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2018年 アカデミー賞ノミネーション

話を聞いた時期:2018年1月

結果発表:2018年3月

さすがは危機管理の達人の集まり。「ミー・トゥー」騒ぎは収束しそうです。ドイツでは「木を隠すなら森へ」と言う人が多いのですが、セクハラ、パワハラが出た後、家庭内暴力なども持ち出し、結局焦点がぼけてしまいました。

ハリウッドの人たちはそこがそういう場所だと承知で集まっており、何十年も改革しようというまとまった動きが起きておらず、個々の女優が酷い目に遭って、退場するだけでした。

今回の騒ぎで私の目に変に映ったのは2点

俳優の組合が動いたという話が出ていないのはなぜか。私の耳に届かなかっただけで、組合が俳優の待遇改善に乗り出しているのならいいのですが。

今回誰かが言い出し、その後「ミー・トゥー」と言いながら騒ぎ出して黒服で登場した女性たち、彼女たちは作戦を立てて、この種のトラブルを根絶しようと動いたのか、それともただ「自分も、自分も」と愚痴っただけだったのか。

今回の騒ぎで私が心配するのは1点

映画産業以外の分野ではアメリカも欧州もハリウッドよりはマシな所へたどり着いています。例えばフィオリーナ氏。彼女はメリル・ストリープよりちょっと若いけれど既に60歳代。生まれたのは1950年代なので、出世の道中嫌な経験もしているだろうと思います。両親は全然違う分野の人なので、レールが敷かれてその上を歩いただけという人でもありません。しかも大学はおよそ今の仕事とは関係の無い文系。そういう人が学士を終了した後、全然違う方面の勉強を始め、ヒューレット・パッカードのトップになってしまいました。社長だけでなく会長にも。営業成績が思ったほど上がらず間もなく撤退しましたが、とにかく会長にまで行ったのは事実です。

欧州では女性が首相や大臣というのは珍しくなくなりました。

そして身近な所を見ると、零細企業でも女性が従属的な地位だけでなく、チーフ格の仕事に就いているという現実があります。フィオリーナのような高い地位ではなくても、この女性たちが病欠すると、会社が困るといったポジションで働いている人は増えています。

90年代頃までは足元を見ず、上昇志向で無理をしたり、周囲から乗せられたお馬鹿さんが頻繁に出、「地味な所から無理をせず、足場を固めながら少しずつ上を目指せ」と言っても聞く耳を持たない女性が多かったのですが、最近は企業、医療分野では地道に実力をつける女性が増えています。

そうやって実際に社会で役立つ人材が育って来ているところへ、ハリウッドというメディアに大きな印象を残す社会が「何十年前の話?」と思わせる内容で大騒ぎを始めたので、一般社会に揺り戻しが来なければいいなあと願っています。

カリフォルニアのあの町だけ The endless のようにバリアーで囲まれて、発展が遅れたのでしょうが、世の中が悪い方に引っ張られる例をいくつか見ているので、心配しています。

今年もオスカー・シーズンがやって来ましたが・・・。

去年の今頃は入院の決定が下っており、仕事をそれまでに片付けて・・・などと大混乱でした。そして退院後にオスカーの発表だったのですが、目をやられていた上、まだスポーツなどを含む積極的な動きはだめな時期だったので、誘ってくれた近所の人は丁寧にお断わり。まだサイトが書ける状態でもなかったので、すっぱり諦めて全部パスしました(去年の遅配分は今年出します)。

今年は映画祭受難の年で、オスカー以外にもいくつかのスケジュールが仕事と正面衝突。何年かに1度こういう巡り合わせがあり、今年は我慢の年になりそうです。できる範囲での参加となります。オスカーは発表の週末が仕事と引っかかりそうなので、近所の家でテレビを見ることができるかまだ分かりません。誰が受賞をしたかは加筆して後でアップします。

去年から徐々に表に出始めていたセクハラ問題。ゴールデン・グローブの所ではまだ続々とニュースが出ていたので控えていました。映画界を報じるマスコミがオスカーをターゲットにと言うか、オスカーで区切りをつけるような面もあるので、ここでは少し触れます。ただ、この件では一般の非難合戦、訴訟合戦とはやや視線が違います。

起きた個々の事件については加害者と被害者がいて、刑事裁判にでもすれば誰が悪いと決着は着くでしょう。訴え出るのが遅くて時効にかかっていたり、証人がいないので証明できないけれど比較的はっきりした事件は、法的な手段は取れないものの、それぞれ誰が悪いという判断はつけられるでしょう。

仮に女性が扇情的な姿で現われて、役を貰うために誘惑を試みたのなら、男性に対する批判にマイナスのポイントが加算され、少し非難の度合いが減る、男の側が地位を利用してそのつもりの無い女性に何かを強いたのなら、男性側に非難のボーナス・ポイントが加算され、皆から「君は一体何という事をしたのかね」と後ろ指を指され、非難の度合いが大幅に増えるといった図式が成立します。そして被害者が未成年の場合はどんな言い訳も通らず、加害者が悪いという判断になります。そういう一般社会でも普通に通る理屈はここでは当たり前の前提ということで話を進めます。

色々な人たちがセクハラ問題で口を開いたため、今年のアメリカの賞、そして恐らくはベルリン映画祭の賞に影響が出そうです。

私はやや失望気味です。黒服のパーフォーマンスを今頃やって見せても、被害者は救われませんし、随分長い「ただ見ているだけ」という時代があり、その間に本来はこういった事を是正する方向を歩んでいたはずのアメリカのリベラル派がお昼寝していたという感があるからです。

★ 狭い社会、外の世界から遅れを取ったか

最近では1番最初に挙がった大物プロデューサーを拒否した女性たちが、キャリアで不利になるように裏で手配されていたかも知れないという話まで上がって来ています。そりゃ、そういう事もあり得ます。狭い業界なのですから。

こういう話は普通の世間では頻繁に起きており、是正も少しずつ制度的に進んでいることを考えると回り道をした一般社会の方が特殊事情を多く抱える映画界よりは多少明るいかなと思います。

私自身直接、間接にいくつかの経験をしましたが、ある時は役所の人がバックアップしてくれたり、ある時は医者が私の法的立場を説明してくれたり、そしてその論拠となる法律自体が被害者側に立つ人に過去よりは選択の余地を作ってくれています。こちらが全く期待していなかった意外な人たちからサポートを受けたこともあります。随分長い時間がかかっていますし、サポート無しの状況が山のようにあり、私自身のキャリアには間に合いませんでした。

助っ人には時には女性、時には男性、時には世代的にはかなり上の人たちもいました。全く助けが得られないと思っていた時にこういう人たちに出会ったので世の中全体に対して不信感を抱かずに済みました。「誰々がやっている○○は正しくない」と考える人がいて、そういう人たちが自分のできる範囲で助言してくれたりするのです。

おそらくアメリカの一般社会もそういう風に少しは動いているのでしょう。だからこそハリウッドでも今更とは思いますが口を開く人が現われたのでしょう。ハリウッドというのは意外と小さな町で、力がある人が支配しようと思えばできてしまい、自浄作用が働きにくい土地なのかも知れません。

★ 歌謡曲、助けてくれてありがとう - 3歩進んで2歩下がる

私の生きて来た社会には悪さをたくらむ人や、自分がやっている事を当然だと思い込んでいる図々しい人たちもいましたが、そうでない人たちもいました。これは私が1つの分野だけで無理やり自分を通そうとしなかったから経験できたことだと思います。困った時思い出したのは歌謡曲の歌詞。「押してもだめなら引いてみな♪」とか「1日1歩、3日で3歩、3歩進んで2歩下がる♪」歌謡曲の良さが分かったのは大分後で、当時はソウルやファンクが好きでしたが、なぜかこの歌詞は頭に残っていて、あり得ないような嫌な経験をした時には助けになりました。

ハリウッドでどうしても俳優やスターとしてやって行きたい、他の世界に移りたくないという人たちには選択肢が少なく、イエスと言うべきでないと頭で分かっていても、妙な要求を受け入れた人たちが一般の社会より多かったのではないかと思われます。そして私にはどう見ても今回の騒動はセクハラではなく、パワハラに思えます。

どんな理由で転向したのか分からないのですが、1度女優として名が売れた人が暫く出て来ないなと思っていたら、シナリオ・ライターになっていたという例もありました。スターとしてジャーナリストなどと向き合うのに疲れたのかも知れません。何か嫌な経験をしたのかも知れません。それでも映画界にはいたいと思ったのでしょう。で、インタビューアーが殆ど来ない別な職業に転職。それも1つの方法だと思います。次のステップとして願いたいのはそうやって一時緊急避難しても、気が向いたら時々スクリーンに登場して欲しいなあ・・・と思っていたら、そういう例もありました。

★ 悪習を止めるのは君たちの役目ではなかったか

私が非常に残念だと思ったのは、本来こういう流れに歯止めをかけられるはずの名の売れた俳優、力のある俳優、例えばアフレック家、フランコ家の名前が加害者側で挙がっていることです。監督業でも才能を示しており、今後のハリウッドを支えるだろうと思われた、まだ若い人たちがこんな面を持っていたのかと思うと失望します。

ここでこの人たちのキャリアがぽっきり折れてしまっても私はそれほど同情しません。持っていた才能については非常に残念だと思いますが、行動に歯止めがかからなかったとしたら、ねえ。中にはモラルを前に出すような社会批判の作品が代表作の人も混ざっていますからねえ。そして被害者の中には才能が花開く前にキャリアがぽっきりいってしまった人たちがいるわけです。これからシンボル的に数人の女優に賠償的な意味でいい役を回したとしても、そこから外れる人がいるでしょうし。

★ 言われてから考えた

フランスからは元・現大女優が「誘惑する自由」と言い出しています。2人の定義がはっきりしていないので、私は「魔女狩りのような事はだめ」という点だけに賛成し、他の点についてはまだ意見を保留しています。

すると今度はアメリカの方から「うまく行かなかったデート」という話が出ています。ここが重要だと思います。未成年は論外、ここは大人の男女の話です。 「話を持ちかける、合意が成立しない、じゃ、さようなら」とか、「話を持ちかける、合意が成立する、デートしてみてやっぱり気に入らなかった、じゃさようなら」とかでいいはずです。「振られた人は、その人にこだわらず、次の人を探す」本来はこれで社会が回っているはずです。

この時に言い寄られても、暴力を使って無理強いしなければセクハラとは言いにくいでしょう。暴力を使って無理強いしたらアウト。セクハラどころか傷害事件などの犯罪です。言い寄られる時に使う言葉があまりにも下品だったら、それについてノーと言うべきなのもこの時点です。それでも相手が続けたら、そこからセクハラが成立するのだと思います。多くの場合言い寄られた側、何かを要求された側の「ノー」が無視されたら問題化が始まります。

★ ハリウッドの特殊性

・・・などがあっては行けないのですが、実際にはあるようですね。オーディションがホテルの部屋で、プロデューサーと主演女優のみで行われることがあるそうです。上に書いたようなデートではなく、明らかな上下関係があるので、ここで問題が生じればセクハラと言うよりパワハラ

ハリウッドは後ろから見ると問題の百貨店で、セクハラはその1つ。他にも麻薬の問題を抱えている人や、何かの悩みから中毒的に何度も整形手術をする人や、まああれこれあります。普通の社会の問題が集中して一箇所に集まった感があります。行った人の印象だとさほど大きな町ではないようですが。

これからまた暫くこういった事件の「真相を暴く!」的な作品を何本かシンボル的に作って終わってしまうのか、俳優組合あたりが出て来て、一定の法制化に動くのか、リベラル派がリベラル流の歯止めをかけられるのかが見物(みもの)です。

★ 誰が叩かれるか

結構な人数の人が加害者として挙げられていますが、それでもメディアが言及を避けているなあと思われる人もいます。便乗して名前を売ろうという試みもあるようです。本当に大変な事件と、まあこの程度ならと思える事件と、偽事件をごちゃ混ぜにして全体が見えにくくしているような感じを受けています。君たち、本当に問題を解決したいのかね、ゴシップ雀君。

ハリウッドが反省して透明性を高めるのも1つの解決策ですが、既に高い地位に到達してこれまで通りにやりたい人も大勢いるでしょうから、仕事がフェアに行くようになるまでには時間がかかりそうです。

回り道に見えても女性を高い地位に送り込む方が結果としては早いかも知れません。もう1つ私がいいかなと思っているのが、ハリウッドでない土地での映画作り。新しくどこかの町に小規模な映画の町を作ってもいいですし、欧州の(経費が節約できる)スタジオを利用してもいいですし(実際行われている)。ハリウッドは様々なインフラが整っているので便利だとは思いますが、俳優には他所の町に住んで、仕事の時だけハリウッドに行く人もいます。ま、映画人、これからゆっくり対策を練ってください。

ある程度評価をしていた俳優が、こんな人間だったと知って、私は大いに失望しておりますぞ。対策には気合を入れてください。

技術などの受賞は省略しました。

作品

主演男優

ここにダグ・ジョーンズがノミネートされていないことを批判している記事を見たのですが、シェイプ・オブ・ウォーターで男性を主演にノミネートするのは難しいです。ダグ・ジョーンズは登場する時間が結構短い上に、台詞はゼロ。衣装の関係で本人の姿は殆ど見えません。悪役で大活躍するマイケル・シャノンは主演に近い時間登場しますが、役割からどうしても助演といわざるを得ないでしょう。助演にはリチャード・ジェンキンスがノミネートされたのですが、彼だけがここに選ばれるのも不公平。男性は3人ほどが同じぐらいのバランスで出演しています。

蛇足: ダグ・ジョーンズは物凄くイギリス人風に話し、振舞うのですが、れっきとしたアメリカ人。若い頃は体を自在に曲げる曲芸師、後にはファンタジー系の映画で人間でない役を引き受ける役者に転進。パントマイムをやると書いている記事も見たことがあります。

主演女優

監督

助演男優

助演女優

脚本

脚色

長編アニメ

短編アニメ

外国語映画

撮影

美術

衣装

音響

編集

音響編集

視覚効果

メイクアップ・ヘア

音楽(オリジナル・ソング)

音楽(作曲)

短篇

ドキュメンタリー(短篇)

ドキュメンタリー

功労賞、科学技術賞、特別賞

名誉賞

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