三月十四夜,
西垣東北廊。
碧梧葉重疊,
紅藥樹低昂。
月砌漏幽影,
風簾飄闇香。
禁中無宿客,
誰伴紫微郞。
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春夜宿直
三月 十四夜,
西垣(せいゑん) 東北の廊。
碧梧 葉は 重疊(ちょうでふ)し,
紅藥 樹は 低昂す。
月砌(げつせい) 幽影を 漏らし,
風簾(ふうれん) 闇香を 飄(ひるが)へす。
禁中 宿客 無く,
誰か 紫微郞を 伴はん。
◎ 私感註釈 *****************
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)~846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。
※春夜宿直:白居易が中書省に宿直したときの詩。
※三月十四夜:三月十四日に(…で)夜を過ごした。 *空には満月に近い月があり、月明の夜の情景を詠んでいる。
※西垣東北廊:中書省の東北にある脇部屋(で)。 ・西垣:〔せいゑん;xi1yuan2〕中書省のこと。西側にある役所。 ・東北: ・廊:〔らう;lang2○〕堂下の建物。脇部屋。
※碧梧葉重疊:緑色のアオギリは、幾重にもかさなっており。 ・碧:緑色の。 ・梧葉:アオギリ。 ・重疊:〔ちょうでふ;chong2die2○●〕幾重にもかさなっているさま。
※紅藥樹低昂:芍薬(しゃくやく)の花は低くなったり高くなったりしている。 ・紅藥:芍薬の花。 ・低昂:低くなったり高くなったりしている。後世、李煜は『謝新恩』で「秦樓不見吹簫女,空餘上苑風光。粉英金蕊自低昂。東風惱我,纔發一襟香。 瓊窗□夢 留殘日,當年得恨何長。碧欄干外映垂楊。暫時相見,如夢懶思量。」と使う。
※月砌漏幽影:月光の指す庭先。月光の指すきざはしには、ひそやかな月影が漏れ出ている。 ・月砌:月光の指す庭先。月光の指すみぎり(石畳)。これを単語と見るかどうかには問題があるが、こうすれば読み下しやすい。 ・漏:もれる。 ・幽影:ひそやかな月影。
※風簾飄闇香:風が入ってくる御簾(みす)の窓からは、ひそやかに香りが漂ってくる。 ・風簾:風が入ってくる御簾。風が入ってくるスダレの窓。これを単語と見るかどうかには問題があるが、こうすれば読み下しやすい。 ・飄:ただよわせる。ただよう。 ・闇香:夜にひそやかに漂ってくる香り。
※禁中無宿客:(夜中の)宮中には泊まる人もなく。 ・禁中:宮中。 ・宿客:泊まる人。
※誰伴紫微郞:だれも紫微郎であるわたしのお伴(とも)をしてはくれない。 ・誰伴:だれが(わたしの)お伴(とも)をしてくれようか、だれもいない。 ・紫微郞:中書省の副官。中書舎人。白居易自身のこと。 ・紫微:中書省の旧称が紫微省で、中書省には紫薇が植えられたという。
◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「枝吹知」で、平水韻上平四支。平仄はこの作品のもの。
●○○●○,(韻)
●◎○○○。(韻)(◎:ここでは●韻の意)
○○◎●●,(◎:ここでは●韻の意)
○○●●○。(韻)
2007.3.17 3.18 |
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