越中覽古
唐・李白
越王勾踐破呉歸,
義士還家盡錦衣。
宮女如花滿春殿,
只今惟有鷓鴣飛。
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越中覽古
越王 勾踐
(こうせん)
呉を 破りて歸り,
義士 家に 還りて 盡く 錦衣す。
宮女 花の如く 春殿に 滿ちしが,
只今 惟だ 鷓鴣の飛ぶ 有るのみ。
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◎ 私感訳註:
※越中覽古:越の国にて懐古する。「越中」の「中」の字義がよく分からない。…にて。…で。…の中で。この作品やこれと対になる作品『蘇臺覽古』「舊苑荒臺楊柳新,菱歌C唱不勝春。只今惟有西江月,曾照呉王宮裏人。」
に基づいて、薛昭蘊は『浣溪沙』「傾國傾城恨有餘,幾多紅涙泣姑蘇,倚風凝睇雪肌膚。 呉主山河空落日,越王宮殿半平蕪,藕花菱蔓滿重湖。」
を作り、中唐・竇鞏は『南遊感興』「傷心欲問南朝事,惟見江流去不回。日暮東風春草香C鷓鴣飛上越王臺。」
とする。 ・越中:春秋の越の国にて。 ・覽古:昔を思い返す。懐古する。弔古する。
※越王勾踐破呉歸:越王・勾踐は(呉王・夫差を)撃破して、凱旋してきた。 ・越王勾踐:春秋時代の越の王(在位:前四九六〜前四六五年)勾践のことで、呉王・夫差と覇権を争った。(臥薪)嘗胆の末、會稽の恥を雪ぎ、最後には、勾践が勝利を収める。 ・破:撃破する。 ・呉:ここでは呉王・夫差の軍。 ・歸:本来あるべき場所へもどる。ここでは、凱旋する。
※義士還家盡錦衣:忠義の戦士たちは、帰国して家にかえってからは、ことごとく皆、立派で美々しい錦(にしき)の衣服を着けて過ごす名誉を与えられた。 ・義士:忠義の兵士。忠義の将士。忠義の戦士。 ・還家:家にかえる。 ・盡:ことごとく。みな。 ・錦衣:にしきをきる。現代でも“衣錦還ク”という。「故郷に錦を飾る」こと。この詩では、もっと具体的な行動を指し、帰国してからは、立派で美々しい衣服を着けて過ごしたことをいう。
※宮女如花滿春殿:宮廷の後宮の女性達は、花のように艶やかさをきそって、春の気配のある宮殿に満ちていた。 ・宮女:宮廷の後宮の女性達。 ・如花:花のように艶やかさをきそって。 ・滿春殿:春の気配の漂う御殿に満ちていた。
※只今惟有鷓鴣飛:(しかしながら、)現在では、ただ「越雉」とも呼ばれている鷓鴣が飛んでいるだけである。 ・只今:現在。 ・惟有:ただ…だけがある。=唯有。 ・鷓鴣:シャコ。鳥の名。キジ科の鳥。悲しげな鳴き声でなく。詩詞には「杜鵑」とともによく出てくる、心情描写を助ける鳥の名。ここでは、鷓鴣の別称である「越雉」の「越」字に曳かれて使われている。「鷓鴣」「杜鵑」、ともに
●○
で、音調や意味で異なって使い分ける。「杜鵑」は、血を吐くような強い哀しみの場合に使う。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「歸衣飛」で平水韻部上平五微。次の平仄はこの作品のもの。
●○●●○○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
○●○○●○●,
●○○●●○○。(韻)
2004.2.10
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