閨怨
王昌齡
閨中少婦不知愁,
春日凝妝上翠樓。
忽見陌頭楊柳色,
悔敎夫壻覓封侯。
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。
閨怨
閨中の 少婦 愁ひを 知らず,
春日 妝
(よそほ)
ひを 凝らして 翠樓に 上
(のぼ)
る。
忽ち見る 陌頭 楊柳の色,
悔ゆらくは 夫壻に 封侯を 覓め 敎
(し)
めしを。
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◎ 私感訳註:
※王昌齢:盛唐期の詩人。700年?(嗣聖年間)~755年?(天寶年間)。字は少伯。京兆の人。七言絶句に秀で、辺塞詩で有名。
※閨怨:妻がその夫と別れている怨みの詩。似たイメージの詩に唐・張汯の『怨詩』「去年離別雁初歸,今歳(/今夜)裁縫螢已飛。狂客未來音信斷(征客近來音信斷),不知何處寄寒衣。」
や、敦煌曲子詞の『搗練子』「孟姜女,杞梁妻。一去燕山更不歸。造得寒衣無人送,不免自家送征衣。」
がある。
※閨中少婦不知愁:閨房にいてかわいがられている若妻には、(世の中の)愁いというものが分からない。 ・閨中:ねやのうち。閨房。女性の部屋。 ・少婦:年若い妻。若妻。高適の『燕歌行』に「漢家煙塵在東北,漢將辭家破殘賊。男兒本自重橫行,天子非常賜顏色。摐金伐鼓下楡關,旌旆逶迤碣石間。校尉羽書飛瀚海,單于獵火照狼山。山川蕭條極邊土,胡騎憑陵雜風雨。戰士軍前半死生,美人帳下猶歌舞。大漠窮秋塞草腓,孤城落日鬥兵稀。身當恩遇恆輕敵,力盡關山未解圍。鐵衣遠戍辛勤久,玉箸應啼別離後。
少婦
城南欲斷腸
,征人薊北空回首。邊庭飄飄那可度,絶域蒼茫更何有。殺氣三時作陣雲,寒聲一夜傳刁斗。相看白刃血紛紛,死節從來豈顧勳。君不見沙場征戰苦,至今猶憶李將軍。」
とある。 ・不知愁:(世の中の)愁いというものが分からない。
※春日凝妝上翠樓:春ののどかな日に、よそおいを凝らして、女性のいる建物に上って、(気楽に)過ごしている。 ・春日:春ののどかな日に。 ・凝妝:よそおいを凝らす。美しく化粧や身繕いをする。ここは、「凝粧」ともする。同義。 ・上:のぼる。 ・翠樓:女性のいる建物。青楼。蛇足だが、ここでは、妓女のいるところの意ではない。
※忽見陌頭楊柳色:道端の楊柳の青々とした色を見て、にわかに(気付いた)。 ・忽:突然。にわかに。覚えず。急に。たちまち。 ・見:〔けん;jian4●〕見る。見える。なお、「あらわれる」の意にとれば〔けん(げん);xian4●〕。 ・陌頭:路上。道端。路傍。 ・楊柳色:ヤナギの青々とした色。ここでは、新しく春の季節が訪れて、ヤナギの枝にも新たな色が添えられたことにより、時間の経過、自然の運行、孤閨というものが分かってきたということ。第一句では、「不知愁」だったものが「忽見楊柳色」に触発されて、愁いが分かったということ。愁いと悔やみの内容は、第四句に詠まれている。
※悔敎夫壻覓封侯:夫に、手柄を立てて、立身出世するようにしむけたことを悔やむ。悔やまれることは、夫に、手柄を立てて、立身出世するようにをしむけたことであった。 ・悔:悔やむ。悔悟する。 ・敎:…に…をさせる。…をして…しむ。平声。蛇足になるが、現代語(北京語)の口頭語では、(平声(陰平)もあるが)使役表現は去声として発音される。 ・夫壻:〔ふせい;fu1xu4○●〕おっと。むこ。「夫婿」ともする。同義。 ・覓封侯:諸侯になることをもとめる。手柄を立てる。立身出世を求める。 ・覓:〔べき;mi4●〕もとめる。 ・封侯:〔ほうこう;feng1hou2○○〕諸侯となる。諸侯に取り立てられる。貴族階級になる。
唐・曹松の『己亥歳』に「澤國江山入戰圖,生民何計樂樵蘇。
憑君莫話
封侯
事
,一將功成萬骨枯。」
とあり
、高適の『九曲詞』に「
鐵騎橫行鐵嶺頭,
西看邏逤取
封侯
。靑海只今將飲馬,黄河不用更防秋。」
とあり、南宋・陸游の『訴衷情』「
當年萬里覓
封侯
,匹馬戍梁州。關河夢斷何處?塵暗舊貂裘。胡未滅,鬢先秋,涙空流。此生誰料,心在天山,身在蒼洲!」
とあり、
南宋・陸游は『夜遊宮』記夢寄師伯渾「雪曉淸笳亂起。夢遊處、不知何地。鐵騎無聲望似水。想關河,雁門西,靑海際。 睡覺
寒燈裏。漏聲斷、月斜
紙。
自許
封侯
在萬里
。有誰知,鬢雖殘,心未死。」
と使う。
◎ 構成について
七絶。韻式は「AAA」。韻脚は「愁樓侯」で、平水韻で下平十一尤。次の平仄はこの作品のもの。
○○●●●○○,(韻)
○●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2003.12.15
2008. 3. 9
2010. 2.27
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