三千里外臥江州,
十五年前哭老劉。
昨夜夢中彰敬寺,
死生魂魄暫同遊。
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亡友・劉太白と同に彰敬寺に遊ぶを夢む
三千里外 江州に 臥(ふ)す,
十五年前 老劉を 哭す。
昨夜 夢中 彰敬寺(しゃうけいじ),
死生 魂魄 暫(しばら)く 同遊す。
◎ 私感註釈 *****************
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。
※夢亡友劉太白同遊彰:亡くなった友の劉太白と彰敬寺にともに遊び過ごした夢を見た。 ・夢:夢みる。 ・亡友:亡くなった友人。 ・劉太白:劉敦質。 ・同遊:一緒に遊ぶ。 ・彰敬寺:長安にある寺。曾て作者・白居易と劉太白とが一日遊んだ思い出のところ。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)「京畿道」「長安附近」では見つからない。現代地図でも同様。細かいことは分からない。
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※三千里外臥江州:(長安から)三千里以上も離れている江州で病臥しているが。 ・三千里外:千数百キロメートル以上離れている。1里≒560メートル。ただし、「三千里」のところは○○●となるべきところで、○○に該る数字は「三」と「千」しかない(「一」「二」「四」「五」…「百」などは●)ので、自ずと「三千」という表現になっただけで、数値に特段の意味はない。「三千」は〔さん ぜん〕〔san1 qian1〕と畳韻に近い語調の美しさがあり、多用される。盛唐・李白の『秋浦歌』に「白髮三千丈,縁愁似箇長。不知明鏡裏,何處得秋霜。」とあり、同じく・李白の『望廬山瀑布』に「日照香爐生紫煙,遙看瀑布挂前川。飛流直下三千尺,疑是銀河落九天。」
とあり、後世、金・元好問に『初挈家還讀書山雜詩』「并州一別三千里,滄海流二十年。休道不蒙稽古力,幾家兒女得安全。」
とある。なお、白居易には、『八月十五日夜禁中獨直對月憶元九』「銀臺金闕夕沈沈,獨宿相思在翰林。三五夜中新月色,二千里外故人心。渚宮東面煙波冷,浴殿西頭鐘漏深。猶恐清光不同見,江陵卑濕足秋陰。」
もある。 ・臥:病気になって臥(ふ)せっている。病臥する。 ・江州:現・江西省と湖北省の一部の地。作者白居易の任地九江を含む一帯。
※十五年前哭老劉:十五年前に死に別れた劉太白さん(と)。 ・十五年前:劉太白が亡くなった時。 ・哭:人が亡くなったとき、儀礼的に声に出して泣くこと。葬儀、葬送の際に泣く形式的ななく。 ・老劉:劉〔りう;liu2○〕さん。年嵩で親しい者を呼ぶときの呼称。蛇足になるが、老人を呼ぶときには「−翁」や「−叟」という感じになる。
※昨夜夢中彰敬寺:昨夜の夢の中で、彰敬寺(にて)。 ・昨夜:昨晩。 ・夢中:夢の中で。
※死生魂魄暫同遊:死者と生者である劉太白と作者・白居易とが、しばらく一緒に過ごした。 ・死生:死者と生者。劉太白と作者・白居易を謂う。 ・魂魄:〔こんぱく;hun2po4○●〕たましい。霊魂。 ・魂:人の精神を主宰する陽の生気で、人が死ぬとはなれて天に昇る。 ・魄:人の肉体を主宰する陰の生気で、人が死ぬと地上にとどまる。 ・暫:しばらく。 ・同遊:一緒に遊ぶ。ともに遊ぶ。中唐・張謂の『同王徴君湘中有懷』に「八月洞庭秋,瀟湘水北流。還家萬里夢,爲客五更愁。不用開書帙,偏宜上酒樓。故人京洛滿,何日復同遊。」とあり、晩唐・許渾の『秋思』に「h樹西風枕簟秋,楚雲湘水憶同遊。高歌一曲掩明鏡,昨日少年今白頭。」
とある。
◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「州劉遊」で、平水韻下平十一尤。平仄はこの作品のもの。
○○●●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2007. 4. 8 2011.12.18 |
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