロエが精神病院に入院し、リリーは祖母の所へ預けられている・・・かわいそうに・・・という風になってしまうのです。自分の所にいた方がリリーは幸せだと勝手に決めてしまうのです。

現実にはクロエのように努力している親もいれば、子供を無視したり暴力の対象にする親もいるので、そう簡単に見分けはつかないのです。クロエは無力感を感じながらも、そういう子供はとりあえず役所に預け、その先の事を考えるべきだと犯人に向かって主張しますが納得させることはできません。

ところがその彼女も反省。それはアルトゥールが母親から無視されたわけではないと知った時。間もなく癌で死ぬことをまだ8歳の、すでに父親を失った少年にどうやって説明したらいいか迷っていたことを知らされた時でした。

★　トマシ刑事はここで働いては行けない

・・・というのがイポリットの判断。そのため彼女のデーターに細工して、内務省からテロリスト容疑で取り調べられるように計らっていました。セバスチャンが原因で意識不明になった警官は目を覚ましたため、セバスチャンは重い罪にはならない様子。主犯の教師は服役しなければ行けない様子。

イポリットがトマシ刑事を追い出そうとする理由は重大。フレッドの後任として捜査本部に入ったトマシはフレッドの娘でした。フレッドが15歳の時に出産（ということは14歳で妊娠）、養子に出してました。イポリットが結婚して、子供を作り、家庭を持ちたいと言った時、いつも結婚はせず、2人の独身の恋人として付き合おうと言った理由はここにあったようです。そのために2人は1度は別れてしまっています。

エマはパリ一の検挙数を誇っているこの部署で勉強したいと張り切っていましたが、イポリットは義理の娘に当たるエマに危険な仕事をさせたくないと思い、彼女をこの部署から追い出そうとしていました。

エマは成人なのでイポリットは扶養の義務はありませんが、正確に言うとフレッドと結婚したイポリットはこれでフレッドの娘の義理の父親とジェシカが産んだ血の繋がった息子の2人の子持ちということになります。ついこの間まで独身貴族だったイポリット、物事は随分早く回るものです。

エマはフレッドが書き残した手紙を持っており、自分が養子に出されていた事を知ったのは半年前。自分の母親が署内で愛されていたと知り、生前の彼女を知っている人のいる所で仕事をしたかったのです。しかしヘロインを取るイポリットを軽蔑し切っています。

イポリットの妙な行動に腹を立てて喧嘩をしたクロエはイポリットからエマの身元を聞かされていました。署を去ろうとするエマと話すクロエ。エマの説得にどうやら成功した様子。

ところが川岸を歩いていたイポリットは黒塗りの車から出て来た覆面の男たちに誘拐されてしまいます。その先は次回に持ち越し。車の様子からすると政府のエージェント風。