★　見始めて1年

冒頭の数本を見逃しましたが、第1シーズンの後半から見始め、第5シーズン目になりました。去年の12月中頃に第4シーズンが終了。ドイツでは1ヵ月半ほど間を空けて、2016年2月の最初の週から続行です。

★　ではまた来年

続き物の犯罪シリーズでは回の最後に危機が起きて、「ではこの続きは来週」となるのが常套手段。第4シリーズもそういう風にして終わりました。ただドイツではこのシリーズはクリスマスから新年にかけて6週間ほどお休みを取っていましたので、私たちは待ちぼうけ。

ドイツの放送局の都合なので文句はありませんが、もっと待ちぼうけを食わされたのはフランス。私が2月始めに見た回はフランスでは2014年8月30日に放映されました。その前の回、第4シーズンの最終回は2013年10月10日の放映。フランス人は10ヶ月弱待たされています。

★　自殺中のクロエ　-　待ちぼうけの視聴者

第4シーズン最終回ではクロエは母親ローランスの元愛人で内務省長官のカルマンに牢獄のような所に閉じ込められ、リリーの養子縁組の手続きに行くこともできず、母親も悪漢の虜にされた状態で、クロエは首吊り自殺の最中でした。クロエは「犯人が自分を利用できなくなれば母親を救えるかも知れない」と考えました。母親は娘のクロエを思うあまり、犯人に逆らえないと解釈できる状況でした。

なので視聴者は第5シーズンが始まる時には、「クロエが首を吊った直後に誰かが助けに来るか」、「犯人を逮捕できるか」などを知りたいわけです。ですから冒頭のシーンはクロエが閉じ込められている牢獄から始まるだろうと思っていました。

ところが冒頭はクロエとリリーが新しい家に引っ越すシーン。2人もクロエの母親もハッピー。視聴者はそれから長い間「3人がこういう状態なのだから前の事件は無事3人に有利なように解決したのだ」と想像するしかありませんでした。視聴者は具体的に何がどうなったのかを知りたいのですが、見事に待ちぼうけを食います。

★　新しい事件発生

この回はバラバラ死体送付事件。何かしらの暴力で死んだ女性の体がバラバラに切られ、別々の小包で送られて来ます。検死医ラ・ドックがバラバラ死体を集め、分析したところ比較的若い女性の名前が浮かびます。

捜査陣はその女性の姉妹を発見。彼女はちょうど臨月で、発見された現場でトマの手を借りて出産します。トマは手馴れたもので、女性を落ち着かせ、無事男の子が生まれます。まだ出産経験の無いクロエの方がうろたえ、女性を落ち着かせるべきなのに適した言葉がすぐ浮かびません。

トマは息子が1人いるので、出産に立ち会ったことがあったのか、あるいは仕事中に時々臨月の女性に出くわすので経験があったのか、あるいは警察の基礎訓練のプログラムに出産補助も入っているのかも知れません。

この事件は巷が持っているフランス的なイメージと違い、頭のおかしい学者が自分の妻、娘、孫娘に女の子を生ませていたという話。10人を超える女性たちを自分の近くに住ませ、学校に行かせず、公式に家庭内教育の許可を取って育てていました。娘の何人かは妊娠中。父親は全てこの男で、娘たちと性交渉はせず、自分の精子を使って妊娠させていました。父親がペドフィリアでなかったのは幸いですが、一生世間とのつながり無しで、大きな邸宅と庭しか知らない生活を強いられている女たちというのもひどい犯罪の犠牲者です。男の子はどうやら殺されはしないけれど、里子に出されたりして家から外に出されている様子。この男は自分の邸宅に《自分帝国》を作っていました。

雰囲気としてはちょっと前にファンタで見た The Invitation とサクラメントと似ていて、同じ事を自分の家族だけで行ったような感じです。

主犯の男の雰囲気は一般人が抱くフランス人のイメージとちょっと違いますが、フランスもよく考えてみると中世どころか太古の昔から大勢のよそ者が移り住んでで来た国で、もし今から遺伝子を調査して所謂《本来のフランス人》を捜し求めても見つからないか、恐ろしく数が少なくなっているでしょう。

フランスという国名も歴史をたどっていくと《ドイツ》ということになります。ドイツの民族の1つの派が《フランケン（フランク王国）》で、480年頃現在の中西部ドイツ辺りに領土を持っていました。その後領土が徐々に西へ伸び、510年頃にはブルターニアを除くほぼフランス全土に広がって行きました。610年頃までにはさらに南へも勢力を伸ばし、810年頃には西はスペインの手前、南はイタリアの半分を手中に収めています。東欧にはあまり勢力を伸ばしておらず、現在の東ドイツと東欧諸国の境界線あたりで止まりました。さらに東の地域はフランク王国の欧勢力圏には入りましたが、フランク王国本体ではありません。とは言うもののかなり大きな国になっており、フランスはその当時の名前を現在の国名に残しています。簡単に言うとフランス人は自分たちを《フランク王国のドイツ人》と呼んでいる形です。時には愛国心でギンギラギンに燃えるフランス人なのだから何かもっとオリジナルな名前にしないのかと思うこともありましたが、欧州連合が統一されるなら、そんな事はどうでも良くなるのかも知れません。

ブルターニアの人たちは英国系、それも現在の英国人多数派ではなく、ケルト系。ブルターニアという名前はブリテンの名残りです。

こういう歴史を見て分かるのは、この事件の犯人が目指したような《自分王国》を作って見てもあまり意味が無いということです。第2次世界大戦の時に何とかの純潔性と言った人がいましたが、フランク王国の歴史1つを取ってみても人の移動が多く、北欧の一歩手前からイタリア中部までをフランク王国人が行き来していたことになります。こういった行き来はフランク王国の前にも後にもあり、欧州の人たちはかなりごちゃ混ぜになっています。そんな状況の中で《自分王国》を作って見ても一体何の役に立つんだろうと思ってしまいます。その上近親結婚をすると並外れた能力の人が生まれることが時々ある反面、平均より弱い人も生まれる率が高くなるので、学者であるこの男は何考えてるんだろうと思わざるを得ません。

犯人はどうやら自分が唯一の父親で、周囲を女たちに囲まれることで絶対的な感覚を持ったようなのですが、「こういうのはまずい」と思った娘に片付けられてしまいます。成人している女たちは恐らく一定の法の裁きを受け、未成年の子供たちは保護されるのでしょうが、罪作りな事をしたものです。

★　クロエの周辺

第4シーズン最後に起きた危機からクロエを救ったのは、以前の事件で知り合ったアデールと、捜査がかなり進展していたトマたちのティーム。めでたく内務省長官はお縄、クロエの母親とクロエは救出。第5シーズン冒頭でリリーがクロエと同居を始めたので、養子縁組手続きは改めて行われ、許可が下りたのでしょう。

私もクロエが危険な職業についていると言う理由で養子縁組にクレームがつくことはいくらか納得します。しかし今度は母親のローランス・フィッシャーもついているので、クロエが忙しい時はおばあちゃんのフィッシャーが留守を預かることもできます。めでたし。

社会にまだ上手に適応できないアデルはクロエとの間を縮めたことで、少しずつ気持ちがほぐれて行きます。そして捜査チームとの付き合いもでき始めます。クロエとアデルはいい友達になりそうな雰囲気。

★　数が・・・

クロエ一家は全員が生存しており、父親、母親、娘が揃っています。長い間クロエの父親代わりをしていたグレゴワもいるので、クロエには父親が2人いるような感じです。

リリーの一家は実母が死亡。実父はいますが、病気。死んだ実母の代わりに入るのがクロエ。

兄貴代わりにクロエの用心棒を務めるのが戦死してしまったマシューの後釜に入ったトマ。署の他のメンバーも一緒にガードを固めています。

クロエに欠けているのはボーイフレンド。現在の所候補者無し。

ローランス・フィッシャーの側から見ると、夫は生存中。2人が離婚したのかは分かりません。何しろ彼女が夫に切りつけられた後、グレゴワが彼女を死んだことにして書類を処理しているので、その部分が元に戻ってしまいます。となるともしかしたら2人はまだ婚姻関係にあるのかも知れません。

彼女をストーキングし、後に監禁した内務省長官は正式な夫人とは以前離婚しています。不倫相手だったローランスとは正式に結婚していません。なので1人寂しく刑務所行き。

こういう人間関係で第5シーズンが始まりました。

★　第2回　-　パクった？

普段はあまり毎回の事件を追わず、レギュラー・メンバーの人間関係に焦点を当てているのですが、この回は「あれっ」と思ったので少し取り上げます。

☆　誘拐、殺人未遂事件発生

おじいさんと言える年齢の男ジョルジュが孫と言えるロー・ティーンの娘アリスを誘拐し、ビルの屋上から突き落とそうとしているところにクロエたちが出動し、無事アリスは救助、ジョルジュは撃たれて重態で入院します。

娘を誘拐された家には間もなく結婚する予定の若いカップルが住んでおり、ジョルジュは花嫁ロールの父親、被害者は花婿アントワーヌの連れ子でした。

普段悪い評判の立っていない花嫁の父親が一体なぜ花婿の連れ子を殺そうとしたのかが謎。ジョルジュのアパートに捜索に入ると、ベッドの上にはウクライナ人の娼婦の死体がありました。何かしらの事情で具合の悪い事になって、ジョルジュが娼婦を殺し、その後間もなく孫娘になるアリスも殺そうとしたというのがとりあえずの結論。当のジョルジュは意識不明のままで証言を取ることができません。

クロエが担当しているので色々プロファイリングしてみますが、今一つ「これだ！」という結論にたどり着きません。なので彼女は勝手に間もなく挙式予定のカップルに会いに行ったりします。

他方、前回から同じ署で働くことになったアデルがクロエのいる警察の部屋に通りがかり、「ウクライナの娼婦殺人事件では孫娘が犯人だ。決まり！」と言います。アデルの論拠はナイフで切りつけた時の高さと、ためらいなくやる気満々で切りつけたらしい状況。

☆　アデルは当たり　-　詰め込み過ぎのテーマ

アリスと、じき花嫁になるロールの関係は非常に良好だったのですが、間もなく1つの家族になるはずだった人たち4人の間でこんな事が起こってしまったので、結婚式は白けそうな雰囲気。

クロエはジョルジュのアパートで見たのと同じ写真がロールが現在住んでいる家にもあったことに気づきます。それはジョルジュが同じぐらいの年齢の別な男性と一緒に撮った写真。クロエが尋ねると、その男性は最近亡くなり、そのため父親はひどく落胆していたとのこと。ジョルジュはゲイだったので、若い娼婦を自分のベッドに上げるというシナリオはしっくり来ません。

事務所ではイポリットが必死で、殺されたウクライナの娼婦の身元を洗うようにウクライナの警察に依頼。その結果とんでもない話が明らかになります。

知らぬは花嫁ばかりなりで、花嫁の父が花婿の娘を殺そうと思うには十分な理由があったのです。ロールが自分の言う事を聞かず、アントワーヌとの結婚に突入しようとすることに不満だったジョルジュはアントワーヌについて調べていました。以前は自立した女性だった娘が、未来の花婿に夢中で仕事も放り出してしまったことも気にかけていました。

実はアントワーヌと娘のはずのアリスは夫婦だったのです。フランスでは娘ということにしてありましたが、彼女はれっきとした成人。チェルノビルの近くに住んでいた人物で、年齢的にはれっきとした大人。しかし彼女はチェルノビルをきっかけに肉体的な成長が止まってしまったのです。なので今でも13歳ぐらいに見えます。2人はウクライナで正式に結婚しているので、パリでもう1度結婚すると重婚になります。アントワーヌのフランス語が流暢なので、彼がウクライナ人だと疑う人はほとんどいませんでした。そして職業はマフィア。

★　パクリ

パクリ元の映画として私が挙げたいのは2009年にファンタに出たエスター。非常に頭が良く、人を操るのも上手な、殺人の傾向を持った女性。そして何かの理由で成長が止まっているので、姿は子供。エスターはロシアの孤児院から来た養子。こちらの孫娘とされたアリスも以前はソ連だったウクライナ出身。

子供の体型をした大人の女が殺人も含めた犯罪をするというテーマが2度現われたのでびっくりしました。何かこの元ネタになるような事件が実際にあったのでしょうか。私はその種の情報はまだ目にしていませんが。

ウクライナの件ではベルリンでも何年もの間食事に非常に気を使う事態を招いていましたが、人間の成長が止まるという話は当時耳にしたことがありませんでした。なのでエスターを見た時もチェルノビルとは結び付けて考えませんでした。放射能で白血病、その他の癌など色々な障害が起きるだろうとは思いましたけれど。

日本では暫く話題にならず、その後大揉めに揉めましたが、ドイツでは事故発生当初からすぐ風向きが注目されました。毎日風がどちらに向いて吹いているかが発表され、私たちは非常にそこに気を使っていました。その情報を元に気の毒ではあるけれど、風が向いた方向の作物は10年近く買わないようにしていました。

乳製品も1度止め、古いゴーダ・チーズなどチェルノビルの事故が起きる前に作られた物だけを買うようにしました。また、放射能を内部に貯め易い食べ物が発表されたので、そこにも注目し、買い物の時はそういう物を避けていました。

ここからは気のせいかも知れないのですが、事故の後保険会社が無料で引き受けてくれる癌の検査が増えたような印象を受けました。私の入っている保険会社は元々予防関係の料金をよく引き受けてくれていたのですが、事故後はそれまでシブチンだった会社でも癌の検査が無料になったとか聞いたことがあります。

そんな難しい10年を過ごしたのですが、その間も、その後も人間の成長が止まるという話は聞いたことがありません。ただ、どういう巡り合わせか人間の成長が140センチ辺りで止まってしまった人の治療がホルモンを使ったりして可能になったというような話は聞いたことがあります。知り合いに1人そういう人がいたので、朗報だと受け取ったのですが、その人は放射能で成長が止まったわけではありませんでした。

それにしてもこのテーマはエスターをパクったような印象でした。

★　CSI の手口

CSI では毎週起きる個々の事件が飽きられるとでも思ったのか、時々チーフが特定のサイコパスや恨みを持った人間に悩まされるという物語を背景に流すようになりました。グリソムが頭の狂った犯人から犯行を具体的に示す家のミニチュアを送りつけられる事件などがその例です。

パリでもその手法を使い始めました。トマの妹の腎臓移植手術にからめて、服役中の男がしつこく絡みます。演じるはタンギーのエリック・ベルガー。