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話を聞いた時期:2018年1月
結果発表:2018年3月
さすがは危機管理の達人の集まり。「ミー・トゥー」騒ぎは収束しそうです。ドイツでは「木を隠すなら森へ」と言う人が多いのですが、セクハラ、パワハラが出た後、家庭内暴力なども持ち出し、結局焦点がぼけてしまいました。
ハリウッドの人たちはそこがそういう場所だと承知で集まっており、何十年も改革しようというまとまった動きが起きておらず、個々の女優が酷い目に遭って、退場するだけでした。
今回の騒ぎで私の目に変に映ったのは2点
俳優の組合が動いたという話が出ていないのはなぜか。私の耳に届かなかっただけで、組合が俳優の待遇改善に乗り出しているのならいいのですが。
今回誰かが言い出し、その後「ミー・トゥー」と言いながら騒ぎ出して黒服で登場した女性たち、彼女たちは作戦を立てて、この種のトラブルを根絶しようと動いたのか、それともただ「自分も、自分も」と愚痴っただけだったのか。
今回の騒ぎで私が心配するのは1点
映画産業以外の分野ではアメリカも欧州もハリウッドよりはマシな所へたどり着いています。例えばフィオリーナ氏。彼女はメリル・ストリープよりちょっと若いけれど既に60歳代。生まれたのは1950年代なので、出世の道中嫌な経験もしているだろうと思います。両親は全然違う分野の人なので、レールが敷かれてその上を歩いただけという人でもありません。しかも大学はおよそ今の仕事とは関係の無い文系。そういう人が学士を終了した後、全然違う方面の勉強を始め、ヒューレット・パッカードのトップになってしまいました。社長だけでなく会長にも。営業成績が思ったほど上がらず間もなく撤退しましたが、とにかく会長にまで行ったのは事実です。
欧州では女性が首相や大臣というのは珍しくなくなりました。
そして身近な所を見ると、零細企業でも女性が従属的な地位だけでなく、チーフ格の仕事に就いているという現実があります。フィオリーナのような高い地位ではなくても、この女性たちが病欠すると、会社が困るといったポジションで働いている人は増えています。
90年代頃までは足元を見ず、上昇志向で無理をしたり、周囲から乗せられたお馬鹿さんが頻繁に出、「地味な所から無理をせず、足場を固めながら少しずつ上を目指せ」と言っても聞く耳を持たない女性が多かったのですが、最近は企業、医療分野では地道に実力をつける女性が増えています。
そうやって実際に社会で役立つ人材が育って来ているところへ、ハリウッドというメディアに大きな印象を残す社会が「何十年前の話?」と思わせる内容で大騒ぎを始めたので、一般社会に揺り戻しが来なければいいなあと願っています。
カリフォルニアのあの町だけ The endless のようにバリアーで囲まれて、発展が遅れたのでしょうが、世の中が悪い方に引っ張られる例をいくつか見ているので、心配しています。
今年もオスカー・シーズンがやって来ましたが・・・。
去年の今頃は入院の決定が下っており、仕事をそれまでに片付けて・・・などと大混乱でした。そして退院後にオスカーの発表だったのですが、目をやられていた上、まだスポーツなどを含む積極的な動きはだめな時期だったので、誘ってくれた近所の人は丁寧にお断わり。まだサイトが書ける状態でもなかったので、すっぱり諦めて全部パスしました(去年の遅配分は今年出します)。
今年は映画祭受難の年で、オスカー以外にもいくつかのスケジュールが仕事と正面衝突。何年かに1度こういう巡り合わせがあり、今年は我慢の年になりそうです。できる範囲での参加となります。オスカーは発表の週末が仕事と引っかかりそうなので、近所の家でテレビを見ることができるかまだ分かりません。誰が受賞をしたかは加筆して後でアップします。
去年から徐々に表に出始めていたセクハラ問題。ゴールデン・グローブの所ではまだ続々とニュースが出ていたので控えていました。映画界を報じるマスコミがオスカーをターゲットにと言うか、オスカーで区切りをつけるような面もあるので、ここでは少し触れます。ただ、この件では一般の非難合戦、訴訟合戦とはやや視線が違います。
起きた個々の事件については加害者と被害者がいて、刑事裁判にでもすれば誰が悪いと決着は着くでしょう。訴え出るのが遅くて時効にかかっていたり、証人がいないので証明できないけれど比較的はっきりした事件は、法的な手段は取れないものの、それぞれ誰が悪いという判断はつけられるでしょう。
仮に女性が扇情的な姿で現われて、役を貰うために誘惑を試みたのなら、男性に対する批判にマイナスのポイントが加算され、少し非難の度合いが減る、男の側が地位を利用してそのつもりの無い女性に何かを強いたのなら、男性側に非難のボーナス・ポイントが加算され、皆から「君は一体何という事をしたのかね」と後ろ指を指され、非難の度合いが大幅に増えるといった図式が成立します。そして被害者が未成年の場合はどんな言い訳も通らず、加害者が悪いという判断になります。そういう一般社会でも普通に通る理屈はここでは当たり前の前提ということで話を進めます。
色々な人たちがセクハラ問題で口を開いたため、今年のアメリカの賞、そして恐らくはベルリン映画祭の賞に影響が出そうです。
私はやや失望気味です。黒服のパーフォーマンスを今頃やって見せても、被害者は救われませんし、随分長い「ただ見ているだけ」という時代があり、その間に本来はこういった事を是正する方向を歩んでいたはずのアメリカのリベラル派がお昼寝していたという感があるからです。
★ 狭い社会、外の世界から遅れを取ったか
最近では1番最初に挙がった大物プロデューサーを拒否した女性たちが、キャリアで不利になるように裏で手配されていたかも知れないという話まで上がって来ています。そりゃ、そういう事もあり得ます。狭い業界なのですから。
こういう話は普通の世間では頻繁に起きており、是正も少しずつ制度的に進んでいることを考えると回り道をした一般社会の方が特殊事情を多く抱える映画界よりは多少明るいかなと思います。
私自身直接、間接にいくつかの経験をしましたが、ある時は役所の人がバックアップしてくれたり、ある時は医者が私の法的立場を説明してくれたり、そしてその論拠となる法律自体が被害者側に立つ人に過去よりは選択の余地を作ってくれています。こちらが全く期待していなかった意外な人たちからサポートを受けたこともあります。随分長い時間がかかっていますし、サポート無しの状況が山のようにあり、私自身のキャリアには間に合いませんでした。
助っ人には時には女性、時には男性、時には世代的にはかなり上の人たちもいました。全く助けが得られないと思っていた時にこういう人たちに出会ったので世の中全体に対して不信感を抱かずに済みました。「誰々がやっている○○は正しくない」と考える人がいて、そういう人たちが自分のできる範囲で助言してくれたりするのです。
おそらくアメリカの一般社会もそういう風に少しは動いているのでしょう。だからこそハリウッドでも今更とは思いますが口を開く人が現われたのでしょう。ハリウッドというのは意外と小さな町で、力がある人が支配しようと思えばできてしまい、自浄作用が働きにくい土地なのかも知れません。
★ 歌謡曲、助けてくれてありがとう - 3歩進んで2歩下がる
私の生きて来た社会には悪さをたくらむ人や、自分がやっている事を当然だと思い込んでいる図々しい人たちもいましたが、そうでない人たちもいました。これは私が1つの分野だけで無理やり自分を通そうとしなかったから経験できたことだと思います。困った時思い出したのは歌謡曲の歌詞。「押してもだめなら引いてみな♪」とか「1日1歩、3日で3歩、3歩進んで2歩下がる♪」歌謡曲の良さが分かったのは大分後で、当時はソウルやファンクが好きでしたが、なぜかこの歌詞は頭に残っていて、あり得ないような嫌な経験をした時には助けになりました。
ハリウッドでどうしても俳優やスターとしてやって行きたい、他の世界に移りたくないという人たちには選択肢が少なく、イエスと言うべきでないと頭で分かっていても、妙な要求を受け入れた人たちが一般の社会より多かったのではないかと思われます。そして私にはどう見ても今回の騒動はセクハラではなく、パワハラに思えます。
どんな理由で転向したのか分からないのですが、1度女優として名が売れた人が暫く出て来ないなと思っていたら、シナリオ・ライターになっていたという例もありました。スターとしてジャーナリストなどと向き合うのに疲れたのかも知れません。何か嫌な経験をしたのかも知れません。それでも映画界にはいたいと思ったのでしょう。で、インタビューアーが殆ど来ない別な職業に転職。それも1つの方法だと思います。次のステップとして願いたいのはそうやって一時緊急避難しても、気が向いたら時々スクリーンに登場して欲しいなあ・・・と思っていたら、そういう例もありました。
★ 悪習を止めるのは君たちの役目ではなかったか
私が非常に残念だと思ったのは、本来こういう流れに歯止めをかけられるはずの名の売れた俳優、力のある俳優、例えばアフレック家、フランコ家の名前が加害者側で挙がっていることです。監督業でも才能を示しており、今後のハリウッドを支えるだろうと思われた、まだ若い人たちがこんな面を持っていたのかと思うと失望します。
ここでこの人たちのキャリアがぽっきり折れてしまっても私はそれほど同情しません。持っていた才能については非常に残念だと思いますが、行動に歯止めがかからなかったとしたら、ねえ。中にはモラルを前に出すような社会批判の作品が代表作の人も混ざっていますからねえ。そして被害者の中には才能が花開く前にキャリアがぽっきりいってしまった人たちがいるわけです。これからシンボル的に数人の女優に賠償的な意味でいい役を回したとしても、そこから外れる人がいるでしょうし。
★ 言われてから考えた
フランスからは元・現大女優が「誘惑する自由」と言い出しています。2人の定義がはっきりしていないので、私は「魔女狩りのような事はだめ」という点だけに賛成し、他の点についてはまだ意見を保留しています。
すると今度はアメリカの方から「うまく行かなかったデート」という話が出ています。ここが重要だと思います。未成年は論外、ここは大人の男女の話です。 「話を持ちかける、合意が成立しない、じゃ、さようなら」とか、「話を持ちかける、合意が成立する、デートしてみてやっぱり気に入らなかった、じゃさようなら」とかでいいはずです。「振られた人は、その人にこだわらず、次の人を探す」本来はこれで社会が回っているはずです。
この時に言い寄られても、暴力を使って無理強いしなければセクハラとは言いにくいでしょう。暴力を使って無理強いしたらアウト。セクハラどころか傷害事件などの犯罪です。言い寄られる時に使う言葉があまりにも下品だったら、それについてノーと言うべきなのもこの時点です。それでも相手が続けたら、そこからセクハラが成立するのだと思います。多くの場合言い寄られた側、何かを要求された側の「ノー」が無視されたら問題化が始まります。
★ ハリウッドの特殊性
・・・などがあっては行けないのですが、実際にはあるようですね。オーディションがホテルの部屋で、プロデューサーと主演女優のみで行われることがあるそうです。上に書いたようなデートではなく、明らかな上下関係があるので、ここで問題が生じればセクハラと言うよりパワハラ。
ハリウッドは後ろから見ると問題の百貨店で、セクハラはその1つ。他にも麻薬の問題を抱えている人や、何かの悩みから中毒的に何度も整形手術をする人や、まああれこれあります。普通の社会の問題が集中して一箇所に集まった感があります。行った人の印象だとさほど大きな町ではないようですが。
これからまた暫くこういった事件の「真相を暴く!」的な作品を何本かシンボル的に作って終わってしまうのか、俳優組合あたりが出て来て、一定の法制化に動くのか、リベラル派がリベラル流の歯止めをかけられるのかが見物(みもの)です。
★ 誰が叩かれるか
結構な人数の人が加害者として挙げられていますが、それでもメディアが言及を避けているなあと思われる人もいます。便乗して名前を売ろうという試みもあるようです。本当に大変な事件と、まあこの程度ならと思える事件と、偽事件をごちゃ混ぜにして全体が見えにくくしているような感じを受けています。君たち、本当に問題を解決したいのかね、ゴシップ雀君。
ハリウッドが反省して透明性を高めるのも1つの解決策ですが、既に高い地位に到達してこれまで通りにやりたい人も大勢いるでしょうから、仕事がフェアに行くようになるまでには時間がかかりそうです。
回り道に見えても女性を高い地位に送り込む方が結果としては早いかも知れません。もう1つ私がいいかなと思っているのが、ハリウッドでない土地での映画作り。新しくどこかの町に小規模な映画の町を作ってもいいですし、欧州の(経費が節約できる)スタジオを利用してもいいですし(実際行われている)。ハリウッドは様々なインフラが整っているので便利だとは思いますが、俳優には他所の町に住んで、仕事の時だけハリウッドに行く人もいます。ま、映画人、これからゆっくり対策を練ってください。
ある程度評価をしていた俳優が、こんな人間だったと知って、私は大いに失望しておりますぞ。対策には気合を入れてください。
技術などの受賞は省略しました。
作品
これは私の推測ですが、この作品もセクハラ問題でこけた作品があったので、株が上がったのではと考えられなくも無いです。私はデル・トロ大好きなので「掴め、チャンス!」
もう見ました。デル・トロファンなら納得の作品です。原作とか、元ネタは無いのですが、デル・トロは子供の頃から漫画が大好きだったこともあって、こういうマーベル・コミックや DC コミックがあっても不思議ではないという作り。恐らく彼も読んでいただろうと思われるアレクサンドル・ベリャーエフの両棲人間の系統の話です。
ゴールデン・グローブでは7部門ノミネート。監督賞と作曲賞を受賞。デル・トロ監督はオスカーはまだ取ったことがありません。初でたった1回のノミネートは2007年の脚本賞。ゴールデン・グローブも今年が初受賞。シェイプ・オブ・ウォーターでは本人は監督、作品、オリジナル脚本3部門でノミネート、作品全体では13部門でノミネートされています。頑張れ。
後記: おめでとう。うれしいです。
セクハラ問題でこけた作品や人が出たので運が良かったと言えない事もありませんが、デル・トロの個性が認められるのはうれしいです。ハリウッドとしてはこの作品のようなタイプより、もっと難しそうな社会、政治的のテーマを扱うか、豪華絢爛のエンターテイメント作品にオスカーをあげたかったのかも知れませんが、デル・トロにもチャンスをと私は長年思っていました。
元ネタは実話。左派系のような名前を冠していても実は全然違うヒットラーの政党とそのライバルの左派系政党という選択肢は英国に取ってはどちらも好ましくなかったのですが、英国は「本物の左派よりはいいだろう」というので、ヒットラーに片目をつぶっていました。チャーチルはしかし「ヒットラーは危ないよ」と考えていました。そのあたりのいきさつを描いた作品。当時の英国の事情は日本ではあまり知られていないので、参考になるかも知れません。
後記: 作品を見ていないので、分からないのですが、戦争が起きるに当たっての当時の事情を描いたと聞いています。ルーズベルトとチャーチルの巨額の借金にも触れていたのでしょうか。戦争は2人にお金を貸していた人と大きな関わりがあると聞いていますが。同じ年にダンケルクの戦いも映画化されノミネートされているのは興味深いです。
元ネタはアンドレ・アシマンの小説。80年代後半の北イタリアの話。映画では80年代の前半となっています。ネットの情報で、確認は取れていません。欧州ではその数年間でゲイの状況は大きく変わっています。イタリアはやや保守的かと思われるのですが、この数年間のずれは多少筋に影響するかも知れません。土地柄から言うと、北イタリアは他の土地より時代の新しい動きに比較的寛容です。
17歳(未成年!)のイタリア人少年とアメリカから来た24歳の大学院生の出会い。2人が男性だという点を除くと、よくある夏の恋物語のように見えます。
ホラー映画がオスカーにノミネートされるのは珍しいです。ある作品がセクハラ問題に絡んで引いたので、この作品が上がって来たと書いている記事もありました。掴め、チャンス!本職がコメディアンの監督の第1作。監督の母親は白人。なので彼の血は白人と黒人が半々なのですが、なぜか黒人は彼を黒人として受け入れ、白人は彼を黒人とみなすのがこれまでの欧米の伝統でした。黒人の血が16分の1の人でも黒人に数えられていた社会。ハリウッドにはそのために仕事が無くなってしまった女優がいました。なぜなんだろう、計算では半々なのに。
女性は白人のローズ、男性は黒人写真家のクリスというカップル。女性の実家を訪ねる2人。その家でクリスはホラーの経験をするという筋。当初予定されていた結末ではクリスに過酷な運命という不条理な筋。ところが撮影中に世間では黒人が不条理な目に遭い命を失う事件が続いたため、優しい結末に変更。その方がテーマをくっきり表わせたという評を聞いています。
推理小説ファンの期待に応える素晴らしい伏線が引かれている作品とのことです。そして黒人監督が自ら黒人の置かれている立場やリベラルな白人の立場を分析して描いているようです。なので、今年のアカデミー賞で高く評価されていい作品と言えますが、ノミネート数がゴールデン・グローブなどより多いので、チャンスは少なそうです。それでもノミネートで注目を浴びたのは今後にいい影響があるかも知れません。
オスカーは7つノミネート。渋い俳優3人もノミネートされています。
娘が暴行され殺されたのに一向に動かない警察。仕事に励めとせかすために母親は人目につく道路に3枚の看板を立てます。警察署長を名指しで非難したこともあって彼女と町の人たちの間には亀裂が。暴力が前面に出る作品のようでうす。普通の社会のルールを気にかけない粗暴で直接的な被害者の母親、実はちゃんと捜査はしているけれど口の悪さが祟る警察署長、人種差別主義者で正義感のある(!?)部下の警官。彼は重要なファイルを守るために大火傷を負う役目なのでちょっとだけ同情。そして結末は予想外の方向へ。
後記: シェイプ・オブ・ウォーターと一騎打ちになり、王座は譲ったものの、2018年の作品の中では高い評価を受けているそうです。ただ、こちらはやや暗いのだそうです。
マクドーマンド、ハレルソン、ロックウェルの作品は随分前から見ています。この3人が揃うなら、ただの社会派のストーリーではなく、ユーモアもありそうに思います。今は時間が無いのですが、いずれ見てみたいです。
ノーランが戦争映画と聞くとピンと来ないのですが、でも作っちゃったようです。ノミネートまでされたので、いい作品なのでしょう。臨場感が売りのようです。実話をベースに作られています。なのでここでもウィンストン・チャーチルが政治的な役割を果たしています。
後記: 第二次世界大戦はどこの誰が脚本を書いて、誰が得をしたのかがよく見えない戦いでしたが、ダンケルクの戦いにも謎がついて回ります。この作品がそこを突いているのかは見ていないので分かりません。ただ、チャーチルやルーズベルトの作品と同じ年にダンケルクの戦いの作品も出たのは連動しているのかなと思います。
まあ、40万人救出計画で、36万人が助かっています。命あってのなんとかで、失ったのは約1割の兵士、他は武器、車など物だけ。当時のドイツの近代的な作戦の下では運が良かったと言えるかも知れません。
元ネタは実在のチャールズ・ジェームスというファッション・デザイナー。フランスの大御所より上だったかも知れません。
ダニエル・デイ・ルイスは以前にも引退だ〜とか言ってイタリアで靴屋になるべく修行をしていたことがありますが、ファントム・スレッドは彼の引退前の最後の作品だそうです。本当かなあ〜。
50年代ロンドン。英国のファッション界を背負う完ぺき主義のデザイナーのレイノルズ・ウッドコックがルイスの役。上流階級に顧客を持つウッドコック。新しい恋人アルマが現われたことで彼の病的なまでに規則正しい生活に亀裂が生じます。その解決法がまた病的。
公開されている写真を見ると、美術、衣装などに物凄く気合が入っています。そのためにデル・トロ作品と正面衝突しそうです。
ダニエル・デイ・ルイスはなかなか難しい人生を送って来たようなので、この役には向いているかも知れません。なぜなんだろうと思ったのですが、もしかしたら両親や親戚が既にある程度職業的に成功した人たちだったからなのかも知れません。何しろ親父さんは野獣死すべしの原作者。早川ポケミスの常連です。
本人は舞台に行ったり、引退したり、戻って来たりと居所が落ち着かない人ですが、アカデミー賞の主演男優賞を3回取ったので、そろそろ十分と考えているとは思います。60歳で俳優は定年と考えているのかも知れませんし、「引退後はデザイナーになる」などと今から言い出しています。
元ネタは実話。出演はアメリカが誇るリベラル派の大御所俳優。テーマはタイトルにもなっている国防省のペンタゴン・ペーパーズ。ペンタゴン・ペーパーズのテーマはトンキン湾事件。7年ほど前に機密解除されているので、脚本家が執筆にあたって本物の書類を参考にする事ができます。
ベトナム戦争はアメリカがフランスから引き継いだような形になってしまったので、ベトナム人に取ってはいい迷惑。ずるずると植民地のような状態が続いていたところへ、アメリカ軍がやって来て、結果として泥沼化。ペンタゴン・ペーパーズは1945年から1968年までのベトナムの事をまとめた馬鹿でかい報告書。報告書によるとアメリカ側の重点は共産国が増えるドミノ現象に対する恐れ。
こういう報告書があることを、書いた当人の1人など内部の人間がニューヨーク・タイムズにリーク。後にワシントン・ポストも戦列に加わり報道。ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書はその情報を受け取った側の話のようです。
出た、女監督!頑張ってください。
両親とはうまくいかず、しかし友達はある程度いるカソリックの高校に通う少女。ボーイフレンド候補も現われたところで、その相手がゲイであることを発見。友達関係ではその後もあれこれ、まあ高校では良くありそうな話が続きます。両親ともずっとギクシャクしていたのが、友達関係で失望したり、大学進学で色々あったりで、部分的に関係解消。
あらすじだけを聞くと平凡な話に思えますが、業界では非常に高い評価を受けています。当たり前の生活をきめ細かく描いたからでしょうか。元ネタの一部分は監督の実際の経験。
主演男優
話題は彼のメイク。俳優としてのオールドマンの名前は1982年頃から挙がっています。私は90年代から彼の作品を目にしています。おもしろい作品にも出ていますが、オスカーのノミネートは2012年が初で主演男優賞。それ以来何も無く、今年また主演男優賞。でも今年はダニエル・デイ・ルイスがいるので、難しいかも。オールドマンはまだ引退しないようなので、この先もチャンスがありますし。
後記: 「家庭内暴力男2人に賞を」ということで非難を受けたうちの1人。元夫婦間に見解の相違があったようなので、彼を悪党扱いするのは早過ぎるようです。被害を受けたはずの側の子供が父親擁護に回っています。元夫人が病気がちになった時に十分な思いやりを受けられなかったのがそもそもの問題の起点だったのかも知れません。家庭内の事情なので、外から分からないことがありそうです。
こういった話の運動や非難の方法には稚拙な物が多く、まだ成長の余地がたくさんあります。唯一良くなったと言えるのは、こういった古い話が起きた時期と現在の間に、家庭内暴力、セクハラ、パワハラは行けない事なのだという認識が広まったこと。
その一方ハリウッドはオスカーを機にこの話をうやむやにしてしまうのではないかという危惧はまだ消えていません。暴力行為、性的暴行などは戦後だけを見ても犯罪行為なのですから、この騒ぎを機に、今後ははっきり警察に届け、裁判で決着を着けるように被害者が動けばと祈るばかりです。
「俺、これで俳優辞めるから最後の土産にオスカーくれ」と言っているようなルイスですが、まあそれなりの演技ができる人です。何しろ主演男優賞を既に3つ取っています。あのゲイリー・クーパー、スペンサー・トレイシー、ジャック・ニコルソン、トム・ハンクス、マーロン・ブランド(1回は「要らねえ」とつき返す)、ショーン・ペン、ダスティン・ホフマン(今回のセクハラ疑惑で名が挙がったので、今後の受賞は当分無さそう)、フレドリック・マーチでも2回なのに、ルイスはいつの間にか3個取っています。今回あげたら当分彼に追いつける人は出ないでしょう。
後記: この作品を最後に俳優を辞めると言っていたので、お別れ記念に彼にオスカーが行くかとも思いましたが、個人的な話より政治の話の方が重要とアカデミーは判断したようです。それともまだ若いから引退を諦めてまた出て来い、そうしたら4つ目あげるよというメッセージなのでしょうか。
主としてテレビで活躍しているウガンダ系英国人。今回の作品は俳優より筋の方で勝負しているようなので、主演男優賞が彼に行くかは不明。
作品の解説だけを文字で読んでいると、「こんな作品の主演にオスカー?」と思ってしまいます。よほどいい演技を見せたのでしょうか。
この作品もセクハラ問題でこけた作品があったので上がって来たと書いている記事がありました。今年彼が受賞ということは無いでしょうが、いいじゃん。あちらが自分のせいでこけたんだから。
彼とサミュエル・L・ジャクソンは映画界がどういう原則で動くかを良く理解していました。自分がオスカーを取った年にも大して感激せず、「これからスポーツ中継を見に行くんだ」とか何とかおしゃべりしていました。とは言うものの10回ノミネートされ、2回受賞。今年もご苦労様です。
ここにダグ・ジョーンズがノミネートされていないことを批判している記事を見たのですが、シェイプ・オブ・ウォーターで男性を主演にノミネートするのは難しいです。ダグ・ジョーンズは登場する時間が結構短い上に、台詞はゼロ。衣装の関係で本人の姿は殆ど見えません。悪役で大活躍するマイケル・シャノンは主演に近い時間登場しますが、役割からどうしても助演といわざるを得ないでしょう。助演にはリチャード・ジェンキンスがノミネートされたのですが、彼だけがここに選ばれるのも不公平。男性は3人ほどが同じぐらいのバランスで出演しています。
蛇足: ダグ・ジョーンズは物凄くイギリス人風に話し、振舞うのですが、れっきとしたアメリカ人。若い頃は体を自在に曲げる曲芸師、後にはファンタジー系の映画で人間でない役を引き受ける役者に転進。パントマイムをやると書いている記事も見たことがあります。
主演女優
上っ面だけを説明した解説を見ていて、パッとしないなと感じていたのですが、それにしては随分渋い俳優を集めていると思い、さらに解説を眺めていたら、全然違うイメージが沸いて来ました。出演する主要な俳優の個性を十分生かした作品のようです。
後記: まだ作品を見ておらず、解説を読んだだけなのですが、ファーゴの時とはまた違った個性で、おもしろい役を演じたようです。
なお、マクドーマンドに賞を渡す役は本当ならケイシー・アフレックのはずでしたが、現在セクハラ問題で後ろ指を指されている最中のアフレックは、風を読み、忖度をした結果、気を利かせて出席を控えたので、他の女優が代役を務めました。アフレックは訴えた女性との間に示談が成立しているので法的には問題は無いのですが、ここで1歩引くのは多少常識があるということかも知れません。才能があり、いい仕事し、お金にもさほど困っていないのになぜ女性に嫌がらせをせずにいられないのか、そのあたりは私には理解で来ません。
リタ・トゥーシンガムを思わせる個性的な顔の女優。美人ぞろいの映画界では個性的ですが、実社会にはどこにでも見られる顔立ちです。彼女が貰った役はおもしろく、俳優としては楽しかったと思います。ただ、漫画っぽい作品だったので、演技力が高く評価されるかは未知数。私としては取ってほしいですが。
後記: この作品はストーリー、時代の雰囲気、出演者のバランスが非常に良く、誰か1人が抜きん出て優秀という作りになっていません。なので主演男優のジョーンズだけ、主演女優のホーキンスだけ、助演の誰か1人だけに賞をあげるのは難しいです。アンサンブルの良さが売りです。なので彼女は受賞をのがしましたが、ノミネートされただけでも株が上がりますから、良かった、良かった。
アカデミーの会員にこの種の作品が気に入られるかで勝負がつきそうです。ジャーナリストや批評家の間では高い評価を得ていますが、アカデミーの会員は映画を作る側。
この事件が今映画化されたのも不思議に思いましたが、まさか主演女優賞にノミネートとは思いませんでした。よほどいい演技をしたのでしょうね。私はこの事件を発生時から知っていました。ハーディングは女性では珍しく、世界で2番目にトリプル・アクセルで着氷した選手でした(1991年)。1人目は伊藤みどり(1988年)。3人目は中野友加里(2002年)。4人目がリュドミラ・ネリディナ(2002年、中野と同じ日の試合中)。そして続いたのが浅田真央。彼女の凄いところは1つのプログラムで2度跳んだことがある点。後に続く女性スケーターはまだいますが、10人に達していません。
こういう輝かしい業績を残しているのですが、ハーディングは現役中にライバルのケリガン選手を元夫たちに襲わせたことがばれて、スケート人生は終わり。オリンピックの予選でした。ケリガン負傷のため優勝したのはハーディング。事件がばれていたのでオリンピックには2位の女性が出ることに決まりかけていましたが、ハーディングが強引に出場。しかしオリンピックでは妙なトラブルに見舞われて8位。それでも入賞はしたことになります。ケリガンはトリプル・アクセルなどのハイライトは無く、無難に収め銀メダル。多少同情票もあったかと思います。オリンピック終了まで事件の処理を延期していたハーディングは、終了後判決に従います。波乱の人生はそれだけで終わらず、その後も警察沙汰があったりで、スケート界からは遠ざかり、格闘技の方に向かいました。警察沙汰は夫や恋人に殴られたのではなく、自分が暴行をした容疑です。
ケリガンはオリンピックでメダルを取って間もなくプロに転向。俺たちフィギュアスケーターに出演したのを見ました。ケリガン襲撃事件はそちらを見て下さい。
日本ですと被害に遭った気の毒なケリガンに同情が集まり、彼女の映画ができてもおかしくありませんが、アメリカ人と言うのは恵まれない境遇で育ち、ファイティング・ポーズで困難に立ち向かうという話が大好き。なので、この作品もケリガンではなくハーディングが中心です。
後記: 珍しく映画館に行って、見ました。スケート・シーンでカメラに工夫があり云々と宣伝されていたのですが、それほどいいカメラ・アングルではありませんでした。主演のロビーがどの程度自分で滑ったのかは分からなかったです。
被害者ケリガンは口の悪い人らしく、可哀想なプリンセスと言うわけではなかったようです。靴紐が試合の時に切れる事件は私は合計3件知っています。織田選手の時は切れてしまい、高橋選手の時は選手の世話をしている女性が事前に気づいて事なきを得たそうです。一体なぜ起きるのかはちょっとした謎です。
私も見たディア・ハンターを皮切りに長い長いアカデミー賞のリストが続く人。ディア・ハンターの時の初々しい様子は今も覚えています。21回ノミネートされ、助演1回、主演2回受賞しています。今年主演で受賞すれば、これまでのダニエル・デイ・ルイスに並びますが、今年ルイスが受賞してしまったら、1つ足りません。ストリープは作品によって感じのいい時もありますが、普段はあんまりいいなと思いません。
後記: ストリープやウィザースプーンがここぞとばかりに黒い服で現われたのがゴールデン・グローブの授賞式。2ヶ月経って、そろそろ下火になりそうです。こういう事件を根絶させたいのなら、もう少し戦術を練ってから出て来て欲しかったです。
監督
何を書いたらいいのか分かりません。大好きな監督で、会って話したこともあります。ヘルボーイの時にファンタに来たのですよ。彼は彼で日本のアニメ大好き。そして非常に友情に厚い人です。ヘルボーイの時はロン・パールマンがもう年だからとか、知名度が少ないからとスタジオが拒否して、ジョン・トラボルタなど有名人を主演にしようとしたのですが、ガンとして断わり、ロン・パールマンで押し通しました。なぜか。パールマンは彼の初期の作品(1993年)のためにわざわざメキシコに来てくれた数少ないハリウッドの俳優だったのです。当時メキシコ人だと言えばアメリカでは下に見られる立場。なのに手伝ってくれたのです。今回はダグ・ジョーンズ。1988年から160本ほどテレビや映画に出ている(テレビ・シリーズなどはタイトル1個を1本と計算)ジョーンズは、1997年18番目の作品でデル・トロの助っ人に駆けつけています。ヘルボーイではおもしろい両棲人間の役を貰い、続編にも登場。今回は両棲人間が話の中心、言わばストーリーの中では主役にジョーンズを据えています。
他の場所にも書きましたが、デル・トロはパシフィック・リムの続編を他の監督に譲って、こちらに専念。彼の大好きな分野なので、予算を削られてもなんのその。オスカーにノミネートされてしまいました。どうだ、見たか、予算泥棒!
後記: 彼に監督賞を取ってもらいたいと思う人は多いのではないかと思います。この作品1つではなく、これまでの作品全体に監督賞をあげたいなあと思っていたのですが、やっと彼にも幸運が巡って来ました。私はもううれしくて。
別な所にも書きましたが、本職は漫才。しかし初監督作品でかなりな才能を発揮したようです。これっきりで映画の仕事が来ないということはまず無さそう。初回でいきなりオスカー候補ですからね。脚本も書いています。
ノーランの作品は大体好きなのですが、戦争映画に彼が向いているのかは疑問。
ブギーナイツとパンチドランク・ラブは当時のその辺の映画とやや趣が違っておもしろかったです。あの頃は作りがやや緩かったですが、ファントム・スレッドはかなりがっちりした作りのようです。時間があれば見たいですが、近所の DVD 屋さんは閉店。ちょっと離れた所にある DVD 屋さんも別な支店に吸収。最近は借りにくくなっています。 DVD は好きなシーンを見直すことができるので便利なのですが。
作品数は少ないですが、撮るたびに分野が違い、それぞれ成功しているので、才能はかなりありそう。
助演男優
ハレルソンが自殺した時に残した遺書で、反省し、正義感に目覚める人種差別主義の警官役。火の中に飛び込んで重要な書類を救うので、大火傷をして入院。3度ぐらいの火傷ならちゃんとした病院で手当を受ければ何とかなると知っている人は少ないから、彼に同情が集まるでしょう。
後記: ロックウェルに賞が行ってうれしいです。残念なのはハレルソン。同じ作品から2人も候補者を出すなんて、意地が悪い。1人しかもらえないのですから。ロックウェルの作品は100本ほどの出演作のうち、 ミュータント・タートルズ、 バスキア、 セレブリティ、 真夏の夜の夢、 グリーンマイル、 Jerry and Tom、 ギャラクシー・クエスト、チャーリーズ・エンジェル、 ザ・プロフェッショナル、 ウェルカム トゥ コリンウッド、 マッチスティック・メン、 フロスト×ニクソン、 月に囚われた男、 アイアンマン2 を見ています。あと2、3本あるかも知れません。顔はイケメンではなく、特に背が高いわけでもなく、目立たない人物です。
サブプライム・ローンのおかげで偉い苦労をした貧困層に視点を当てた作品。ちょっとおどけた作品に出ていたダフォーですが、今回は苦い現実の話。オスカーの候補は全て助演男優賞で、今年は3度目。
後記: オランダ風の名前ですが、本名は普通のウィリアム。医学関係の仕事に従事する両親を持ち、芸能界とは関係が無かった人。
オスカーは毎年1個しか無いのに、同じ作品から2人も助演賞を出すのはどういうつもりなんだろう。ハレルソンは警察署長、ロックウェルはその署で働く警官の役。
後記: 父親の職業がヒットマンで、10年程前刑務所(危険人物が服役するために警備は非常に大掛かりな刑務所)で服役中に病死。父親が犯行時別な場所にいた可能性もあったため、ハレルソンは釈放させるためにかなりの額のお金を使うものの失敗。父親は余罪の他に脱獄も試みたことがあるので、釈放の望みは薄かったそうです。本人はハチャメチャな人生を送りつつ、大学をきちんと卒業したり努力家の面も持っている。
スリー・ビルボードで助演男優賞に2人も候補者を出し、結局ハレルソンにはあげないというのはちょっと意地悪。それでも主演1回、助演2回ノミネートされています。ゴールデン・グローブも4回ノミネート、受賞無し。
プラマー自身はタナボタ式に役が転がり込んできた上にノミネートで幸運でしたが、既にオスカーを持っている人なので、本人は「ただピンチヒッターを引き受けただけ」と思ったのではないでしょうか。
監督はいい迷惑。既にケビン・スペーシーで撮り終えていたシーンを全部やり直し。とは言え、スコットのけじめのつけ方はきちんとしています。
後記: 御年88歳のカナダ人。代役を務めたゲティ家の身代金では当初のキャスティングで監督はプラマーも候補に入れていたそうです。スペーシーの撮影シーンは1ヶ月でプラマーに差し替え。スペーシーを助演男優賞に持ち上げるキャンペーンもプラマーに差し替え。こういったゴタゴタの謝罪の意味もあってのノミネートかも知れません。
シェイプ・オブ・ウォーターの主演女優は明らかにサリー・ホーキンスなのですが、主演男優と助演男優は難しいです。ストーリー上の主演はダグ・ジョーンズなのですが、出演時間が短い上に、両棲人間の衣装を着ているので、顔は見えない、両棲人間なので言葉は話さない。手話はまだちゃんと覚えていないというわけで、主演でノミネートするわけに行きません。助演の方は達者な俳優が3人も出て来て、皆それぞれ自分の役割をちゃんと理解してのびのびと演じています。まあ、スリー・ビルボードで2人立候補させたのだから、シェイプ・オブ・ウォーターで3人出してもいいですが、そうすると2作品だけで5人の枠が埋まってしまいます。ジェンキンスも良かったですが、他の2人も良かったです。
助演女優
最近はこういうお母さんを毒母と言うんですね。ドイツでは烏母と言います。真っ黒な性格の母親という意味です。
後記: ハーディングを演じた女優はハーディング本人より感じがいいです。彼女の母親ラヴォナ・ゴールデンを演じたのがジェネイ。子供を決して褒めない母親だったそうです。私自身は家が貧しかったので母親が縫った衣装をトニアが着ていたと聞いていたので、子供の面倒を見る人だったのかと思っていました。
作品はハーディングからは良い評価、事件の被害者ケリガンからは無視され、ゴールデンからは実際は違っていたという評価が出ています。
また、当初は可愛そうな被害者というイメージだったナンシー・ケリガンがオリンピックで金メダルを取ったオクサナ・バイウルに表彰の場で嫌味を言ったことが公になり、彼女自身が悪女になってしまうというおまけつき。
バイウルは幼い時に保護者を亡くし、スケート関係者に養女に近い形で支援を受けてオリンピックの金メダルを取ったという事情があります。当時スラブ系の社会にはこういった話を大げさなお涙頂戴物語に仕立てて連日報道する傾向があったので、バイウル自身が大きな注目を浴び、メダルを取ってうれし泣きしていた時に、金メダル候補だったのに襲撃され、結果として銀メダルに収まったケリガンから意地悪い言葉を投げられたようです。スケート人生しか知らずまだ16歳だったバイウル。スケート界には時たまこういうドラマがあります。私は若いのに波乱万丈の人生を送っている日本のスケーターが、こういった騒ぎを起こさないのでほっとしています。
私も子供の頃自分に近い人間に、ある事に才能があると思い込まれ、困った立場に追い込まれ、学校の先生や友達に救われた経験をしているので、自分の夢を子供に追わせる親という話を聞くと、ハーディングにわずかですが、同情してしまいます。
役柄上オスカーにノミネートされるほどの演技ではありませんでした。本人が悪いのではなく、そういう役だったです。彼女は前の年にもノミネートされています。受賞を逃したとしても、2年連続ですと、将来いい影響が出そうです。
脚本
監督が自分で脚本を書いています。本職は漫才・・・というか2人組のコメディアン。監督デビュー。アカデミーがアリバイ的にただ黒人の候補者を入れたと言うにはやや重いテーマ。2度見ないと筋がちゃんと分からないと言う人がいるぐらい、推理小説仕立てになっているようです。台詞のあちらこちらに手がかりがちりばめられているとか。
後記: 奴隷制度、人種差別などで建国をしたアメリカでは、長い時間をかけて軌道修正が行われているようです。1940年代、50年代はただシンボル的にあげるだけ。大体から黒人が主演や重要な助演に抜擢されることが稀でした。60年代からはリベラル的な政治に変わったので多少受賞者が増えましたが、それでもシンボル的な意味合いが強かったです。ただ、公民権を得た黒人が映画館に入場料を払っているという事実がいくらか意味を持ち始めたのではないかと思います。B級ではありますが黒人向けのアクション映画などが出始めます。
ちゃんとその人が行った優秀な仕事が評価されて賞というケースは80年代から増え始めます。賞を貰うにはまずその仕事に携わらなければノミネートもされません。その意味ではクインシー・ジョーンズが音楽で、リー・ダニエルズが制作で、ジョン・シングルトンが監督でと、少しずつ作る側に進出して来ます。
新聞などはあまり取り上げていませんでしたが、80年代、90年代、それ以降徐々に黒人の受賞者が増えて行きます。まだ制作の絶対数が少ないので、ノミネート、受賞者も少ないですが、全人口の約1割が黒人とされているので(やや古い統計。アメリカは政策的に特定の人たちの移民を認めるので、時々ガラッと人口構成が変わることがあります)、まあ、コンスタントにオスカーの1割が黒人になればいい線行っていると言えるかも知れません。
今年、女性たちがセクハラと言って騒ぎましたが、ハリウッドは黒人があまり入れない世界でもありました。これも解決法は同じ。少しずつ制作側に黒人を増やして行けばいいです。監督、脚本家、製作者、カメラマンそういった方面に黒人がいるのが当たり前になれば、問題は自然消滅するのではと希望的観測を持っています。
2人が自分たちの結婚について自分で脚本を書いています。
漫画を実写したような作風です。
後記: デル・トロはよく監督作品の脚本も自分で書いています。映画の仕事をあまり分業にせず、自分のスタイルを統一させています。
監督が自分の体験を織り込んでいるので自分で脚本を書いたようです。脚本を書くのは初めてではなく、これまでに自分が出演した作品の脚本を担当したことがあります。
ヒットマンズ・レクイエムの脚本家。当時この作品で脚本賞にノミネートされています。
脚色
長編アニメ
短編アニメ
外国語映画
撮影
後記: シェイプ・オブ・ウォーターの撮影もいい感じでした。残念。
美術
後記: 納得。
ここにファントム・スレッドが入ってないのは不思議です。写真を見る限りかなり美術には気合を入れています。
衣装
この作品で決まりではないかと思います。
後記: そりゃそうでしょう。
音響
いい作品でしたが、音響はさほど目立ちませんでした。
編集
音響編集
視覚効果
メイクアップ・ヘア
日本人もノミネート。
後記: その上受賞。この人もルイスのように映画界から足を洗って別な仕事を始めていたようです。アカデミー賞に何度かノミネートはされていたものの、受賞に至っていませんでした。ギレルモ・デル・トロと話が合いそうな人です。
ダグ・ジョーンズのメイクや衣装は一体どこにノミネートされるべきなのか迷います。
音楽(オリジナル・ソング)
音楽(作曲)
後記: シェイプ・オブ・ウォーターの音楽は目立ちませんでした。デスプラはフランス人で、いくつかの有名な映画の音楽を書いており、ベルリン映画際、アカデミー賞で名前が挙がる人です。オスカーは2つ目。
短篇
ドキュメンタリー(短篇)
ドキュメンタリー
功労賞、科学技術賞、特別賞
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の短編。メキシコとアメリカの国境を渡ろうとする移民グループの話。監督はメキシコ人。
名誉賞
ヌーヴェルヴァーグ系のベルギー・ギリシャ系フランス人監督。
カナダ人としては珍しく成功した俳優。近年は欧州のテレビ・シリーズにも出ていました。筋金入りのリベラル派。14歳で地元のラジオ番組の司会者に。1962年のテレビ出演を皮切りに現在まで190本弱に出演。俳優以外の仕事には殆ど手を出していません。
監督、プロデューサー、編集者、俳優など。
撮影監督。フレンチ・コネクション、ボギー!俺も男だ、エクソシスト、サブウェイ・パニック、 ステップフォード・ワイフ、コンドル、ネットワーク、サージャント・ペッパー、 トッツィー、ワイアット・アープ、フレンチ・キスなどの撮影を担当。
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