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イクシーの書庫・過去ログ(2006年1月〜2月)

<オススメ度>の解説
 ※あくまで○にの主観に基づいたものです。
☆☆☆☆☆:絶対のお勧め品。必読!!☆☆:お金と時間に余裕があれば
☆☆☆☆:読んで損はありません:読むのはお金と時間のムダです
☆☆☆:まあまあの水準作:問題外(怒)


フーコーの振り子(上・下) (伝奇)
(ウンベルト・エーコ / 文春文庫 1999)

「薔薇の名前」の作者ウンベルト・エーコの大作です。関係ないですけどエーコも今日が誕生日だったりします(ほんとに関係ない)。
ずっと気になっていた作家なのですが、「薔薇の名前」もまだ読んでいません。理由はばからしくも単純で、文庫に下りていないから(笑)。そのうち創元ライブラリあたりに落ちてくるのではないかと期待しています。
さて、エーコ初読みの、この「フーコーの振り子」、期待通りの作品でした。
ミラノで小さな出版社に勤める3人の編集者、語り手のカゾボンと先輩格のヤコポ・ベルボ、そしてディオタッレーヴィ。社長のガラモンの発案で、市井の投稿家たちの作品を選んでオカルト文献の叢書を発行しようと計画した3人は、いわゆる素人のオカルト研究家を名乗る人々(作中ではいみじくも“猟奇魔”と呼ばれていますが、日本で言えばさしずめ“トンデモさん”でしょう)が持ち込む原稿に目を通しているうちに、中世のテンプル騎士団が隠した秘密への手掛かりと言われる暗号メモを発見し、解読に成功します。そこにほのめかされているのは、14世紀から連綿と歴史の闇に伝えられてきた秘儀でした。
そこで3人は、大真面目な遊びを始めます。大学の卒論にテンプル騎士団をテーマにしたこともあるカゾボンを先頭に、古今東西のオカルトネタを統合して、オカルティストたちが追い求めた壮大な『計画』を構築しようと目論んだのです。
出版社の顧問として迎えたオカルティストで、自分は不死者サンジェルマン伯爵その人だとほのめかす謎めいた紳士アッリエ、カゾボンの隣人で地下世界を信じるサロン、ベルボが想いを寄せる美女ロレンツァ、失踪したオカルティストの事件を追うミラノ警察の警部などを巻き込みながら、3人の『計画』は進みます。
聖杯、テンプル騎士団、薔薇十字、イスラムの暗殺教団、フリーメイソン、シオンの議定書、錬金術、ナチスのオカルト、地球空洞説、地底世界アガルタに『世界の王』・・・ありとあらゆるオカルトのアイテムを精査し、関連付け、隠された意味を探るうちに、3人に忍び寄る無気味な影とは――。
読み終わってみると、プロット自体はかなり単純なものなのですが、フラッシュバックや原稿からの引用を多用し、オカルト知識をふんだんに散りばめたストーリーは千変万化して、基礎知識がないと激しく消化不良を起こしてしまうかも知れません。その意味では非常に読者を選ぶ作品かとも思います。

オススメ度:☆☆☆☆

2006.1.5


マリー☆エリー☆リリー 〜3人のアトリエ〜 (ファンタジー)
(工藤 治 / ファミ通文庫 2002)

アトリエシリーズ、ザールブルグ編の3人の主人公をそれぞれ主役に据えた3つのストーリーからなる連作集。3人の妖精さんが各自、自分が仕えた錬金術士のエピソードを語るという設定になっています。
1話目「マリーの憂鬱」・・・相変わらず成績不振のマルローネを見かねて、イングリド先生はクライスを教育係に、シアを相談役に任命し、3人での協同研究が始まります。マルローネが研究ノートに記していた幻のアイテム『世界平和霊魂の壺』を作成するために――。ところが、手に入った壺を覗き込んだマルローネは、彼女にとって死んだ方がマシというおぞましい未来を垣間見てしまい、街には大騒動が勃発してしまいます。
クライスはイヤミ一直線で、デフォルトの通りですが、イングリド先生を冷酷非道な鬼教師と言い切ってしまうなど、作者のいつもの欠点(上っ面だけをなぞって、アトリエシリーズの世界観の本質を理解していない)が現れています。イングリド先生は「あのならず者(←マリーのこと)をこの世から消し去ってください」(74ページ)なんてセリフは絶対に言いません。あと、入浴中のエンデルク隊長が急報を受けて前も隠さず立ち上がった――って、ベタ過ぎません?(笑)
第2話「エリーの大いなる反抗」・・・例によって竜虎コンビの抗争のとばっちりを受けたエリーとアイゼルは、それぞれの師匠の代理としてアイテム作成競争をすることになってしまいます。ノルディスの協力を受けたエリーですが、ヘルミーナと共謀したアイゼルの邪魔が入り――。
アイゼルファンとしては、ここでの扱いにはかなり拒否反応が出るかも知れませんが、まあデフォルトのサボテン女アイゼル様だったらこれもありか(笑)。
ところで96ページに、竜虎コンビの争いを評して「狐と狸のバカ試合」という表現があるんですが、これって冗談か変換ミスによる誤植ですよね。まさか作者は本気でこう思ってるわけじゃ(汗)
第3話「リリーの恋愛相談」・・・倹約生活で自分用の調合器具を買うこともままならないイングリドは、リリーやヘルミーナに黙って、ヴェルナー雑貨店でアルバイトをしてお金を稼ごうと考えます。ところが、ゲルハルトの早とちりから、イングリドがヴェルナーと結婚しようとしていると勘違いしたリリーとヘルミーナは大あわて。
みっつの話の中で、いちばん違和感なく読めました。ただ、ここに出てくる妖精の名前だけは許せません(笑)。関西弁をしゃべる妖精さんというのは大して気になりませんが、ロッペという名前はイヤ。妖精さんはすべてパ行で始まる名前がついているというアトリエ世界の不文律をあっさりと逸脱してしまっています。瑣末なことですが、工藤さんのこういうところの無神経さは大嫌い。

<収録作品>「マリーの憂鬱」、「エリーの大いなる反抗」、「リリーの恋愛相談」

オススメ度:☆☆

2006.1.6


黒竜戦史3 ―白マントの野望― (ファンタジー)
(ロバート・ジョーダン / ハヤカワ文庫FT 2002)

『時の車輪』の第6シリーズ第3巻。
今回もつなぎの巻という雰囲気で、あまり大きな動きはなく物語は淡々と進みます。
副題にもなっている<白マント>の大主将卿ペドロン・ナイアルは、アンドール王国を脱出して来たモーゲイズ女王を手中に収め、一生をかけた野望の実現に向けて策略をめぐらします。
一方、シームリンに滞在中のアル=ソアは異能者が現れたという報を受けて、宿屋で故郷のエモンズ・フィールド生まれの少女たちを連れたふたりの異能者に出会います。
<白い塔>から分裂した異能者たちが集結しているサリダールでは、ナイニーヴとエレインが行動できない焦燥にかられながらも、<夢の世界>で絶対力の媒体となるテル=アングリアルが秘蔵された倉庫を発見します。現実の世界でのその所在地は――。
波乱の予感をはらんで
次巻へ。

オススメ度:☆☆☆

2006.1.7


トンデモ一行知識の世界 (雑学)
(唐沢 俊一 / ちくま文庫 2002)

アイザック・アシモフいわく「まったく役に立たない雑学の知識を得るのに快感をおぼえるのは人間だけ」だそうです。本書の冒頭にも書かれていますが、もちろん前から知ってました(笑)。
唐沢商会(兄・俊一氏と弟・なをき氏のユニット)の「脳天気教養図鑑」にも、一行知識ネタの回があって大喜びして読んでいたものですが、本書は一行知識ネタだけで一冊の書物に仕上げてしまったものです。
「トリビア」を初めとして、世の中は雑学や薀蓄がブームのようですが、書店で見かけるそれらの雑学本のほとんどは、“商売のために雑学をしている”スタンスなので、どうも生臭さを感じて読む気が起きないのです。でも、唐沢さんや(ちょっと毛色が違いますが)荒俣さんの雑学・薀蓄本は、“好きで雑学をやっていたら、いつのまにか商売になってしまった”スタンスなので、好きなのです。
もちろん、すべてが本当のこととは限らないし、怪しげな一行知識もたくさんありますが、こういうものは事実か否かというような杓子定規とは無縁の世界として楽しむのが肝要と思います。
同じちくま文庫から
続篇も出ています。

オススメ度:☆☆☆

2006.1.7


新・魔獣狩り1 鬼道編 (伝奇アクション)
(夢枕 獏 / 祥伝社文庫 2002)

獏さん得意の伝奇バイオレンス・アクション『サイコダイバー・シリーズ』。
タイトルに“新”と付されているように、このシリーズは先行する「魔獣狩り」全3巻をはじめ、外伝などを含めると8冊が既に刊行されています。
本作でも登場人物のほとんどすべてが過去の作品に描かれた事件での因縁で結ばれており、説明も少ないので最初はとまどいました。やっぱり先に刊行された作品は先に読んでおくべきです(実は先行する8冊もすべて買ってあるのですが、未読本の山からわざわざ引っ張り出す気にはなれませんでした(^^;)。
さて、この巻は、弘法大師が中国から持ち帰った密教の裏秘法“四殺”と、卑弥呼以来、日本史の裏面で脈々と続いてきた鬼道、そして蓬莱山の莫大な黄金をめぐっていくつもの勢力が胎動を始める――という新たなるプロローグとなっています。人の精神に入り込める“サイコダイバー”の九門と毒島、美貌の真言密教の使い手・美空、謎の術師・猿翁、拳法の達人の巨漢・文成、暴力団の総帥・白井、かれらに関わる女性たち、殺人マシーンのような謎の人物など、ようやく登場人物の顔見せが終わったところでしょう。

オススメ度:☆☆

2006.1.9


カトロンの異人 (SF)
(ハンス・クナイフェル&エルンスト・ヴルチェク / ハヤカワ文庫SF 2006)

『ペリー・ローダン・シリーズ』の319巻。7月には、このサイクルも終わり、いよいよ噂の“公会議”サイクルが始まりますね。
さて、前半のエピソードでは、人口爆発が大問題となっているナウパウム銀河を救おうと、ローダンは驚天動地の作戦に打って出ます。隣接銀河からの遠征艦隊を装って、パラダイムシフトを引き起こそうという次第。かつての第三勢力がアルコン文明との接触で地球を大同団結させた経験を生かし、何度もやってのけた偽装戦略が発動されます。
一方、太陽系帝国では、アトランやグッキーが偽ローダンの行動をますます怪しみ始め、疑惑をそらすための作戦が密かに開始されます。
久しぶりに、2話ともコクのあるエピソードでした。
<収録作品と作者>「カトロンの異人」(ハンス・クナイフェル)、「対抗策」(エルンスト・ヴルチェク)

オススメ度:☆☆☆

2006.1.10


恐怖症 (ホラー:アンソロジー)
(井上 雅彦:編 / 光文社文庫 2002)

テーマ別書き下ろしホラー・アンソロジー『異形コレクション』の第22巻。
今回のテーマはそのものズバリ“恐怖”をもたらすもの。
たとえばアマゾンの毒グモが人を襲う映画「アラクノフォビア」(ノヴェライゼーションは光文社文庫から出ています)のタイトルを訳せば蜘蛛恐怖症
何に対して恐怖をおぼえるのかは個人個人で様々で、なぜそれが怖いのか理由がわからないことも多いようです。それが一番怖かったり(笑)。
さて、本巻には様々な“恐怖症”が描かれます。自宅のドアが怖い「ドア」(中井紀夫)、相手がストーカーならずとも他人の視線が怖い「あのバスに」(深川 拓)、影が怖い「シルエット・ロマンス」(飛鳥部勝則)、つぶつぶしたものが怖い「つぶつぶ」(柴田よしき)、舞台に臨む際の緊張(失敗するんじゃないか)が怖い「夢の奈落」(速瀬れい)と「スタジオ・フライト」(早見裕司)、背後にあるかもしれない薄い布が怖い「布」(倉阪鬼一郎)、スパゲティーが怖い「スパゲッティー」(竹河 聖)、広い場所を恐れる「離宮の主」(井上 雅彦)、目の中に見える飛蚊症が世界を侵食していく「眼球の蚊」(瀬名秀明)、他人がもっとも恐怖するものが何かわかってしまう能力を持った人間が主人公の「斯くしてコワイモノシラズは誕生する」(牧野 修)、足利将軍義教の暗殺事件の裏に潜む恐怖を求める真理を掘り下げた「荒墟」(朝松 健)など。

<収録作品と作者>「ドア」(中井 紀夫)、「あのバスに」(深川 拓)、「シルエット・ロマンス」(飛鳥部 勝則)、「夜一夜」(石神 茉莉)、「つぶつぶ」(柴田 よしき)、「恐怖六面体」(本間 祐)、「夢の奈落」(速瀬 れい)、「侵食」(飯野 文彦)、「布」(倉阪 鬼一郎)、「恐怖病」(横田 順彌)、「眼球の蚊」(瀬名 秀明)、「荒墟」(朝松 健)、「斯くしてコワイモノシラズは誕生する」(牧野 修)、「遠い」(朝暮 三文)、「石の女」(奥田 哲也)、「黒い土の記憶」(安土 萌)、「怖いは狐」(北野 勇作)、「ヘリカル」(町井 登志夫)、「離宮の主」(井上 雅彦)、「最終楽章」(江坂 遊)、「スタジオ・フライト」(早見 裕司)、「白い影」(田中 文雄)、「スパゲッティー」(竹河 聖)、「6分の1」(菊地 秀行)

オススメ度:☆☆☆

2006.1.12


怪談部屋 (怪奇・冒険)
(山田 風太郎 / 光文社文庫 2002)

『山田風太郎ミステリー傑作選』の第8巻。
本来は『怪奇篇』ですが、この巻が最終配本だったこともあり、怪奇・SF味の濃い作品20篇のほか、
「笑う肉仮面」に収録し切れなかったジュブナイル5篇、補逸篇「達磨峠の事件」(そのうち登場)の編集後に発見された作品2篇が収められています。
風太郎さん得意の医学ネタを生かした怪奇譚が多く、さる有名な奇形を題材とした「双頭の人」や「黒檜姉妹」、ありとあらゆるフリークスが大集合し現代では発禁必至の(なにせ現代では差別語とされている表現がてんこもり)「畸形国」、特異体質の少女に恋した男の悲劇「蝋人」の他、印象に残った作品を挙げれば、タイトルのインパクトもすごいですが発想もものすごい(似たようなぶっ飛びネタで書いたオベールの作品をもしのぐ)「うんこ殺人」、半世紀後の未来をアイロニカルな視点で描く「1999年」、第三次大戦勃発という極限状況で孤立した山村が舞台のドタバタ劇「臨時ニュースを申し上げます」、少女雑誌「なかよし」に連載されていたというジュブナイル・サスペンス「とびらをあけるな」など。

<収録作品>「蜃気楼」、「人間華」、「手相」、「雪女」、「笑う道化師」、「永劫回帰」、「まぼろし令嬢」、「うんこ殺人」、「万太郎の耳」、「双頭の人」、「呪恋の女」、「畸形国」、「黒檜姉妹」、「蝋人」、「万人坑」、「青銅の原人」、「二十世紀ノア」、「冬眠人間」、「臨時ニュースを申し上げます」、「1999年」、「あら海の少年」、「ぽっくりを買う話」、「びっこの七面鳥」、「エベレストの怪人」、「とびらをあけるな」、「無名氏の恋」、「私のえらんだ人」

オススメ度:☆☆☆

2006.1.14


宇宙戦争 (SF)
(H・G・ウェルズ / 創元SF文庫 1999)

やっと読めました。侵略SFの原点です。
昨年は映画も公開されましたが、自分にとっては50年代にジョージ・パルが制作した映画の方がインパクトが強く、子供の頃にテレビで見て、あの火星円盤の無気味で美しいフォルムに魅了された記憶があります。もっとも原作の宇宙船はもっと不恰好ですが。
さて、火星表面で発生したいくつかの爆発が観測されて数年後、円筒形の飛行物体がロンドン近郊に次々と落下し、そこに近付いた語り手は無気味な異星人の姿を垣間見ます。火星人は熱線を発射して、付近の家々を焼き、クレーター内部でなにやら作業を始めます。
時代は19世紀でニュースが広がるのは遅く、ようやく軍の砲兵隊が集結した頃には、火星人の歩行戦車が出現し、攻撃を始めていました。いったんは避難した語り手ですが、様子を見に行って戦闘に巻き込まれ、崩れた家屋の残骸に閉じ込められます。しかし、その結果、火星人の驚くべき実態を目の当たりにすることになります。
一方、語り手の弟はロンドンに住んでいましたが、荒唐無稽な噂としか思わずに無関心だったロンドン市民の態度が次第に不安に変わっていき、遂には大パニックに至る様子が彼の目を通してリアルに描かれます。語り手が描写する火星人の生態とともに、この人類の絶望的なパニック行動が、ウェルズが本当に描きたかったことなのではないかとも思えます。
結局、ご存知の通りの結末でめでたしめでたしとなるわけですが、それから100年、ありとあらゆる侵略SF小説・映画・テレビドラマのすべてがこの作品の恩恵を受けていることは疑いないでしょう。

オススメ度:☆☆☆

2006.1.15


だれもがポオを愛していた (ミステリ)
(平石 貴樹 / 創元推理文庫 1997)

エドガー・アラン・ポオにゆかりの深いボルティモア郊外で、沼に面した古屋敷が爆破され、住んでいた若い兄妹が犠牲となります。兄は数日後に沼から損壊した遺体で発見され、難病だった妹は爆発現場近くの玄関で「ユーラルーム」という謎の言葉(実はポオが書いた詩のタイトル)を遺して死亡します。事前に地元のテレビ局に予告電話があり、日系人の兄妹の姓はアシヤ――すなわちこの事件はポオの短篇「アッシャア家の崩壊」の見立て殺人だったのです。さらに、ポオの作品「ベレニス」と「黒猫」を模した第二、第三の殺人が発生します。
ボルティモア警察の捜査官マクドナルドは、父の旧友である外交官の更科の娘・ニッキ(丹稀)にせがまれて、彼女を事件の捜査に同行させます。死んだ兄妹の亡父テッドは食品チェーンストアのオーナーで莫大な資産があり、ポオに傾倒していた彼は貴重なポオ直筆の手紙を所有していましたが、それを収めた金庫は崩壊した屋敷とともに沼に沈んだものと思われました。その手紙を買い取ろうとしていた美貌の骨董商ジャクリーン、遺産を狙って暗躍するテッドの前妻マリー、爆発の3日前に解雇された管理人夫妻、いなくなった飼い猫のプルートー(もちろん黒猫)など、謎が謎を呼ぶ中、美少女探偵(本人は20代ですが、ミドルティーンにしか見えない)ニッキが明晰な論理を駆使して到達した真相は――。
構成も凝っていて、マクドナルドが英語で書いた回想録を、作中にも登場してポオ学についてニッキにアドバイスする日本人W・S教授(どうやら作者の分身のように思われます)が翻訳したという体裁をとっています。なので、登場する日本人が吸っている煙草の銘柄を見たマクドナルドが「穏やかな七? 妙な名前だな」と思ったり、英語がわからないふりをするニッキがいかにも日本人観光客が言いそうなセリフを吐いたり、遊び心も満載です。ちなみに語り手のフルネームはナゲット・マクドナルド(ファスト・フード店の回し者ですか)で、上司はケロッグ警視、同僚の捜査官にはナビスコやらバドワイザーやらがいますし、制服警官はロンとヤースのコンビ(ちなみに二人はゲイのカップルですが、本作が書かれた1985年は、もちろん中曽根政権とレーガン政権の蜜月時代)です。
さらに、エピローグとして付されたW・S教授によるエッセイ「『アッシャー家の崩壊』を犯罪小説として読む」は、一読、目からウロコが落ちまくる新解釈です。
オールタイムベスト級という評価は決して大げさではありません。

オススメ度:☆☆☆☆☆

2006.1.16


悪霊島(上・下) (ミステリ)
(横溝 正史 / 角川文庫 1981)

横溝さんの長篇を読むのは本当に久しぶりで、調べてみたら10年ぶりでした(^^;
この「悪霊島」は作者が75〜77歳の時に書かれたもので、映画化もされています。
昭和42年の初夏、瀬戸内海に浮かぶ刑部島の近海で、定期連絡船が瀕死の重傷を負った男性を海から助け上げます。しかし、男はシャム双生児の存在をほのめかす謎めいた言葉とともに、「あの島には悪霊がとりついている、(映画でもキャッチフレーズになった)鵺の鳴く夜は・・・」と言い残して死亡します。この男は青木といい、戦後すぐに刑部島からアメリカへ渡って巨万の富を築いた実業家・越智竜平が島の調査のために送り込んだ人物でした。竜平は漁業が枯渇してさびれてしまった故郷の刑部島を再開発して一大リゾート地に仕立てる計画を進めており、現地の人々の反応をひそかに探るために青木を派遣したのです。
青木からの連絡が途絶えたため、竜平は金田一耕介に捜査を依頼し、依頼を受けた金田一は島へ向かう途中、旧知の岡山県警・磯川警部を尋ねた際、青木の変死と彼が残した言葉を知らされます。
金田一は刑部島に渡り、土地の名士・刑部大膳の許に寄宿します。刑部家はかつてこの島に流れ着いた平家の落人の子孫で、島の中心である刑部神社の神主を代々務める由緒ある家柄。網元の系列である越智家とは犬猿の間柄です。
折りしも島では7月7日に行われる神社の例大祭に向けて、にぎわい始めていました。遅れて島へ到着した竜平も神社の新たなご神体として黄金製の矢を寄進し、祭りで舞を捧げる神楽太夫や観光客もやって来て、祭りの雰囲気は盛り上がります。
しかし、祭りのさなか、ボヤ騒ぎが発生し、そのどさくさの中で神主の守衛がご神体の黄金の矢に貫かれた死体となって発見されます。続いて、守衛の双子の娘のひとりが行方不明となっていることが判明、島は戦慄に包まれます。しかも、この島では、過去に何人もの屈強な男(神楽太夫の一員、旅の人形師、置き薬売りなど)が失踪しているらしいのです。
守衛の美貌の妻・巴と双子の娘・初帆と真帆、感情を表さない屈強な漁師・吉太郎、ふらりと島に現れた謎めいたカメラ青年・五郎、父の消息を探す定吉、なぜか奇妙な態度を見せる磯川警部など、様々な人間模様が渦巻く中、金田一の推理が始まります。
対岸の下津井の町で殺された市子(恐山のイタコのように口寄せをする職業)の女性・浅井はるが磯川警部に宛てた手紙に書かれていた、22年前の恐るべき罪とは――。
無気味な雰囲気、犯罪の猟奇性、推理の論理性、そして流れる人情味が融合した本作は、「八つ墓村」「獄門島」「悪魔の手毬歌」など、瀬戸内を舞台とした横溝作品の集大成とも言える作品だと思います。ほんのチョイ役としか思っていなかったある人物が、クライマックスで大きな役割を果たすのは意外でしたが、後から考えるとさりげなく伏線が張られていたことに気付きます。また、おなじみの磯川警部の身の上に、意外で微笑ましい出来事が起こるのも、長年、地味に働いてくれた警部への作者の心づくしだったのかも知れません。

オススメ度:☆☆☆☆

2006.1.19


トンデモ レディースコミックの逆襲 (マンガ)
(唐沢 俊一+ソルボンヌK子 / 幻冬舎文庫 2000)

レディースコミックなんて、もちろん読んだことはありません。
でも、「大猟奇」や「世界の猟奇ショー」といった素敵な(?)本を出しているおふたり(本当のご夫婦ですよ)が、合体(変な意味ではない)してレディースコミックを量産していた時期があり、その中でも唐沢さんらしい猟奇・変態・フェチ風味が横溢した、言ってみれば王道のレディースコミック(どんなんだ)からは外れた作品を収めたものだと知って、思わず買ってしまいました。
いずれも、唐沢さんの原作をソルボンヌさんがマンガ化したもの。
内容は、とてもここには書けません(汗)。
発表当時、読者の評判はあまりよくなかったそうですが、これが好評を博するような世の中だったらおしまいですね(笑)。
文庫化に当たって、作中にそれぞれ原作者・絵師・編集者のツッコミが入っていたり、唐沢さんの原作の一部が掲載されていたりして、そこを楽しむのが通(何の?)の読み方かと。
あ、でも、もちろん18禁ですからね〜。ご注意ください。

オススメ度:☆

2006.1.20


「新趣味」傑作選 (ミステリ・伝奇:アンソロジー)
(ミステリー文学資料館:編 / 光文社文庫 2000)

『幻の探偵雑誌』シリーズ第7巻。第5巻が順番から抜けてしまっていますが、それは近日(笑)。
今回の「新趣味」は、大正11年に創刊されたものの、翌年の関東大震災のあおりで休刊してしまい、2年足らずの歴史しかありません。ただ、海外翻訳小説の紹介(コリンズの「月長石」を10回分載し、マッカレーの「地下鉄サム」やオルツィの「隅の老人」などのシリーズのほか、ポオ、ドイル、フリーマン、ガボリオらの作品を精力的に掲載しています)と懸賞公募による市井の探偵作家の発掘をふたつの柱としていたのが特徴です。
甲賀三郎や角田喜久雄といった大御所がデビューしている一方、現在では経歴もわからない無名の投稿家の作品もあり、双方がこの選集に収められています。
中でも国枝史郎が外国作品の翻訳という形で連載した長篇秘境冒険伝奇小説「沙漠の古都」は200ページにも及ぶ大作で、楽しく読めました。スペインの首都マドリードの夜を跳梁した燐光を放つ獣人の謎を発端として、タクラマカン砂漠の奥地に埋もれている太古の都に眠るという秘宝を求めるヨーロッパ探検隊に迫る謎のトルコ人美女と中国の熱血革命青年の恋、さらに北京から上海へと舞台を移し袁世凱の後継者を名乗る老人が支配する秘密結社の暗躍、ついにはボルネオのジャングルの奥地に存在するロストワールド(有尾人や恐竜が生き残っている)で物語は大団円を迎えます。はっきり言えば荒唐無稽ですが、でも楽しい(笑)。

<収録作品と作者>「真珠塔の秘密」(甲賀 三郎)、「毛皮の外套を着た男」(角田 喜久雄)、「噂と真相」(葛山 二郎)、「呪われた真珠」(本多 緒生)、「美の誘惑」(あわぢ生)、「誘拐者」(山下 利三郎)、「血染のバット」(呑海翁)、「国定画夫婦刷鷺娘」(蜘蛛手 緑)、「ベルの怪異」(石川 大策)、「沙漠の古都」(国枝 史郎)

オススメ度:☆☆☆

2006.1.21


ループ (ホラー)
(鈴木 光司 / 角川ホラー文庫 2000)

「リング」「らせん」に続く3部作の完結編。
10歳にして大学教授の父親と議論を戦わせる早熟児の馨は、パソコンでたまたま見ていたデータから、地球上に散在する重力異常スポットと長寿で有名な地域の分布が一致することに気付きます。そこから導き出されたアメリカ南西部の砂漠地域に家族旅行する計画を立てますが、父・秀幸がガンを発症したことで計画は頓挫してしまいます。
それから10年。秀幸を襲ったガンは、新種病原体・転移性ヒトガンウイルスの感染によって引き起こされたものでした。日本とアメリカを中心に世界的に蔓延し始めたこのウイルスには、現在のところ治療法はなく、秀幸も入院して何回も転移と手術を繰り返しています。医学生となった馨は、父の入院先でやはりガンに侵された少年・亮次とその母親・礼子と知り合い、礼子と恋に落ちます。
ある日、ウイルスの塩基配列をながめていた馨はある事実に気付き、父親が20年前に関係していたプロジェクト「ループ」に関連があるのではないかと直感します。「ループ」とは、国家規模の予算をかけてコンピュータ内に仮想空間をつくり、生命の発生と進化をシミュレートする計画でしたが、ある理由により中止されていました。
馨は、ウイルスへの対抗策を求めて渡米し、かつて行こうとしていた砂漠地帯へ向かい、「ループ」計画のキーマンに会おうとします。彼を待ち受けていたものは――。
前2作との関係については、掟破りともいうべき大技が仕掛けられていると言うにとどめましょう(笑)。最初から3部作として想定していたわけではないという作者の言葉が信じられないくらい、見事にはまっています。

オススメ度:☆☆☆

2006.1.24


氷のスフィンクス (冒険)
(ジュール・ヴェルヌ / 集英社文庫 1994)

南極を舞台にヴェルヌが描く一大冒険絵巻。しかしそれだけではなく、本作はポオ最大の長篇「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」を下敷に、ヴェルヌが奔放な想像力をめぐらせた後日譚でもあります。元ネタの小説は「ポオ小説全集2」(創元推理文庫)などに収められていますが、たとえ読んでいなくても、第5章のまるまるを割いてかなり詳しい梗概が記述されているので問題なしです。
1939年8月(南半球では冬の終わり)、インド洋の南、南極圏に近いケルゲレン諸島に滞在していたアメリカ人博物学者ジョーリング(本編の語り手)は、故郷へ帰るために、島を訪れたイギリスのスクーナー帆船ハルブレイン号に乗り込みます。最初は乗船を拒否していたレン・ガイ船長は、ジョーリングがコネチカット出身だと聞くと態度を改めました。そして、アーサー・ゴードン・ピムの家族に会ったことはないかと質問したのです。
ジョーリングは、「アーサー・ゴードン・ピム」はポオが創作した小説の主人公で架空の人物だと伝えましたが、船長はピムは実在していて、物語で語られた冒険はすべて事実だと考えているようでした。
そして、フォークランド諸島へ向かって航海中に偶然出会った、解け切れずに漂流していた氷山の上で、船長の主張を裏付ける確固たる証拠が発見されます。
レン・ガイ船長は、ピムと共に南極海の孤島ツァラール島に孤立した(と、ポオの小説には書かれている)船乗りたちを発見・救出すべく、フォークランドで乗組員を増強し、南へ向かって出帆します。
ジャーリング、レン・ガイ船長、沈着な航海長ジェム、陽気な甲板長ハーリガリー、フォークランドで出発ぎりぎりに応募してきた謎めいた水夫ハント、反抗的な水夫ハーンなど、多彩なメンバーを乗せて、ハルブレイン号は浮氷群を抜け、南極点の方向に開けた海面を進みます。その果てに待っていたものは――。
謎めいた曖昧な終わり方をした「アーサー・ゴードン・ピムの物語」に触発されたヴェルヌは、持ち前の科学的思考を駆使して南極に秘められた謎を解明すると共に、「海底二万里」と同じく海洋冒険小説としても一級品の作品に仕上げています。

オススメ度:☆☆☆☆

2006.1.27


ダスト(上・下) (SF)
(チャールズ・ペレグリーノ / ヴィレッジブックス 2002)

現役の最先端科学者ペレグリーノが描いたディザスター小説。
読む前は単なるメディカル・バイオホラーだと思っていましたが、実際には予想以上にスケールが大きい宇宙規模のドラマになっていました。
アメリカ、ロングアイランドの一画で黒い埃(ダスト)のように大量発生したダニが人間を襲い、骨だけを残して食い尽くすという事件が発生します。ブルックヘイヴン国立研究所に勤める古生物学者リチャードは、この事件で妻を失い、幼い娘タムと研究所に避難しますが、この自然界に起こった異変の原因を解明しようとします。
同時期に、カリブ海地域では吸血コウモリが大発生し、突然変異したプリオン病原体を牛や人間に媒介し始めます(現実にもチスイコウモリは狂犬病の媒介動物です)。その原因は、ある種の昆虫の突然の絶滅でした。リチャードと同僚の科学者たちは生態系が崩壊し、人類文明が危機に瀕することを予測し、破滅を回避する手段を模索し始めます。地球上では、ほぼ3300万年ごとに生物の大量絶滅が発生しており(もちろん代表的なのが恐竜の絶滅)、今回また大自然に組み込まれた破滅スイッチが作動したのだという仮説は真実なのか――。
そうこうしているうちに、食糧や燃料の供給は激減し、経済は崩壊、人民はパニックに陥ります。早期に被害を受けたインドはパキスタンとスリランカに侵攻、世界に緊張が走ります。
科学者と政府を敵視することで大衆を操り、私腹を肥やしてきたトークショーの司会者シグモンドは千載一遇のチャンスと見て、権力を握るべく暗躍を始め、核ミサイルの発射基地では休暇中にチスイコウモリにかまれた士官が、精神錯乱をもたらすプリオン病にむしばまれはじめていました・・・。
ディザスター小説の歴史の中で、人類文明に破滅をもたらすものは、人間が作り出したもの(バイオ技術で開発されたバクテリアが原因の
「終末のプロメテウス」や核戦争が原因の「スワン・ソング」など)か、人知を超えたもの(大彗星が地球に衝突する「悪魔のハンマー」など)であるかどちらかですが、本作は後者で、古生物学と進化論の仮説に基く大胆なアイディアが使われています。ディティールにも凝っており、作中で言及される様々な自然科学関係の驚くべきエピソード(巻末に、作者自身による詳細な解説が付与されています)が事実か虚構か区別ができるかで、自分の科学的マニアックさが測れると思います。

オススメ度:☆☆☆

2006.1.30


飛雲城伝説 (伝奇)
(半村 良 / 講談社文庫 2002)

未完の長篇時代伝奇ロマンという説明文に惹かれ、“未完”というのが気になりましたが、楽しみに読み始めました。
時は乱世の戦国時代。ただし、読んでいくと気付きますが、実際の日本とは微妙に異なる歴史を持ったパラレルワールドのお話です。
辺境の山間の土地(明示されていませんが、今の群馬県あたりのイメージ)に、飛雲城という小さな城がありました。元々の城主だった狩原氏は隣り合った強力な領主・大潟氏との戦いに敗れた後は城を捨てて帰農し、狩原村の名主となっています。その狩原家の末娘で10歳になる鈴女(すずめ)が、村はずれのお地蔵様のたもとに捨てられていた男の赤ん坊を拾ったところから、物語は始まります。赤ん坊は捨丸と名付けられ、鈴女を養い親としてすくすくと育ちます。
それから5年。大潟氏に内紛が勃発し、現在の飛雲城を預かる高木野氏が大潟氏に反旗を翻し、狩原村にもきな臭い空気が漂い始めます。それなりに善政を敷いていた高木野氏に味方して、狩原家も立つことを決心し、数年の小競り合いの後、ついに大潟の大軍勢が飛雲城へ攻め寄せてきます。籠城策を取る城主と軍師に反対した若手の武士と共に、薙刀の名手で智謀に優れた鈴女は武器を取った村人を取りまとめ、近くの境山でひっそりと暮らしていた山の民“湯彦”(金属精錬と諜報活動に優れた忍びの民)を味方に引き入れて、奇策で大潟軍を敗走させることに成功します。そして、鈴女は民に請われて飛雲城の城主となるのでした。
鈴女は、菩提寺の住職・放専や“湯彦”のリーダー庄兵衛らの助言を受けつつ、庶民のことを第一に考えて善政を敷き、知略と情(と、ついでに美貌)で付近の弱小領主の心を掴んでいきます。ついには大潟氏との最終決戦をも制し、今や捨丸から狩原義虎と改名した養い子を補佐役に、それなりの地方勢力・扇の国を造り上げるのでした。
半村さんの得意ジャンルのひとつに叙情あふれる人情話があるのですが、これら前半の展開はまさに「人の情を知り、それを何よりも重視する狩原鈴女が、信頼で結ばれた協力者たちと共に、権勢欲にとり憑かれた悪党領主を平らげていく」という胸のすくような物語。
中盤に至って、都の大王家から扇の国に、北方は妻瑠(津軽のイメージですね)のまつろわぬ勢力・築山氏追討の命が下されます。鈴女の決断は、京の都をも巻き込む一大変革を引き起こします。
そして終盤、物語はさらにエスカレートし、大王家の祀る神々対東北の荒ぶる神々との一大決戦になってしまうのです。何の変哲もない日常生活が、いつの間にか異世界や外宇宙の冒険活劇に変貌してしまうというのも半村作品にはよくある話(「邪神世界」とか「虚空王の秘宝」とか)なので、驚くには当たらないのですが、天界の戦争に埋没してしまって鈴女や義虎の存在感が希薄になってしまうところが残念です。
結局、物語は未完のまま終わってしまうのですが、後は読者各自が自分の物語を想像してほしいというところでしょうか。

オススメ度:☆☆☆☆

2006.2.2


神秘学大全 (オカルト)
(L・ポーウェル&J・ベルジェ / 学研M文庫 2002)

タイトルから、いわゆる『オカルト事典』の類かと思って買いましたが、違っていました。
オカルティスト(ポーウェル)とオカルトかぶれの科学者(ベルジェ)の共著になる、妄想に基く一種の扇動本(全体が論文調のため、トンデモ本ほど面白くない)でした。
著者が主張しているのは、
・人類は、より高次の世界を求めて覚醒すべきである。
・既に、太古の昔から、地上には一部の覚醒した人々(超人)が密かに存在している。
・錬金術師もその覚醒者の一部であり、かれらは秘密結社を創設して世界を密かに操っている(←出た!(^^;)。
・地球の歴史上、いくつもの超文明が興っては滅んでいる。それらの証拠が発見できないのは、考古学者や古生物学者が無知無能だからである(←おいおい)。
・ナチスドイツと連合軍が戦った第二次大戦は、古代秘教主義と近代合理主義(でもその裏には覚醒した人類=超人たちがいる)との闘争であった(←日本の立場は?)。
こんなところでしょうか。
原書が書かれたのが1960年のことで、著者の主張は今日の科学から見ればあっさり論破できる点もいろいろありますが、当時はそれなりに説得力があったのでしょうか。
著者は、「声高に主張するつもりはない」とか「われわれの方法論を押し付けるつもりはない」と書いていますが、明らかに声高に主張して押し付けています(笑)。
「ロンギヌスの槍」もそうでしたが、学研って、どうしてこういう実のないオカルト本ばかり出すんでしょうね。買う方も買う方ですが(笑)。

オススメ度:☆

2006.2.3


ミスターX(上・下) (ダーク・ファンタジー)
(ピーター・ストラウブ / 創元推理文庫 2002)

1999年(もしかしたら2000年)のブラム・ストーカー賞に輝く大作。ジャンルはこれだとはっきり特定できないというストラウブの特長がよく表れていて(「ミステリー」もそうでした)、ホラーとダーク・ファンタジーが渾然一体となって、そこにちょっぴり謎解きミステリの風味が混じっています。全体の雰囲気はジョナサン・キャロルの作品によく似ています。
35歳のコンピュータ・プログラマー、語り手のネッド・ダンスタンは、幼い頃から誕生日が近付くと悪夢に悩まされてきました。どことも知れない場所に迷い込み、見知らぬ母子が殺される場面をリアルに目撃していたのです。殺人犯は謎の黒衣の男――ミスターX。
今年も誕生日が近付いたネッドは、第六感で産みの母スターが死にかけていることを確信し、ニューヨークから故郷のイリノイ州エドガートンへとヒッチハイクで帰ります。臨終の床で母は、ネッドの本当の父親エドワード・ラインハートという名前をささやきます。ネッドは生まれてすぐ里子に出され、里親の下で育てられていました。
ネッドはエドガートンに残っていた大叔母たち(ネティ、メイ、ジョイの三姉妹は手癖が悪く、いずれも一癖も二癖もあるばあさんたちです)から実の父にまつわる情報を聞き出そうとしますが、のらりくらりとかわされてしまいます。他にもネッドには悩みの種がありました。自分に先回りするように、自分に瓜二つの男が自分の名前を名乗って各地でよからぬ振る舞いをしており、その男にカードで大負けした札付きのチンピラがネッドをつけ狙っています。また、偶然レストランでネッドと同席して恋仲になった人妻ローリーは、夫との間で離婚問題のごたごたを抱えていました。
ネッドの視点と並行して、謎のミスターXの視点からも物語が語られます。彼が何を信奉して生きてきたのかは、ホラーファンにとっては「そう来たか!」と欣喜雀躍させられる設定なのですが、ネタバレなので自粛(上巻の紹介文を見ればわかってしまいますが)。ミスターXが家を借りる時に使った偽名など、見ただけで嬉しくてたまらなくなります。

オススメ度:☆☆☆☆

2006.2.9


大執政官の死 (SF)
(クルト・マール&ウィリアム・フォルツ / ハヤカワ文庫SF 2006)

“ペリー・ローダン・シリーズ”の第320巻。
もうタイトルから内容がバレバレですが(笑)。もちろん死ぬのはアレの方。アトランがアレの正体を推理するくだりは、あまりに明晰すぎて出来過ぎな気もしますが、まあ論理性に優れた付帯脳を持ってるということで納得できなくもありません(笑)。本シリーズでは非常に珍しい濡れ場(?)もあります。
こうして、とりあえず混迷する事態にひとつのケリはつくわけですが、一方、ナウパウム銀河にいる本物のローダンにも急展開が。古代種族ユーロクのノクが遺した資料から、隣接する(とは言っても一億光年以上も離れている)カトロン銀河に故郷への帰還の鍵があると考えたローダンは、協力者らと共にカトロン銀河へ遠征し、手掛かりを求めて放浪することになります。
“銀河のチェス”サイクルも、いよいよクライマックス!

<収録作品と作者>「大執政官の死」(クルト・マール)、「狂った脳」(ウィリアム・フォルツ)

オススメ度:☆☆☆

2006.2.9


魔道師の虹(上・下) (ダーク・ファンタジー)
(スティーヴン・キング / 角川文庫 2002)

キングのライフワーク『暗黒の塔』シリーズの第4作。ただし、角川文庫版は本巻で刊行が打ち切られており(いつものことですが)、2005年秋から新潮文庫にて新訳(『ダーク・タワー』シリーズ)が順次刊行され始めています。特に第1巻「ガンスリンガー」はキングにより全面加筆修正された新版とのことですので、これから読み始めようという方は、ぜひ新潮文庫版を(笑)。
さて、この「魔道師の虹」、前巻
「荒地」のラストからそのまま続いています。狂った人工知能“ブレイン”が管理する大陸横断弾丸列車に閉じ込められたローランド一行は、“ブレイン”との命を賭けたなぞなぞ合戦に臨みます。終点のカンザス州トピーカに到着するまでの間に、ローランドらが“ブレイン”に答えられないなぞなぞを出せばローランドの勝ちで、かれらは無事に解放されますが、そうできなかった場合には、自殺願望に取り憑かれた“ブレイン”は列車を全速で終点に突っ込ませ、乗客もろとも死ぬつもりでいます。
しかし、緊迫したなぞなぞ合戦の顛末は、本作のプロローグに過ぎません。
根幹をなすのは、ローランドが14歳の時に体験した初恋と冒険の物語。もちろんキングのことですから、甘酸っぱいロマンス話で終わることはありません。仲間たちに語るローランドの口調は、悲哀と悔恨に満ちています。
<連合>の中心地ギリアドで、最年少のガンスリンガーとなった14歳のローランド(その顛末は第1作「ガンスリンガー」に語られています)は、父親の命令で2人の同年齢の少年カスバートとアレンと共に、辺境の町ハンブリーへ派遣されます。<連合>に反旗を翻したジョン・ファースンの侵攻が迫っており、少年たちを比較的安全な場所へ避難させておこうという目論見だったのですが、ハンブリーには戦いの帰趨を左右する陰謀が渦巻いていました。
ハンブリーの行政長官ソリンは好色な老人で、借金のカタに地元の美少女、16歳のスーザンを妾にしようとしていました。スーザンも、先祖伝来の土地と家を取り上げられないためだと吝嗇な叔母コーデリアに説得され、泣く泣く承知したのです。しかし、スーザンの純潔を検査した魔女リーアの邪まな企みのため、床入りは11月の収穫祭までお預けとなります。さらに、リーアは、処女を失った直後にある行動をするよう、スーザンに催眠暗示をかけていました。また、リーアの手元にはあらゆるものを映し出す魔法のガラス球(タイトルにもなっている「魔道師の虹」)がありました。
そんな中、ハンブリーに到着したローランド一行は、<連合>のために土地の資源を調査しに来たという名目で偽名を使って町での滞在を許可されます。一方、町では<名うての棺狩人たち>と呼ばれる荒くれ者のガンマンが幅を利かせていました。そのリーダー、ジョナスはかつてローランドの師匠コートの父親の手で<連合>を追放されたお尋ね者であり、ジョン・ファースンの命令で暗躍しています。元々はファースンの持ち物だった「魔道師の虹」をリーアに預けたのもジョナスでした。
町に着いた最初の夜に、ローランドはスーザンと出会います。若いふたりが恋に落ちるのに時間はかからず、そのためにカスバートやアレンとの間に亀裂が生じたりしますが、3人の少年たちは町に隠された陰謀に肉薄していきます。その顛末は――。
凄腕のガンマンが西部の町にふらりと現れて、町に巣くうごろつきどもと死闘を繰り広げ、美女と恋に落ち、幾度も襲う危機を乗り越えて悪を滅ぼす――という西部劇の基本的なプロット通りに物語は進んで行きますが、やはりキングですからダーク・ファンタジー風味を加味しながら、偶然と運命の残酷さを織り混ぜていきます。でも、悪漢3人組にいたぶり殺されかけていた知恵遅れの少年シーミーをローランドたちが救う一幕は、まさに西部劇の王道をいく名場面と言えます。

オススメ度:☆☆☆☆

2006.2.15


公家アトレイデ2 (SF)
(ブライアン・ハーバート&ケヴィン・J・アンダースン / ハヤカワ文庫SF 2002)

『デューン』シリーズの前史をなす『デューンへの道』、その第1シリーズ「公家アトレイデ」の第2巻です。
第1巻の内容を受けて、宇宙各所で権謀術数が展開されます。
ゆっくりと脳を侵していく毒を投与された皇帝エルルッドは狂気の度合を強めていきますが、そこへトライラックスの技術者がある途方もない提案を行います。そして、労働者階級による不穏な空気が蔓延していた機械惑星イックスでは叛乱が勃発し、留学していたレト・アトレイデはイックス総督ヴェルニウスの息子ロンバールと娘カイレアと共に命からがら脱出することになります。しかし、アトレイデ家の主惑星カラダンにも陰謀の影が忍び寄っており、今やアトレイデ家に雇われている少年ダンカン・アイダホは危険の予感をおぼえますが、誰も取り合ってはくれません。さらに、秘密結社ベネ・ゲセリットは遥かな未来に向けての壮大な計画を進行させています。
一方、砂の惑星アラキス(デューン)に派遣された惑星学者カインズは原住民フレーメンに受け入れられ、デューンに秘められた神秘に触れ、壮大なビジョンを描くのでした。
第3巻に続きます。

オススメ度:☆☆☆

2006.2.17


パンドラ、真紅の夢 (ホラー)
(アン・ライス / 扶桑社ミステリー 2002)

耽美伝奇ホラー『ヴァンパイア・クロニクルズ』の第6作です。とはいえ、従来のシリーズに比べるとボリュームは少なく(それでも400ページ)、外伝的な位置付けのようです。
タイトルの通り、主人公は女性ヴァンパイアのパンドラ。これまでも
「ヴァンパイア・レスタト」「呪われし者の女王」に登場していたパンドラですが、実はほとんど覚えていなかったくらい存在感が薄いキャラクターでした。アルマンやマリウス、ガブリエルなどのヴァンパイアに比べて、あまり目立った活躍はしていなかったようです。
しかし、パンドラは紀元前のローマ時代に生まれ、ヴァンパイアとして2000年を生き長らえてきた由緒ある女性。彼女が、かつて超常現象を研究する秘密結社タラマスカの重鎮だったタルボット(彼も、ある事情からヴァンパイアの一員になっています)の依頼で、自分の半生をノートに書き留めたのが、この作品という体裁。
パンドラは、紀元前15年、アウグストゥス帝治下のローマで貴族の娘として生まれました。当時の名前はリディア。子供の頃から教育を受け聡明に育ったリディアは、10歳の時に自宅のパーティーを訪れた長身のケルト系青年に出会います。彼こそが、彼女の人生を大きく変えることになるマリウス(この時はまだ彼も生身の人間)でした。
それから四半世紀、時のローマ皇帝ティベリウスの不興を買ったリディアの父の屋敷は近衛兵の襲撃を受け、父は自害、家族は離れ離れとなり、リディアは父が密かに手配していたヘブライ人の手引きで、船でローマを落ち延びます。連れて行かれた先はアンティオキア。しかしそこも動乱に見舞われており、リディアはパンドラと名を変え、父が遺した金貨とおのれの知恵だけで人生を切り拓いていかなければならなくなります。
そして、パンドラは夜な夜な、血を飲む夢を見て、自分を誘う女性の声を耳にするようになります。救いを求めてイシスの神殿に赴いたパンドラを待っていた人物とは――。
ヴァンパイアになる前のパンドラの生き方は、アン・マキャフリイやマリオン・ジマー・ブラッドリーが好んで描く自立する聡明なヒロインそのもので、本当に作者はライスなのか?と思ってしまったほどです(笑)。特に時代背景が近いこともあって、ブラッドリーの『ファイアーブランド』シリーズ(トロイ戦争を予言者カッサンドラの視点から描いた歴史ファンタジー。ハヤカワ文庫FT)を思い出しました。

オススメ度:☆☆☆

2006.2.18


クリプトノミコン2 ―エニグマ― (SF)
(ニール・スティーヴンスン / ハヤカワ文庫SF 2002)

本格暗号謀略小説「クリプトノミコン」の第2巻。起承転結で言えば「承」の巻に当たります。そのせいか、物語は予想以上に淡々と進みます。
まず、過去の第二次大戦パートにおいては、暗号専門家ウォーターハウスが北極圏に近いクフルム島に暗号解読基地を設置します。そして、座礁したUボートから、ドイツ軍が使用するエニグマ暗号とは異なる高度な暗号で書かれたと思われる文書と金塊を発見します。「2072部隊」の実働的な謀略活動を担当するルート中尉やシャフトー軍曹は意味不明の作戦に振り回され、太平洋では輸送船を撃沈された日本人兵士の後藤(上海でシャフトーと付き合いがありましたね)がニューギニアで生き地獄を体験しています。
一方、現代パートでは、フィリピンを中心にITベンチャーを立ち上げたランディの元へ発信者不明の謎めいたメールが届き、華僑や日本人や地元ギャングを巻き込んだ利権争いに否応なく巻き込まれていきます。
それにしても、敵の暗号を解読できても、その事実を敵にさとらせないように(さとられたら暗号を変えられてしまいますから)、作戦を立案して実行していく複雑怪奇さ(そのせいで、シャフトーらの実働部隊はえらい目に遭うわけですが)は、まさに知略を尽くした攻防戦です。第二次大戦という熱い戦争(過去パート)から、現代の経済戦争(現代パート)に変わっても、情報戦の重要さは変わらず、ますます複雑さを増しているのがよくわかります。
さて、ラストでは過去と現在を結ぶミッシングリンクとも言うべきものがフィリピン近海で発見され、
第3巻へ続くことになります。

オススメ度:☆☆☆

2006.2.21


邪空の王(上・下) (ファンタジー)
(マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン / ハヤカワ文庫FT 2002)

ワイス&ヒックマンのコンビといえば、『ドラゴンランス』シリーズ(富士見文庫/エンターブレイン)をはじめ、「ダーク・ソード」(富士見文庫)、「熱砂の大陸」(富士見文庫、未読)、例によって途中で刊行が打ち切られて宙ぶらりんの『冥界の門』シリーズ(角川文庫)など、異世界を舞台としたファンタジーをいくつも発表しています。ふたりとも本業はTRPG(テーブルトークRPG)の編集者兼シナリオライターで、代表作『ドラゴンランス』シリーズもTRPGのノヴェライズでした。
この「邪空の王」も、日本では未紹介のTRPG「至高の石」のノヴェライゼーションだそうです。
異世界ロエレムでは、人間・エルフ・ドゥワーフ・オルクの4種族が暮らし、それぞれ領地を有して交易を行っています。いくつかある人間の国のひとつ、ヴィネンゲールの国王タマロスは、神々の意思を示すという<至高の石>によって選ばれた<支配主>たちに補佐され善政を敷いていました。タマロス王には腹違いのふたりの息子がおり、長子ヘルモスは学問好きの文官タイプ、歳の離れた次男ダグナルスは勉強嫌いの武芸好きと対照的。物語はダグナルスが9歳の時に始まります。下級貴族の息子ガレトは、同い年のダグナルスの身代り少年(つまりは王子が悪さをした時に身代りとなって鞭打たれる役目。その代わり、王子と一緒に教育が受けられ、衣食住も保証されます)として、わがままな王子に仕えることになります。
ある時、神々の啓示を受けたタマロス王は、4種族の反目を避け共存共栄を図るため、「至高の石」を四分割して各種族で保有しようという計画を実行に移します。神託の後半にあった、闇をほのめかす文言に気付かないまま・・・。そして、分割の儀式で重要な役を務めたダグナルスは、四大(水・火・土・気)の狭間にひそむ<邪空>を垣間見てしまい、それに魅入られるのでした。同じ頃、勉学好きなガレトも図書室の片隅で<邪空>の魔法(平たく言えば禁忌の黒魔術)について記述された書物に興味をひかれます。
それから10年。タマロス王は老いても健在、ヘルモスは<支配主>のひとりとなり、ダグナルスは眉目秀麗、カリスマ的な若き軍人としてヴィネンゲール軍を統べ、ガレトは秘術師として頭角を現していました。自信過剰で野心に満ちたダグナルスは、エルフの外交官夫人ヴァルラと不倫を楽しみ、欠員ができた<支配主>の一員になろうとしていました。エルフの間諜シルウィト、<邪空>魔術に手を染めたガレトらに協力させて、ヘルモスの反対を押し切ったダグナルスは、<支配主>としての適性を試す「変容の儀式」に臨みますが――。
大きな魔力を秘めたアイテムを各種族に分割して所有させる設定や、エルフやドゥワーフなどお馴染みの異種族を配置する点など、「指輪物語」の定番を生かしつつ、新たなバリエーションを作り出しています。海洋種族のオルク(おそらく語源はオルカ(=シャチ、海の怪物という意味もある)だと思いますが)や、ラスト近くに出てくるオマラーといった新種族を登場させたり、ファンタジーには必須とも言える明確なヒーロー、ヒロインが不在といった定石外しも見られます(とはいえ、「ドラゴンランス」を除けば、ワイス&ヒックマンのファンタジーにはあまりあからさまな“正義の味方”は出てきませんが)。
終盤にかけてのダークな展開は、好みが分かれるところでしょう。本国では続篇も出ているようです

オススメ度:☆☆☆

2006.2.26


ソーンダイク博士の事件簿2 (ミステリ)
(オースチン・フリーマン / 創元推理文庫 1999)

科学的犯罪捜査を初めて探偵小説に持ち込んだ、ソーンダイク博士を主人公とする短篇集その2。今回も、倒叙推理2篇を含む全9篇が収録されています。
本シリーズの特色である医学的な手掛かりと機械的トリックがふんだんに盛り込まれています。といいますか、死体に関するトリックが多いので、精緻な死体描写がかなり見られますが、決してスプラッターにはならず解剖学の教科書に近いです(笑)。
保険金目的の偽装自殺を暴く「パーシヴァル・ブランドの替玉」(死体に偽装を施すシーンはビジュアル的に想像するとかなりグロです)、“顔のない死体”トリックを倒叙スタイルで描いた「消えた金融業者」、同様のトリックを正面から扱った「焼死体の謎」、アリバイトリックをチェスタトン風にひねって処理した「ポンティング氏のアリバイ」、バラバラ死体を扱った「パンドラの箱」と「バラバラ死体は語る」、エジプトの象形文字にからんだ財宝探しの暗号もの「青い甲虫」、当時は斬新だった(現代の知識を持って読むとすぐわかりますが)「フィリス・アネズリーの受難」、ソーンダイクが名うての凶悪犯と対決する「ニュージャージー・スフィンクス」の9篇。

<収録作品>「パーシヴァル・ブランドの替玉」、「消えた金融業者」、「ポンティング氏のアリバイ」、「パンドラの箱」、「フィリス・アネズリーの受難」、「バラバラ死体は語る」、「青い甲虫」、「焼死体の謎」、「ニュージャージー・スフィンクス」

オススメ度:☆☆

2006.2.28


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